no-image

江戸から伝わる古書用語6 江戸時代の本屋の終焉    (シリーズ古書の世界第9回)

江戸から伝わる古書用語6 江戸時代の本屋の終焉

橋口 侯之介(誠心堂書店)

江戸時代の本屋の仕組みはよくできていた。それを整えた本屋仲間への信頼度も高く、安心して代々継承していた。業界への参入の門戸が広いために個人単位でも末端に入り込むことができた。
しかし、そうした体質は明治に入ると外堀を埋められるような形で変貌を余儀なくされてしまう。そこには現代に通ずる問題があるので私たちもじっくり考えなくてはならない。
江戸の仕組みは別の意味では進化しすぎていた。そこにどっぷりと浸かっていたため、新しい時代についていけなかった。明治に入ってもしばらくは江戸的な方法でやっていけたのだが20年もたつと周囲はすっかり変わってしまったのだ。

和装本から洋装本へ、木版印刷から活版へ、和紙から洋紙へと変わっただけではない。それまで本屋仲間が自主的に行ってきた吟味は政府による検閲になり、古本は鑑札制度と台帳の保存義務が厳密になって新本と古本が分離されていく。取次という専門卸会社ができて全国どこにでも大量の印刷物が届けられるようになっていく。いわばグローバル化が進んで欧米的な出版制度になったともいえる。そうなると独自な制度で生きてきた江戸の本屋たちは行き場を失う。結局明治20年頃にはほとんどが廃業してしまった。この頃結成された出版組合の名簿には明治になって創立されたところばかりが並び、江戸時代からの本屋はもうほとんど入っていない。

今日まで伝わる古本屋も大半は明治初期の新規開業の店ばかりだ。京都では数軒生き残ったが、東京では浅倉屋書店くらいなのだ。
この明治20年が書籍にとっての近代化の画期だった。古い店でも考えを変えていけば生き残ることは可能だったはずだが、それをしなかった。そこにあるのは、意識の問題だ。商売を続けるという意欲が無くなってしまったのである。

これを私は密かに「明治20年問題」と考えている。これが現代でもおきていないだろうか。グローバル化の流れで電子化が進もうとしている今、書籍のあり方自体が大きく変わってしまおうとしている。すでに出版の弱体化、小規模な新刊書店の廃業などでその兆候がある。
古本界でも同様だ。「明治20年問題」がつきつけたように、本屋を続けていこうとする意欲が無くなると危険だ。生き残る道はあるはずである。明治におきたことを教訓に対策を考えてかなければならないだろう。



wahon
『和本への招待 日本人と書物の歴史』 著者 橋口 侯之介
角川選書 (角川学芸出版・角川グループ)
定価 1,728円(本体1,600円+税)好評発売中!
https://www.kadokawa.co.jp/product/201001000449/

誠心堂書店
http://seishindo.jimbou.net/catalog/index.php
 

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

badge

2018年8月24日 第257号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.☆.:* その257・8月24日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国930書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.「古本乙女の日々是これくしょん展」を振り返って
                    カラサキ・アユミ
2.〈蒐める人〉を蒐める        南陀楼綾繁
3.『古写真・絵葉書で旅する東アジア150年』について
                      村松弘一

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

━━【「古本乙女の日々是これくしょん展」を振り返って】━━━

『古本乙女の日々是これくしょん展を振り返って』

                     カラサキ・アユミ



20代最後の夏、忘れられない夏になった。
「貴女の好きな世界を自由にぶつけてもらって良いですよ」と夢の
ような機会をいただいて東京古書会館で開催した展示イベント。二
泊三日の古本屋行脚弾丸ツアーレポートそして戦利品紹介、昭和の
お色気本やカストリ雑誌の展示、“人から見ればただのゴミ”コレ
クション紹介、そして会場中心には古本屋さんのチラシやショップ
カードの自由配布コーナーを設けた。



続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4134


カラサキ・アユミ

https://twitter.com/fuguhugu

『古本乙女の日々是口実』皓星社
価格1,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/furuhonotome/



━━━━━━━━━━━【自著を語る(212)】━━━━━━━━━

〈蒐める人〉を蒐める

                       南陀楼綾繁


 積み残しの宿題のひとつが、ようやく片づいたという気がする。
新刊『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』(皓星社)に収録したうち、
最も古い原稿は2002年に、書物同人誌『sumus』に載った、元国立
国会図書館の稲村徹元さんへのインタビューだ。姉妹編の『編む人
ちいさな本から生まれたもの』(ビレッジプレス)では8年前のイ
ンタビューが一番古かったが、16年前というのはまるで仇討の歳月
である。
よくもまあ、ここまで寝かせておいたものだ。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4136

『蒐める人』刊行記念トークイベント
9月9日(日)
西荻ブックマーク ゲスト・岡崎武志+荻原魚雷
http://nishiogi-bookmark.org/

9月22日(土)
田原町・Readin’ Writin’ BOOKSTORE ゲスト・書物蔵
http://readinwritin.net/



『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 2018年8月1日発売予定
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/


━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

『古写真・絵葉書で旅する東アジア150年』について

                        村松弘一



「古写真・絵葉書を片手に東アジア150年の歴史旅に行こう!」
そんなコンセプトから作られたのがこの本です。素材は3200枚の
学習院大学所蔵品から厳選された300枚の古写真・絵葉書。それら
をどう見せるか。貴志俊彦さん(京都大学、本書共編者)やポール
・バークレーさん(米国ラファイエット・カレッジ)など国内外の
非文字資料研究の専門家と議論しながら研究をすすめました。


続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4139



『古写真・絵葉書で旅する東アジア150年』
村松弘一・貴志俊彦 編  勉誠出版 好評発売中!
定価 4,104円 (本体3,800円)
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100865


━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『戦時体制下日本の女性団体』胡澎 著 莊嚴 訳
こぶし書房 本体4,200円+税 好評発売中!
http://www.kobushi-shobo.co.jp/book/b298092.html



死海文書 全12冊 死海文書翻訳委員会訳 刊行開始
『死海文書 Ⅷ 詩篇』勝村弘也・上村静訳
定価 3600円+税 好評発売中!

『死海文書 Ⅸ 儀礼文書』上村静訳
ぷねうま舎刊 定価4000円+税 8月下旬発売
https://www.pneumasha.com/



「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」
 http://www.ndl.go.jp/exhibit70/index.html

[東京会場]
開催期間:平成30年10月18日(木)~11月24日(土)
(日・祝・11月21日(水)は休館)
開催時間:10時~19時(土曜日は18時まで)
会場:国立国会図書館東京本館 新館1階展示室
入場料:無料

関西会場でも開催します。



━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━


8月~9月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=22


┌─────────────────────────┐
 次回は2018年9月中旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘


*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner


==============================


日本の古本屋メールマガジンその257 2018.8.24

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/


【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎


==============================

hibi

『古本乙女の日々是これくしょん展を振り返って』

『古本乙女の日々是これくしょん展を振り返って』

カラサキ・アユミ

20代最後の夏、忘れられない夏になった。
「貴女の好きな世界を自由にぶつけてもらって良いですよ」と夢のような機会をいただいて東京古書会館で開催した展示イベント。二泊三日の古本屋行脚弾丸ツアーレポートそして戦利品紹介、昭和のお色気本やカストリ雑誌の展示、“人から見ればただのゴミ”コレクション紹介、そして会場中心には古本屋さんのチラシやショップカードの自由配布コーナーを設けた。挨拶看板も展示のキャプションも全て手描きにこだわってとにかく『小学生の夏休みの自由研究』という心持で臨み、混沌として雑多な展示にしてみた。

準備期間も楽しかった。展示中も楽しかった。来場者の方々の様子を眺めたり交流させていただいたのも楽しかった。トークイベントも楽しかった。とにかく全てが楽しかった。

展示を見ながら声をあげて笑うおじさん、山下清の如き出で立ち(白タンクトップに短パンに草履)のお話し好きなおじいさん、展示物を指さしながら何やら熱く語り合う学生グループ、知的な雰囲気の若いカップル、熱心に撮影をしている女性、作業の合間に汗を拭きながら見学に来てくださった古本屋さん。沢山の古本者がご来場くださり、椅子に座って目の前の光景を眺めているとなんだか不思議な気持ちに包まれると同時に至極幸せな気持ちが湧きあがったのであった。

なかでも、ひと際印象的な方がいらっしゃった。地下で開催されていた即売会の帰りにたまたまイベントのポスターを目にして来場くださった80代の腰の曲がったおじいさん。細い腕には即売会の戦利品の入ったビニール袋が提げられていた。とても重たそうだ。展示会場は東京古書会館のエントランスにある階段をぐるりと登って二階。そんな状態で階段を一歩一歩ゆっくりと登ってこられる姿を目にしているとこちらも少し手に汗を握ってしまった。会場に入ってこられた瞬間思わず「お手の荷物こちらにどうぞ」と声をかける。おじいさんは間髪いれず「いや、結構。大事な本だから自分で持っておく。」と表情を変えずに答えた。そのまま挨拶看板、順路を辿っておじいさんはゆっくりとした足取りでじっくり真剣な顔で会場を見て回ってくださった。そして最後に会場の中央に設置していた各地の古本屋さんのショップカードを一枚一枚丁寧に手に集めていった。会場を出ようとするおじいさんとふと目が合った。
「ここにある物はみんなアナタが集めたの?」
「は、はい!」
「ほぉ。アナタも病気だねぇ。たいしたもんだ。」
「へへ・・・へへへ・・・」
「これ、貰っていきますよ。こんな古本屋があるとは知らなんだ。ばあさんの墓参りに行く時についでに覗いてみるよ。」(古本屋さんのショップカードを手にしながら)
「是非!」
「そいじゃ、ありがとさん。」(また長い階段を一歩一歩ゆっくり降りて行くおじいさん)

・・・なんとはないやりとりかもしれないが私には極上のひと時であった。仏頂面だったおじいさんの表情がほどけた瞬間の可愛さと感動たるや。また一味違った古本趣味の旨味を味わえたのであった。

この文章を打ち込みながら、まだ、あれも書きたいこれも書きたいとイベント中の愉快な出来事を思い出しては手を止めて窓の外の風景を眺めていたりしている。気がつけば涼しい風も吹き始め、いつのまにか秋の気配も感じられるようになった。読書の秋、古本の秋、秋は大好きな季節だ。
思えば展示期間中は灼熱の猛暑だった。そんな暑さの中、ご来場下さった皆様、イベントにご協力くださった皆様、鉄砲玉のような自分を両手で受け止めてくださった古書会館の皆様、イベントを開催するきっかけをくださった皓星社さん、おひとりおひとりに感謝が尽きない。煌めく青春のひと時を、本当にありがとうございました。またいつかこんなわくわくするイベントを是非やりたいなと強く思うのでした。

karasaki
カラサキ・アユミ
https://twitter.com/fuguhugu


缶バッチを2個セットで10名の方にプレゼント(デザインは選べません)
badge
ご応募はこちら
http://www.kosho.ne.jp/oubo2018/20188.html


hibi
『古本乙女の日々是口実』皓星社
価格1,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/furuhonotome/

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

ajia

『古写真・絵葉書で旅する東アジア150年』について

『古写真・絵葉書で旅する東アジア150年』について

村松弘一

「古写真・絵葉書を片手に東アジア150年の歴史旅に行こう!」
そんなコンセプトから作られたのがこの本です。素材は3200枚の学習院大学所蔵品から厳選された300枚の古写真・絵葉書。それらをどう見せるか。貴志俊彦さん(京都大学、本書共編者)やポール・バークレーさん(米国ラファイエット・カレッジ)など国内外の非文字資料研究の専門家と議論しながら研究をすすめました。それと並行して私たちはアジア各地へと飛び、古写真・絵葉書と同じアングルから今の街の風景を撮影しました。

どこも都市化は激しく、時には隣の家の塀の上から、時には観覧車の上から、時にはゴミ捨て場からシャッターを押しました。北京の天安門、上海の南京路、ソウルの京城駅舎、西安の大雁塔、台南の赤崁楼、大連の中央郵便局など、過去と現在ふたつの写真を並べると、変わらない風景、変わった風景がみえてきます。それは東アジアのそれぞれの都市に生きた人々の150年の「歴史」を物語っていると言えるでしょう。

本書では「中国東北部(旧満洲)」「華北」「華南」「台湾」「朝鮮半島」の5部構成で25都市を取り上げました。大連・瀋陽・ハルピン・北京・青島・上海・香港・台北・ソウル・釜山などの主要都市から西安・杭州・台南・大邱などの地方都市、また、北朝鮮の平壌など、読み進めるうちに読者のみなさんが東アジア史全体を俯瞰できるように工夫しました。

また、高松宮下賜絵葉書や旧制学習院の学生たちの京城(ソウル)訪問日誌、奉天滞在記などほかの書籍では見ることのできない学習院大学所蔵の門外不出の資料もふんだんに使用しています。理解の助けになるようにコラムも充実させました。「旅を語る言葉」では谷崎潤一郎の杭州、村松梢風の上海、林芙美子のハルピンなど作家や文化人の生の都市のイメージをとりあげ、「旅の道標」ではハルピン・台湾などの絵葉書に関する基礎知識や旅に欠かせない船と航路、時差など当時の旅行の一コマをまとめ、巻末にはもっと学びたい人のために「読者のためのブックガイド」をつけました。各都市の地図も旅には欠かせません。

また、「あの作品の舞台」では、若い読者のみなさんにも興味をもってもらえるように、ハルピンでは漫画『フイチン再見!』(作:村上ともか)、北京では漫画『燕京伶人抄』(作:皇なつき)、上海ではアニメ『ジョーカー・ゲーム』(原作:柳広司)など、アジアの都市を舞台とした映画・アニメ・漫画をとりあげました。古写真・絵葉書を見てノスタルジーを感じる世代からアジアの歴史にあまり興味を持っていなかった世代まで幅広い方々に本書をお読みいただきたいと考えました。

そして、本書を読み終えたみなさんには、是非、本書を携えて東アジアの歴史旅に出ていただきたい。さらに、ご自宅の古いアルバムにある台北や上海、大連、ハルピンの絵葉書や古写真を探し出して持参するのもよいし、「日本の古本屋」サイトで「絵葉書」「写真」を検索して、古本屋さんで購入してみるのもよいでしょう。それらの古写真・絵葉書を片手に同じアングルから今の街の風景を撮る。ありきたりの旅では満足しない、あなたにしかできない、アジアの歴史旅ができるにちがいありません。



ajia
『古写真・絵葉書で旅する東アジア150年』
村松弘一・貴志俊彦 編  勉誠出版 好評発売中!
定価 4,104円 (本体3,800円)
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100865

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

susumeru

〈蒐める人〉を蒐める

〈蒐める人〉を蒐める

南陀楼綾繁

 積み残しの宿題のひとつが、ようやく片づいたという気がする。
新刊『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』(皓星社)に収録したうち、最も古い原稿は2002年に、書物同人誌『sumus』に載った、元国立国会図書館の稲村徹元さんへのインタビューだ。姉妹編の『編む人 ちいさな本から生まれたもの』(ビレッジプレス)では8年前のインタビューが一番古かったが、16年前というのはまるで仇討の歳月である。
よくもまあ、ここまで寝かせておいたものだ。

ただ、長い間放置していた原稿を読み直すと、インタビューしたのも原稿をまとめたのも自分ではないようで、かえって面白かった。
なによりも、ここに登場する〈蒐める人〉の言葉は、全然古びていない。
雑本についての素敵な文章を書く河内紀さんの、「最終的に『何者でもない』ように自分を処する。これってあんがい難しいことなんですよ」という言には、我が意を得たりと肯き、2012年に亡くなった『日本古書通信』の八木福次郎さんが、「だから僕なんかは、いま八十八歳だという意識はほとんどないですよ」とおっしゃるのを読むと、いまでも神保町を歩いておられるような錯覚に陥る。
新規に収録したのは、古書日月堂の佐藤真砂さんへのインタビューと、都築響一さんとの対談だが、「いま」を語りつつ、時代に左右されない本質を突いた言葉を記録できたと思う。

この数年、有名・無名にかかわらず、人の話を聞いて文章にまとめる仕事が増えてきて、その面白さと難しさを日々感じている。
だから、結果論だが、本書が16年前ではなくて、いま世に出てよかったと思っている。

さて、こうなると気にかかるのは、他にもある積み残しのことだ。
『sumus』では、ラブレターをはじめ紙モノなら何でも集めた池田文痴菴についての文章を三回書いている。彼ら過去の〈蒐める人〉については、著書や雑誌を集めたり、文献を調べたりしてきた。
 しかし、ひとつの塊に出来ないままだった。
 あれが判らない、この要素が足りないと止まっているうちに、いま目先に迫る仕事に追い越されてしまう。ときどき思い出して、編集者に相談してみても「へー、そんな人がいるんですか」でおしまい。私家版で出すかと思っても、金と気力がついていかない。引っ越ししたら、どこかに資料が紛れ込んでしまう。――そんなことの繰り返しである。

だけど、本書を読み返してみて、やはり自分は〈蒐める人〉が好きなのだと、改めて感じた。
〈蒐める人〉を蒐めることが、これからの私の仕事なのかもしれないと思っている。

 そうなると、この十年間遠ざけていた古書即売会や古書目録に復帰しなければならない。
 昔のように買いまくり、カオスな状態を楽しむような余裕は、いまの私にはない。
 そこで、即売会に通いながら「必要なもの以外は絶対に買わない」というルールを自分に課すことにした。古本屋さんには悪いが、面白そうな本を手にしても、買わない理由を必死に考えているのだ。
 このメルマガの読者ならお気づきだろうが、このルールは早晩破綻するだろう。何が「必要なもの」なのかは、買ってみて、しばらく手元に置かないと判らないからだ。
 これでまた、カオスな日々に逆戻りか。
うんざりしつつも、古巣に戻ってきたようで、どこかワクワクしている自分がいるのだった。

『蒐める人』刊行記念トークイベント
9月9日(日)西荻ブックマーク ゲスト・岡崎武志+荻原魚雷
http://nishiogi-bookmark.org/

9月22日(土) 田原町・Readin’ Writin’ BOOKSTORE ゲスト・書物蔵
http://readinwritin.net/



susumeru
『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

no-image

2018年8月10日 第256号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第66号
      。.☆.:* 通巻256・8月10日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。
なお、1月から「シリーズ古書の世界」を連載しております。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━【シリーズ古書の世界 第9回】━━━━━━━



江戸から伝わる古書用語 5 江戸時代の本屋の日記から

                 橋口 侯之介(誠心堂書店)

京都の本屋・風月庄左衛門の日記からもう少し紹介しよう。これは
業界用語そのまま書かれたいわば業務日誌である。
例えばこんな表現がある。「万歳講丸源、若州買物出ス」というの
は丸屋源兵衛方で行われた万歳講に、若狭からの買い物品を出した、
ということである。本屋仲間公式の市場のほかに私的な市もあった。
そのひとつである万歳講の場で若狭方面から仕入れた一口物を出品
したのだ。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4067


誠心堂書店
http://seishindo.jimbou.net/catalog/index.php


━━━━━【8月10日~9月15日までの全国即売展情報】━━━━━


https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

第13回 丸善博多店 古本まつり(福岡県)
期間:2018/08/03~2018/09/02
場所:丸善博多店特設会場 
福岡市博多区博多駅中央街1-1 JR博多シティ8F


--------------------------
第11回 カジル横川古本市(広島県)

期間:2018/08/06~2018/08/15
場所:横川駅前フレスタモール カジル横川1階通路
広島市西区横川町3-2-36 JR横川駅隣接


--------------------------
第27回 東急東横店 渋谷大古本市

期間:2018/08/07~2018/08/14
場所:渋谷駅 東急東横店 西館8階 催物場


--------------------------
2018 阪神夏の古書ノ市(大阪府)

期間:2018/08/08~2018/08/14
場所:阪神梅田本店 8階催事場
大阪市北区梅田1-13-13


--------------------------
MODI 柏モディ 古本市(千葉県)

期間:2018/08/08~2018/08/21
場所:MODI 柏モディ3F 千葉県柏市柏1-2-26


--------------------------
城北古書展

期間:2018/08/10~2018/08/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22


--------------------------
第31回 下鴨納涼古本まつり(京都府)

期間:2018/08/11~2018/08/16
場所:下鴨神社糺の森 京都府京都市左京区下鴨泉川町59
URL: http://koshoken.seesaa.net/


--------------------------
京都マルイ 夏の古本市(京都府)

期間:2018/08/16~2018/08/19
場所:京都マルイ(店頭四条通り側)
京都市下京区四条河原町真町68


--------------------------
浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2018/08/23~2018/08/26
場所:JR浦和駅西口徒歩5分 マツモトキヨシ前


--------------------------
ぐろりや会

期間:2018/08/24~2018/08/25
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL: http://www.gloriakai.jp/


-------------------------
オールデイズ (愛知県)

期間:2018/08/24~2018/08/26
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12


--------------------------
好書会

期間:2018/08/25~2018/08/26
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9


--------------------------
第87回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2018/08/29~2018/09/04
場所:くすのきホール
西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場
URL: http://furuhon.wix.com/tokorozawafuruhon
--------------------------
東京愛書会

期間:2018/08/31~2018/09/01
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL: http://aisyokai.blog.fc2.com/


--------------------------
杉並書友会

期間:2018/09/01~2018/09/02
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
TEL:03-3339-5255(会期中のみ)


--------------------------
9月反町古書会館展(神奈川県)

期間:2018/09/01~2018/09/02
場所:神奈川古書会館1階特設会場
   横浜市神奈川区反町2-16-10


--------------------------
第34回 古本浪漫洲 Part1

期間:2018/09/04~2018/09/06
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2


--------------------------
BOOK & A(ブック&エー)

期間:2018/09/06~2018/09/09
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9


--------------------------
紙魚之會

期間:2018/09/07~2018/09/08
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22


--------------------------
第34回 古本浪漫洲 Part2

期間:2018/09/07~2018/09/09
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2


--------------------------
博物館古書市(名古屋)

期間:2019/09/08~2018/09/17
場所:名古屋市博物館 名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1


--------------------------
第34回 古本浪漫洲 Part3

期間:2018/09/10~2018/09/12
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2


--------------------------
第34回 古本浪漫洲 Part4

期間:2018/09/13~2018/09/15
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2


--------------------------
書窓展(マド展)

期間:2018/09/14~2018/09/15
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22


--------------------------

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


次回メールマガジンは8月下旬に発行です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国935書店参加、データ約630万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=22



┌─────────────────────────┐
 次回は2018年8月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘


*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner



==============================

日本の古本屋メールマガジンその256 2018.8.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之


==============================

wahon

江戸から伝わる古書用語5 江戸時代の本屋の取引    (シリーズ古書の世界第8回)

江戸から伝わる古書用語5 江戸時代の本屋の取引

橋口 侯之介(誠心堂書店)

京都の本屋・風月庄左衛門の日記からもう少し紹介しよう。これは業界用語そのまま書かれたいわば業務日誌である。
例えばこんな表現がある。「万歳講丸源、若州買物出ス」というのは丸屋源兵衛方で行われた万歳講に、若狭からの買い物品を出した、ということである。本屋仲間公式の市場のほかに私的な市もあった。そのひとつである万歳講の場で若狭方面から仕入れた一口物を出品したのだ。「買物」といえば仕入れのことだと古本屋ならすぐわかるが、一般の人にはピンとこないだろう。

ある日の一文にこういうのもある。「松岡本ニフ帖打蔵へ入ル」というのだが、わかるだろうか?
松岡某氏から仕入れた本に「フ帖」、すなわち「符丁」を書いてお蔵にしまった、ということである。つい最近まで古本屋は仕入れた本の後ろに仕入れ値を記号で書いていた。今ならコンピュータにデータを打って所定の場所にしまうようなものだ。「ふちょう」といわれて古本屋ならわかる。
この貴重な日記を読み込んで書かれた論文というのがまだない。研究者には用語がわかりにくいからだろうか。ぜひ、使ってほしい。
この日記をはじめ当時の史料から本屋間の取引を調べると、案外、今とかわらないことが知られる。

たとえば、市場の取引では基本的に売り方から5分手数料を徴収する。それを歩銀(ぶきん)といった。当時、本は銀貨で売買されたのでこう書く。これをもっと高くしてほしいと市場運営者から要望がたびたび出たが、入れられることはなく、何と現代まで歩金は5%(税引き)なのである。

新刊本を他店に卸すのを売価(建値)の8掛にするのが通常の取引である。それを「仕切る」といった。なぜか今も取次から新刊書店への価格は似たようなレベルだ。
古本を各店に譲るときの値段は「一ワリ引ケ」といって10%引きだ。今も決まりはないが概ねそのように取引されている。こういう慣習は変わりにくいのだろう。
この本屋間での売買に利用された仕組みに「本替(ほんがえ)」というのがあった。細かい取引が錯綜し、その支払いも複雑になってしまう。それを避ける智恵がこの方法で、支払いを現金にするのでなく、実物の本で行う。

江戸時代の本屋が出版から問屋、販売、古本をすべて一軒でまかなっていたからできたことで、請求のあった分を、それに相当する額の自店の在庫品で支払うのである。本のやりとりだけで現金の動きを簡素化する方法だ。17世紀末の元禄頃の記録に京都と大坂の本屋間で行われたとあるので、古い慣習だ。同一市内だけでなく、遠隔地間でも盛んで、風月の日記にも「須茂本替渡シ、本一櫃(ぴつ)に致シ、大廻シニ出ス」とあり、江戸の須原屋茂兵衛向けの本替分を一箱に荷造りして大廻シ(海路)の便で出したという。その時の帳面を「本替帳」といったのだそうだ。前回も述べたように江戸時代の本屋は在庫管理といい、取引勘定といいきめ細かい仕事をしていたのに感心する。



wahon
『和本への招待 日本人と書物の歴史』 著者 橋口 侯之介
角川選書 (角川学芸出版・角川グループ)
定価 1,728円(本体1,600円+税)好評発売中!
https://www.kadokawa.co.jp/product/201001000449/

誠心堂書店
http://seishindo.jimbou.net/catalog/index.php
 

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

no-image

2018年7月25日 第255号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.☆.:* その255・7月25日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国930書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.古本屋ツアー・イン・ジャパンの2018年上半期活動報告
古本屋ツーリスト 小山力也
2.『銀幕に愛をこめて ぼくはゴジラの同期生』 のむみち
3.『本屋な日々 青春篇』       石橋毅史
4.『これからの本屋読本』  内沼晋太郎

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

━━━━━━━━【古本屋ツアー・イン・ジャパン】━━━━━━

古本屋ツアー・イン・ジャパンの2018年上半期活動報告


              古本屋ツーリスト 小山力也



 あっという間に七月も終りとなり、嘘みたいに高速で月日が過ぎ
て行く。2018年になったばかりの感覚をまだ引き摺っているので、
どうにも納得のいかぬ夏である。だがそうは言っても、たくさんの
古本屋さんに行き、たくさんの古本を買って来た半年は、歴然と残
されている。
 ここ最近の主な活動は、特定の『定点観測店』に依拠した古本買
いなのであるが、その観測パターンは大きく三つに分けられる。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4025


小山力也 2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が
売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツア
ー・イン・ジャパン』管理人。「フォニャルフ」の屋号で古本販売
に従事することも。古本屋に関する著書ばかりを出し続けており、
それらの出版社や形状は違えど、全部を並べたらいつしか“日本古
本屋大全集”となってしまうよう、秘かに画策している。「本の雑
誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。
http://furuhonya-tour.seesaa.net/



━━━━━━━━━━━【自著を語る(番外編)】━━━━━━━━━

『銀幕に愛をこめて ぼくはゴジラの同期生』
                       のむみち


 ほこりまみれの小さな古本屋でバイトしている(@最低賃金)
私が、どうして映画スター・宝田明のインタビュー本を筑摩書房か
ら出版することになったのか。
 話は2011年秋まで遡る。当時私は、2009年からハマり始めた旧作
邦画熱がピークでせっせと名画座へ足を運んでいた。そして、神保
町シアターで「千葉泰樹監督特集」が開催された折、たまたま『二
人の息子』を観たところ、なんと主演の宝田さんが観にいらしてい
たのである。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4021


『銀幕に愛をこめて ―ぼくはゴジラの同期生 』
宝田 明 著 のむみち 編集
筑摩書房 定価:本体2,000円+税  好評発売中!

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815439/



━━━━━━━━━━━【自著を語る(210)】━━━━━━━━━

『本屋な日々 青春篇』

                         石橋毅史


最近の書店は、本を扱うだけでなく、カフェを併設し、雑貨を扱い、
トークイベントを積極的に開催する。それぞれの資金力、アイデア、
キャラクターを活かして、続けられる店になるための経営努力をし
ている。
 そうした書店の風景を、快く思わない人もいる。本だけでは利益
を確保できない、そもそもあまり売れないという書店の事情はわか
るが、肝心の本がたんなるお飾りになってきている、なんのために
本を売ってるんだ、まさに本末転倒、というわけだ。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4023

『本屋な日々 青春篇』 石橋毅史 著
トランスビュー 価格:1,800円+税 好評発売中!
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784798701677


━━━━━━━━━━━【自著を語る(211)】━━━━━━━━━

『これからの本屋読本』

                      内沼晋太郎



 「いつか、本屋をやりたいんです」という人が、やって来る。
なぜかといえば、本屋をやるための情報があまりに少なく断片的で、
どこにも網羅されていないからだ。だから門戸を開いているぼくの
ところに、さまざまな人がやってくる。それぞれが「こんな本屋が
やりたい」という話をして、それに対してなるべく前向きに「次ま
でにこの部分を考えてみませんか」とアドバイスをする。


続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4034


『これからの本屋読本』内沼晋太郎 著
NHK出版 定価:1,728円 好評発売中!
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000817412018.html


━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『古写真・絵葉書で旅する東アジア150年』
村松弘一・貴志俊彦 編  勉誠出版 好評発売中!
定価 4,104円 (本体3,800円)
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100865


『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 2018年8月1日発売予定
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/


「古本乙女の日々是これくしょん展」を振り返って
 カラサキ・アユミ
 https://twitter.com/fuguhugu



━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━


7月~8月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】

https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=22

┌─────────────────────────┐
 次回は2018年8月中旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です


https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner


==============================


日本の古本屋メールマガジンその255 2018.7.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎


==============================

no-image

古本屋ツアー・イン・ジャパンの2018年上半期活動報告

古本屋ツアー・イン・ジャパンの2018年上半期活動報告

古本屋ツーリスト 小山力也

 あっという間に七月も終りとなり、嘘みたいに高速で月日が過ぎて行く。2018年になったばかりの感覚をまだ引き摺っているので、どうにも納得のいかぬ夏である。だがそうは言っても、たくさんの古本屋さんに行き、たくさんの古本を買って来た半年は、歴然と残されている。

 ここ最近の主な活動は、特定の『定点観測店』に依拠した古本買いなのであるが、その観測パターンは大きく三つに分けられる。『短周期観測店』は、それこそ日を置かず訪ね歩く近場のお店で、荻窪「ささま書店」高円寺「古書サンカクヤマ」吉祥寺「よみた屋」阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」&「千章堂書店」などが挙げられる。続いて月に何度か訪れる『中周期観測店』は、下北沢「ほん吉」武蔵小山「九曜書房」神保町「日本書房」武蔵境「浩仁堂」経堂「大河堂書店」仙川「文紀堂書店」高円寺「アニマル洋子」早稲田「古書現世」中村橋「クマゴロウ」東村山「なごやか文庫」川崎「朋翔堂」などが主であろうか。

普段はこの短周期と中周期を縒り合わせて、古本を買い集めていることになる。これだけの良質なお店を、取っ替え引っ替え日々訪ね歩き回れるのは、東京に住む者の、大きな古本的アドバンテージであろう。そしてさらには、一年に一度行けるか行けないかの『長周期観測店』が存在し、飯倉「クルクル」県立大学「港文堂書店」出町柳「善行堂」静岡「萬字亭」足利「秀文堂書店」松本「松信堂書店」鶴岡「阿部久書店」長岡京「ドニカ文庫」六甲「口笛文庫」などなど、長周期と言うよりは、行きたくてもなかなか行かれぬお店と言った方が正しいかもしれない…本当は短期に入れ込みたいほど毎日顔を出したいお店ばかりなのだが、いかんせん遠いのでなかなか…というのが現状である。

 そんな毎度の古本ライフを送りながらの、今年一月からの私的な流れを俯瞰してみると、まず“凶”のお神籤を引くことから始まり、落ち込みながらも吉祥寺の写真集専門古書店「book obscura」を見付けたり、早稲田に新しく開店した文学古書に強い「古書ソオダ水」に駆け付けたりした。二月には千葉県大久保の名店「キー・ラーゴ」閉店の報に接し、さらに高円寺の古着も売るお店「七星堂古書店」がもぬけの殻になっているのを目撃する。早稲田からいつの間にか「谷書房」と「文英堂書店」が消えていたのに気付いたのも、この月であった。三月は西調布に“旅する本屋”の「古書玉椿」が「folklora」として、北欧や刺繍&洋裁に特化した棚造りで帰って来た。中村橋には二百円均一の本が良質な「古書クマゴロウ」が開店し、西武池袋線の古本屋地図を新鮮に塗り替えてくれた。阿佐ヶ谷ではなかなか開かない休業日の方が多い「雨前」に、五ヶ月越しでようやく入ることが出来た。

また竹ノ塚「永瀬書店」の最終営業日を見に行くが、営業開始が夕方遅くからと変則的になっていたので、泣く泣くその最後の勇姿を見届けずに帰る羽目となった。四月は茅ヶ崎「洋行堂」の閉店セールに遠征し、悲しみながらも安過ぎる良書をドッサリと買い込む。取材で出かけた京都の出町柳では、『コミックショックチェーン』のニューウェーブ店「El camino」に立ち寄り、映画館も出来て小さな商店街が文化的盛り上がりを見せ始めているのを肌で感じ取る。池袋の老舗店「八勝堂書店」が閉店したのもこの月であった。閉店後にお店の前を通りかかると、不要になった本棚の棚板を無料で配る光景が、チクリと胸を刺した。五月は新しく出来た、追浜の町の古本屋さん「おっぱま ぼちぼち書店」と、東陽町の「古本と肴 マーブル」を探索。「マーブル」は奥に立ち飲みカウンターのある“小さな古本酒場”と言った趣である。

六月は、次々と店を閉じ続ける「ブックセンターいとう」の分倍河原店の閉店と、名前は「古本市場」だが実は独立店舗の大和店の閉店に立ち会う。雑司が谷では移転した「JUNGLE BOOKS」を訪れ、前より一層お店らしくなった空間を言祝ぐ。また、ウカウカと知らずに過ごしていた、横浜・本牧の住宅街にある、住宅の一部を店舗に改装したお店「古書けやき」にたどり着き、古本屋と言う営業形態の奥深さを改めて知る。何はともあれ東京近郊の出来事中心であるが、このように、開くお店もあれば閉まるお店もある、いつもの出来事が、この早い流れの六ヶ月間にも起こっていたのである。古本屋の世界も、停滞することなく、良い方にも悪い方にも全方位に振れ、常に色々動いているのだ。私が飽きずにこの世界に耽溺しているのも、そのおかげなのであろう。

 古本屋さんで常に蠢き這いずり回っているご褒美としては、月曜書房「ある晴れた日に/加藤周一」(100円)東都書房「白鳥座61番地/瀬川昌男」(100円)目黒書店「剃刀日記/石川桂郎」(200円献呈署名入り)などが、特に目立った、“どひゃっほう”と叫びたい収穫である。そして西荻窪「盛林堂書房」の貸し棚「古本ナイアガラ」に参加している、本棚探偵・喜国雅彦氏の「ひとたな書房」の探偵小説的吸引力は相変わらず絶大で、今年に入ってから「黒い東京地図/蘭郁二郎」「自由酒場/ジョルジュ・シメノン」「女食人族/香山滋」「人工怪奇/九鬼澹」などをすでに購入してしまっている(値段は嬉しいことに&恐ろしいことに、相場の半額〜三分の一ほどなのだ)。いったい後何冊買うことになるのだろうか…。

 恐らくは今年の後半も、ある一冊の古本旅本を岡崎武志氏と共同制作したらあっという間に過ぎ去り、来年初頭にまたここでみなさんに、極私的な古本屋と古本に関する駄文をお目にかけることになるのだろう。それまでまた楽しくいつものように、古本屋を訪ねまくり古本を買いまくり日々を過ごすつもりである。


小山力也 2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』管理人。「フォニャルフ」の屋号で古本販売に従事することも。古本屋に関する著書ばかりを出し続けており、それらの出版社や形状は違えど、全部を並べたらいつしか“日本古本屋大全集”となってしまうよう、秘かに画策している。「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。http://furuhonya-tour.seesaa.net/

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

honyana

『本屋な日々 青春篇』

『本屋な日々 青春篇』

石橋毅史

 最近の書店は、本を扱うだけでなく、カフェを併設し、雑貨を扱い、トークイベントを積極的に開催する。それぞれの資金力、アイデア、キャラクターを活かして、続けられる店になるための経営努力をしている。

 そうした書店の風景を、快く思わない人もいる。本だけでは利益を確保できない、そもそもあまり売れないという書店の事情はわかるが、肝心の本がたんなるお飾りになってきている、なんのために本を売ってるんだ、まさに本末転倒、というわけだ。
 そう思うのはたいてい、本に親しんできた人であろう。書店に見せてほしいのは充実した棚である、本の奥深さを知る店主やスタッフによる気の利いた品揃えである、原点のところをしっかりやってくれ、ということだと思う。

「充実した棚」や「品揃え」だけが書店のチャームポイントだった頃、そのための「経営努力」は見えにくかった。いまは「経営努力」のほうが前面に出ている書店も増えていて、それがある種の人たちを辟易させるのかもしれない。だが、書店の風景は時代を反映する。現代の消費者が、それを望んだともいえる。ただ腹を立てるだけではもったいない。表出している「経営努力」の後ろには、客のために本と真摯に格闘している本屋がいるはずだ。どの店にも絶対に、とまではいわないが。

『本屋な日々 青春篇』にも、「経営努力」が表出している書店の風景が出てくる。僕は、未購入の本の持ち込みOKのカフェが併設された店内で、漫画も持ち込んでいいんでしょうか、とスタッフに訊ねて困惑させてしまっている。全体としては、登場するのは「本屋」を突き詰めようとしている人たちである。なぜ、この時代に本屋をやるのか。日々、店を開け、客の相手をしながら、自問自答し、闘っている人たちである。

もちろん、彼らも生き残るために工夫をしている。僕は、その工夫とあわせて、彼らが「本屋」としてどうあろうとしているのかを、書こうとしてきた。それは、僕自身が「書く者」としてどうありたいのかを問うことでもあった。

本屋な日々、というやや奇妙な響きのタイトルは、2013年から続けている連載のタイトルからとっている。青春篇、となっているが、年齢の若い本屋ばかりが登場するわけではない。今後も、いくつかの「〇〇篇」の刊行を予定している。デザイナーと編集者のアイデアで、本のデザインと造形には多くの遊びが施されている。これは具に説明するよりも、どこかで現物を触って、表紙カバーやオビを外してみたりして、確認していただきたい。



honyana
『本屋な日々 青春篇』 石橋毅史 著
トランスビュー 価格:1,800円+税 好評発売中!
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784798701677

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

Just another WordPress site