2020年8月7日 第304号

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 古書市&古本まつり 第91号
      。.☆.:* 通巻304・8月7日号 *:.☆. 。
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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

古本屋開業記2

           古本&カフェ じゃらん亭 内山武明

前回、19号台風のことを書きましたが、今回はもう少し前の開業ま
でのことも書いてみたいと思います。数年前から古本屋の開業を考
えて、不動産を探し始めたのですが、なかなか条件に合うところが
見つからずにいました。
不動産を探すうえでは、バックヤードなどの面積がある程度あるこ
と、家賃などの固定費があまりかからないことを重視し、商業的な
立地はあまり重視しませんでした。地方ですと、場所によっては、
面積の割にかなり安く借りることができますので、倉庫的な機能を
重視することを考えていました。

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古本&カフェ じゃらん亭 ツイッター
https://twitter.com/igveuuxvqdwzjpt

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第19回 カラーブックスとものかいさん 人生初のコンプリートを遂げたひと

                       南陀楼綾繁

 昨年、熊本市に取材に行った。その夜、〈舒文堂河島書店〉の
河島さんに誘われて飲んだ席で、「カラーブックス」を集めている
という女性に出会った。
 カラーブックスは1962~1999年に保育社が発行していた文庫サイ
ズのシリーズで、さまざまなテーマが取り上げられている。タイト
ル通りカラーが満載で、古本屋で見つけるとちょっと持っておきた
くなる。しかし、あれ、全部で何冊あるんだろう? と聞くと、彼
女はすぐに「909冊です」と教えてくれた。
 彼女はその数か月後に「カラーブックスとものかい」というアカ
ウントでTwitterを開始。1日1冊ずつ紹介している。なので、ここで
は彼女のことを「カラともさん」と呼ぼう。

続きはこちら
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南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━━━━━【東京古典会からお知らせ】━━━━━━━━

東京古典会が制作した「DOCUMENTARY 和本 -WAHON-」を
期間限定でYouTubeにて公開中!

日本が世界に誇る文化遺産「和本」を取り巻く奇跡のドキュメンタリー!
特典映像、英語字幕つきも。リモート授業にご活用ください。

公開先と詳細はこちら
http://www.koten-kai.jp/wahon/detail/?id=16

東京古典会
http://www.koten-kai.jp/index/

━━━━━【8月7日~9月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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城北古書展

期間:2020/08/07~2020/08/08
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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好書会

期間:2020/08/08~2020/08/09
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2020/08/15~2020/08/29
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場
柏市南柏中央6-7

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センター南駅・港北古書フェア(神奈川県)

期間:2020/08/19~2020/08/28
場所:横浜市営地下鉄・センター南駅 駅構内

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ぐろりや会

期間:2020/08/21~2020/08/22
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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アオモリ古書フェア(青森県)

期間:2020/08/24~2020/09/22
場所:東奥日報新町ビル 3階New’sホール
〒030-0801青森県青森市新町2丁目2-11

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2020/08/27~2020/08/30
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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紙魚之會

期間:2020/08/28~2020/08/29
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第95回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2020/09/02~2020/09/08
場所:くすのきホール
(西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)

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有隣堂 藤沢店 4階古書フェア(神奈川県)

期間:2020/09/03~2020/09/16
場所:有隣堂 藤沢店 4階 ミニ催事場

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東京愛書会

期間:2020/09/04~2020/09/05
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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杉並書友会

期間:2020/09/05~2020/09/06
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2020/09/05~2020/09/06
場所:反町古書会館

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書窓展(マド展)

期間:2020/09/11~2020/09/12
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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好書会

期間:2020/09/12~2020/09/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第22回紙屋町シャレオ古本まつり(広島県)

期間:2020/09/14~2020/09/20
場所:紙屋町シャレオ中央広場 広島県広島市中区基町地下街100号

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日本の古本屋メールマガジンその304 2020.8.7

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

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第19回 カラーブックスとものかいさん 人生初のコンプリートを遂げたひと

第19回 カラーブックスとものかいさん 人生初のコンプリートを遂げたひと

南陀楼綾繁

 昨年、熊本市に取材に行った。その夜、〈舒文堂河島書店〉の河島さんに誘われて飲んだ席で、「カラーブックス」を集めているという女性に出会った。
 カラーブックスは1962~1999年に保育社が発行していた文庫サイズのシリーズで、さまざまなテーマが取り上げられている。タイトル通りカラーが満載で、古本屋で見つけるとちょっと持っておきたくなる。しかし、あれ、全部で何冊あるんだろう? と聞くと、彼女はすぐに「909冊です」と教えてくれた。
 彼女はその数か月後に「カラーブックスとものかい」というアカウントでTwitterを開始。1日1冊ずつ紹介している。なので、ここでは彼女のことを「カラともさん」と呼ぼう。
 次に熊本に行ったときにはぜひ取材したいと伝えてあったが、新型コロナウイルスの拡大によってしばらくは行けそうもない。というわけで、この連載では初めてのZoomでの取材となった。

 カラともさんは熊本県生まれ。
「最初の本の記憶は、家ではなくて幼稚園の図書室です。ちょっとうす暗い部屋で絵本を読んでいたこと覚えています。お気に入りだったのは『つきのぼうや』という海外の絵本。縦長のサイズで水色の表紙だったと思います」
 小学校の図書室にも通った。
「音楽室の隣にあって、明るくて広かったです。そこにいる女の先生がお姉さんみたいで好きでしたね。3年頃になると、『こちらマガーク探偵団』、江戸川乱歩の少年探偵団ものなどを友だちと競って読みました」
 家の周りには田んぼばかりで、母が買い物に行くときに小さい本屋に行ってコミックやマンガ雑誌などを買っていた。コバルト文庫で氷室冴子や赤川次郎なども読んだ。
図書館は公民館の中にあり、土曜日に学校が終わるとそこに行って、公民館で習い事をしている母が迎えに来るまで本を読んで待っていた。

 中学では、自転車で3、4キロ離れた学校に通う。剣道部に属していた。
「2年生あたりは、周りと調子を合わせるのが苦手で、休み時間にずっと本を読んでいました。その頃、熊本市の本屋にときどき行くようになりました。下通に〈紀伊國屋書店〉、上通に〈金龍堂まるぶん店〉と〈長崎書店〉がありました。気楽に入れたのは金龍堂、紀伊國屋はちょっと背伸びをしていく感じでしたね」
 高校は熊本市の私立女子高校で校則が厳しかった。図書館は蔵書が多く、閉架書庫もあった。先生に種田山頭火の本を読みたいと云うと、図書館で買ってくれた。
 大学に入り、国文学を専攻した。
「この頃はアルバイトや遊びで結構忙しくて、本からはちょっと遠ざかっていました」
 大学卒業後に司書の資格を取り、地元に新しくできた図書館に採用される。カウンターから移動図書館まで、なんでもやった。新しく入った本のなかから、面白そうな本を探して読んでいた。
 11年勤めてから図書館はやめたが、その後も図書館に関わる仕事に就いている。

 そんなカラともさんが古本屋に通うようになったのは、4年ほど前。
「会社の上司が本好きで、家に本が溢れていた(笑)。その影響で熊本市の上通にある〈舒文堂河島書店〉や〈天野屋書店〉、〈タケシマ文庫〉、熊本地震後にオープンした〈汽水社〉などに行くようになりました。本熊本(ぼんくまほん。ブックイベントの団体)の一箱古本市も覗いていました」
 そして、彼女は2017年秋から「カラーブックス」を集めはじめる。
「それ以前に買ったものが70~80冊ぐらい集まっていました。写真がメインで、一度読んで終わりでなく、ときどき手に取って眺めると楽しいし、カバーのインパクトもある。『源氏物語絵巻』『桂離宮』などが好きです。『人形劇入門』を読んで、人形劇の世界の奥深さを知りました。そのときはレーベルとして意識してなかったんですが、手元にあるカラーブックスを並べてみると、『これ、全部集まったらスゴイかも』と思うようになりました。ネットで検索したら、全部で909冊あると知って集める気になったんです」

Excelで番号順のリストをつくって、そのプリントアウトを持ち歩くようになった。
 古本屋も熊本市だけでなく、出張や旅行で行った東京や関西でも古本屋めぐりをする。
「奈良でも観光せずに古本屋ばかり回ってました(笑)。一軒の古本屋で100冊買ったこともあります。カラーブックスがきっかけで、いろんな古本屋さんに行けたのはよかったです。ただ、一日に7、8軒回ると荷物が重くなって、集中力が続かなくなる。カラーブックスは写真が多いので、意外と重いんです。キャリーケースに90冊ぎっしり詰めて、宅急便で家に送ったこともあります」
 カラーブックスは100円均一の棚でも見つかるが、これだけあると、レアで手に入らないタイトルが存在する。当然、古書価も高くなる。
「一番高いのは『すすきののママ101人』ですね。それに次ぐのが『レディーのノート』。おしゃれな写真が入っている人生訓みたいな内容で、著者が何者かよく判らないんです。福岡市の古本屋でこの2冊をいっぺんに見つけたときは嬉しかったです」
 私が持っているなかではレアだと思っていた、キダ・タローの『コーヒーの店 大阪』は「わりと見つかるほうです」と云われて、ちょっとがっくり。

 そして今年5月、ついに全冊が揃った。コンプリート達成である。
「最後の1冊は『東京で食べられるふるさとの味』。ヤフーオークションに180冊セットで出ていた中で見つけて買いました。本当は古本屋の店頭で見つけたかったんですけどね」
 180冊って……。179冊はすでに持っているのに、1冊のために買うとは。
「でも、その中に20冊ほど私が持っていない初版があったので、差し替えができました。本当は全部、初版・初刷で揃えたいんですが、まだ重版が170冊ほどあるんです」
 カラともさんによれば、カラーブックスは100番までは紙のカバーが付いているが、101番以降はなくなるといった変化がある。本の背に星が入っているものと入っていないものがあり、「背がきちんと揃うようにしたい」と云う。
 中身を読んだのは全体の2、3割で、電車、園芸などなじみがないテーマもあるが、判らないながらに見ていると面白く感じることもあるそうだ。
「シリーズの後半になると、エッセイ風で独りよがりな内容のものも増えます(笑)。だから、カラーブックスには拾い読みが似合います」
 では、カラーブックスの魅力はなんだろうか?
「刊行当時は、文庫本サイズ、低価格の手軽な百科事典というところが受けたのだと思います。表現や表記に時代を感じて、忘れていた子どもの頃を思い出すこともあります。いま、あの時代には戻れないから、かえって魅力を感じます」

 カラーブックスをきっかけに、古本屋通いに目覚めたカラともさん。古本屋についての本を読む機会も増えたという。
「店ごとに品揃えも雰囲気も違うので面白いです。いろいろ見ていくうちに、身近に感じられるようになりました。古本屋さんの仕事は苦労も多いと思うけど、憧れますね」
 自分でもいつか、古本屋になりたいという気持ちがあるそうだ。
 いま集めているのは、新書館の「フォア・レディース」シリーズ、昭文社の「ミニミニカラー文庫」、「平凡社カラー新書」など。ハンディでビジュアルなシリーズに魅かれるようだ。
 子どもの頃から集めるのは好きだが、熱しやすく冷めやすかったというカラともさん。コンプリートまで続いた初のコレクションが、カラーブックスだった。
「本という定型のカタチだから、集められたのかもしれませんね」と笑う。
 カラともさんは、次に何をコンプリートするのか。その報告を聞くのを楽しみにしている。

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

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古本屋開業記2

古本屋開業記2

古本&カフェ じゃらん亭 内山武明

前回、19号台風のことを書きましたが、今回はもう少し前の開業までのことも書いてみたいと思います。数年前から古本屋の開業を考えて、不動産を探し始めたのですが、なかなか条件に合うところが見つからずにいました。
不動産を探すうえでは、バックヤードなどの面積がある程度あること、家賃などの固定費があまりかからないことを重視し、商業的な立地はあまり重視しませんでした。地方ですと、場所によっては、面積の割にかなり安く借りることができますので、倉庫的な機能を重視することを考えていました。

あちこちの物件を見ましたが、徐々に観光地でなじみのある小布施町の物件に絞っていきました。町で斡旋する空き物件などもあるのですが、中心地の店舗として使われている建物以外は、あまり表に出てこないため、知り合いなどを通じて探すしかないと考え始めました。小布施町で行われていたイベントでの実行委員として、古本市を行うなどの手伝をしていると、空いている古民家があると紹介していただき、現在の建物をめぐり合いました。養蚕などを行っていた古民家で、面積も結構あったため、管理などに不安も感じたのですが、建物に魅力が有ったので、開業することを前提に片付けなどを行い、改修を行いました。不動産を探し始めてから、数年かかったと思いますが、その間に店舗に置くための在庫を増やすなどの準備を進めることもできました。周りは住宅地や農地なので商業的な立地としては、あまり良いところとは言えないのですが、その後の台風やコロナのことを考えると、固定費を抑えるようにしていたことは、結果的に良かったと思います。

扱っている本は、郷土の本や自然やアウトドアの本などを多くし、特色を出すようにしています。これからの古書店は専門店という考えもあります。地方で専門店というのはちょっと難しいかもしれませんが、品揃えに特色を出した方がいいと思っていました。特にネット販売などもできることを考えると、独自色を強めた店づくりに挑戦してみるのも面白いかもしれません。そんなことを考えていましたが、台風後に災害関連の本が求める人がいたこと、ここ数年、災害が多発していること(今年も)等から、災害や河川などの本を集めてみると面白いかも知れないと思いました。自然科学や野生動植物などの専門書店はありますが、地理の専門書店というのは、あまり聞きませんし、災害関連書籍の古書店というのも聞いたことがありません(あったら御免なさい)。

そうは言っても災害の本など簡単に集められるわけはありません。古本屋の仕入れは、主にお客さんからの買取と同業者間の交換会(市)の2種類になります。お客さんからの買取は、欲しいものが必ずしも入ってくるとは限りません。交換会では、ある程度欲しいものが手に入りますが、それでも災害関係の本などは、なかなか出てくることはありません。それでも災害関係の本を欲しいなどと同業者に話していると、伊那市高遠のA書房さんから、東日本大震災以降に集めていた災害の本があるが、在庫を整理しているので、見に来ないかという話がありました。訪れてみると関東大震災や長野県の水害、地震に関する貴重な本が多数あり、譲っていただくことになりました。その後も業者の交換会で地震や土砂災害に関する本が出てきたり、地理関係の本の買取の話があったりと、不思議と関係するものが集まり始めています。もしかすると、じゃらん亭「災害文庫」を立ち上げることができるかもしれないと妄想していますが、まだまだいつになるかわかりません。

jyaran

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2020年7月27日 第303号

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━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━━

刻々と変わる古書店の新入荷情報は、日本の古本屋トップページに
ある「新着書籍」にて常に更新! ぜひご覧ください。

☆INDEX☆
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1.古本屋ツアー・イン・ジャパンの2020年上半期活動報告
                古本屋ツーリスト 小山力也
2.『古本屋の四季』を語る       古書片岡 片岡喜彦
3.好きなことをやって生きていければ  石神井書林 内堀 弘
4.古本乙女の独り言(最終回) 或る古本者の閑話
                      カラサキ・アユミ

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━━━━━━━━【古本屋ツアー・イン・ジャパン】━━━━━━

古本屋ツアー・イン・ジャパンの2020年上半期報告

          古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也

 2011年からこの場をお借りし、古本屋さん調査に関する報告を、
畏れながらも手前勝手にさせていただいている。もはや十年目に突
入したわけであるが、十年もあれば、色んなことがある。思いもよ
らないことが起こったりする。日常の中の思いもよらない変化とい
うものは、人間の生活に時に潤いを与えてくれるものだが、その生
活自体を揺るがすような大きな変化は、人間を戸惑わせ不安にし、
未来の予測を困難にする。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6009

小山力也
2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売ってい
る場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン
・ジャパン』管理人。西荻窪「盛林堂書房」の『フォニャルフ』棚
で、大阪「梅田蔦屋書店」の古書棚で蔵書古本を販売中。
「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。
http://furuhonya-tour.seesaa.net/

━━━━━━━━━━━【自著を語る(244)】━━━━━━━━━

『古本屋の四季』を語る

                   古書片岡 片岡喜彦

 多くの読書家、愛書家と同じく、仕事に追われつつの年代・時期
は、毎日、新たに出版される本のなかから、興味あるテーマを扱っ
た本、関心を持ち注目している著者や作家、画家や写真家、歌人や
詩人の本があるとちゅうちょすることなく、買い求めてきました。
 それらの多くの本はわたしにとっては社会科学書でしたが、世の
人間の営みから生じる事件や事故、また政治的主張や行動を掘り下
げて、扱ったノンフィクション作品が好きでした。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6013

『古本屋の四季』 片岡善彦著
皓星社刊 1800円+税 好評発売中
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/huruhonnyanoshiki/

━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

好きなことをやって生きていければ

                石神井書林 内堀 弘

 坪内祐三さんは、今年の一月、急性心不全で突然亡くなった。
六十一歳だった。坪内さんと初めて会ったのは、この本の年譜を見
ると一九九二年とあるので、彼は三十四歳、私は四つ上なので三十
八歳だ。みなそうだろうが、三十代の頃、自分が六十代になるなん
て想像もしなかった。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6016

『本の雑誌の坪内祐三』坪内祐三著
本の雑誌社 2700円+税 好評発売中
http://www.webdoku.jp/kanko/page/4860114434.html

━━━━━━━━━━━【古本乙女の独り言】━━━━━━━━━━

☆古本乙女の独りごと(最終回) 或る古本者の閑話

                     カラサキ・アユミ

 古本屋にとって〝いいお客さん〟とは何だろう。色々な像が
浮かぶがシンプルに表現するとしたら答えは至極簡単で、百円でも
一万円でも店で買い物をする、つまりお金を使う人がそれに当ては
まるのは間違いない。もしくは、質の良い本を売りに来てくれる人
も該当するだろう。いやらしい言い方かもしれないが、商売の世界
ではそれが当たり前の単純な真実であることに変わりはない。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6005

古本乙女の独り言⑨ はこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5712

ツイッター
https://twitter.com/fuguhugu

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『本のリストの本』
南陀楼 綾繁 著 / 書物蔵 著 / 鈴木 潤 著 / 林 哲夫 著 / 正木 香子 著
創元社 定価:2,300円+税  8月25日発売予定
https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4128

『近代出版史探索3』 小田光雄 著
論創社 定価:6,000円+税 7月下旬発売予定
http://ronso.co.jp/

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

7月~8月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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 次回は2020年8月中旬頃発行です。お楽しみに!
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日本の古本屋メールマガジンその303 2020.7.27

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎

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古本屋ツアー・イン・ジャパンの2020年上半期報告

古本屋ツアー・イン・ジャパンの2020年上半期報告

古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也

 2011年からこの場をお借りし、古本屋さん調査に関する報告を、畏れながらも手前勝手にさせていただいている。もはや十年目に突入したわけであるが、十年もあれば、色んなことがある。思いもよらないことが起こったりする。日常の中の思いもよらない変化というものは、人間の生活に時に潤いを与えてくれるものだが、その生活自体を揺るがすような大きな変化は、人間を戸惑わせ不安にし、未来の予測を困難にする。『こんなことが起こるわけはない』『どうせ大したことにはならない』『いつも通りの生活がすぐに戻って来る』などの楽観的な観測が、時間の経過とともに次第に小さく薄まって行く恐怖…。だが、人間はそれでも、生きて行かねばならない。その変化に苦心惨憺対応して、暮らさねばならない。はっきりとした正解はまだ霧の中だが、足を止めるわけにはいかないのだ。それは、古本者の生活の最重要な一面でもある、『古本屋に行く』『古本を買う』という行為にもまた、同じことが言えるのだ。

 これは、新型コロナウィルスという未知の災厄に見舞われた世界で、感染予防に努めながら古本を求めて東京を彷徨う、ひとりの男の六ヶ月の観察記録である。

 一月、西荻窪「にわとり文庫」の毎年恒例『100均祭』を楽しみにしていたが、何と店主がインフルエンザに罹り、開催が延期となる。新年早々安値の良書を漁るのは、どうせ古本買いに塗れる一年の皮切りには相応しい行事なのだが、こういう時は致し方ない。だがその他に行きつけのお店で、古本福袋をいただいたり、お年玉代わりの図書カードをいただいたりと、結局は幸せなスタートを切る。三鷹「りんてん舎」も『均一祭』を開いて好評を博し、新たな楽しみを増やしてくれた。吉祥寺には雑居ビルの二階に「防破堤」が開店。背骨の硬そうな棚造りが魅力的である。西荻窪には映画ライターが店主のサロン的店舗「ロカンタン」が出来ていた。店主の職業通り映画本が中心のラインナップ。またすでに開店していて久しい横浜・黄金町の「楕円」も偵察。倉庫的店舗にカルチャー全般を集める魅力的な空間を作っていた。また、御茶ノ水では駅直上の「三進堂書店」が閉店。帳場のおやっさんの、自作のボヤき歌が聴けないのは寂しい限りである。他に大久保の路地裏にあった「修文書房」がこつ然と消えていたのを目撃する。

 二月、椎名町の「古書ますく堂」が突然の移転を発表、しかも新たな落ち着き先は大阪だと言う。詩獣の魔窟、西へ! 店主は広島のご出身なので、大阪・神戸には知り合いが多いそうだ。まぁあの豪放磊落な性格だから、どこでも楽しく古本を売って行くことだろう。また何処の駅からも遠い豊玉の住宅街に「潮路書房」という福祉系のお店が出現。わりと安値で本をカフェの奥の一部屋に並べている。この二月あたりから、『何だか悪い病気が流行っているらしい』と、新型コロナウィルスが、少しずつ身近に忍び寄って来た感がある。だが、まだまだ日本は暢気で、中国の大掛かりな感染対策なども対岸の火事を見ているようであった。

 三月、東小金井の街の古本屋さん「BOOK・ノーム」が閉店。これで東小金井には、一軒の古本屋さんも無くなってしまった…もはやご近所の新小金井の「尾花屋」に期待を寄せるばかりである。明大前の「七月堂古書部」では、日本パブリッシング「ヒチコックと少年探偵トリオ ささやくミイラの秘密」を千円で見つけて大喜びする。だが、そんないつもの古本屋さんを楽しむ生活は、月末になり、オリンピックの延期が決まった途端に感染者数が急増したり、都が感染への警戒を派手に促したり、志村けんが亡くなったり、すでに休業に入るお店も出たりと、突然坂道を転げ落ちるように変化して行くのである。

 四月、次第にコロナ騒動が拡大する中、さらに古本者にとって心を揺さぶる情報が伝わって来た。中央線の至宝、荻窪「ささま書店」が四月五日で閉店するというのである。突然の発表に、たった四日間の閉店セール…この期間は、当然の如くお店との別れを惜しむ客で連日賑わい、「ささま書店」の偉大さを改めて知らしめてくれたのであった。また東村山では、長らく改装のために休業中だった「なごやか文庫」が営業を再開。サッパリと白くキレイになり、まるで新古書店のように変貌を遂げたのである。だがそんな、感染に気をつけながらも、それなりに楽しく工夫して送っていた古本ライフは、四月八日に国の発出した緊急事態宣言により、寂しく激変することとなった。不要不急の外出を控え、他県への行き来も自粛するのが、一般市民の為すべきこととなったのである。そして東京都の休業協力要請により、多くの古本屋さんも自主的休業に入る事態となったのである。当然各所で予定されていた古本市の類いも、多くが中止となってしまった。街から人影は消え、路上にやたらとマスクが落ちている、静かで寂しい異常な春であった。巣ごもりが推奨されていたので、用の無い時は家に閉じこもり、この際良いチャンスだと、読書に興じる日々が多くなった。だがそれでも外出を要する日は存在するので、そんな時に素早く、感染防止に充分努めながら開けてくれている古本屋さんを、なるべく覗くように習慣づけて行った。そんな制限の多い中で、朝日新聞社「世界の民芸」を八十円で見つけたり、毎日新聞社「マイニチの人形絵本」を店頭無人販売の百均で十冊掴んだりと、まぁうれしいことも少しはあったのである。

 五月、そう言えば不忍の「一箱古本市」も中止になってしまった。そんなことを寂しく思いながら、国立駅前から、ちょっと脇の『国立デパート』内に移転した「みちくさ書店」を見に行ったり、西荻窪「古書音羽館」シャッター前に出された『お好きな本一冊お持ち下さい』コーナーに、古本心を癒されたりした。五月七日からは緊急事態宣言の延長が始まったが、この第二期には、チラチラと営業を始めるお店も増えて来た。もちろん人出の増える週末営業を避けたり、時短営業したり、マスク着用、手指消毒、帳場にはビニールカーテンなどの感染予防をしっかりと施した上での再開であった。そしてこれが緊急事態宣言解除後も、古本屋さんの普通の風景となってしまったのである。

 六月、宣言が解除されたとは言え、感染の恐怖はまだ現実のものとして常に身近に寄り添っている。だがそれでも、何はともあれ動き始める、新しい不自由な日常生活。徐々に再開した馴染みのお店を訪ね、ビニールカーテン越しに店主と久々に顔を合わせ、お互いの無事を喜ぶ。ちょっと大げさかもしれないが、普段は引っ込み思案の私も、さすがにこの時は多少の感動を禁じえなかった。古本屋さんが開いている素晴らしさ、古本が買える喜び、ここにあり! 三ヶ月ぶりの神保町パトロールも行うと、以前のように多数のお店をハシゴしたならば、何度も手指消毒することになり、指紋が消えてなくなりそうに手がス~ス~。だが、様々な活動が活発化し、営業が再開するとともに、その力は逆方向へも働き、閉店への動きも起こり始めてしまった。調布の「円居」は、元々五月一杯で閉店だったのが、コロナ禍のせいで六月十五日まで閉店を延ばし、店内全品百円セールを行った。また去年から休業していた阿佐ヶ谷の「ゆたか。書房」は、お店をもう一度開けることなく、七月の閉店前に本が運び出されてしまった…残念。是非ともオヤジさんにもう一度お会いしたかった。王子では大型店「山遊堂王子店」も三十日にその幕を閉じてしまった。

 かように想像を絶する激動の二〇二〇年前半となってしまったが、もはやこの状況で、これからもどうにかサバイヴしていくしかないことはわかり切っている。負けてなるものか。マスク装着と手洗いうがいを徹底して、どれだけ時間がかかろうと、精一杯乗り切ってやる。普通の風邪も引かないように気をつけよう。そして一刻も早く、この騒動が終息を迎えることを、切に願っておこう。阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」に散発的に棚出しされる古い探偵小説群もチェックしなければならないし、「ささま書店」跡地に新誕生するお店の行方も激しく気になるのだ。まだまだ古本屋さんに行かなければならない! まだまだまだまだ古本を買って、読まなければならないのだ! 



小山力也 2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』管理人。西荻窪「盛林堂書房」の『フォニャルフ』棚で、大阪「梅田蔦屋書店」の古書棚で蔵書古本を販売中。「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。
http://furuhonya-tour.seesaa.net/

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☆古本乙女の独りごと (最終回) 或る古本者の閑話

☆古本乙女の独りごと(最終回) 或る古本者の閑話

カラサキ・アユミ

 古本屋にとって〝いいお客さん〟とは何だろう。色々な像が浮かぶがシンプルに表現するとしたら答えは至極簡単で、百円でも一万円でも店で買い物をする、つまりお金を使う人がそれに当てはまるのは間違いない。もしくは、質の良い本を売りに来てくれる人も該当するだろう。いやらしい言い方かもしれないが、商売の世界ではそれが当たり前の単純な真実であることに変わりはない。

それでは対して、古本屋を利用するお客にとって〝いいお店〟の定義とは。掘り出し物や探している本がいつ訪れてもあるとか、店がある立地とか店主さんが優しいとか、お客の数だけ店に対して良しと評価する基準がそれぞれあるわけなのでそれこそ十人十色の答えがあり一辺倒にまとめることは難しい。ちなみに客側としての私の場合は、ただその場所に存在してくれているだけでもう百点満点の〝いいお店〟の評価に値する。

 人生頑張って最低でもあと四十年は生きたいとして、仮にその残りの時間でどれだけ未踏の店に行く事が出来るだろう。この春以来、家に籠らざるを得ない時間が増えた分このように改まって考える事も多くなった。 先のことは誰にもわからないし金銭的な部分や体力等もふまえると長い目で見据えてもどうやら全ての店を制覇するのは難しいようだ。そうして手元でパラパラとめくっていた全国古本屋地図をそっと閉じた。

 体験してなんぼ‼︎のスタンスで生きている自分にとって「古本屋に行って本を漁る」というのは一種の人生のテーマでもある。そんなワケで暇さえあれば地図片手に交通機関や宿の情報やらを調べながら無地の紙に架空の古本行脚旅のスケジュールを組み立て書き込みニヤニヤするのが日課となった。今や机の引き出しの中には決行待ちの旅程表が何枚も重なっている。

 実は、その引き出しには自分が居なくなった後の我が蔵書達の行く末について細かくしたためた古本遺言書なるものもひっそりと置いている。自分の身に万が一何か起こった時にはその白い封筒を開けるよう家人には伝えてはいるものの勿論、まだまだこの世を去る予定もつもりもなければ不測の貰い事故に遭遇しないよう注意を払いながら日々を過ごしている訳なので単なる飾りと化しているわけだが。

 何はともあれ、「ふらりと店に訪れて静々と古本を買って帰る」、この体が動く限り生涯現役で〝普通のいいお客さん〟でいたいと強く思う。

zenrenkarasaki10
『全古書連ニュース』より転載

karasaki10
東京古書組合発行 『古書月報』より転載

hibi
『古本乙女の日々是口実』皓星社
価格1,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/furuhonotome/

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shiki

『古本屋の四季』を語る

『古本屋の四季』を語る

古書片岡 片岡喜彦

 多くの読書家、愛書家と同じく、仕事に追われつつの年代・時期は、毎日、新たに出版される本のなかから、興味あるテーマを扱った本、関心を持ち注目している著者や作家、画家や写真家、歌人や詩人の本があるとちゅうちょすることなく、買い求めてきました。

 それらの多くの本はわたしにとっては社会科学書でしたが、世の人間の営みから生じる事件や事故、また政治的主張や行動を掘り下げて、扱ったノンフィクション作品が好きでした。作家名を挙げるとしたら澤地久枝、鎌田慧、本多勝一、高崎隆治、松下竜一、辺見じゅん、森崎和江といった人の作品でした。小説では、大佛次郎、吉村昭でした。若かりし頃は、司馬遼太郎にはまりましたが、読み物としては文句なく楽しいと感じつつ、歴史を動かしているのは、名もなき市民、国民、勤労者ではないかとの思いを深め、読んでいた記憶があります。

 写真家では土門拳、江成常夫、桑原史成、ユージン・スミス、大石芳野と岡村昭彦の初期の作品などです。わたしという人間が生きた時代がわかりますね。
 社会科学の分野では、カール・マルクス著『資本論』の理解や解釈を中心とする研究書などでした。
 こうして、本を読み進むと、本の最後に載る参考文献や本文中に引用されている本も読みたくなります。ですが、それらの多くは、すでに新刊書店では入手が困難な著作が多く、古本屋で探し求めなくてはいけなくなります。

 このことは多くのみなさんがすでに経験済みのことと思われます。新刊書は書店に、そんなに出版年月が古くなくても、新刊書店にない本は古本屋へ足しげく通い求めました。
 新刊書店で対面する店員さんはほとんど一期一会のようになってしまいますが、超零細事業店である古本屋は、いつも同じ親爺や夫人が番台に座り、にこやかな顔で出迎えてくれたり、難しい顔つきで客など知らぬふりだったりする個性豊かな「親爺」さんといわれる店主がいたりします。

 神戸の元町商店街にあった日本文学を専門とされていた親爺さんには、多くの人の語り伝えがあり、少し聞きおよんでいましたが、わたしにはとくに恐ろしいとった印象は受けませんでした。
 どの店か忘れましたが、店で叱られた経験が一度だけあります。函入りで表紙にセロハン紙の巻かれている本でした。本を函に戻そうとするのですが、あと少しで収まるというところまできて、セロハン紙が破けてしまいました。店主に、その旨を伝えると「破る前に言ってほしいな」と怖ろしい顔をされました。わたしはひたすらに謝りました。それ以上のお咎めがなく無罪放免となりましたが、その後、その店には行き辛くなってしまいました。

 さらに古本屋の親爺さん・店主としてでなく、人間的に素敵だなァ~と好意を抱くようになる店主との出会いもありました。その店は小学校の教師を中途退職されたおふたりで営む、文芸書を専門とされる小さな小さなお店でした。それなのに社会科学書やノンフィクション作品を求めている客にも居心地のよい対応でした。わたしは結局、その店で1冊も買うことがなかったのですが、ある日、店主が「片岡さんの尊敬する向坂逸郎先生も一文を寄せられている本がありましたから、どうぞ」とくださいました。その本はいまも、家の本棚に収まっています。

 この店は1998年5月で閉店されましたが、そのとき常連客のなかから、呼びかけ人がでて、『皓露抄』という冊子が20部だけ作られました。思い出記11編と詩1編が収録されています。
 このときは、まだ定年退職後の余生は古本屋をしたいとなどとは強く思っていませんでしたが、この店、この店主との出会いが、古本屋への道を歩ませたのだと思っています。
 このたび、皓星社から出版していただきました拙著『古本屋の四季』は、開業にむけ始動する6か月前から「古本屋の四季」と題して、書き継いできた拙文集です。古本屋の店主として応じた人と本との交わりであり、交差点かも知れません。そんな、わが「古書片岡」をお客さまやご近所さまは、どのように見ていてくださっているでしょうか? 知りたいものです。『日本の古本屋メルマガ』読者のみなさま、拙著をお読みいただき、わが店を訪ねてきてください。

 お待ちいたしております。心からの笑顔で。

shiki

『古本屋の四季』 片岡喜彦著
皓星社刊 1800円+税 好評発売中
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/huruhonnyanoshiki/

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tubouchi

好きなことをやって生きていければ

好きなことをやって生きていければ

石神井書林 内堀 弘

 坪内祐三さんは、今年の一月、急性心不全で突然亡くなった。六十一歳だった。坪内さんと初めて会ったのは、この本の年譜を見ると一九九二年とあるので、彼は三十四歳、私は四つ上なので三十八歳だ。みなそうだろうが、三十代の頃、自分が六十代になるなんて想像もしなかった。

 代々幡斎場で微笑みかけるような遺影を見た。そこに老いの影も感じなかった。老人になった坪内祐三を遂に見ることはないのだと私は思った。この先、顔のしわを増やしながら、『評伝山口昌男』を書き、『日本編集者列伝』や『昭和世相史』や『アンダーグランド精神史』を書いたのかもしれない。たくさんのことをやり残したはずだが、それでも、と思う。それでも彼は、三十代の頃には想像もしなかった歳まで生き、ものを書き続けた。

 『本の雑誌の坪内祐三』は、月刊「本の雑誌」に載った坪内さんの座談、対談、インタビュー、エッセイの内、単行本に未収録のものを集めた。たとえば冒頭のインタビューは三十代のもので、かと思うと去年の秋(というのは六十一歳)に書いたものもある。ここでは、三十代から六十代まで、坪内さんが関心を寄せたものを一望できる。

 読んでいて気づくのは、若いときの語り口と、晩年のそれがあまり(いや、ほとんど)変わっていないことだ。興味の所在、ものの面白がり方、大げさに言えばライフスタイルまで変わっていない。
 冒頭のロングインタビューは一九九六年のもので、坪内さんにはまだ一冊の著書もない頃だ。そこにこんなやりとりがある。

 (聞き手)ということは、三十八年間(註・このとき三十八歳)で働いたのは「東京人」  にいた三年間だけになりませんか。
 (坪内)そうですね。ずっとぶらぶらです。ただ『書物関係雑誌細目集覧』とか『幕末  明治研究雑誌細目集覧』とかいう本を見ていると、時間がどんどんたっていくんです  よ。ぼくは雑誌の総目次を見るのが好きなんです。
 

 今、この質問の「三十八年間」を「六十一年間」としても答えは同じだ。定職に就いたのは三年間だけで、後は「雑誌の総目次を見るのが好きなんです」のまま生きた。「雑誌の総目次」は、「本屋」や「古書店(展)」、「明治文学」、「現代アメリカ文学」、「追悼文」、「東映任侠映画」など自在に置き換えられる。それがこの本にある。つまり、好きなことをやって、生きてきたのだ。
 こう書くと、きっと実家が金持ちだからできたのだろうと思われがちだ。だが、この本を見ても、実業家である彼の父親は書類送検されたり、事業の失敗で実家が競売されたり、穏やかでない。金持ちどころか、経済的に破綻した実家を彼が支えることになる。いや、これは野暮な話だ。

 掲載の座談会で、新宿の高原書店(古書店)の「文庫と新書の棚は凄い」と話す場面がある。私はここが妙に印象的だった。坪内さんはこのときもう五十歳を越えていた。たとえば、五十を過ぎて、定職には就いてないけど、本をよく読んでいて、どうでもいいことをよく知っているおじさん、というのは、昔、親戚の集まりにいたものだ。おじさんは、法事の席で退屈そうにしている高校生の「僕」に「最近、新宿の高原書店の文庫と新書の棚が面白いよ」と教えてくれる。このおじさんが話すのは、珍しい本を見つけたという自慢話でも、店主とは飲み仲間だという内輪話でもない。そこに行けば、何かがはじまるかもしれない、という話だ。

 文化人類学の山口昌男さんは、私の店の古書目録をいつも丁寧に見て下さった。専門化すれば小さな店でも食べていける。それを愚直に信じていたから、目録は専門の近代の詩歌集にはじまり、都市モダニズム文献があって、はみ出したものを最後に「その他」とした。山口さんが「君の目録は頁が進むほど面白くなって、いつも最後が一番面白い」と言った。「なら、その他だけで古書目録を作るのはどうでしょう」そう話すと、「その他は、そう簡単に現れないよ」と笑った。

 『本の雑誌の坪内祐三』は、単行本に入らなかったものを集めた。「その他」が一冊になったのだ。一番面白いところだ。この本の中で、坪内さんは、まだ好きなことをやって生きている。

tubouchi

『本の雑誌の坪内祐三』坪内祐三著
本の雑誌社 2700円+税 好評発売中
http://www.webdoku.jp/kanko/page/4860114434.html

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2020年7月10日 第302号

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 古書市&古本まつり 第90号
      。.☆.:* 通巻302・7月10日号 *:.☆. 。
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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

古本屋開業記(台風来襲)

           古本&カフェ じゃらん亭 内山武明

昨年8月に長野県小布施町の片隅に古民家を借りて、古本屋を開店
しました。それまではネットや催事での古本販売を行っていました
が、数年前から物件を探し、ようやく開店にこぎつけることができ
ました。
小布施町は人口1万人ほどで、葛飾北斎が逗留したことや名産の栗
で知られる観光地です。新刊書店は以前にありましたが、今はなく、
古本屋は、ここ数年で2軒開店し、当店が2軒目になります。

続きはこちら
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━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第18回 亀田博さん アナキズムの図書館をつくるひと

                       南陀楼綾繁

 古本屋とアナキズムは相性がいい。と思うのは、私は古本雑誌
『彷書月刊』育ちだからだろうか。2010年に休刊した同誌では、
伊藤野枝、金子文子、竹中労、平民社、関東大震災などの特集を
組んでいたし、『初期社会主義研究』の広告も載っていた。そこ
で知った、アナキストたちのエピソードは、思想や運動に関わって
こなかった私にも興味深いものだった。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5996

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【7月10日~8月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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東京愛書会 ※新型コロナウイルスの影響により中止となりました

期間:2020/07/10~2020/07/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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大均一祭

期間:2020/07/11~2020/07/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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7月反町古書会館展(神奈川県)

期間:2020/07/11~2020/07/12
場所:神奈川古書会館1階特設会場

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趣味の古書展

期間:2020/07/17~2020/07/18
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第179回 神戸古書即売会(兵庫県)

期間:2020/07/17~2020/07/19
場所:兵庫県古書会館 

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たにまち月いち古書即売会(大阪府)

期間:2020/07/17~2020/07/19
場所:大阪古書会館 大阪市中央区粉川町4-1

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有隣堂センター南駅店・港北古書フェア(神奈川県)

期間:2020/07/18~2020/07/27
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン20台での古書販売

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和洋会古書展

期間:2020/07/24~2020/07/25
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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五反田遊古会

期間:2020/07/24~2020/07/25
場所:南部古書会館  品川区東五反田1-4-4

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中央線古書展

期間:2020/07/25~2020/07/26
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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我楽多市(がらくたいち)即売展

期間:2020/07/31~2020/08/01
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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杉並書友会

期間:2020/08/01~2020/08/02
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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アクロスモール新鎌ヶ谷古本市(千葉県)

期間:2020/08/02~2020/08/12
場所:アクロスモール新鎌ヶ谷 1F 
中央エレベーター前  千葉県鎌ケ谷市新鎌ヶ谷2-12-1

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城北古書展

期間:2020/08/07~2020/08/08
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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好書会

期間:2020/08/08~2020/08/09
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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次回メールマガジンは7月下旬に発行です。

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┌─────────────────────────┐
 次回は2020年7月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

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日本の古本屋メールマガジンその302 2020.7.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

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古本屋開業記(台風来襲)

古本屋開業記(台風来襲)

古本&カフェ じゃらん亭 内山武明

昨年8月に長野県小布施町の片隅に古民家を借りて、古本屋を開店しました。それまではネットや催事での古本販売を行っていましたが、数年前から物件を探し、ようやく開店にこぎつけることができました。

小布施町は人口1万人ほどで、葛飾北斎が逗留したことや名産の栗で知られる観光地です。新刊書店は以前にありましたが、今はなく、古本屋は、ここ数年で2軒開店し、当店が2軒目になります。長野県関係の本や自然、農業、アウトドア、旅行、地図、ちょっと懐かしめのマンガなどを中心に扱っています。

開店後、しばらくしてから、19号台風の来襲により、周辺地域は大きな被害を受け、1ヵ月ほど営業を休止することになりました。年が明けてから、イベントや宣伝に力を入れ、少しずつではありますが常連さんや買取も出てきたところで、コロナ禍に見舞われるなど、多難な船出になりましたが、何とか細々と営業を続けています。
郷土関係の本や資料には力を入れていたため、19号台風の後、千曲川(信濃川)の過去の水害に関する書籍や被害地域の市町村史を求めてくるお客さんがいました。子供たちに水害について、教えるための資料として探していたという方もおり、古本屋として、いささかでも役に立つことができ、うれしく思いました。

当店では地図も扱っており鳥瞰図や市街地図などもありますが、地形図なども好きで集めています。地形図は地味で、商売としては面白みに欠けますが、情報量は圧倒的です。地形や地理の専門家になれば、地形図だけから地質や土地の歴史、住民の生活など様々な情報も読み取れるようです。素人では、そこまできませんが、5万分の1地形図「中野」の昭和初期のものを見ると、19号台風で大きな被害を受けた浅川と千曲川の合流地域(有名になった新幹線車両基地の下流)は、桑畑が広がっており、人は住んでいる様子はありません。

地形図は実用品であるため、様々な書き込みがされているものも多く、登山ルートの書き込みがあるもの、開発予定地、道路や鉄道の予定が書き込まれたものもあれば、戦前の地形図では軍の演習に使われたのではないかと思われるような書き込みがあるものもあり、また、そうした書き込みのあるものを求める人もいます。

戦前は軍事目的から地図は作られていましたが、当時の地図では、水田は乾田、沼田、水田の3つに分けられています。これは、戦車が通れるところ(乾田)、戦車は通れないが歩兵が通れるところ(水田)、歩兵も通れないところ(沼田)だそうですが、今では水田の記号に統一されています。ところが戦前の地図の田んぼの地図記号は、今でも役に立ち、古い地形図を見ることで地盤の良し悪しを判定することができるそうです。

話を台風に戻しますが、30、40年前(筆者が子供の頃)にも、今回被害を受けた千曲川と浅川の合流地点では、水害が発生しており、友人の家が床上浸水になるなど生々しい記憶があります。しかし、若い人や他所から移り住んできた人には、聞いてみると、過去の災害については、あまり伝わっていないようです。千曲川などの大河川は、過去の水害などについて、まとめられた書籍がありますが、中小河川などでは、市町村史などを紐解かないと過去の災害について、詳しいことはわからないことも多いように思います。災害の記憶を繋いでいくことなども、地域の古本屋が貢献できることの一つかもしれません。

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