本とエフェメラ①
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■はじめに――「エフェメラ」とは? エフェメラはまだ聞きなれない言葉だろうが、我ら古本マニアには「紙もの」のことと言えば通じるだろうか。みんな(?)が集めている古いチケットやチラシ、絵葉書のような紙もののことを英語でプリンテッド・エフェメラと言うらしい。 ■古書展チラシのスクラップブックを古書展で 数年前、神保町の週末古書展のことだったと思う。手書きの題箋を貼り付けたスクラップブックを見かけた。銀装堂さん出品で、そこそこの値段だったが、珍しいと思い買ってしまった。なんと古書展チラシのスクラップブック【図1】。 ■作った人は図書館担当の古本好き教員 本当は序文にあたるべき内容が「あとがき」【図3】に手書きで書いてある。「ここに貼付した古書展案内資料は、長い年月文献探究のため古書展通いした思い出である。/この一枚一枚の資料は、これから三十年〜五十年経過すると、貴重な資料になると確信するものである。/なぜならこのような資料は、保存する人がなく、すべて捨てられてしまうからである。」などとある。しかし、資料集本体にはキャプションもコメントもなくて、折角の価値がわかりにくいので発行年だけ私が鉛筆で書き込んでみた。 ■1970年代にはやった「古書センター」 スクラップブックができた1985年から40年経ったので、編者・小林さんが確信した貴重さを確認してみたい。 ■神田古書センターでもやっていた即売会 いま週末古書展というと神保町(本部)、高円寺(西部)、五反田(南部)の三つの古書会館というのが定番だが、昔は池袋(「城北展」はチラシによると)で開かれたり、さらに神田古書センターでもやっていたことが「東京書友会」のチラシ【図5】からわかる。古書即売展が、「神田古書センタービル」の9階で開催されるとある。私が神保町がよいを始めた1980年代後半に古書センターは全部埋まっていたように思うが(たしか最上階はビニール本で有名な芳賀書店さん)、当初はイベント会場もあったのかと驚き。古本初級のみぎり、古書会館と古書センターの区別がつかなかったことを懐かしく思い出す。 【図5】1978年のチラシ デザインが改良されている
■中核都市でのデパート展【図6】は「大宮ステーションビル」の6階特設会場で行われた「埼玉の古本まつり」のチラシ。1975年10月8日のチラシでは実際の書目が並んでいるが、百科事典などいまとなっては二束三文のようなものも「売り」になっているのが時代だ。 【図6】「埼玉の古本まつり」チラシ
【図7】も1976年の「埼玉の古本まつり」のチラシだが、新聞折込みチラシによくあった3色刷りの半カラーなので、まさに地元の新聞に織り込まれていたものと思われる。こういったものは古書会館のチラシ以上に残らないものである(ごく一部の公共図書館に地域資料として保存されている場合もあるが検索できないだろう)。 【図7】「埼玉の古本まつり」チラシ 新聞折込みか?
■週末古書展の予定一覧現在でも東京古書会館受付チラシコーナーで無料配布している「古書即売会予定一覧」(B5版)だが(手元の2007年版だと「〃 開催予定一覧」)、そのご先祖も貼り込まれていた。「古書即売展日程表」【図8】がそれ。判型は今より小型である。右の「44年上期」でタテ13cm×ヨコ9cm 【図8】「古書即売展日程表」
そういえばこれとそっくりな表をむかし『日本古書通信』で見たことがあった。あれはこれを引き写していたのかと納得。ただこの表、すでに即売会(週末古書展)の何たるかをわかっている人への心覚えみたいな体裁なので、「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」といった初心者向けの案内文がないのが残念。もしあれば、自分も学部生時代から古書展へ行けたのにと思う(私が古書展に毎週必ず通うようになったのは就職後、出世コースを外れてから)。 古本祭りと週末古書展(大阪や名古屋だと月一くらい)は両方一般客向け(BtoC)なのに出品傾向が全く違うので(それでいて会場はBtoBの会館)、そこは別種の催事として宣伝したほうが良いと思う。 実際、古書展で古本を箱(単位)で買う音楽評論家・片山杜秀さんも、小学生時代から古書展街へは通っていたのに週末古書展に気づいたのは大学院生になってからだったと『近代出版研究』4号のロングインタビュー「古本王子の快進撃」にある。 ■実はこのスクラップ、図書館で読めるふつうスクラップブックは唯一無二のもの(「天下の孤本」とでも言うのか)であるのだが、なんとこの冊子、図書館で読めるのだ。奥付けに10部作ったとあるので、NDLサーチという国会図書館の蔵書データベースで検索するとおまけでついている都道府県立図書館の所蔵データもひっかかる。そこでタイトルで検索すると埼玉県立熊谷図書館が郷土資料として所蔵していることがわかる。たぶん編者自身による地元への寄贈書だろう。複部数あっても印刷複製ではないので、各冊に異同があるかもしれない。 ■チラシの年代推定について チラシというのはエフェメラ、短命資料の一種なので基本、発行年が刷られていない。年代推定が難しい。けれども古書展チラシは催事のお知らせなので月日、そして曜日が刷り込まれていることが多いので、これを使って年代推測するのがよい。特に曜日との掛け合わせで候補年が絞り込める。 ■古本時事――古本博覧会のお客さん 「古通」も廃刊してしまったことだし、おまけで古本時事について書いておきたい。 ■次回は…昭和後期の古書展チラシを見ていたら、自分が集めた同様のものを紹介したくなってきた。次回は自分が集めた2000年以降の古書展・古書店まわりのエフェメラを紹介したい。
書名:『近代出版研究』第5号
特集「エフェメラって?――軽薄短命の紙がみ」 発行:近代出版研究所 発売:皓星社 発売日:2026年4月7日 ページ数:368ページ 定価:3,300円(税込) 判型:A5判並製 ISBN:978-4-7744-0882-8 好評発売中! https://libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774408828/ |
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