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古書市場が私の大学だった

古書市場が私の大学だった

青木正美

 四月で八十六歳、二十(はたち)で始めた古本屋も六十五年になる。「よく生きにけり」だ。
 かたわら『古本屋五十年』他の自叙伝、調べた限りの明治以後の業界史、個性ある先輩たちの伝記、日記関連本など四十冊余りの本を書いた。今度の『古書市場が大学だった』では、生涯を通じての私の思いを、末尾に書下しているが私の本音である。定時制高校の二年すら終えていないのを、これらの本まで書かせてくれたのが古書市場→特に”明治古典会”だったからだ。そこは例えれば、あの弘文荘・反町茂雄校長の許、文学堂内藤勇、木内書店木内民夫、不思議な先輩、杉浦台紀教授連のいる古書の実践大学だった。

 今回私が「日本古書通信」に三十数年間の連載分から八十四篇をまとめたものだが、右の”学校”のことは度々出てくる筈だ。ともあれ本は漱石、藤村、龍之介への思いや古本屋ならではのエピソードから始まる。特に「小学校さえ出ていない」と自称した窪川いね子(のちの佐多稲子)、室生犀星、小山清など学歴などものともせず独自の文学を極めた人達には、いつか自分を重ねてしまっていたかも知れない。

 また、昭和三十四年創刊(学燈社)の「みどり」は”作家訪問欄”に注目、「石原慎太郎と湘南高校」「古本屋になりたかった開高健」「二十三歳の大江健三郎」を書いた。この時点での高校の旧友、本人の生の声を若い記者が取材文章にしたもので、のち三人が大成しているだけに出色の出来上りだった。
 そしてもっとも読んで頂きたいのは、八十四篇中の(60)「古山高麗雄氏と話したこと」(78)「つげ義春さんと会う」の二篇だ。あの太平洋戦争下、もう伝説となった文学青年のグループに「悪い仲間」があった。当時の世相からは、不良青年たちとも見えた彼等の中から戦後安岡章太郎と古山という二人の芥川賞作家が生まれてしまう。中には戦没者もいた彼らだが、縁あって私はその何人かと知り合い取材、『「悪い仲間」考』(平19/古通)を出す。文章(60)は、古山氏の亡くなる一か月前に氏と一時間余り電話で語り合った記録。

 一方、文章(78)の場合は平成十二年、私が調布市のつげ氏が指定された駅前喫茶店で、延々三時間対話した日の日記を、”訪問記”として二回にわたって載せたものだ。つげ氏、「何しろ、立石は出ちゃってから行ってないんです。いい思い出は全くない。子供の頃、駅の改札口でキャンデー売りとかね。あれが一番辛かった。でもよくあんなこと駅が許してくれてましたね。・・・・ええ、母が死ぬまで青戸で暮らしてたんで、去年まで京成線に乗ってました。堀切を通過中はここに青木さんがいるんだなんて・・・でも立石へはねえ」

 私は、最後にお聞きした。「今目の前にしているつげさんと、熱狂的なファンに支えられた”つげ義春”という巨人とはものすごく乖離していると思うんですが?」
 氏は答えている。

 「私は本来、マンガ家とか画家とか思われたくないんです。好きな画家も、強いて言えばレオナルド・ダビンチ、もしくはそれ以前の名もない絵の職人さんなんです。それは手塚治虫さんくらいの天才なら、ああいう風に扱われても仕方ないですけど、赤塚不二夫さんみたいにテレビで顔を売っているのはね? あれでは電車も乗れません・・・」
 最後、思わずつげさんとの出合いを長々と写してしまったように、面白いことは受け合いです。
 どうか読んでみて下さい。



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『古書市場が私の大学だった―古本屋控え帳自選集』青木正美 著
日本古書通信社刊 定価:2160円 好評発売中!
https://company.books-yagi.co.jp/archives/news/5573

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2019年8月9日 第280号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第79号
      。.☆.:* 通巻280・8月9日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

連載(二) 古書目録第12号
  『マッカーサーがやってきた 1945-1952(1972)』回想記

                     風船舎 赤見悟

 今回は2016年発行の弊店にとっては二度目の総特集となる古書目
録第12号「マッカーサーがやってきた 1945-1952(1972)」につ
いて書こうと思う。タイトルの通り「連合国軍占領期の日本」特集
である。
 「占領期」関係は特集を組む以前にも多少は取り扱っていたが、
特集を組む決意をしたのはあるお客さんからお売り頂いたいくつか
の品々がきっかけだった。例えば以下の品。

続きはこちら
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赤見 悟(あかみ さとる)
1978年、埼玉県児玉郡上里町生まれ
2005年11月、杉並区阿佐ヶ谷にて「風船舎」実店舗開業
2007年夏、実店舗を閉め、通販専門に
2009年1月、古書目録第1号発行
2019年秋、古書目録第15号「越境特集」発行予定

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第8回 神保町のオタさん 「本のすき間」を探るひと(後篇)

                        南陀楼綾繁

 授業よりも超能力やUFOのサークル活動に夢中だったという「神保
町のオタ」さんは、大学卒業後、京都で就職する。入社してしばら
くは忙しかったことから、SF関係からは離れていたという。
「それでも、栗本薫の『グイン・サーガ』シリーズは読み続けてい
ましたね。ヒロイック・ファンタジーが好きなんです」

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5087

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【8月9日~9月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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第7回 上野広小路古本祭り

期間:2019/08/05~2019/08/11
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階(地下鉄
上野御徒町・上野広小路駅A4出口、JR御徒町北口徒歩3分)
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第28回 東急東横店 渋谷大古本市

期間:2019/08/06~2019/08/13
場所:渋谷駅 東急東横店 西館8階催物場
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城北古書展

期間:2019/08/09~2019/08/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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オールデイズクラブ(名古屋)

期間:2019/08/09~2019/08/11
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12
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第32回 下鴨納涼古本まつり(京都府)

期間:2019/08/11~2019/08/16
場所:下鴨神社糺の森 京都府京都市左京区下鴨泉川町59
URL:http://koshoken.seesaa.net/index-4.html
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阪神夏の古書ノ市(大阪府)

期間:2019/08/14~2019/08/20
場所:阪神百貨店梅田本店 8階催場 大阪市北区梅田1-13-13
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港北古書フェア(神奈川県)

期間:2019/08/14~2019/08/23
場所:有隣堂センター南駅店店頭
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フィールズ南柏の古本市(千葉県)

期間:2019/08/22~2019/09/01
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場 柏市南柏中央6-7
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ぐろりや会

期間:2019/08/23~2019/08/24
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://www.gloriakai.jp/
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立川フロム古書市

期間:2019/08/23~2019/09/01
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣) 
   3階バッシュルーム(北階段際)
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好書会

期間:2019/08/24~2019/08/25
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/08/29~2019/09/01
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
URL:https://twitter.com/urawajuku
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紙魚之會

期間:2019/08/30~2019/08/31
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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杉並書友会

期間:2019/06/22~2019/07/15
場所:有隣堂伊勢佐木町本店 横浜市中区伊勢佐木町1-4-1
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第8回 上野広小路古本祭り

期間:2019/09/02~2019/09/08
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階(地下鉄
上野御徒町・上野広小路駅A4出口、JR御徒町北口徒歩3分)
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第91回 彩の国 所沢古本まつり

期間:2019/09/04~2019/09/10
場所:くすのきホール
   西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場
URL:https://tokorozawahuruhon.wixsite.com/tokorozawahuruhon
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第37回古本浪漫洲 Part1

期間:2019/09/04~2019/09/06
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111
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フジサワ古書フェア

期間:2019/09/05~2019/09/18
場所:有隣堂藤沢店4階ミニ催事場
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東京愛書会

期間:2019/09/06~2019/09/07
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/
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倉庫会(名古屋)

期間:2019/09/06~2019/09/08
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12
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「名古屋骨董祭」 第2回 名古屋古書即売会(名古屋)

期間:2019/09/06~2019/09/08
場所:吹上ホール 名古屋市千種区吹上2丁目6-3
   地下鉄・吹上駅5番出口徒歩5分
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大均一祭

期間:2019/09/07~2019/09/09
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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第37回古本浪漫洲 Part2

期間:2019/09/07~2019/09/09
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
   新宿区歌舞伎町1-2-2
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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2019/09/07~2019/09/08
場所:神奈川古書会館1階特設会場
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第37回古本浪漫洲 Part3

期間:2019/09/10~2019/09/12
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
   新宿区歌舞伎町1-2-2
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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2019/09/12~2019/09/15
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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書窓展(マド展)

期間:2019/09/13~2019/09/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第37回古本浪漫洲 Part4

期間:2019/09/13~2019/09/15
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
   新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111
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第48回 鬼子母神通りみちくさ市

期間:2019/09/15
場所:雑司が谷 鬼子母神通り
URL:https://kmstreet.exblog.jp/
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第4回 御茶ノ水ソラシティ古本市

期間:2019/09/15~2019/09/21
場所:御茶ノ水ソラシティプラザ 千代田区神田駿河台4-6 
JR御茶ノ水駅 徒歩1分、東京メトロ新御茶ノ水駅聖橋方面改札直通

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━━━【映画『ガーンジー島の読書会の秘密』上映のお知らせ】━━━
          
1946年、終戦の歓びに沸くロンドンで暮らす作家のジュリエットは、
一冊の本をきっかけに、“ガーンジー島の読書会”のメンバーと手紙を
交わすようになる。ナチに脅えていた大戦中は、読書会と創設者である
エリザベスという女性の存在が彼らを支えていた。本が人と人の心を
つないだことに魅了されたジュリエットは、読書会について記事を書こ
うと島を訪ねるが、そこにエリザベスの姿はなかった。メンバーと交流
するうちに、ジュリエットは彼らが重大な秘密を隠していることに気付く。

ジュリエットが魅せられたガーンジー島の読書会の“秘密”とは-?

8月30日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー。

上映予定はこちらからどうぞ。

株式会社 キノフィルムズ
http://dokushokai-movie.com/

☆★[公開記念キャンペーン1-映画をより楽しむために-]☆★

映画の公開にあわせて8月16日(金)より「日本の古本屋」で
特集コーナーを設置します。

◇特集第1弾 8/16-8/29 映画「ガーンジー島の読書会の秘密」公開間近!
 『イギリス、ヨーロッパ文学』&『ヨーロッパの戦争、戦線』

◇特集第2弾 8/30-9/12 映画「パターソン」公開!
 『読書会、愛書家』&『イギリス、ヨーロッパ映画』

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 次回は2019年8月下旬頃発行です。お楽しみに!
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全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

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日本の古本屋メールマガジンその280 2019.8.9

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎
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第8回 神保町のオタさん 「本のすき間」を探るひと(後篇)

第8回 神保町のオタさん 「本のすき間」を探るひと(後篇)

南陀楼綾繁

 授業よりも超能力やUFOのサークル活動に夢中だったという「神保町のオタ」さんは、大学卒業後、京都で就職する。入社してしばらくは忙しかったことから、SF関係からは離れていたという。
「それでも、栗本薫の『グイン・サーガ』シリーズは読み続けていましたね。ヒロイック・ファンタジーが好きなんです」

 オタさんが本格的に古本屋通いをはじめたのは、30代に入った頃だった。当時、神保町には『SFマガジン』のバックナンバーを揃えている古本屋があり、上京するたびに買いに行ったという。その際、すずらん通りにあった〈書肆アクセス〉に入った。地方・小出版流通センターが直営する書店で、地方出版やミニコミを扱っていた(2007年に閉店)。ここで古本好きのための雑誌『彷書月刊』を見つける。毎号、ユニークな特集を組んでいた。
「私が買ったのは、『サンカの本・その世界』という特集の号でした(1990年9月号)。それから毎月買うようになり、後ろのページに載っている古書目録を眺めていました。そこから、老舗の『日本古書通信』の存在を知り、そちらも購読するようになったんです」

 それがきっかけで、オタさんの古本屋めぐりがはじまった。出張で地方に行く際に、『全国古本屋地図』の該当ページを切り取って持っていき、その地の古本屋を回った。
「札幌の〈弘南堂書店〉、神保町の〈叢文閣書店〉、熊本の〈舒文堂河島書店〉のように、地方文献や民俗学関係を扱っている古本屋が好きでしたね。明治期の移民、キリスト教、開拓などに興味があったし、事物起源の本も好きでした」
 地元である京都ではどうだったか。
「私の在学中、京大の周辺には十数店の古本屋がありましたが、当時はあまり行っていませんでした。その頃の自分に古本屋、特に均一台の重要性を教えてやりたかったです(笑)。それらの店に通うようになって、未整理の山から『アメージング・ストーリーズ 日本語版』(誠文堂新光社)を一冊数百円で拾い出したりしました。学生の時に、知恩寺で開かれる秋の古本まつりにも行きましたが、まだ視野が狭かったようであまり買えませんでした。均一台も『どうせろくなものはないだろう』と素通りしていました。その面白さを知ったのは、岡崎武志さんや山本善行さんのエッセイからでだいぶ後になります」

さまざまな書誌を扱う東京の〈早川図書〉の目録を入手し、『新渡戸稲造文庫目録』(北海道大学)も買った。掲載されている本のデータを読むだけで楽しかったという。
 オタさんは、本を読むときには真っ先にあとがきと参考文献を読む。そこで知った本を古本屋で見つけ、また参考文献から新しい本を見つける……というように、いもづる式に興味の範囲が広がっていった。

 2005年1月、オタさんはブログ「ジュンク堂書店日記」を開始する。
「このジュンク堂は神戸・三宮のサンパル店のことですね。専門書が充実していて、かなり買い込んだ記憶があります。当時もいまも、ネットでは本は買わず、店舗で買っています。古本は『日本の古本屋』でときどき買っていますが。
 ブログをはじめたのは、当時、『電車男』などネット発信の書籍化がはやっていたので、自分もやってみようと思ったからだと、オタさんは云う。
 最初はタイトル通り、ジュンク堂の思い出や新刊の紹介を書いていたが、書物蔵さん(当時は書物奉行)がコメントを書き込むようになると、読者の目を意識して次第にマニアックな方向に踏み込んでいった。
「たとえば、文学者の日記を読んでいると、文学とは畑違いの何者か判らないけったいな人が出てきます。その人の経歴を調べて、ブログで紹介しました。その分野の研究者の目が届いていないだろう資料を見つけるのが、好きなんですよね。個人全集の別巻や日記篇を読んでいると、そういうネタが拾えるんです」

 同じ年の12月には、はてなダイアリーに移行し、「神保町系オタオタ日記」と改名。
「アキバ系がはやっていたので対抗しました(笑)。このタイトルのせいで、東京に住んでいると思っている人が多かったです」
 びっくりしたのは、元の「ジュンク堂書店日記」も翌年一杯は頻繁に更新されていることだ。どこから、その熱意が生まれるのか?
「本と本の間に挟まっている片々たる冊子が好きなんです。人が見ないもの、ひっそりと埋もれているものを探したい」とオタさんは云う。「本のすき間」を探ることに情熱を傾けているのだ。

 初期の「オタオタ日記」に出てくる固有名詞を拾ってみる。櫻澤如一、藤澤親雄、鈴木庫三、スタール、島田翰、朝倉無声、木呂子斗鬼次……。知らない名前のオンパレードだ。著名人でもかならず意外な角度から攻めてくるので、読み落とせない。
「このブログを通して黒岩比佐子さん、小谷野敦さん、佐藤卓己さんらと知り合うことができました。彼らの著書や論文に引用されたり、参考文献として挙げてもらったりしました。もっとも、小谷野さんは匿名を否定しているので、『久米正雄伝』で参考にしつつも『名前は出せない』と云われましたが」
 その後、母が亡くなり、父の看病をしていたため、半年ほど休んだ時期はあるが、現在までブログを続けている。

 そんなオタさんだが、「私は蒐集分野とか探究書などはべつにないんですよ」と笑う。「知らない本に出会うために古本屋に行っているだけで。だから、古本屋通いに終わりはないんです」
 その場にこの数年で手に入れた古本をいくつか持ってきていただいたが、たしかに、見事にジャンルがバラバラだ。
『百人一趣』上・下(1946)は、名古屋で『土の香』という民俗雑誌を発行していた土俗趣味社から出たもので、斎藤昌三、中山太郎、尾崎久弥、宮尾しげをらが寄稿している。
「巻頭の柳田國男の文章は、筑摩書房の定本全集に入っていますが、出典や発行年月が間違っています。下巻に『古本販売目録に就いて』を書いている呉峯生は、約4000冊の古書目録を集めたコレクターです」
 先日、大阪の〈文庫櫂〉で見つけたという城市郎『発禁本・秘本・珍本』(河出i文庫)は、著者旧蔵本で本人の書き込みがある。また、知恩寺の古本まつりの均一台で手に入れた同人誌『新人壇』(1960)には阿部昭や実相寺昭雄が書いている。先週の大阪古書会館の即売展では『ワセダ・ミステリ』創刊号を買っている。
 最近では書籍よりも紙モノに重点が移り、図書館に所蔵されていない非売品の小冊子や絵葉書に手が伸びるという。ますます「すき間」へと入り込んでいるわけだ。
「絵葉書は裏面の絵柄が注目されやすいですが、表面の通信面には面白い人の名前が見つかることがあります。小山展司から山名文夫への絵葉書を入手したんですが、小山はデザイナーで森山大道が教わった人らしいですね。人と逆のところに注目すると、面白い発見があるんです」

 オタさんが住んでいる家は木造で、本は二階に置いている。床が抜けないように分散して置くため、本棚がほとんどなく、床に積むか段ボール箱に入れている。紙モノは紛れ込みやすいので、カンで探しているそうだ。そのテーマに興味がなくなると、古本屋で処分する。
「SFや歴史の本はずいぶん売ってしまいましたね。硬めなものは〈書砦・梁山泊〉、やわらかめなものは〈古書善行堂〉に引き取ってもらうことが多いです」

 オタさんは地道に集めて、調べたことを、惜しげもなくブログで書く。
「自分で本を書こうという気持ちはないんですか?」と訊くと、「私はブログで充分です」と答える。本の「すき間」にあるものを見つけたら、あとはご自由に使ってくださいということだろうか。私自身も何度もこのブログに助けられている。
「神保町系オタオタ日記」には「自称『人間グーグル』」のサブタイトルがある。
「善行堂で買ったスエデンボルグ著、鈴木大拙訳の『天界と地獄』に、英文の書き込みがありました。それによると、アメリカ人の牧師からKusuichi Onoに贈られたものでした。この人物が気になったのですが、どうやって調べたらいいか判りませんでした。ところが、グーグルブックスで検索するとヒットし、東洋電機技手の小野楠一だと判明したんです。会社からイギリスに派遣されたのですが、日本に帰ってから亡くなったようです。これじゃあ、人間グーグルもお役御免ですかね」
 そう笑うオタさんだが、そもそもオタさんがこの本を買って書き込みに注目したから、この結果が得られたのだ。いくらネットの大海に膨大な情報が漂っていても、知識と興味と情熱を持つ人間がいなければ、何も生まれない。
 オタさんにはもうしばらく、「人間グーグル」として働いてもらいたい。私たちに役に立つことも、まったく役に立たないこともたくさん教えてもらいたいからだ。

神保町系オタオタ日記
https://jyunku.hatenablog.com/

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

Copyright (c) 2019 東京都古書籍商業協同組合

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連載(二) 古書目録第12号『マッカーサーがやってきた 1945-1952(1972)』回想記

連載(二) 古書目録第12号『マッカーサーがやってきた 1945-1952(1972)』回想記

風船舎 赤見悟

 今回は2016年発行の弊店にとっては二度目の総特集となる古書目録第12号「マッカーサーがやってきた 1945-1952(1972)」について書こうと思う。タイトルの通り「連合国軍占領期の日本」特集である。
 「占領期」関係は特集を組む以前にも多少は取り扱っていたが、特集を組む決意をしたのはあるお客さんからお売り頂いたいくつかの品々がきっかけだった。例えば以下の品。

・吉田茂自筆書簡
・巣鴨プリズン拘留中の後藤文夫宛書簡類一括
・幽囚の曲-戦犯歌謡曲集
・極東国際軍事裁判所労働組合機関誌
・昭和25年「幻の国際野球スタジアム」建設資料
・米国奈良軍政府記念誌
・上野地下道の実態-生きている

 コンセプトとして占領期時代に発行・印刷・記録されたものしか使わないこと、そして全体の並びは「時系列順」と早々に決めた。何故か直感的にそれが面白いと思った。あえて言葉にするならば「紙史料で見る占領期年表」だろうか。それを狙った。プロローグ的な意味を込め、目録は「昭和20年1月1日」から幕を開けようと考えた。

 特集を決意してからは古書市場で占領期時代のものを血眼になって探した。ジャンルや形は問わなかった。目録上が様々なジャンルで入り乱れ、混沌としていればいるほどあの時代に相応しいと考えていた。また、どんなに細やかな冊子や紙片であれ、占領期のものであれば、あの時代特有の雰囲気や匂いが明確に刻印されていることは間違いないからだ。といってもこれはどの時代でもいえることだろう。時代からは逃れられないのだ(それはおそらくこんな駄文ですら…)。そこが面白い。だから、いつか同じようなコンセプトで、例えば「明治期」や「大正期」「高度成長期」の目録を作ってみたいと秘かに思っている。

 ただ、いわゆる「戦後」のものなので、それなりに市場には出て来るが、如何せんこの時代のものは紙質が良くないので状態は悪いものが多かった。そこは少しネックだった。しかし、「枠」を決めて市場で入札するのはとてもスリリングで面白く、また、それまで目に入らなかったアレやコレがとても光って見え、新鮮な気持ちで市場を楽しめた。市場がマンネリ化して楽しめないという同業諸氏には「枠買い」をお勧めしたい。無論、未知のジャンルにも突っ込むので数多の失敗は覚悟しておいた方がいい。

 限られた資金と期間の中で運よく蒐集する事が出来た品々の内、特に印象深いのは、「あるBC級戦犯宛の直筆寄せ書き帳」「横浜マッカーサー劇場上映プログラム」「日米会話手帳」「ある進駐軍兵士旧蔵アルバム」「連合軍専用臨時列車時刻表」「未逮捕戦犯人名簿」「進駐軍用東京近辺電話帳」「ある傷痍軍人の自筆日記・草稿」「GHQ専属理容師・田中知彦氏旧蔵アルバム」等だろうか。とりわけ、マッカーサーの後任として連合国軍最高司令官の任に就いたリッジウェイや極東国際軍事裁判の裁判長を務めたウェッブらの直筆サイン入色紙を含む「GHQ専属理容師・田中知彦氏旧蔵アルバム」は、仕入れ資金も残り僅かという頃に奇跡的に古書市場に出現したものだった。その絶妙なタイミングに私は勝手な使命感と運命的なものを感じ、高ぶる気持ちそのままに気合と意地で何とか落札。最後の最後に目録の一番の目玉商品を仕入れる事が出来たのは、何か不思議な縁を感じてとても興奮した。余談ではあるが、当時たまたま弊店が所蔵していた『理容文化』という雑誌に「田中知彦GHQを語る」と題した記事が収録されており、田中氏とリッジウェイらとの親密な交流を裏付ける事が出来たのも奇妙な偶然だった。

 目録上には時代の雰囲気と匂いをより濃厚に、そして立体的にするため、所々に「昭和20年9月20日:教科書の『墨塗り』開始」「昭和22年1月1日:新聞記事や見出しの横書きが、この日の誌面から左横書きとなる」「昭和23年1月26日:帝銀事件」「昭和25年1月19日:アメリカから帰国した田中絹代が羽田空港で『日本語がうまく話せなくて』と語る」等といった当時ならではのエピソードを商品と商品の間に散りばめた。

 また、雑誌を始め各掲載品からの引用も数多く試みた。引用してみた気付いた事は「編集後記」の面白さだ。「編集後記」には、やれ「金が無い…」「闇市で…」「誰々が死んだ…」等といった当時の生々しい状況が赤裸々に綴られていた。ある時代を浮かび上がらせるには「編集後記」のみを纏めて一冊の本にしたら面白いかもしれないとその時思った。

 発行後は嬉しい事にそれなりの反響があった。あるお客さんからは「語る目録」と評された。とても勇気づけられたのは、一定のジャンルで固まっていない、という目録としてはある意味掟破りで非常に見づらい誌面構成にも拘らず、お客さんは隅々まで目を通して自身の好みの品を探し出して注文をくれたことだ。やはりお客さんの情熱は売る側の情熱をはるかに凌駕している。そして「紙」の目録はまだまだ強いと感じた。

 誰よりも手強いであろう同業者の反応もまずまずだったように思う。あの「目録馬鹿(天才)」月の輪書林さんからは、労いの意味を込めてだろう、とある高級中華料理屋で御馳走をして頂いた。同席してもらった我が師匠・石神井書林さんは「月の輪が奢るのは極稀」と、その珍事に驚いていた。目録屋としてちょっぴり認めてくれたのかも知れないと、この時はとても嬉しかった。

 一つ心残りがあった。この目録は「マッカーサーがやってきた」8月末に半ば強引に発行したのだが(そのため雑な部分が多々ある)、奥付としてそのことを記録しなかったことだ。今回ここに記せたことを少し嬉しく思う。

12go
風船舎古書目録第12号『マッカーサーがやってきた 1945-1952(1972)』
A5判 全302頁 残部ナシ ■右の画像は裏表紙

赤見 悟(あかみ さとる)
1978年、埼玉県児玉郡上里町生まれ
2005年11月、杉並区阿佐ヶ谷にて「風船舎」実店舗開業
2007年夏、実店舗を閉め、通販専門に
2009年1月、古書目録第1号発行
2019年秋、古書目録第15号「越境特集」発行予定

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2019年7月25日 第279号

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     。.☆.:* その279・7月25日号 *:.☆. 。
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☆INDEX☆
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1.古本屋ツアー・イン・ジャパンの2019年上半期活動報告
                古本屋ツーリスト 小山力也
2.「特殊文庫」をひらく
勉誠出版『書物学』編集部 吉田祐輔
3.『古本屋散策』              小田光雄
4.古本好きの財布のヒモの結び加減   カラサキ・アユミ

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━━━━━━━【古本屋ツアー・イン・ジャパン】━━━━━━━

「古本屋ツアー・イン・ジャパン2019年上半期報告」

          古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也

 相も変わらず東京にのたくり、古本を買って暮している。日々、
ご近所への小さな旅を繰り返し、お眼鏡に適った古本を働き蟻のよ
うにせっせと家に運び込んでいる。その代わりに、もはや不要と思
った本は、スパッと思い切りドシドシ手放しているので、各部屋に
蔓延る本の山は山として、さほどその形を変えることはない。それ
だから、『ほぼ本の中で生活する』という馬鹿げたスタイルに変化
もなく、今年もあっという間に半年が過ぎてしまった…。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5049

小山力也

2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている
場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・
ジャパン』管理人。「フォニャルフ」の屋号で古本販売に従事する
ことも。古本屋に関する著書ばかりを出し続けており、それらの出
版社や形状は違えど、全部を並べたらいつしか“日本古本屋大全集”
となってしまうよう、秘かに画策している。西荻窪の古本屋さん全
店を紹介するフリーペーパー『西荻窪古本屋マップ』を作成し、
各店舗で配布中。
「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。

http://furuhonya-tour.seesaa.net/

━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

「特殊文庫」をひらく

            勉誠出版『書物学』編集部 吉田祐輔

特殊文庫(とくしゅぶんこ)――この甘美な響きを耳にしたことが
ある方はそう多くはないかもしれない。最新の『広辞苑』第7版に
も立項はない。しかし、実は、日本にはこの「特殊文庫」なる機関
が各所に存在しているのである。
ごく簡単に言い表すならば「特定分野の書物をコレクションする図
書館」となるが、特殊文庫は、そのコレクションのみならず、それ
ぞれに特殊でドラマティックな歴史を有しており、深く知れば知る
ほどにその魅力に引き込まれることとなる。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5067

『書物学』書物学 第16巻 特殊文庫をひらく
―古典籍がつなぐ過去と未来
勉誠出版 刊 定価1575円(税込み)好評発売中
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=18_55&products_id=101018

※デジタル版(販売価格1000円) 
http://e-bookguide.jp/item/bs5852071600/

五文庫連携展示

東京・神奈川の五つの特殊文庫で東洋の叡智に触れる千年の旅
──知の宝庫をめぐり、珠玉の名品と出会う 特殊文庫の古典籍

詳しくは
https://www.gotoh-museum.or.jp/classic.html  をご覧下さい。

━━━━━━━━━━━【自著を語る(227)】━━━━━━━━━

 『古本屋散策』

                    小田光雄

 『古本屋散策』は『日本古書通信』に2002年から18年にかけて、
同タイトルで連載した200編を集成し、一本にまとめたものである。
 このように長く連載していると、話が古本のことゆえに、どうし
てもかつて古本屋で買い求め、読んだ本が中心になってしまう。そ
のためにまだ学生だった1960年代から70年代にかけての本への言及
が多い。また連載中にも馬齢が重なり、それらの時代も半世紀前で、
時が流れても、学成り難しと実感してしまう。

続きはこちら
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『古本屋散策』 小田光雄 著
論創社 定価:4800円+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp

━━━━━━━━━【古本乙女の独り言④】━━━━━━━━━━

古本好きの財布のヒモの結び加減

                    カラサキ・アユミ

私は古本のある場所に行ったら手ぶらで帰る事はほぼない。
財布に入っていたら入っている分全てを綺麗に残さず美味しく使え
る、と言うか使ってしまう私である。心踊るモノにお金を使うのは
楽しい。
ここ最近何かと身辺が忙しく、まとまった自由な時間が無い状況が
続いたせいもあり、我が古本欲は最高潮に達していた。「古本を漁
りたい!!」ただただ暇さえあれば心の中で咽び叫んでいた。

続きはこちら
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ツイッター
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━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『古書市場が私の大学だった―古本屋控え帳自選集』青木正美 著
日本古書通信社刊 定価:2160円 好評発売中!
https://company.books-yagi.co.jp/archives/news/5573

『日本国民のための愛国の教科書』 将基面 貴巳 著
百万年書房刊 価格 1,680円+税 好評発売中!
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784991022197

『本屋がアジアをつなぐ』 石橋毅史 著
ころから刊 価格:1,700円+税 8月15日発売予定
http://korocolor.com/

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

7月~8月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

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日本の古本屋メールマガジンその279 2019.7.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎

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sansaku

『古本屋散策』

『古本屋散策』

小田光雄

 『古本屋散策』は『日本古書通信』に2002年から18年にかけて、同タイトルで連載した200編を集成し、一本にまとめたものである。
 このように長く連載していると、話が古本のことゆえに、どうしてもかつて古本屋で買い求め、読んだ本が中心になってしまう。そのためにまだ学生だった1960年代から70年代にかけての本への言及が多い。また連載中にも馬齢が重なり、それらの時代も半世紀前で、時が流れても、学成り難しと実感してしまう。

 それでも書き続けていると、私たち戦後生まれの世代にとって幸いだったのは、多くの日本、外国文学全集、思想大系、それらの新しいシリーズやアンソロジーなどが出されていたことであろう。まだ当時は岩波文庫、新潮文庫、角川文庫がメインだったし、文学や思想に関しては限られていたので、その代わりの役割を全集や大系やアンソロジーが務めていたことになる。

 『古本屋散策』において言及した主なものを順番に挙げてみる。桃源社『世界異端の文学』、河出書房『人間の文学』、集英社『世界文学全集』『世界の文学』、学藝書林『全集・現代文学の発見』『全集・世界文学の発見』『ドキュメント日本人』、平凡社『世界名詩集大成』『現代人の思想』などである。

 これらの他にタイトルは挙げたけれど、章を立てて論じられなかったのは、筑摩書房の『現代日本思想大系』や『戦後日本思想大系』で、この二つのシリーズは全巻ではないけれど、図書館にも常備されていたし、大半を読んでいる。とりわけ前者では松田道雄編『アナーキズム』、橋川文三編『超国家主義』、後者では吉本隆明編『国家の思想』、埴谷雄高編『革命の思想』などは忘れ難い。もちろんこちらもまだ十代だったので、理解に関しては赤面物だというしかないし、タイトルからしても、そのような時代だった。また友人たちの下宿やアパートの本棚にも、この二つのシリーズの何冊かが必ず見出されたのである。それらの類書も多く出版されていたことはいうまでもないだろう。

 日本は1970年代半ばに初めての消費社会を迎えようとしていたが、まだサブカルチャーは正面から論じられていなかったし、現在のような文庫や新書全盛の出版市場ではなかった。だからこそ、多くの日本、外国文学全集、思想大系、それらの新しいシリーズやアンソロジーも刊行され、次代の読者を育てていたといえよう。
 しかしその一方で、それらを担っていた河出書房が1968年、筑摩書房が78年に倒産し、そうした書籍による出版がもはや成立しない状況を浮かび上がらせていた。また商店街から郊外へと消費社会が移行したことで、80年代には書店の郊外店化も全盛となり、さらにコンビニも加わることで、出版市場もそれに伴い、ドラスチックに変容してしまった。その事実はもはや全集や大系類の読者がいなくなってしまったことを告げているし、近代出版業界も行き着くところまできてしまったように思われる。

 『古本屋散策』は1960年代から70年代の本を中心としているが、当然のことながら、現在も含め、流動する出版状況の中で書き継がれてきた。そのような時代のニュアンスを伝え、たとえ一冊であっても、読者を喚起させ、読むという行為に誘うことができれば、それだけでも幸いに思う。また読切200編、600ページゆえに、少部数高定価になってしまったので、版元のためにも図書館にリクエストをお願いしたい。



sansaku

『古本屋散策』 小田光雄 著
論創社 定価:4800円+税 好評発売中!
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☆古本乙女の独りごと④ 古本好きの財布のヒモの結び加減

☆古本乙女の独りごと④ 古本好きの財布のヒモの結び加減

カラサキ・アユミ

私は古本のある場所に行ったら手ぶらで帰る事はほぼない。
財布に入っていたら入っている分全てを綺麗に残さず美味しく使える、と言うか使ってしまう私である。心踊るモノにお金を使うのは楽しい。

ここ最近何かと身辺が忙しく、まとまった自由な時間が無い状況が続いたせいもあり、我が古本欲は最高潮に達していた。「古本を漁りたい‼︎」ただただ暇さえあれば心の中で咽び叫んでいた。会えなければ会えぬほどに燃え上がる恋の炎の如し…。最寄駅に隣接する新刊書店にはコンビニ感覚で頻繁に立ち寄っていたものの、一向に私の心の隙間は埋められる事はなかった。不思議なもので新刊を買い続けても何冊新刊を買い求めても古本を買う時と同じあの高揚感は得られないのだ。一冊の本と出会った際の喜びは味わえるものの、やはり古本買いの時のワクワク感には程遠い。つくづく自分は〝探す〟という行為が好きなんだなと感じる。

そして待ちに待った念願の終日予定の無い日が到来。ここ数日の状況から見れば自分にとって大変貴重な一日である。おまけに気候は穏やかお天道様は優しく輝いている。絶好の古本日和だ。よし、腹が減っては戦はできぬ、朝飯を食べたら早速古本屋行脚に繰り出すぞルルルンルン。と、トーストを焼き目覚ましの熱い珈琲を淹れる。普段ほとんどじっくり観る事のないテレビをつけ、イチゴジャムをトーストに塗りながら眺める。年金・税金・保険・所得……なんだか己の先々の事を考えなさいよ的なニュースばかりが目に耳に入ってくる。支度を済ませ「よし、行くか。」と玄関に座り靴紐を結びながらにわかにジワジワと得体の知れぬ感情が私の中で騒めき始めた。「大丈夫か…?このまま行ってしまっても良いのだろうか私…。」(※この〝大丈夫だろうか〟というニュアンスは読み手の方々にご想像していただきたい。)

ところが古本屋の前に到着した瞬間、「いや、これでいい…。間違いなくこれでいいんだ。」と道中の暗雲立ち込めたる沈鬱な葛藤も霧が晴れるように一瞬にして消え失せ、屋外の均一棚を見始めたのであった。
将来に備え国民各自貯蓄せよと国が強く促している昨今、そのような注意喚起を右から左に受け流し馬耳東風状態、何が何でもさてはさておき自らの欲求を満足させる事に一投入魂する、明日食う米が無くとも目の前の古本を買ってしまう、そんな私に小さな葛藤が芽生えた或る日の休日風景であった。この葛藤は古本趣味の人間誰しもが通る通過点なのかもしれない。
だが葛藤があったとてそれでも変わらず私の財布の紐はユルユルである事は一向に変わらないのではあるのだが…

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『全古書連ニュース』より転載

karasaki4
東京古書組合発行 『古書月報』より転載

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『古本乙女の日々是口実』皓星社
価格1,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/furuhonotome/

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「古本屋ツアー・イン・ジャパン2019年上半期報告」

「古本屋ツアー・イン・ジャパン2019年上半期報告」

古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也

 相も変わらず東京にのたくり、古本を買って暮している。日々、ご近所への小さな旅を繰り返し、お眼鏡に適った古本を働き蟻のようにせっせと家に運び込んでいる。その代わりに、もはや不要と思った本は、スパッと思い切りドシドシ手放しているので、各部屋に蔓延る本の山は山として、さほどその形を変えることはない。それだから、『ほぼ本の中で生活する』という馬鹿げたスタイルに変化もなく、今年もあっという間に半年が過ぎてしまった…。

 一月は西荻窪「にわとり文庫」の百円均一大会からスタート。お年玉として、明治の押川春浪本を手に入れる。阿佐ヶ谷では元貸本屋の古本屋「ネオ書房」が突然閉店半額セールをスタート。貴重な本がびっくりするような安値で供されることがあるので、毎日のチェックが欠かせなくなる。この日は偕成社文庫「水曜日のクルト」を50円で入手する(さらにその後、矢川澄子の仁木悦子宛献呈署名本や、仁木の旧姓本名である大井三重子宛の仁木悦子署名本なども入手)。上井草では古本も売るグラノーラ販売店「井草ワニ園」が、グラノーラを売りながらもさらに古本を増やし、ルックスがほとんど古本屋さんと化しているのに苦笑する。下高井戸では老舗「豊川堂」の営業再開(週末のみ)を喜ぶが、荻窪では変な名前チェーンの「象のあし書店」が地域の人々に絶大に惜しまれながら閉店し、阿佐ヶ谷では住宅の一部をお店としていた「あきら書房」がひっそりとシャッターを下ろしてしまっていた。

二月は谷中の「古書信天翁」の悲しみの閉店から始まり、西日暮里の「古書ほうろう」移転セールや龍ヶ崎の超巨大古書モール「竜ヶ崎古書モール」閉店セール(相変わらずの本の海であったが、停められっ放しのエスカレーターなどが悲しかった…)を駆け抜けるとともに、谷保の渋い商店街に出現した古本も取り扱うひとり出版社「小鳥書房」や西荻窪の小公園横に出現していたビールと古本と書斎の店「BREW BOOKS」の開店を祝う。三月は三鷹に新鋭「りんてん舎」が出現し、同地の先輩「水中書店」同様、詩歌に店内に百均棚を備えるほどの強さを発揮し、三鷹を新たな文学の街へと導き始めている。さらに西荻窪には「benchtime books」という製本と古本の店が出現。薄暗い中二階の奥では店主が、古本より製本作業に熱中しながら日々を過ごしている。また神保町では特殊古本屋「マニタ書房」が閉店するが、棚の一部を下北沢「古書ビビビ」に移植し、その名を残している。「虔十書林」は富士見坂からすずらん通りに移転し、新たな形態で営業をスタートさせている。

そして先述した阿佐ヶ谷の「ネオ書房」が前触れなく突然閉店。その後テレビ番組の企画で、お店の本を全部フリマで売り尽くすイベントにチャレンジしていた…。この月の掘出し物は、西荻窪で百円で見付けた野溝七生子「女獣心理」オリジナル本。裸本で背が傷んではいたが、外棚の片隅に見つけた時は、激しく胸がときめていしまった。四月は高円寺のガード下で、「都丸書店」がお店の一部を縮小するのを目撃し、自由が丘「東京書房」の移転にも駆け付ける。また西千葉の激安店「鈴木書房」が閉店セールを始めていたのでたくさん買うつもりで見に行くが、運悪く定休日で購買意欲の行き場を激しく失う。経堂「遠藤書店」は、朝日新聞でもその閉店を惜しまれながら美しく幕引き。国分寺には「七七舎2号店」跡に若者の思想と文化を独自の視点で並べる「早春書房」が開店。そして一箱古本市のついでに立ち寄った西日暮里「書肆田高」では濃厚な詩の森に迷う。

これで東京には「水中書店」「古書ソオダ水」「田高」「りんてん舎」と、若手詩歌店四天王が華々しく出揃ったことになる。この月の掘出し物は、三鷹で函ナシの「ですぺら/辻潤」と国分寺で朝日ソノラマ「女王蜂/中島河太郎」をともに千円で買ったことであろうか。五月は町田の昭和遺産的仲見世商店街に開店していた「EUREKA BOOKS」を訪れると同時に、突如閉店してしまった古本屋ビル「高原書店」の、本が店内にギッシリ残ったままの悲しい姿を眺めて涙する。そんな悲報を振り払うように、リニューアルオープンした国分寺「七七舎」では、古本盟友・岡崎武志氏とともに一日店長&トークショーを行ったりもした。六月は西荻窪「古書音羽館」で行われた師匠である高原書店に愛と感謝を込めての15%オフセールで古本を買い、高円寺では一階がギャラリーで二階が店舗の「えほんやるすばんばんするかいしゃ」が、一階にすべての機能を移しつつ店主も未知の新たな営業形態で再スタートする!という非常に前のめりな生き方を選択したのに面食らう。

早稲田では二階店舗の「丸三文庫」が西早稲田交差点近くの路面店に移転し、早稲田の新しい顔となる、さらに西荻窪には吉祥寺から移転し古本屋として復活を遂げた「トムズボックス」が開店し、絵本好きの耳目を集める。そして鎌倉では、古都に新しい風を吹かせた「books moblo」がその役目を終え惜しまれながら閉店したが、駅西側に新たに開店していた一軒家古本屋「古書 アトリエ くんぷう堂」が、奇跡的にその血と役割を受け継いでいるように感じ取る。この月の掘出し物は、保谷で見付けた百円の小村雪岱「日本橋檜物町」。函が壊れかけていたが、ちゃんと雪岱の木版画が巻頭にあったので、自然と店頭で笑顔がこぼれてしまった。

 とこのように過ごして来た半年であるが、中央線沿線の古本屋さんの充実度には、やはり見逃せないものがある。後半戦も引き続きこの辺りでのたくって生きて行くのであろうが、そろそろ何処かに遠出したいと言う気持ちも頭をもたげて来ている。とりあえずは仙台駅近くに開店した「古本あらえみし」や宇都宮に復活開店した「analog bokks」でも見に行きたいものだ。そして阿佐ヶ谷のすでに閉店した「ネオ書房」であるが、なんと評論家の切通理作氏が店舗と屋号をそのまま引き継ぎ、独自のお店を開店予定とも伝えられている。まだまだ色々不思議な風が吹き荒れそうな、2019年の古本界である。



小山力也
2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』管理人。「フォニャルフ」の屋号で古本販売に従事することも。古本屋に関する著書ばかりを出し続けており、それらの出版社や形状は違えど、全部を並べたらいつしか“日本古本屋大全集”となってしまうよう、秘かに画策している。西荻窪の古本屋さん全店を紹介するフリーペーパー『西荻窪古本屋マップ』を作成し、各店舗で配布中。「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。
http://furuhonya-tour.seesaa.net/

Copyright (c) 2019 東京都古書籍商業協同組合

「特殊文庫」をひらく

「特殊文庫」をひらく

勉誠出版『書物学』編集部 吉田祐輔

特殊文庫(とくしゅぶんこ)――この甘美な響きを耳にしたことがある方はそう多くはないかもしれない。最新の『広辞苑』第7版にも立項はない。しかし、実は、日本にはこの「特殊文庫」なる機関が各所に存在しているのである。
ごく簡単に言い表すならば「特定分野の書物をコレクションする図書館」となるが、特殊文庫は、そのコレクションのみならず、それぞれに特殊でドラマティックな歴史を有しており、深く知れば知るほどにその魅力に引き込まれることとなる。

このたび、東京・神奈川に所在する5つの特殊文庫が手を携え、「特殊文庫の古典籍―知の宝庫をめぐり珠玉の名品と出会う」という画期的な連携展示が行われることとなった(https://www.gotoh-museum.or.jp/classic.html)。
『書物学』第16巻では、この連携展示とタイアップし、日本における書物蒐集の歴史において、また、書物を軸とした学問の形成において、欠くことの出来ない大きな存在である「特殊文庫」の魅力を、実地に深くかかわってきた方々によって伝えていただくこととした。

同書巻頭には今年創立七十周年の記念の年を迎える大東急記念文庫の村木敬子先生より、「特殊文庫」、そして、この連携展示開催のきっかけともなった「特殊文庫連絡協議会」の営みを伝える序言を頂戴した。「過去の書物から叡智を汲み出す営みが再び広く求められる時代が到来することを信じ、私たちは手を携え、それらを守り伝える手段を探り続ける必要があるだろう。」と特殊文庫の矜持を示す一文で締めくくられるこの文章につづき、それぞれの特殊文庫の運営に携わられている先生方に、大東急記念文庫・東洋文庫・斯道文庫・金沢文庫・静嘉堂文庫という5つの特殊文庫の歴史とそのコレクションの特色、そして今回の連携展示の見どころを、豊富なカラー写真を交えつつ、紹介していただいた。書物を愛する人々にとって垂涎の古典籍が並ぶこのパートは、まさに特殊文庫の底力を伝えるもの。

さらに、世界屈指の東洋学の拠点たる東洋文庫の歩みとともにあり、現在文庫長を務められている斯波義信先生、斯道文庫に務められた経験があり、特に漢籍に通暁されている高橋智先生、金沢文庫に長く勤務し学芸課長として展示企画・執筆に八面六臂の活躍をされてきた西岡芳文先生という、特殊文庫の伝道者ともいえるお三方による、貴重な鼎談を収めた。困難に満ちた特殊文庫の来し方、かつての文庫の番人たち、特殊文庫の未来像など、その話題は多岐にわたり、書物、そして書物が伝えてくれる人びとの営みへの愛着を随所に感じることのできる素晴らしい内容となった。

各文庫で行われる展示をより深く知るための副読本として、また、「書物を守り、伝えていく」という人びとの営為を理解する一冊として、ぜひ本書を紐解いていただければ幸いである。
なお、展示期間中、各文庫では蔵書印を模したスタンプを捺すことができる。本書巻末には印譜となるページも用意してあるので、ぜひご利用いただければありがたい。
(斯道文庫の展示は既に会期を終えてしまっておりますが、大東急記念文庫(五島美術館)の会場にて、スタンプを捺印することが出来ます。)



syomotugaku

『書物学』書物学 第16巻 特殊文庫をひらく―古典籍がつなぐ過去と未来 勉誠出版 刊  定価1575円(税込み)好評発売中
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=18_55&products_id=101018

※デジタル版(販売価格1000円) 
http://e-bookguide.jp/item/bs5852071600/

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2019年7月10日 第278号

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 古書市&古本まつり 第77号
      。.☆.:* 通巻278・7月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

連載(一)
 古書目録第10号『青春狂詩曲-近代教育の諸相』回想記

                     風船舎 赤見悟

 原稿の依頼を断りきれなかったため、僭越ながら自店の古書目録
のことについて書かせて頂く。文責は私を推した月の輪書林さんに
ある。
 これまでに弊店は古書目録を14冊(号)発行してきた。第1号を発
行したのは2009年。既にインターネット全盛で、「日本の古本屋」
や「Amazon」「ヤフオク」も勿論存在した。言わば本を売る手法は
いくらでもあった。そんな時代に何ゆえ手間も経費も大きくかかる
古書目録なんぞの発行を思い立ったか、その理由については既に
『日本近代文学館』第274号に駄文を書いた(これも断りきれなった)
のでここでは省きたい。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4999

赤見 悟(あかみ さとる)
1978年、埼玉県児玉郡上里町生まれ
2005年11月、杉並区阿佐ヶ谷にて「風船舎」実店舗開業
2007年夏、実店舗を閉め、通販専門に
2009年1月、古書目録第1号発行
2019年秋、古書目録第15号「越境特集」発行予定

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

古本マニア採集帖
第7回 神保町のオタさん 「本のすき間」を探るひと(前篇)

                      南陀楼綾繁

 この連載をはじめる前、もしこの人に出てもらえたら……と最初
に思い浮かべたのが、「神保町のオタ」さんだった。まったく知ら
ない人なのに、ブログやツイッター上では10年以上前からやり取り
がある。以前は「ジュンク堂書店日記」、現在は「神保町系オタオ
タ日記」と題するブログでは、初めて聞く人名や書名のオンパレー
ド。著名な作家についても、古本屋や即売会で拾った思いもかけな
い資料を持ち出して、新鮮な角度で攻めてくる。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5018

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【7月10日~8月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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有隣堂イセザキ本店チャリティワゴンセール(神奈川県)

期間:2019/06/22~2019/07/15
場所:有隣堂伊勢佐木町本店 横浜市中区伊勢佐木町1-4-1

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東京愛書会

期間:2019/07/12~2019/07/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/

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第176回 神戸古書即売会(兵庫県)

期間:2019/07/12~2019/07/14
場所:兵庫県古書会館 一階・二階
神戸市中央区北長狭通6-4-5

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好書会

期間:2019/07/13~2019/07/14
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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有隣堂センター南・港北古書フェア(神奈川県)

期間:2019/07/14~2019/07/23
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売

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天満屋アルパーク古本まつり(広島県)

期間:2019/07/17~2019/07/22
場所:アルパーク天満屋 1階センターコート
   広島市西区井口明神1丁目16-1

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趣味の古書展

期間:2019/07/19~2019/07/20
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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たにまち月いち古書即売会(大阪府)

期間:2019/07/19~2019/07/21
場所:大阪古書会館(大阪市中央区粉川町4-1
URL:http://www.osaka-kosho.net/sokubai/

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京都マルイ夏の古本市2019(京都府)

期間:2019/07/20~2019/07/23
場所:京都マルイ1階店頭
(屋外・四条通側の屋根のあるスペース)

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/07/25~2019/07/28
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
URL:https://twitter.com/urawajuku

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和洋会古書展

期間:2019/07/26~2019/07/27
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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五反田遊古会

期間:2019/07/26~2019/07/27
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4

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中央線古書展

期間:2019/07/27~2019/07/28
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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さんちか古書大即売会(兵庫県)

期間:2019/08/01~2019/08/06
場所:神戸・三宮さんちか3番街「さんちかホール」

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我楽多市(がらくたいち)即売展

期間:2019/08/02~2019/08/03
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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杉並書友会

期間:2019/08/03~2019/08/04
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第28回 東急東横店 渋谷大古本市

期間:2019/08/06~2019/08/13
場所:渋谷駅 東急東横店西館8階 催物場

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城北古書展

期間:2019/08/09~2019/08/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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オールデイズクラブ(愛知県)

期間:2019/08/09~2019/08/11
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12

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第32回 下鴨納涼古本まつり(京都府)

期間:2019/08/11~2019/08/16
場所:下鴨神社糺の森 京都府京都市左京区下鴨泉川町59
URL:http://koshoken.seesaa.net/index-4.html

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次回メールマガジンは7月下旬に発行です。

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【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
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【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

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