古本が繋がる時3

古本が繋がる時3

日本古書通信社 樽見博

 

 古泉千樫が長塚節遺品の中から、遺族に懇願して持ち帰った、書き入れのある茂吉歌集『赤光』はその後どうなったのだろうか。千樫の『随縁抄』に、「土岐哀果編『萬葉短歌全集』に就て」という、「アララギ」大正5年2月から4月号に掲載された評論が収録されている。大正4年に東雲堂書店から刊行された善麿(哀果)編纂『萬葉短歌全集』を、千樫が詳しく批評したものだ。千樫は「僕も萬葉集尊重者の一人であり又折角土岐君がいゝ仕事をして呉れたのに対して、自分の気づいたところは遠慮なくいうた方がよいと思ふので、読過の際標をつけておいたものを書き抜いて見ようと思ふ」と書いている。つまり長塚節が『赤光』に注記していったのと同じことをしたのである。千樫が節の書き入れ『赤光』を詳しく紹介したのは大正9年だが、その本は大正4年2月から千樫の手元にあった。

 土岐は千樫の「アララギ」掲載の評を受け、「極めて当然な謙譲の態度をもつて、古泉君の指摘を参考とし」改めて『作者別万葉集』を完成したと、後の随筆集『柚子の種』(大阪屋号書店・昭和4年)に収めた「書入れ本追憶」で触れている。

 この「書入れ本追憶」の存在を知ったのは、改造社の『短歌講座』の月報「短歌研究」第二号(昭和6年11月)に掲載された善麿の「新刊歌集歌書」という連載によってであった。連載の2回目で、千樫の弟子大熊長次郎の『晩縁記』(白帝書房・昭和6年10月)を2頁に亘って書評しているが、その中に千樫の思い出と共に書かれていた。これも偶然に出会った文献である。

『赤光』の行方を考える上で特に注目されるのは、善麿がその一文の中で、ある古本屋の古書目録に「死んだ古泉千樫君の蔵書一切が売りに出て」、その中に蔵者朱書入れのある『萬葉短歌全集』があり、電報を打ち、重ねて手紙も送って入手したと書いていることだ。千樫の蔵書は一括して古書市場に流れたのだ。その目録の刊行は、『柚子の種』が昭和4年11月だから、昭和3年か4年の初めだろう。定価1円20銭のものが売価3円とプレミアがついていたと書き、「僕から謹呈したものであるが、故人がいかにめんみつに、僕の錯誤を調べてくれたかがよくわかる」とも書いている。

 千樫旧蔵書を掲載した古書目録が昭和3年か4年に出た。楽な生活ではなかった千樫は昭和2年8月に亡くなり、没後蔵書が処分され遺族の生活費となったのだろう。そこには例の長塚節書入れの『赤光』もあったのではないか。当時の文学書古書目録だとすれば、渋谷の玄誠堂書店か白山の窪川書店が思い浮かぶ。殊に玄誠堂主芥川徳郎は「アララギ」の歌人でもあった。だが、「日本古書通信」昭和33年8・9月号掲載の「明治文学書の思い出・芥川徳郎氏に聞く」で、本人が目録刊行は昭和6年からと語っている。ならば、白山の窪川書店に違いない。

 九段の千代田図書館には反町茂雄氏と中野三敏氏旧蔵の古書目録が収蔵され、検索も出来る。早速出向いて調べてみた。ところが窪川書店の目録『古本之花』はあるが、その後の『窪川書店古書時報』の該当年分は修理中で見られなかった。がっかりしたが、私は窪川の古書目録は全て『古本之花』なのかと考えていたので早速、図書館階下のロビーで発行者窪川書店で「日本の古本屋」を検索してみると、何と「千樫蔵書本号」が出てきたのである。その内の1件はこの号だけ、別の1件は「千樫蔵書本号」の記載はないが3冊一括で、その中の1冊が添付された写真で当の目録と分かった。いうまでもなく3冊の方(こちらの方が安かった)を早速注文して届いたのが昭和4年3月発行「窪川書店古書目録・千樫蔵書本号」である。窪川書店は戦前、多くの文学者を顧客に持つ専門店であった。昭和3年ころから目録を発行し、「千樫蔵書本号」は臨時特別号で菊半裁横版70頁だ。表紙に与謝野寛『紫』、口絵に日夏耿之介『転身の頌』と河井酔名『青海波』を掲載している。

 「千樫蔵書本号」巻頭に店主窪川精治の挨拶が載り、熱心な読書家・書物愛好家であった千樫に愛顧を受けたこと、その蔵書を扱えるのは名誉であることを書いた上で、この目録が所蔵の全部でなく、300冊あまりが、窪川が評価した上で事前に千樫の友人知人門下に分譲されたこと、それらこそ「垂涎三丈に値ひする書物許り」であったと書かれている。とはいえ目録は1700点掲載。藤村『破戒』5円、荷風『珊瑚集』5円、朔太郎『月の吠える』10円(記載は一〇〇・〇とあり100円とも見えるが誤植、あるいは無削除版か)、犀星『愛の詩集』3円50銭、白秋『白金の独楽』3円など多数の稀覯本が収録されている。因みに『転身の頌』15円、『青海波』2円である。千樫朱書入れの土岐善麿『萬葉短歌全集』も確かに3円で掲載されている。

 前記した稀覯本にも勝るという300冊の実態は分からないが目録を見ていくと、千樫が関係した「アララギ」や「日光」同人たちの主な歌集が未収録である。おそらく千樫に謹呈された歌集類が事前に友人知人門人に分譲されたからであろう。短歌の師伊藤左千夫の著作も親しかった茂吉の歌集類もないのである。残念ながら期待した長塚節書入れ茂吉『赤光』は未掲載だった。この蔵書処分まで千樫の元にあったかどうかも分からない。何故か「日光」同人前田夕暮の本は、献呈署名本も含め多数収録されている。『陰影』『生くる日に』『発生』が署名本だ。因みに千樫は『陰影』『生くる日に』の批評もしている(『随縁抄』収録)。目録に注記はないが、あるいはこの歌集にも書入れがあったかもしれない。

 結局、この「千樫蔵書本号」でも『赤光』の行方は分からなかった。肝心の茂吉自身は何か書いていないのだろうかと考えていた時に、茂吉編の岩波文庫『長塚節歌集』(昭和8年)を見つけた。巻末に「アララギ」25周年記念号に寄稿したものが解説として収録されていた。20頁に及ぶ実に明晰な長塚節短歌論である。その中に「長塚氏が歿して、遺品が届き、小石川の小布施家で通夜をしたとき、古泉君が先づ行き、私が稍おくれて行つた。(略)歌の手帳や、歌集の原稿や、書入れした赤光などとともに持つて帰つたから古泉君の遺品の中に残つてゐる筈である」と書き、また、文庫のための「後記」でも「古泉千樫君に保管を頼んだのであるから古泉君の遺族のところにある筈であるが、このたびそれを参考にすることが出来なかつたのは残念である」と書いている。あからさまには書いていないが、憤懣やるかたなしの思いが伝わる。目録発行以前に関係者に事前販売された時、そのメンバーの中に茂吉もいて、あるいは多くの遺蔵書を購入したのではないかと考えたが違うようである。「アララギ」25周年記念号は昭和8年1月発行、『長塚節歌集』後記の日付は昭和8年7月である。茂吉は昭和4年3月発行の「千樫蔵書本号」を本当に知らなかったのだろうか。やはり謎である。

 千樫は病と貧困の中で早世した。茂吉も善麿もその学識、研究の優れたものであることを認め、『随縁抄』では、折口信夫が、新設学校の教師に千樫を推薦したが、学歴が無いことで不採用になったことに触れている。悲運の歌人と言えるだろう。

 鈴木杏村『古泉千樫聞書』(短歌新聞社・昭和49)に「遺家族」という一節がある。その中に「千樫の死後二年(昭和四年)目に奥さんは、二人の娘と一緒に牛込早稲田に糸綿店を開いたが、昭和八年にその店を閉じて中野に移った」とあった。蔵書処分はその開店資金になったのだろう。目録収載品の平均価格は60銭から70銭くらいで1700点、事前販売分300冊、合計売上1000円から2000円とみれば開店資金の大半ではなかったろうか。『日本詩人全集』5(新潮社・昭和43)の月報に大正14年撮影の千樫の家族写真が掲載されている。妻喜代子、長女葉子、三女佐代子、四女玲子とある。娘さんが4人いたのである。『歌集青牛集』の巻頭歌は、大正7年作の「病児を持ちて三十三首」である。

 病院の明るき室にみとりゐる妻の身なりのあはれまずしも
といった次女の入院を詠った作品がならぶが、写真にいないところを見ると早世されたのだろうか。千樫には子供を詠んだ作品が多く、前田夕暮は「古泉千樫を憶ふ」(『青天祭』昭和18年2月・明治美術研究所)で次の作品を紹介している。

   このあさのあかるきえんにをさな子の遊ぶをみれば春ふけにけり
   おもてにて遊ぶ子供の声きけば夕がたまけてすゞしかるらし

 この家族写真を見て、喜代子夫人は細面の美人であることに驚いた。妻を詠んだ作品も多い。

 千樫は著作よりもむしろ短冊など自筆物をよく目にする。「短歌雑誌」大正15年6月号の表紙裏に日光社による「古泉千樫筆蹟頒布会」の広告が出ている。静養中の千樫支援のためである。短冊一枚5円、半切20円などとある。先の鈴木杏村著書の中の「千樫臨終」には「先生は病床において頒布会未済のことに就いては大変心配して居られる」とあった。揮毫代金を前金で貰っていたのであろう。病歌人の胸中を思うといたたまれないものがある。

 ここまで調べて来て、気になっていた橋本徳寿の大著『アララギ交遊編年稿』三冊(昭和57年~59年、至芸出版社)を買うことにした。第一篇が「古泉千樫私稿」で、A5判592頁2段組というボリュウム。第二篇にも「古泉千樫と原阿佐緒」が収められた千樫資料集ともいうべき労作である。千樫追悼号となった歌誌『青垣』創刊号も収められ、「千樫筆蹟頒布会」の立ち上げから決算まで記録されているが、何故か、窪川書店による蔵書処分については触れられていない。『青垣』創刊号に収められた斎藤茂吉の追悼文の最後が「貧しい生涯に苦しい工面していろいろの書物を買ひ、数千巻の書冊を病床のぐるりに積みながら死んで行つた。このことなども僕にはひどくあはれである。」と締めくくられているのは、何とも印象的である。

 さて、今回の考証の端緒となった古泉千樫著『随縁抄』(改造社・昭和5年)の「長塚節氏の赤光評」に綿密な書入れをしたのは誰だろうか。「アララギ」大正9年1月から4月号に連載された記事と、『赤光』初版とを用いて校合、80頁にも及ぶ長い評論に書き入れをしている。達筆で几帳面、研究者か歌人であろう。この評論が後に何かの本に採録されていれば、そのための校合だろうが、そうとは思えない。刊行後間もない書き入れに思える。欄外に鉛筆で書かれた「土屋文明へ168」は『赤光』該当頁かと思ったが違う。赤インクで「(附記)長塚氏はこの評語を書き入れる時、『赤光』所載の順序によらずに、作歌の年代順に古い方から読んでいかれたやうに思はれる」とも書いている。目的があっての書き入れと考えられる。

 この書き入れ、確証はないけれども、私は千樫の弟子の一人大熊長次郎ではないかと考えている。長次郎は『随縁抄』を釈迢空監督の下で編集、翌年昭和5年12月には「短歌月刊」に「古泉千樫研究資料」を書き、同6年10月には『晩縁記 人と歌叢書古泉千樫』(白帝書房)を刊行、そして昭和7年10月から取り掛かった千樫歌集『青牛集』(改造社)を大正8年2月に刊行している。『青牛集』の長次郎による「巻末小記」には(昭和八年一月十日、病床にて大熊長次郎識)とあるが、『大熊長次郎全歌集』(改造社・昭和8年)の年譜によれば、1月18日に『青牛集』の校正刷りを橋本徳寿に渡し、20日、「衰弱甚だしく到底再び起つ能わざることを自覚」して、睡眠薬「ヂアール」を多量に飲み、21日に絶命している。僅か33歳であった。

 『大熊長次郎全歌集』巻頭に長次郎の短歌色紙と書簡が収録されている。これも写真を添えておこう。毛筆とペン字で比較は難しいが達筆、几帳面なところは似ているようにも思うが、おそらく私の思い込みに過ぎないだろう。因みに大熊長次郎は美男子である。不運な師の後を弟子も追ってしまった形だ。

 長々と田中青牛と古泉千樫のいわば最後の姿を古本を通して追ってきたが、神保町という古本のメッカで働いているという地の利はあるけれども、テーマを持って捜していると、本の方から呼びかけてきてくれるという思いを今回さらに強くした。本当に古本が次から次に繋がっていくのである。これこそ古本漁りの面白さ不思議さである。しかも、「日本の古本屋」の登場が、その出会いの速度を速めてくれたようである。

 
 


窪川書店古書目録「千樫蔵書本号」昭和4年3月

 
 


大熊長次郎筆跡『大熊長次郎全歌集』(改造社・昭和8年6月)口絵より

 
 


古泉千樫家族写真 『アララギ交遊編年考1古泉千樫私稿』(橋本徳寿著)より

Copyright (c) 2022 東京都古書籍商業協同組合

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『近代出版史探索Ⅵ』

『近代出版史探索Ⅵ』

小田光雄

 論創社の森下紀夫、小田嶋源両氏の全面的なバックアップを受け、3年余の短い期間で、本探索も六巻目となった。お二人の期待に応えるためにも、とりあえず十巻をめざし、今しばらく書き続けていくつもりだ。

 本探索の目的は各巻の「あとがき」で、様々に述べてきたが、一巻で既述しておいた「新たな近代出版史の森の造形」はなされつつあるし、姿を見せ始めているといっていいだろう。ただどれだけの読者がいるのかは定かでないし、書評もまったく出ないに等しいので、少しばかり残念ではある。しかしここまで刊行できたわけだから、版元だけでなく、書店と図書館の支援、少数ではあっても読者の存在を信じたい。

 このようなことを書いたのは、本探索の主要な時代背景である大正から昭和戦前にかけて、確固たる読者、読書社会が形成され、出版もまたそれをバックヤードとして営まれてきたと判断せざるをえないからだ。そうした読者と読書をめぐる共同体を支えとして出版業界も成長し、それは所謂「想像の共同体」であったにしても、戦後まで持続され、1990年代までの出版社・取次・書店という近代出版流通システムを維持するコアだったと確信する。もちろんそこには古書業界も含まれている。

 そうした思いは戦後ただちにみすず書房を創業した小尾俊人の次のような言葉に最近出会ったことにもよっている。「著者があり、訳者がある。出版者があり、読者がある。書店があり、図書館がある。それらをむすび支える無数の網、ネットワークがある。その質と拡がりが、文明の内容をなしている。その環の一つで、私はあったのだ」(『本は生まれる。そして、それから』幻戯書房、2003年)

 このようにして小尾とみすず書房も始まったわけで、それは戦前の大正、昭和の多くの出版者も同じだったにちがいないし、そこに著者、訳者、読者がいて、書店や図書館もあり、さらに付け加えれば、古本屋のみならず、赤本、特価本、造り本、外交販売本などの多彩な版元も存在していた。

 本探索はこれらをトータルな出版業界として捉え、横断的に追求し、近代出版史だけでなく、文学史や思想史を含んで、群像ドラマとして描き出そうと試みている。そこでは大出版社と中小出版社の区別はなく、それは出版者、著者、訳者も同様で、作品もしかりである。そして出版社、著者、訳者、作品は繰返し言及されるという再現法を採用している。

 そのようにして見出される近代出版史の世界は異化され、従来と異なる様相を呈してくる。例えば、昭和初期は円本時代と呼ばれ、予約出版の全集のバブル出版に焦点が当てられている。しかし新たな照明を当てれば、文学的にいって、近代文学、外国文学、大衆文学の三派鼎立だけでなく、一方では詩や演劇の時代、もう一方では近代思想やプロレタリア芸術の時代であったことも浮かび上がってくる。それらに「エロ・グロ・ナンセンス」の出版物の氾濫も忘れるべきではない。

 いうなれば、出版をコアとして文学、文化、芸術が渾然一体となって沸騰していたのだ。それと併走するように出版者、著者、訳者、読者がコラボレーションし、文学、思想、演劇から「エロ・グロ・ナンセンス」の出版に至るまで、すべてが百花斉放していた時代だといえよう。それが昭和の始まりにおいて沸騰点に達したことによって、昭和が出版の時代であり続けたように思われてならない。小尾にしても、私のような戦後生まれの世代にしても、そうした昭和戦前、戦後の出版状況の中から出立してきたことになろう。

 このようなことを記してきたのは、数日前に、『日本読書新聞』と『図書新聞』の前編集長井出彰の訃報が届いたからでもある。享年78歳を考えれば、彼もまた戦後出版史の証言者の一人で、『書評紙と共に歩んだ五〇年』(「出版人に聞く」シリース9、論創社)が残されたことはよかったと思う。

 自著の紹介が中途半端になってしまったかもしれないが、井出のインタビューは私が担っていることもあり、諒とされたい。
 
 


近代出版史探索Ⅵ  小田光雄 著
論創社刊  6000円+税 好評発売中!
https://ronso.co.jp/

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2022年5月10日号 第346号

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 古書市&古本まつり 第112号
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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

古本屋四十年(Ⅴ・最終回)
                古書りぶる・りべろ 川口秀彦

 無店舗になって2年過ぎた。私としては来店客に棚を見て選書して
もらう実店舗の本屋でなくなったのはやはり寂しい。東京古書会館で
の即売展のぐろりや会には20年ほど参加し続けているが、年6回開催
の会がコロナ以降半分ほどしか開催できていないし、即売展は店と
は違う品揃えで臨まなくては売れないので、店をやっているのとは
違っている。それも面白いのだが、少しだけは本に興味のありそう
な人に反応してもらえる店の客と即売会ではその面白さの質が違っ
ているようだ。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9321

━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━━

古本が繋がる時2
                  樽見博(日本古書通信社)

 新興俳句誌『句と評論』昭和8年の記事から、僅か三十歳あまり
で亡くなった俳人・田中青牛を知り、その足跡を追うことになった。
青牛は昭和7年、前年夏から転地療養していた湘南片瀬より郷里であ
る茨城県笠間に帰郷、そこで従来の俳句会に新風を吹き込んだが、翌
8年4月、同じ俳人である妻みぐさと、幼子二人を残し早世してしまっ
た。『句と評論』昭和8年9月の追悼号に掲載された妻みぐさの「臨終
記」が帰郷から死までの青牛の様子を詳細に記している。「新涼や追は
るゝ如きわが命」という青牛の句を引用しているが、恢復の困難なこと
を自覚し我儘になっていく青牛と見守る家族や句会の人々の様子を描い
て哀切極まる内容である。

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https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9301

━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見2】━━━━━━━━━

県立長野図書館(後編) 奇人が図書館に託したものは
                         南陀楼綾繁

 2015年に県立長野図書館の館長になった平賀研也さんは、「県立
図書館は何のためにあるのか」と考えた。そして翌年、「信州発・
これからの図書館フォーラム」をスタートさせ、シンポジウムや講座
を行なった。
 そのなかには都道府県立図書館の関係者を集めたシンポジウムや、
県内の図書館、博物館、文書館などと連携して地域資源の共有化を図
るための場などがあった。そこには当然、県立長野のスタッフも出席
する。そこには、「外」からの刺激によって、「中」を変えていこう
という平賀さんの目論見があったはずだ。
 一方、資料係の槌賀さんも「所蔵されている資料を再編成したい」
という思いがあった。これまで蓄積されてきた資料をどう利用してい
くべきか?
 二人の問題意識が重なったところで実現したのが、前編で触れた書
庫ツアーであり、書庫で見つかった資料を使った展示だったのだ。

 複本の処分についても、ユニークな試みを行なった。一般書の書棚
や「PTA母親文庫」で同じタイトルを複数点所蔵していることなどから、
1冊を残し、それ以外を除籍(廃棄)する必要が生じた。通常であれば、
除籍本を配布するバザーを行なう。しかし、同館では複本の処分じたい
を展示にしてしまったのだ。

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https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9213

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

県立長野図書館
https://www.knowledge.pref.nagano.lg.jp/index.html

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「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

コショなひと 萬響 by OGAWATOSHO
コショなひとびと 新橋古本まつり
コショなひとびと 南部支部 町歩きの会 前編
コショなひとびと 南部支部 町歩きの会 後編

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

━━━━━【5月10日~6月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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仙台古本まつり(宮城県)

期間:2022/04/22~2022/07/06
場所:イービーンズ9階 杜のイベントホール 宮城県仙台市青葉区中央4-1-1

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第45回 古本浪漫洲 Part1 

期間:2022/05/09~2022/05/11
場所:新宿サブナード2丁目催事場 新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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第45回 古本浪漫洲 Part2 

期間:2022/05/12~2022/05/14
場所:新宿サブナード2丁目催事場 新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2022/05/12~2022/05/15
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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フリーダム展

期間:2022/05/13~2022/05/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第45回 古本浪漫洲 Part3 

期間:2022/05/15~2022/05/17
場所:新宿サブナード2丁目催事場 新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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新橋古本まつり

期間:2022/05/16~2022/05/21
場所:新橋駅前SL広場

https://twitter.com/slbookfair

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♭立川フロム古書市ご案内♭

期間:2022/05/18~2022/05/29
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣) 3階バッシュルーム(北階段際)

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第45回 古本浪漫洲 Part4

期間:2022/05/18~2022/05/20
場所:新宿サブナード2丁目催事場 新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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趣味の古書展

期間:2022/05/20~2022/05/21
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://www.kosho.tokyo/

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第45回 古本浪漫洲 Part5(300円均一) 

期間:2022/05/21~2022/05/23
場所:新宿サブナード2丁目催事場 新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/05/26~2022/05/29
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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和洋会古書展

期間:2022/05/27~2022/05/28
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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五反田遊古会

期間:2022/05/27~2022/05/28
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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中央線古書展

期間:2022/05/28~2022/05/29
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第102回彩の国所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2022/06/01~2022/06/07
場所:くすのきホール (西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)

https://tokorozawahuruhon.com/

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第140回 倉庫会 古書即売会(愛知県)

期間:2022/06/03~2022/06/05
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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城南古書展

期間:2022/06/03~2022/06/04
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2022/06/04~2022/06/05
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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杉並書友会

期間:2022/06/04~2022/06/05
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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フジサワ古書フェア(神奈川県)

期間:2022/06/09~2022/06/22
場所:有隣堂藤沢店4階ミニ催事場

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2022/06/10~2022/06/28
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場  柏市南柏中央6-7

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書窓展(マド展)

期間:2022/06/10~2022/06/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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好書会

期間:2022/06/11~2022/06/12
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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日本の古本屋メールマガジンその346 2022.5.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:志賀浩二
 編集長:藤原栄志郎

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2022年4月25日号 第345号

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☆INDEX☆
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1.東京都書店商業組合YouTubeチャンネル
  「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」開設

               柴崎王陽(東京都書店商業組合)

2.年報『近代出版研究』を創刊しました。在野研究者による書物論集です。

                    小林昌樹(近代出版研究所)

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━━━━━━━━━【自著を語る(番外編)】━━━━━━━━━━━

東京都書店商業組合YouTubeチャンネル
「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」開設

               柴崎王陽(東京都書店商業組合)

東京都書店商業組合は、街なかに本屋がある大切さを伝えるために、
YouTube(ユーチューブ)チャンネルを開設しました。チャンネル名
は「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」
(https://www.youtube.com/c/tokyo-shoten)。

チャンネルでは、東京都内の72店の新刊書店を動画で紹介しています。
中国と深いかかわりを持ち古書も扱う神田神保町の「内山書店」や、
渋谷のスクランブル交差点前にある「大盛堂書店」、表参道の「山陽
堂書店」など老舗から、「紀伊国屋書店 新宿本店」などの大型チェーン
店まで幅広い組合員店舗を取り上げています。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9198

YouTubeチャンネル「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」
https://www.youtube.com/c/tokyo-shoten

内容
①著名人出演のインタビュー動画(13本)
②ドラマ『本を贈る』篠原哲雄監督(全9話)
③書店紹介(72店舗)

━━━━━━━━━【自著を語る(290)】━━━━━━━━━━━

年報『近代出版研究』を創刊しました。在野研究者による書物論集です。

                    小林昌樹(近代出版研究所)

・東京堂で週間ベスト「1位」になったこと
 4月はじめのことなのですが、東京堂書店(神保町すずらん通り)
で恒例の、週間ベスト総合の1位に、私が出した『近代出版研究 
2022』(皓星社発売)が躍り出て【図1】、出した自分が一番びっく
りしました。本屋大賞を受けた『同士少女よ、敵を撃て』などを抑え
ての1位で、ネット民も「東京堂、こえーよ」と驚いていましたが(お
そらく褒め言葉)、ちょっと考えてみると、ここはむしろ「読書人の
東京堂」というフレーズが予言として成就している気がします。読書
人は万巻の書だけでなく本を読むこと自体にも興味があるようです。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9267

小林昌樹(こばやし・まさき)
 1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒業、同年国立国会図書
館入館。2021年退官し近代出版研究所主宰。近代書誌懇話会代表。専門は
図書館史、近代出版史、読書史。

執筆リスト
https://researchmap.jp/shomotsu/

近代出版研究 創刊号
発行:近代出版研究所
発売:皓星社
定価:2200円(税込)
判型:A5判並製288頁
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407623/

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

映画『最終頁』(約10分) 中村洸太(監督・撮影・編集)
https://www.youtube.com/watch?v=L6WrpBzNu5s

『地下出版のメディア史
エロ・グロ、珍書屋、教養主義』 大尾 侑子 著
慶應義塾大学出版会 定価:4,950円(税込)好評発売中!
https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766428032/

『近代出版史探索Ⅵ』 小田光雄 著
論創社刊 6000円+税
5月中旬発売予定
https://ronso.co.jp/

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

4月~5月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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日本の古本屋メールマガジン その345・4月25日

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 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
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 広報部:志賀浩二
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古本屋四十年(Ⅴ・最終回)

古本屋四十年(Ⅴ・最終回)

古書りぶる・りべろ 川口秀彦

 無店舗になって2年過ぎた。私としては来店客に棚を見て選書してもらう実店舗の本屋でなくなったのはやはり寂しい。東京古書会館での即売展のぐろりや会には20年ほど参加し続けているが、年6回開催の会がコロナ以降半分ほどしか開催できていないし、即売展は店とは違う品揃えで臨まなくては売れないので、店をやっているのとは違っている。それも面白いのだが、少しだけは本に興味のありそうな人に反応してもらえる店の客と即売会ではその面白さの質が違っているようだ。

 店の品揃えについては、新刊店員修行をした文鳥堂四谷店の影響が大きい。同店は、山手線の内側の新刊屋としては、多くのジャンルに渉って精一杯の品揃えをしていた。私のいた70年代半ばで売場は18坪、十数年前の閉店の頃は25坪ほどの店なのだが、人文、哲学系や文学、美術系の棚も評価されていたし、神田ウニタや新宿模索舎に次ぐ左派系のミニコミ、自主出版物を置く店としても知られていた。納品に来る太田竜や三上治とも会っていた。「本の雑誌」「ぴあ」なども取次扱いになる前から持ち込まれていた。また、文鳥堂は四谷も飯田橋の店も、映画の興業会社からの委託を受けて主に洋画の前売券を置き、プレイガイドの役割もしていた。店の前面にはいつも新しい洋画のポスターを貼っていた。

 取次経由のものでも、当時の三大ホモ雑誌、「薔薇族」「さぶ」「アドン」を三誌とも入れていて、三誌とも少部数だが確実に売れていた。ビニ本の先駆けといわれる松尾書房「下着と少女」は最初は取次扱いの雑誌で配本されたが、すぐに取次不扱いとなったので、特価本問屋の神田の魚住書店まで仕入に行っていた。ついでに取次からはほとんど配本がない北欧系美女のヌード写真集も魚住で仕入れていた。特価本はすべて買切仕入だが、これらの評判も良かった。硬軟問わず幅広く品揃えをするというのが店長の方針のようだった。立地のせいも時代のせいもあるが、この方針が受けていて、四谷界隈以外の人も常連客に少なくなかった。その後で他の新刊書店の店長となった私は、自主出版のミニコミはともかく、取次扱いのイロモノは文鳥堂に倣った。どこでもそれなりに顧客をつかんでいた。街の古本屋の生活を支える三大ジャンルが漫画、文庫、エロ本と言うのもすぐに納得できたので、古本屋でも硬軟とりまぜた品揃えにするのに迷いはなかった。

 古本屋のエロ本に関しては特価本で仕入れることが多い。特価本とは、新刊の売れ残り返品を版元から特価本問屋が買い集め、それを現在では無くなっているが特価本問屋の組合がやっている市場などを通して他の特価屋に卸し、そこから普通の古本屋に流れるというルートが確立していた。雑誌は殆どがイロモノ雑誌だが、これはパソコンでエロ動画を見ることが一般的になった現在では極端に減ってしまって、取扱う特価本問屋も、神奈川県では80年頃には4、5軒あったのが数年前にはすべて無くなった。特価本屋は、古本屋以上にエロ本が生命線だったのだろう。

 いわゆるビニ本も特価本のルートで流れるものが大半だったが、東京雑誌とかいう社名の取次のような業者が車で古本屋を巡回して委託で配本したりもしていた。売れ残ることはあまりないのだが、残ったものについては新商品と交換してくれていた。露出度の激しい裏本については、少部数をカバンに入れて買切で売りに来る通称カバン屋と呼ぶ業者がいたが、私は取引したことがない。ただ、タテバ(故紙問屋)やチリ交から出た裏本は、古書市場で知り合いの同業者に買ってもらったりしたことはある。ビニ本はともかく裏本まで扱う古本屋は少数だったが、これも前世紀末には消滅したようだ。90年代末に市販されていた週刊誌の袋とじグラビアなどは、80年代前半に私たちが手入れされた時のビニ本の比ではないほど煽情的だったが、手入れされることもなくなっていた。最近手入れされているのはロリコン系の写真集のようである。さすがにこれは少女に被害が及びそうで、ワイセツなぜ悪い、被害者はいるのかとは私も反論できないから扱いはしなかったが、美術作品、芸術作品として作られたものまでロリコンだとして排除するのはどうかとは思う。

 私が出版物の製作・流通に関わり出してから55年も経ってしまった。学生の時のバイトで、60年代半ばにオープンリールのテープを、借り物の大きいテープデッキを使い、固いスイッチを動かして廻したり止めたりして講演会のテープ起しをしたのが最初である。カセットテープと小型のラジカセになって仕事が楽になったことを覚えているから、大学院浪人をし始めた頃までやっていたのだろう。リコー=三愛グループが主催していた講演会の記録で、薄い新書判の三愛新書シリーズとして頒布されていたはずだが、もう古書としても見なくなった。講演内容が時代の変化に対応できるものではなくて廃棄されているのかも知れない。大学院浪人の時の生活費を稼ぐためにバイトをしていた出版社が、私を有能だと勘ちがいしたのか社員になれと言ってくれて応じたのに、わずか半年で、まずユニオンショップ制の組合から過激だとして除名されて経営から退社勧告を受け、その頃たまたま若手編集者が事故死した薔薇十字社に移ることにした。ただ、私が退社した後、組合総会で私を支持した20人ほどのうち若手6、7人が3ヶ月以内に辞めたのは60名ほどの組合員、管理職を入れても70名ほどの出版社にとってはいくらか誤算だったように聞いている。移った薔薇十字社の倒産の直前に、編集技術者を捜していた船舶振興会傘下の財団法人に転職、将来的には笹川良一系の総会屋雑誌でもと思っていたのに総会屋規制が始まってそれを断念し、本を売る方になろうと思って旧知の文鳥堂四谷店に新刊店員修業をしに勤め出した。版元での出版流通経験もあることから、ほぼ2年で文鳥堂での修業は終え、郊外の新刊書店という環境で新たな経験を積むことにして、そこで私を古本屋に誘った丸山などと働いた。ただ、オダキューブックメイツの店長とはいえ派遣社員であって、派遣元は丸山も私も昭和出版という新刊版元の書店部門の社員だった。肩書だけは書店部長とか書店本部長としてくれて、私は更に編集者経験を買われて堀口大学などのサブ担当なども押しつけられていたが待遇は派遣先のオダキューOXより良くないので、丸山はリブロに移り、子供が生まれて間もない私はなるべく近い所で捜して伊勢原の稲元という文具店兼書店の駅前支店の店長になった。そして丸山から誘いを受けて古本屋になったのだ。薔薇十字社は倒産し、船舶系の財団は解散、文鳥堂は四谷、飯田橋、赤坂、原宿、新橋と知る限りの直営支店は皆なくなり、オダキューOXは書店部門撤退、昭和出版も伊勢原稲元もとっくに無くなっている。私と一番もめたはずの最初の出版社はまだあるのだから、自分を厄病神だとは思ってはいないが、出版業界全体の衰えなのか、私の星まわりが悪いのか、この業界以外に生き方を選べなかった不器用さから来るのか、どうにも明るい展望は見えてこない。

 もっとも、三十数年前に「古本屋は金を稼ぐことを目的とした商売としてやっているわけではない。生き方なんだ」と居直った発言を親しくしている横浜の同業者にした時に、既に明るい展望などは横に置いていたのだと思っている。その頃の私の頭にあったのは、学生の頃の友人で新宿模索舎の創業者五味正彦や理論家だった津村喬が、模索舎を創る最初の発想となった媒体としての出版物だけでなく、媒体としての売場=書店の確保と必要性という話をしていたことだった。69年の終りから70年の初め頃の、大学のサークル部室のような所での話だったと思う。その時は大して気にとめなかったのだが、今でもそのことを思い出すのは、彼らのメディア=媒体論が面白かったからだろう。70年代半ばに私が本を作る側ではなく売る側の仕事を選んだのは、津村や五味の媒体論の影響かも知れない。また、自由を求めるアナキズム的志向と古本屋の親和性もあるためかも知れない。

 実は最近2年間、マイナーなミニコミの『アナキズム』という月刊新聞に「アナキズムと古本屋」という短文エッセイを連載していた。私の関わった『日本アナキズム運動人名事典』は、元版で約三千名、増補改訂版で約六千名の収録者があるが、古本屋経験のある人が40〜50名いる。これは職業、生業の比率としてはかなり高いものだと思われる。自由を求めるアナーキーな志向が古本屋という商売と親和性があるのだと思うしかなかったのだ。私自身は最初からそう思って古本屋になった訳ではないが、この二年の新聞の連載を書く作業を通じて、段々と私の中における古本屋的生き方とアナキズムとの親和性について納得するようになってきた。四十年やってきて、やっと最初の出発点が確認できたようなものである。(おわり)


70年代半ば頃の高校生の時に文鳥堂によく寄っていた石神井書林 内堀弘が、広報理事だった時に企画したイベント「古本夜の学校」の第4回「四谷文鳥堂とは何だったのか—七十年代の本と本屋と出版社」のチラシ(2007年9月)。

月刊新聞『アナキズム』13号(2021年4月)。私の連載「アナキズムと古本屋」は24号(24回)で一旦終了したが、読者からの情報で、既に補遺篇を2回分書いて編集長に提出済。これからも増えそうである。

Copyright (c) 2022 東京都古書籍商業協同組合

古本が繋がる時2

古本が繋がる時2

樽見博(日本古書通信社)

 

 新興俳句誌『句と評論』昭和8年の記事から、僅か三十歳あまりで亡くなった俳人・田中青牛を知り、その足跡を追うことになった。青牛は昭和7年、前年夏から転地療養していた湘南片瀬より郷里である茨城県笠間に帰郷、そこで従来の俳句会に新風を吹き込んだが、翌8年4月、同じ俳人である妻みぐさと、幼子二人を残し早世してしまった。『句と評論』昭和8年9月の追悼号に掲載された妻みぐさの「臨終記」が帰郷から死までの青牛の様子を詳細に記している。「新涼や追はるゝ如きわが命」という青牛の句を引用しているが、恢復の困難なことを自覚し我儘になっていく青牛と見守る家族や句会の人々の様子を描いて哀切極まる内容である。

 『句と評論』の追悼記事だけでは分からなかったことが、捨てる前に確認した細谷源二主宰の俳句誌『氷原帯』1967年7月号の特集「句と評論・広場」掲載の松原地蔵尊の回想「『句と評論』創刊より九年迄の展開」で知ることが出来た。青牛は『句と評論』創刊者の一人藤田初巳と同じ保善商業の国語教師で雑詠欄でも常に上位にあった。さらに地蔵尊は「当時茨城県笠間に病気のため帰郷静養していた田中青牛が「笠間新興句会」という名の旗印の句会をおこし、毎月続けていたことである。句会に新興の名を冠して毎月開催していたことは、全国全く聞かないことであったといえよう。」と書いている。私が『句と評論』昭和8年1月号の6号記事「新興句会小会 常陸笠間田中青牛報」を見て驚愕させられたのも道理があったのである。

 青牛の生涯が大略つかめた時に、改めて「日本の古本屋」の「著者」欄に「田中青牛」と入れて検索してみた。未知の掲載雑誌がヒットするのではないかと思ったのである。ところが雑誌はないが、過去の販売データとして『田中青牛遺句集』(三元社・昭和61)が記されていた。三元社は新興俳句人であった幡谷東吾さん経営の出版社。没後50数年を経ているが笠間の青牛に違いないと思った。『日本古書通信』の購読者で俳句史資料の収集家でもあった幡谷さんは茨城出身、前回書いた『茨城俳句』の編纂者の一人である。入手は難しいだろうが、茨城県下の公共図書館にあるだろうと調べると笠間市立岩間図書館にあることが分かった。次の休日に尋ねることにして、これまでの経過を長野県の若き友人にメールすると、翌日、「日本の古本屋」に一冊在庫があると知らせくれた。友人は発行者「三元社」を検索、出てきた三百数十点の中から見つけてくれたのである。データの著者欄が田中青牛でなく、編者原直子であったのだ。木曜日の深夜に注文すると、何と日曜に届いた。『田中青牛遺句集』は非売品、『句と評論』追悼号記事を中心に、青牛が執筆した評論、随筆、俳句作品が収められ、青牛を俳句に導いた俳人で法政大学の恩師勝峯晋風の「温和な顔にある微笑」(『黄橙』昭和8年6月号)他、みぐさの二篇の思い出、そして成人して俳句と関係している長女伊東みちえ、次女階ゑみの父の思い出、発行者で青牛の妹で俳人でもある原直子の「あとがき」などが収められていた。直子の句集『雪』の出版記念会の折、青牛の友人であった幡谷さんから刊行を勧められたようだ。また略年譜により、保善商業教師時代に、小学館編集部にも関係していたことも分かった。国語教師として学年誌を担当したのだろうか。笠間への帰郷で最初に住んだのは石寺ではなく田中町、そこの環境が悪いと桂町に移ったことも新たに分かった。

 ただ、この『田中青牛遺句集』を最初に入手していたら、私が青牛の足跡を調べることはなかったろうと思う。彼の俳人としての作品や随筆類はこの本で読めるが、昭和7年、田舎町笠間で新興俳句の会を起こしたという事実が、この遺稿集からは「驚愕」として迫ってはこないからだ。やはり時代を映すものとしての「雑誌」の存在は大きいのである。青牛の句から十句選んでおこう。

  蜩や森の空なる星一つ
  子の赤い足袋大きくてすましけり
  春愁や髯そりのこす顎の下
  溶けそうにある乳色の夏月夜
  海棠の葉になる雨に明けにけり
  はしり動くブリキ玩具や秋の風
  飛ぶ虻の陽に散らしたる花粉かな
  提灯の顔にあつめたり虫とる子
  スベリ台コスモスの畑へすべりけり
  またもとの静けさにをり臑をたたきけり

 妻みぐさは、青牛没後に幼子二人を連れて東京に帰り、俳句を続ける。『句と評論』誌上では、むしろ青牛より頻繁に登場し、昭和9年3月号では就職の苦労を「求職巡礼」と題して悲惨さなど出さずサラッと描き、「冬木立」の課題句選者も務めている。さらに同年7月号は、みぐさ特集号の様相を呈し、藤田初巳と松原地蔵尊のみぐさ論、小西兼尾と小澤青柚子連名の句評が掲載されている。地蔵尊の文により、みぐさが「むさしの女」の筆名で毎月の俳句批評欄を執筆していたことも分かった。藤田が「不幸の鉄槌が一つの魂を掘り下げ、苦難の鞭がかれの精神をうちきたへた」と書くように、青牛没後のみぐさの覚悟の強さと心境の深まりが俳句の上達をも招いたようである。最後にみぐさの句を二句紹介する。

  寒がりの墓も木碑も日向ぼこ
  長閑さの独り居飯を食はんずる

 春の彼岸にまた、青牛の故郷・笠間市石寺に行ってみた。やはり墓所は見つけることが出来なかった。当時と余り風景が変わってはいないだろう山間の村である。車一台がようやく通れる道がくねくねと続く。このような山村に生まれ大望を持って上京、俳句への強い思いを抱き、才能の芽を出しながら早世、今は忘れられてしまった田中青牛、もう少し命長らえていたら、どんな活躍をされたのだろうと改めて思ったことだった。

 「古本が繋がる時」の二例目は、偶然だが『歌集青牛集』(改造社・昭和8)のある歌人古泉千樫に関する資料探求の話である。これも田中青牛同様に不思議な体験だった。少し前の東京古書会館の即売会で、千樫の『随縁抄』(改造社・昭和5)が目に入った。何故か惹かれるものがあり、手に取りやや擦れのある箱から本を取り出し開いてみると、収録の「長塚節氏の赤光評」に非常に綿密な書き込みがあった。タイトル前には、○朱筆は「アララギ」により校合、○青インクは『赤光』初版とあり、またこの千樫の連載が茂吉の長崎時代であることを書いている。筆記者は達筆、几帳面な方であり、何か目的があっての書き込みであることは明らかである。千樫に特別な興味を持っていたわけではないが、求めることにした。長塚節は私の母校下妻一高と縁の深い歌人であり、日本古書通信社からは自筆原稿の影印版『佐渡が島』を刊行している。遺歌集『鍼の如く』(春陽堂・昭和4)は私の愛読書であるし、『土』も日本の誇る名作だと思っている。だが、節が批評を書き込んだ『赤光』が存在したことを全く知らなかった。

 斎藤茂吉は大正2年10月『赤光』刊行後、長塚節による批評を強く望んでいたが、節は躊躇し、また健康もそれを許さなかった。ただ、一首ごとに感想を書き込んだ『赤光』が、旅先の福岡の死の枕辺に遺されており、遺骨と共に東京の令弟小布施氏宅に帰ってきた。大正4年2月のことだ。当時「アララギ」の編集を担当していた千樫は、小布施氏から示された遺品の中に、『赤光』があるのを発見、願って持ち帰った。茂吉も遺骨が戻った当夜弔問に来ているが、病院の関係で一時間ほどいて帰宅した。青山病院の焼失後、松原に移った病院の復興に茂吉は忙殺されていた。普通に考えれば、節の書き入れのある『赤光』はまず茂吉に示されるべきであったろう。

 千樫が、この節書き入れ『赤光』の内容を詳しく公表したのは、5年後の『アララギ』大正9年1月号から4月号であった。千樫は「すぐに世に紹介するつもりであつたが、例の疎懶のために、今まで遂にのびのびになつた」「今になつて、これを公にするのは、『赤光』の著者にすまないやうにも思はれる」と、「長塚節氏の赤光評」に書いている。
『赤光』への節の書き込みは、その後『山鳥の渡』(春陽堂・大正11年)『長塚節全集』第四巻(春陽堂・大正15年)に収録されている。ただし、原本からではなく、『アララギ』に連載された千樫の「長塚節氏の赤光評」から抜き書きされたものである。本来であれば、原本を底本とすべきものである。この近代短歌史上も無視できない『赤光』はどこへ行ったのか、茂吉自身は直接見ることが出来たのか、そして『随縁抄』の「長塚節氏の赤光評」に綿密な書き込みをしたのは誰か、古書趣味ならぬ考証趣味がふつふつと湧きおこった。(つづく)


古泉千樫『随縁抄』の書き込み

 
 


『句と評論』昭和9年7月号「みぐさ女小照」

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年報『近代出版研究』を創刊しました。在野研究者による書物論集です。

年報『近代出版研究』を創刊しました。在野研究者による書物論集です。

小林昌樹(近代出版研究所)

 

・東京堂で週間ベスト「1位」になったこと
 4月はじめのことなのですが、東京堂書店(神保町すずらん通り)で恒例の、週間ベスト総合の1位に、私が出した『近代出版研究 2022』(皓星社発売)が躍り出て【図1】、出した自分が一番びっくりしました。本屋大賞を受けた『同士少女よ、敵を撃て』などを抑えての1位で、ネット民も「東京堂、こえーよ」と驚いていましたが(おそらく褒め言葉)、ちょっと考えてみると、ここはむしろ「読書人の東京堂」というフレーズが予言として成就している気がします。読書人は万巻の書だけでなく本を読むこと自体にも興味があるようです。

・掲載記事――明治以降、本のこといろいろ
 この『近代出版研究』、外見は学術雑誌っぽいですが、かなり軽く書かれたエッセーもあり、楽しく読めるものが多いです(ガチの学術的論文もあります)。
 題材は、近代の本や読書についてのものをいろいろ取り揃えました。立ち読みの歴史、独学書の歴史、古本の思い出、ハガキ職人系民俗学者の話などですが、なかでも、江戸の大書肆がなぜ明治初期に没落したのかについて、数少ない専門家を招いて話してもらった座談会「明治期に活躍した出版社の近代性とは何か」は、くだけた会話で進んだので、読みやすいかと思います。他にも「図書館」ということばの成立史では、「図書」ということばの意味変化――いまは「書籍」や「本」の同義語となっていますが、最初は違うようなのです――が背景として論じられています。

・書いた人たち――古本つながり
 この4月に創刊した『近代出版研究』創刊号は、私の主宰する同研究所の所報です。研究所といっても、出版史関係の図書・雑誌コレクションと、ちょっとした作業場という構成なのですが、掲載論文の筆者さん達を見ればなんとなくわかるように、私の長年の趣味、古本あつめで知り合いになった方々が大半を占めています。大学教員もおられますが、こちらの方々も古本活動を通じて仲良くなった方がほとんど。古本人脈というか古本フレンズというか。

・使命――近代出版史というか、近代書誌学というか
 実は近代日本の出版を専門として大学にポストを得た人というのは、これまでに2,3人しかいません。いまの我々、本好きが買っている古本のほとんどは、近代古本(つまり江戸期以前の版本や写本でない)なのは皆さん重々承知でしょうが、残念なことに近代出版物を真正面から研究する学問分野が日本にまだ確立していないと、私は見ています。
 ホントなら日本書誌学が近代本を扱ってよさそうなものですが、書誌学が日本に出来た戦前、早々と近代本はオミットされてしまい、書痴・斎藤昌三が改めて近代書誌学が必要だと言ったのが1959(昭和34)年、さらにまた、かの谷沢永一が日本近代書誌学三部作に取り掛かりながら逝いたのは2011(平成23)年のことでした。

・趣味人の活躍し時
 けれど、なにか新しい学問ジャンルが生まれる際には、当然ながら職業的学者はほぼいないわけです。最近できつつあるマンガ学では、実作者やマニア、趣味人がその初期の活動を支えていました。ひるがえって近代本の研究といえば、それこそ古本マニアに大いに期待される、ということになります。
 私は本に関する実務――といっても司書ですが――は結構やったので、今度は本について研究がしたくなり、昨年、私設研究所を作ったのでしたが、一人で研究するだけではちょっとさみしい。そこで知り合いの人々に呼びかけたところ、いろいろな論考が集まったというわけです。1990年前後に日本文学界隈ではやった研究同人誌みたいな感じに仕上がりました。

・この年報をどこで買えるか
 いわゆる査読誌ではもちろんないわけですが、それでもせっかく集まった研究成果を広めたいということで、かねてから「本の本」に意のある皓星社さんに発売をお願いする形で全国にも流通するようにしてもらいました。ISBNもつけてもらっています。刊行頻度が年報なので、委託配本でなく返品可能の注文制となっています。お近くの本屋さんにご注文ください。全国どこの本屋さんでもお取り寄せいただけます。Amazonやhontoなどのネット書店でも買うこともできます。

・「明治文化研究会のようだ」
 知り合いとこの年報の合評会をしたら「年報だからアナールだね」などと言われましたが、いちばん嬉しかったのは「まるで明治文化研究会のような雰囲気がある」というものでした。彼等も大正末の大震災後、古本集めから研究を始めたのです。
 書物論の大家、紀田順一郎さんに献呈したら、お褒めの返信をもらい、これは個人的に嬉しかったことでした。私が若い頃から私淑していた方なので。日本では紀田さんが古本屋探偵小説を開発したのを忘れてはなりませんぞ。
 ともあれ、東京堂で瞬間1位になったのは、雑誌ならではの雑多感があるからかと思います。埋め草のコラム記事などもありますので、どうぞ手に取ってみてください。それこそ「立ち読み」の歴史を立ち読みしてみるのもよろしいかと。

 
 
 
小林昌樹(こばやし・まさき)
 1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒業、同年国立国会図書館入館。2021年退官し近代出版研究所主宰。近代書誌懇話会代表。専門は図書館史、近代出版史、読書史。
執筆リスト

 
 
 

近代出版研究 創刊号
発行:近代出版研究所
発売:皓星社
定価:2200円(税込)
判型:A5判並製288頁
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県立長野図書館(後編) 奇人が図書館に託したものは  【書庫拝見2】

県立長野図書館(後編) 奇人が図書館に託したものは  【書庫拝見2】

南陀楼綾繁

 2015年に県立長野図書館の館長になった平賀研也さんは、「県立図書館は何のためにあるのか」と考えた。そして翌年、「信州発・これからの図書館フォーラム」をスタートさせ、シンポジウムや講座を行なった。
 そのなかには都道府県立図書館の関係者を集めたシンポジウムや、県内の図書館、博物館、文書館などと連携して地域資源の共有化を図るための場などがあった。そこには当然、県立長野のスタッフも出席する。そこには、「外」からの刺激によって、「中」を変えていこうという平賀さんの目論見があったはずだ。
 一方、資料係の槌賀さんも「所蔵されている資料を再編成したい」という思いがあった。これまで蓄積されてきた資料をどう利用していくべきか?
 二人の問題意識が重なったところで実現したのが、前編で触れた書庫ツアーであり、書庫で見つかった資料を使った展示だったのだ。

 複本の処分についても、ユニークな試みを行なった。一般書の書棚や「PTA母親文庫」で同じタイトルを複数点所蔵していることなどから、1冊を残し、それ以外を除籍(廃棄)する必要が生じた。通常であれば、除籍本を配布するバザーを行なう。しかし、同館では複本の処分じたいを展示にしてしまったのだ。
 2016年11月に開催された「Re’80―バブルでトレンディだった新人類たちへ」は、1980 年代に出版された約 500 冊の除籍本を出版年別に並べ、その年の出来事とともに展示するもの。しかも気に入った本はどれも持ち帰ることができるのだ。
 同時に、同館が行なってきた「団体貸出」サービスから見る「信州の読書活動の歴史」を展示することで、書庫の役割を伝えることにもなった。

 さらに翌年6月には「Re’90s―失ワレタ十年(ロスジェネ)ノムコウ」を開催。今度は1990年代に出版された本が対象だ。
 後になってこの企画を聞いたときに、そんなやり方があったのか! と新鮮な衝撃を受けた。図書館というシステムの中でも、知恵と工夫があれば、まだ面白いことができるのだ。

書庫の中と外をつなげる

 まだ書庫見学の途中だった。
 次に2階へ。ここから4階までは分類ごとに資料が並べられている。じっくり眺めると発見がありそうだが、先を急ぐ。
 ここで一度、書庫から出て、「表」の本館3階に案内される。2019年4月、この階に生まれた「信州・学び創造ラボ」を軸に、県立長野図書館は大きく変わったのだ。
 人と人がつながり、学び合う場として設けられたこのスペースには、「信州情報探索ゾーン」「Co-Learningゾーン」「モノコトベース」がある。
 信州情報探索ゾーンは、本棚に囲まれた六角形の空間だ。そこに並んでいるのは、一見して古い本ばかりだ。
「前身である信濃図書館時代の蔵書や、戦時中に検閲された資料などを、書庫から取り出して並べています。これも書庫の資料の切り出しのひとつです」と平賀さんは云う。棚の本はどれも手に取ってみることができる。千里眼の研究に取り組んだ福来友吉の『透視と念写』(宝文館)なんて本もあった。
 紙の本だけでなく、タッチパネルに触れると、郷土や本に関する情報を呼び出すこともできる。

 正面の棚には、帽子を被った男の写真があり、その隣に和本を収めた箱が置かれている。そこに書かれた文字から、「保科百助」という名前が読み取れる。
 保科百助(五無斎)は信濃図書館の設立に尽力した人物であり、「新田次郎の『聖職の碑』に出てきますよ」と平賀さんに教えられた。新田次郎は長野県の出身だ。そして今回の取材が終わってから、平賀さんの案内で富士見の古本屋〈mountain bookcase〉を訪れると、均一本のコーナーに『聖職の碑』の単行本があったのだ。
 保科は長野師範を卒業後、教員となる。彼が唱えた「にぎりきん式教授法」は凄い名前だが、教員がどっしりと構えて児童の自発性を引き出すというものだ。のちに校長となるが、あっさり職を辞して在野の人になった。生涯独身で、奇人と呼ばれた。
『聖職の碑』にはこうある。
「それからの彼は奇行の教育者と云われるような生活を死ぬまで続けた。信濃の山という山、谷という谷を隈無く歩き廻って採取した鉱物を学校用の標本として整理して売る仕事がしばらく続いたが、県内の学校に一応標本が行きわたればそれで売れ行きは止った。(略)もともとこれは、彼の趣味であって、生活そのものではなかった」

 また、『県立長野図書館三十年史』(1959)によると、保科は早くから図書館の必要性を唱え、信濃教育会が図書館を設立することが決まると、大八車に自分の蔵書1800冊を乗せて運び、すべて寄贈したという。そして1907年(明治40)に信濃図書館が開館した。
 創立の功労者にもかかわらず、保科は図書館の準備委員ではなく、扱いの低い「創立係員」にされた。井出孫六(この人も長野出身だ)は保科の評伝『保科五無斎 石の狩人』(リブロポート)で、この理由を保科が要職になく、日ごろの発言から「あの男は何をしでかすかわからない」と不安視されたからではないかと推測している。

 ちなみに、その後の県立長野図書館の創設の際には、長野市の書籍商・西澤喜太郎が1万3000冊を寄託している。西澤は前回見た「図書購入簿」にあった西沢書店の主だ。これまでは他の資料と混じって分類ごとに配架されていたが、信州情報探索ゾーンでは「西澤喜太郎氏寄贈図書」としてまとめて並べられている。これも書庫からの「切り出し」の成果だろう。

 
信州情報探索ゾーンと保科百助の肖像。報探索ゾーンの書棚が六角形に配置されているのがお判りいただけるだろうか。肖像の右は保科宛に寄贈された漢籍を収めた箱。

郷土資料と保科百助

 ふたたび書庫へ。今度は5階である。
 ここには郷土資料がまとめられている。この書庫の肝とも云える場所だ。
 このフロアは左側、3分の1ほどが網で仕切られており、鍵を開けて入るようになっている。
「ここには以前、古文書が収められていたのですが、1994年に県立歴史館に移管しました」と槌賀さんが説明する。空いた場所には、小林一茶ら信濃の俳人の資料を集めた「関口文庫」「威徳院文庫」などの貴重資料コレクションがある。
 一茶に関しては、代表作『おらが春』(1852年〔嘉永5〕)も所蔵している。他にも俳句や和歌についての資料は多く、長野で詩歌の文化が盛んであることがうかがえる。
 また、県歌になっている「信濃の国」の作曲者である北村季晴の資料の中には、東京音楽学校の学友・滝廉太郎が記したノートもある。

 長野県では戦前に読書運動が盛んで、青年団がその担い手となっていた。それは知識を高めるとともに、国家精神の鼓吹にもつながるものだった。1941年(昭和16)には県立長野図書館が『全村皆読運動について』というパンフレットを発行しているが、その前文には「大東亜秩序の建設」のために文化の水準を高める必要があり、そのために読書推進が必要だと書かれている(国会図書館デジタルコレクションで公開されている)。
 長野と云えば、1998年開催の長野オリンピックの資料もあった。アルバムや関連本はもとより、公式グッズや防寒着までが保管されている。これらを並べるだけでも、展示企画として成立しそうだ。

「こんなものもありますよ」と槌賀さんが取り出したのは、「売上帳 保科百助」と書かれた帙に収まった薄い冊子。保科が鉱物の標本を売った金額が記載されているようだ。
 さらに『MANUAL OF MINERALOGY AND PETROGRAPHY』(1887) という洋書の見返しには、保科が同書を信濃教育会に寄贈した経緯が自身の文字で書き込まれている。同様の文が、現在は信濃教育博物館が所蔵している『TEXT BOOK OF GEOLOGY』(1893)にも書き込まれている。ここでは後者を紹介する。
 それによれば、同書は「五無斎保科百助が明治三十六年中長野県地学標本を帝国大学に献納したる折同大学教授理学博士神保小虎先生よりお移りとして拝受」したものだった。その後、保科は図書館設立のために大半の蔵書を寄贈するが、本書は貴重なものであり、ある理学教師から五円で譲るよう請われていた。

 保科は貧乏で「穀居酒屋よりは毎日々々の催足【促?】なり。市税は滞納の廉により火鉢弐個目醒し(めざまし)時計一個は差押の札の帖【貼?】付しあるなり」という状態だった。 しかし、この本だけを売り飛ばすことはできないと寄贈を決めた。
「貧乏をして見ぬものには此味こそ分らざれ余り心地の善きものには非ず。後に此書を読まんもの其心して一掬の涙を濯がれんには五無斎地下に瞑すべきなり」(引用は『五無斎保科百助評伝』佐久教育会)
 1907年(明治40)にこう記した保科は、その4年後に43歳で亡くなる。その晩年は決して幸せなものではなかったようだ。
 いまこの図書館が利用できるのは、保科のおかげでもあるのだ。そう考えると、この書庫のどこかに保科の魂が漂っているような気がする。


『MANUAL OF MINERALOGY AND PETROGRAPHY』(1887)の見返し

「開かずの間」を書庫に

 平賀さんと槌賀さんはときどき、「あれはどこにあるのかな?」「あ、ここにあったか」などと話している。それもそのはずで、書庫がいまのかたちになったのはつい最近のことなのだ。
 先に触れたように、図書館の3階を「信州・学び創造ラボ」にするのに合わせて、書庫の大整理が行なわれた。そのため、2018年11月から4か月間休館している。
「書庫の各階の構成を変えて、本を移動させました。書棚も分解して運びました。肉体労働の日々でした」と槌賀さんは振り返る。
 
 最大の変化は、これまで「開かずの間」だった6階を書庫にしたことだ。
「それまで床も張られておらず、書庫5階の天井を支える骨組みとパネルがむき出しでした。しかし収容能力が限界に達したため、6階を書庫として使用できるように整備しました」と、槌賀さんは云う。
 2021年4月、書庫6階の工事が終了。そして9月に書庫の各階から抜き出した10万冊を、人力で6階に運び上げたのだ。
「それと同時に各階でも移動があったので、結局40万冊動かした計算になります」と槌賀さん。
 同館の蔵書は全体で約72万冊。そのうち約60万冊が書庫に入っているので、半分以上を動かしたわけだ。想像を絶する大変さだ。いったい何人寝込んだことだろうと、腰痛持ちの私は同情する。しかし、槌賀さんによると「職員はめったにできない作業ということで燃えていましたし、私も筋トレ的に楽しんでいました」とのこと。頭が下がります。

 時間と労力をつぎ込んだおかげで、これまでギチギチだった棚には余裕ができた。今後は購入簿などの記録と、棚の現物を照らし合わせていくつもりだという。
 5年間にわたって同館の改革を進めてきた平賀さんは、任期を終えたいまも書庫にある資料が気になるという。
「戦時中の図書館の記録や戦後のPTA母親文庫の資料などを検証し、展示などで『表』に出してほしいですね」と期待を寄せる。
 図書館の書庫と云えば、いちど形ができたらずっと変わらないという思い込みがあったが、同館では書庫は生きていて、いまも成長中だ。
「今後も書庫の中は変わっていくと思います。きっと完成形はないんでしょうね」と、槌賀さんは笑った。

 
 
 
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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東京都書店商業組合YouTubeチャンネル「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」開設

東京都書店商業組合YouTubeチャンネル「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」開設

柴崎王陽(東京都書店商業組合)

東京都書店商業組合は、街なかに本屋がある大切さを伝えるために、YouTube(ユーチューブ)チャンネルを開設しました。チャンネル名は「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」(https://www.youtube.com/c/tokyo-shoten)。

チャンネルでは、東京都内の72店の新刊書店を動画で紹介しています。
中国と深いかかわりを持ち古書も扱う神田神保町の「内山書店」や、渋谷のスクランブル交差点前にある「大盛堂書店」、表参道の「山陽堂書店」など老舗から、「紀伊国屋書店 新宿本店」などの大型チェーン店まで幅広い組合員店舗を取り上げています。

その他、本屋好きの著名人の方々に、読書の楽しさや紙の本の良さ、本屋の魅力を語っていただいています。
お笑い芸人 爆笑問題 太田光さん
ラッパー・ラジオパーソナリティ ライムスター 宇多丸さん
漫画家・イラストレーター・エッセイスト しまおまほさん
モデル トラウデン直美さん
モデル 林芽亜里さん
歴史学者 磯田道史さん
作家 今村翔吾さん
教育評論家 尾木直樹さん
ジャーナリスト 池上彰さん
映画監督 篠原哲雄さん
ラジオドラマ脚本家 北阪昌人さん

更に、映画監督の篠原哲雄氏が手掛ける、今注目の俳優永池奈津子さん主演の独自制作のウェブドラマ「本を贈る」(全9話)も配信しています。わかないづみさんによる主題歌は、本ドラマのための書下ろしです。
あらすじ
街の本屋の一人娘・黒田凪紗(永池南津子)は本が好きで出版社の編集者になり、不況と言われながらも、作家と共に本を生み出す喜びを噛み締めていた。突然の父の死で生活は一変し、母・歌乃(根岸季衣)は本屋を閉めようと言う。お店の準備、仕入れ、配達、赤字経営、二年後の区画整理、改めて現実を知った。やがて本のコンシェルジュ・一ノ関哲弘(矢柴俊博)に出会い、刺激と葛藤の中、書店の人達と本屋に足を運んで貰うイベントを計画する。一方、ブックカフェで出会った天井瑛次郎(福地祐介)と岩佐美玖(米野真織)は、偶然同じ題名の本を読んでいた。運命やいかに?

是非、ご視聴とチャンネル登録をお願いします。

~~~~~
本日は、YouTubeチャンネルから、神田神保町の「内山書店」を紹介します。他にも、各書店の歴史やこだわりを発信しています。
—–
本の街・神田神保町にある内山書店。そのルーツは中国・上海にあります。
内山書店が中国・上海で誕生したのは1917年。日本から上海へ、目薬の販売員として渡った内山完造さんが、自宅の玄関先で細々と書店をはじめました。当時、日本の租界地だった上海には多くの日本人がいて、彼ら相手に日本の本を仕入れて売るスタイルでした。書店は評判となり、日本人だけでなく中国の人々、なかでも、魯迅や郭沫若など中国の文化人や学者らが足繁く通うようになったといいます。
上海の書店業が成功し、完造さんは自分の弟の内山嘉吉さんに東京で書店をすることを勧めます。それが、1935年に創業した東京の内山書店です。内山書店3代目社長の内山深さんは、「当初は世田谷区で開業しましたが、1年足らずで神保町近くに越してきました。その頃は中国に関する本を中心に販売しており、あまりお客様が来ませんでした」と振り返ります。深さんによれば、「確か一番最初のお客が(取り調べのために訪れた)公安だった」とのこと。その後、日中戦争(1937-1945)が激しくなり、上海の内山書店は撤退せざるを得なくなります。
深さんは、「いま日本では、中国に対する感情があまり良くない部分もあります。しかし中国では、お互いにもっと交流しようという流れができてきています。日本でも、中国の柔らかめの本を若者たちが購入しています。自分が欲しいと思ったものが、たまたま中国のものだったりもします。民間レベルで反日反中関係なく交流していけたらと思います」と語ります。多様なルーツを持つ人同士の理解を深めたい、内山書店創業からの想いはこれからも続いていきます。

~~~~~
本事業は、東京都中小企業団体中央会より委託を受け、令和3年度 中小企業新戦略支援事業(団体向け)に係る特別支援『新しい日常対応型業界活性化プロジェクト』として、東京都書店商業組合が運営しました。

~~~~~
YouTubeチャンネル「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」
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〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-2 書店会館1階
TEL:03-3291-0853
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2022年4月11日号 第344号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第111号
      。.☆.:* 通巻344・4月11日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

古本屋四十年(Ⅳ)

                古書りぶる・りべろ 川口秀彦

 今までに二度『街の古本屋入門』の名を出したのは、私が著者を
意識し続けてきたからである。著者の志田三郎は本名石田友三、私
が神奈川古書組合に加入した直後の84年に神奈川組合の理事長になっ
た人である。その年から『神奈川古書組合三十五年史』が出た92年
秋までの8年半で、神奈川組合の新規加入者は約20人いる。組合や市
場の仕事の関係で私はその全員から古本屋になった動機を聞いている
が、10名がはっきりと石田の本の影響が最大の要因だと答えていた。
そうでない人も石田の本を読んでいる人が多かった。石田の次の理事
会の理事となった私が、石田の存在と影響力を意識したのはこの頃で
ある。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9111

━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━━

古本が繋がる時1

                  樽見博(日本古書通信社)

古本の世界は不思議だなと改めて痛感させられたことが、このとこ
ろ二つ続いたので紹介したい。ある雑誌の記事や、本への書き込み
が、知らないでいた事実を教えてくれた。調べ始めたら次の部屋へ
の扉を開くように、ある古本が別の古本へ繋がっていったのである。
語呂合わせではなく、古書趣味とは考証趣味だと私は考えているが、
古書探求の面白さを実感した。インターネットの普及で古書の売買
の在りようは確かに変化したが、この面白さは何も変わっていない。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9071

━━━━━━━━━【シリーズ 書庫拝見1】━━━━━━━━━

県立長野図書館(前編) 書庫の「中」と「外」をつなげる

                         南陀楼綾繁

 大学に入った直後に、高校の同級生と一緒に国立国会図書館に行った。
 日本で一番大きい図書館ってどんなところだろうと興味津々、とにかく
書棚の本を手に取ってみたいと思っていた。しかし、入館してすぐその期
待は打ち砕かれる。手続きをして中に入ってみると、どこにも本棚はなく、
中央に大きなカードケースが置いてあるだけだったからだ。
 手持無沙汰にケースを開けて中のカードをめくってみたものの、それ以
上どうすればいいか判らずに、友人と顔を見合せ、そのまま帰ってしまっ
た。何でもいいから1冊選んで請求してみるという頭がそのときは働かな
かったのだ。それが閉架式の図書館との出会いだ。
 その後、図書館や文学館、博物館などに通うようになって、開架として
表に出ている本はごく一部であり、貴重な本は奥にある閉架書庫に収まっ
ていることが判ってくる。
 取材などで書庫を見せてもらえる機会があると興奮した。案内する館の
人もどこか誇らしげだ。書庫には、その館の歴史を伝える資料も所蔵され
ている。
 開架の書棚はその図書館のいわばよそ行きの顔であり、本質はむしろ書
庫にこそあるのではないか。そう思うようになった。
 この連載では、普段は一般利用者が入ることができない閉架書庫に足を
踏み入れ、そこで見つけた本や資料を紹介する。それとともに、書庫内を
知り尽くす館員に、資料の管理や活用について話を聞く。
 書庫という奥の院を拝見することで、私なりにその図書館や文学館の新
たな表情を描ければと思う。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9149

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

コショなひと 古書ニイロク
コショなひと 古本遊戯 流浪堂
春の神田古本まつり2
コショなひと その時 股旅堂 仕事の岐路
コショなひと 古本うさぎ書林 神田古本まつり密着篇
コショなひと ノースブックセンターOP編

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

━━━━━【4月11日~5月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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光が丘 春の古本市

期間:2022/03/16~2022/04/15
場所:リブロ光が丘店 リヴィン光が丘5階 東京都練馬区光が丘5-1-1

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横浜ハンズの古本市(神奈川県)

期間:2022/03/26~2022/04/27
場所:東急ハンズ横浜店 イベントスペース(横浜モアーズ6階)
   横浜市西区南幸1-3-1横浜モアーズ

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古書ノ市OLD BOOK&CULTURE FAIR」@阪急MEN’S OSAKA(大阪府)

期間:2022/03/30~2022/04/19
場所:阪急メンズ大阪5Fプロモーションスペース51
   大阪府大阪市北区角田町7番10号

https://www.hankyu-dept.co.jp/mens/event/00954890/?catCode=501002&subCode=502007

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西武本川越PePeのペペ古本まつり(埼玉県)

期間:2022/03/31~2022/04/12
場所:西武鉄道新宿線 本川越駅前ペペ広場

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オールデイズクラブ古書即売会(愛知県)

期間:2022/04/08~2022/04/10
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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第3回南大沢古本まつり

期間:2022/04/08~2022/04/14
場所:京王相模原線南大沢駅前~ペデストリアンデッキ~三井アウトレット前特設テント

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書窓展(マド展)

期間:2022/04/08~2022/04/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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平井のはみだし古本市

期間:2022/04/09~2022/04/17
場所:平井の本棚 2階 江戸川区平井5-15-10
   (JR総武線・平井駅北口改札より徒歩30秒)

https://kosho-hanautadou.peatix.com/

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横浜めっけもん古書展(神奈川県)

期間:2022/04/09~2022/04/10
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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大均一祭

期間:2022/04/09~2022/04/11
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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アクロスモール新鎌ヶ谷古本市(千葉県)

期間:2022/04/12~2022/04/20
場所:アクロスモール新鎌ヶ谷 1F 中央エレベーター前・中央エスカレーター前
   千葉県鎌ケ谷市新鎌ヶ谷2-12-1

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春の古本掘り出し市(岡山県)

期間:2022/04/20~2022/04/25
場所:岡山シンフォニービル1F  自由空間ガレリア

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ぐろりや会

期間:2022/04/22~2022/04/23
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://www.gloriakai.jp/

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本の散歩展

期間:2022/04/22~2022/04/23
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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好書会

期間:2022/04/23~2022/04/24
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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港北古書フェア(神奈川県)

期間:2022/04/27~2022/05/08
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売
   市営地下鉄センター南駅の改札を出て直進、右前方。※駅構内

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/04/28~2022/05/01
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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第19回 四天王寺 春の大古本祭り(大阪府)

期間:2022/04/29~2022/05/05
場所:大阪 四天王寺 大阪府大阪市天王寺区四天王寺1-11-18

http://kankoken.main.jp/

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名鯱会(愛知県)

期間:2022/04/29~2022/05/01
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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城北古書展

期間:2022/04/29~2022/04/30
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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西部古書展書心会

期間:2022/04/29~2022/05/01
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第26回八王子古本まつり

期間:2022/05/01~2022/05/05
場所:JR八王子駅北口ユーロード特設テント

http://hachiojiusedbookfestival.jp/

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春の古書大即売会(京都府)

期間:2022/05/01~2022/05/05
場所:京都市勧業館「みやこめっせ」 京都市左京区岡崎成勝寺町9-1

http://koshoken.seesaa.net/

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東京愛書会

期間:2022/05/06~2022/05/07
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://aisyokai.blog.fc2.com/

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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2022/05/07~2022/05/08
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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杉並書友会

期間:2022/05/07~2022/05/08
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第45回 古本浪漫洲 Part1 

期間:2022/05/09~2022/05/11
場所:新宿サブナード2丁目催事場 新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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第45回 古本浪漫洲 Part2 

期間:2022/05/12~2022/05/14
場所:新宿サブナード2丁目催事場 新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2022/05/12~2022/05/15
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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フリーダム展

期間:2022/05/13~2022/05/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第45回 古本浪漫洲 Part3 

期間:2022/05/15~2022/05/17
場所:新宿サブナード2丁目催事場 新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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【発行】
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 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:志賀浩二
 編集長:藤原栄志郎

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