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『構成 高橋正人の遺した造形教育』 【大学出版へのいざない12】

『構成 高橋正人の遺した造形教育』 【大学出版へのいざない12】

白尾隆太郎(武蔵野美術大学教授)

 「デザイン」という言葉がまだなかった頃は「図案」と呼ばれ、自然の形を便化(便宜的に象徴化する)することで形を美しく表現することが基本であったため、学生はひたすら素描や模写などの修練をデザインの基礎学習としていた。日本のデザイン教育の原点は、こういった絵画由来の図案「デザインすること=絵を描くこと」に始まり今に至っているのである。

 1919年にドイツで始まったデザインの教育システム「バウハウス」の活動は、デザインをどのようにして学ぶかという意味では目覚ましい進化だった。なかでもモホイ=ナジの新しい造形への考え方や予備課程における教育プログラムは、デザイン教育を体系的に実践する方法として多くの示唆を世界に与えたのである。

 高橋正人は、バウハウスの予備課程の教育プログラムやモホイ=ナジの先進的な造形理論に共鳴し、1949年、東京高等師範学校から新たに大学として制度化された、東京教育大学(現筑波大学)教育学部芸術学科に構成学専攻を創始したのだった。同専攻は“構成”という造形研究をカリキュラムの中心に据え、写真表現の可能性や構成原理に基づく造形(形態、色彩、光、立体造形など)の研究、幾何学的形態の研究などを基礎として、造形の可能性を純粋に追求する教育プログラムを実践したのである。

 高橋は1912年に高知で生まれ、得意な美術を生かし東京高等師範学校の教員として、日本の中等教育における美術のあり方を研究し、新しい美術の学習を子供たちに向けて著しながら、一方で大学における造形の専門教育として、“構成”教育を創始し発展させていったのである。本書では、図案教育と一線を画し、純粋造形を対象にした“構成”教育とはどんなものだったのかを、高橋の全著作を読み解きながら解説している。

 図案教育は、自然の形を抽象化、記号化、図形化することで、形を美しく表現しながら、意味を明解に先鋭化することなのだが、デザインが絵画的な表現に倣った時代から、抽象的で感覚的な効果が求められるようになるにつれ、バランスやリズムや立体感など、形の機能的な側面が重要になり、今では意味と造形を総合的に考えられる力、すなわちヴィジュアルデザインこそがデザインに求められる素養となっていったのである。

 「新しい現代の造型は、色とか、線とか、形とか、地肌とか、コンポジションとか、リズムとかいうようなものに対する、直接的な知覚をもととするものである。そして、そのような知覚は、すべて人間が本来もっているものであって、何も特別なものではない。」と高橋が著しているように、体系的な造形の学習を通して、誰もが得られる感覚であるとしているところが“構成”教育の理念といってもいいだろう。さらに高橋は“構成”の目的を「思いつきではない系統的な形の発想」「専門と基礎デザインは平行に進み、専門が高度化するとともに、基礎デザインも高度の形態・色彩の研究に進んで、専門の発展に寄与するように考えられている。」などとも記述している。

 造形とコンピュータは切り離せない時代となったが、ひらめきや思いつきで造形を考えるのではなく、数値に裏づけられた形を系統的に発想しながら「美」を追求することは依然重要な課題である。“構成”の教育は過去のデザイン造形の基礎ではなく、コンピュータを使って造形する今だからこそ必要な造形教育なのである。

 私は21年間、武蔵野美術大学でデザイン教育に携わり、これまで教科書という形では数々書籍を出版してきたが、大学を退任するにあたり、長年の懸案であった高橋正人の“構成”という教育を広く知っていただきたいとの考えから、自分が納得のいく本を作りたいと思った。一般的には「自著自装」といわれるが、デザインとは「装う」ことではなく、内容をどのように視覚化するかであるため、文章を書きながらデザインし、デザインしながら文章を書くこととなったのである。

 本書のデザイン要件は、自らが大学時代に受けた“構成”という教育プログラムはどのような意味があったのか、卒業生の中で最も活躍したグラフィックデザイナー勝井三雄は何を高橋から授かったのか、そして“構成”を活かすためには、今の学生に何を伝えるべきかであった。

 まず初めに、高橋正人の全著作と書籍の概要をデザインすることから始めた。バウハウス→ウルム造形大学、東京高等師範学校→東京教育大学→筑波大学、そして帝国美術学校→武蔵野美術大学など、デザイン教育を担ってきた学校の約100年に及ぶ系譜を軸に、全著作の書影を配することで高橋が生きた時空間が浮かび上がってきた。「自著自装」は「編集する」「文章を書く」「デザインする」を総合的にひとりで成し遂げることであるが、デザインすることで見えてくる世界と、求めている世界が見事に一致した時の満足感は、長年出版に携わってきたデザイナーとして、まさにデザインする意味とその成果を感じる経験であった。

 
 
 
 
 


書名:『構成 高橋正人の遺した造形教育』
著者名:白尾隆太郎
出版社名:武蔵野美術大学出版局
判型/製本形式/ページ数:A4判変型、並製、256頁
税込価格:3,850円
ISBNコード:ISBN978-4-86463-159-4
Cコード:C3072
好評発売中!
https://www.musabi.co.jp/books/b463159/

Copyright (c) 2023 東京都古書籍商業協同組合

2023年11月24日号 第383号

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1.『構成 高橋正人の遺した造形教育』
                  白尾隆太郎(武蔵野美術大学教授)

2.『大正期北海道映画史』
                            前川 公美夫

3.敗北を克服する松廼家露八(まつのやろはち)の力加減
 『彰義隊、敗れて末のたいこもち—明治の名物幇間、松廼家露八の生涯』

                              目時美穂

4.『競馬本温故知新』
               大久保秀雄(競馬専門古書店蓑虫屋店主)

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━━━━━━━━━【大学出版へのいざない12】━━━━━━━━━━━

『構成 高橋正人の遺した造形教育』
                  白尾隆太郎(武蔵野美術大学教授)

 「デザイン」という言葉がまだなかった頃は「図案」と呼ばれ、自然の形
を便化(便宜的に象徴化する)することで形を美しく表現することが基本で
あったため、学生はひたすら素描や模写などの修練をデザインの基礎学習と
していた。日本のデザイン教育の原点は、こういった絵画由来の図案「デザ
インすること=絵を描くこと」に始まり今に至っているのである。

 1919年にドイツで始まったデザインの教育システム「バウハウス」の活動
は、デザインをどのようにして学ぶかという意味では目覚ましい進化だった。
なかでもモホイ=ナジの新しい造形への考え方や予備課程における教育プログ
ラムは、デザイン教育を体系的に実践する方法として多くの示唆を世界に与
えたのである。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=12640

書名:『構成 高橋正人の遺した造形教育』
著者名:白尾隆太郎
出版社名:武蔵野美術大学出版局
判型/製本形式/ページ数:A4判変型、並製、256頁
税込価格:3,850円
ISBNコード:ISBN978-4-86463-159-4
Cコード:C3072
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━━━━━━━━━━━【自著を語る(315)】━━━━━━━━━━━

『大正期北海道映画史』
                          前川 公美夫

 「他の仕事にかかっていたので、後から拝読しようと思いながら、
『はじめに』と『道内新聞事情』を読み始めると、ついつい『弁士と楽
士』の章まで読んでしまいました。」

 本を差し上げた親しい知人からのメールで、後日会った時には「弁士っ
てあんなに勝手なことをやってたんだ。面白いねぇ」という言葉を聞か
せてくれた。「勝手なこと」の最たるものは映画の題名を変えての上映
だが、婦女誘拐や賭博など悪事も多い。そんなことを細大漏らさず書い
たつもりのものが『大正期北海道映画史』(亜璃西社)である。

 メールにあった「弁士と楽士」は本書の第1章である。また「道内新
聞事情」は資料探索の過程で得た当時の新聞発行状況を描いたもので、
現在との違いの大きさに驚き「序章」とした。以下、各章のタイトルと
主な内容は次のようである。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=12646

『大正期北海道映画史』
亜璃西社刊
前川公美夫著
税込価格:4,400円
ISBNコード:978-4906740598
好評発売中!!
https://www.alicesha.co.jp/books/0322/index.html

前川 公美夫(まえかわ・くみお)。
1948年北海道登別市生まれ、室蘭市育ち。
71年北海道大学工学部建築工学科卒業。
北海道新聞社で文化部長、編集委員などを務めたのち退職。
2010-14年(公財)札幌市生涯学習振興財団理事長。著書に
『北海道洋楽の歩み』(北海道新聞社)、『北海道音楽史』
『響け「時計台の鐘」』(各亜璃西社)、
『頗る非常! 怪人活弁士・駒田好洋の巡業奇聞』(新潮社)、
『明治期北海道映画史』(亜璃西社)がある。

━━━━━━━━━━━【自著を語る(316)】━━━━━━━━━━━

敗北を克服する松廼家露八の力加減
『彰義隊、敗れて末のたいこもち—明治の名物幇間、松廼家露八の生涯』

                            目時美穂

 いまから百数十年まえ。明治維新は、幕府をたおした薩長を中心とし
た討幕勢力という勝者と、破れた旧幕府側という敗者を生みだした。本
書では敗者の側におかれた、ひとりの男の生涯を追う。男の名を土肥庄
次郎(のちの松廼家露八)という。

 彼は天保4年、御三卿の一家、一橋家の家臣の家の跡取りとして生まれ、
昔ながらの武士気質の気まじめな父の薫陶をうけて育った。が、模範的な
武士にはならず、長じてからは酒と女に耽溺し、悪友とつるんで遊びまわ
るようになり、廃嫡された。さらには、吉原にいすわって、ついに武士を
捨てて幇間になってしまった。そして、息子が幇間をしていることを知っ
て激怒した父から逃れて、西国に逐電し、以後2年間、気ままな放浪生活
を送った。

 庄次郎こと露八に、明治という勝者の世を、敗者として生きる人生がは
じまった。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=12696

『彰義隊、敗れて末のたいこもち—明治の名物幇間、松廼家露八の生涯』
文学通信刊
目時美穂著
税込価格:2,750円
ISBNコード:9784867660201
好評発売中!!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-86766-020-1.html

━━━━━━━━━━━【自著を語る(317)】━━━━━━━━━━━

『競馬本温故知新』
             大久保秀雄(競馬専門古書店蓑虫屋店主)

 本書は、KADOKAWA刊行の競馬月刊誌『サラブレ』に連載したコラム
をまとめたものです。連載は思いのほか長く、雑誌休刊まで6年半以上
続きましたが、単行本化はこのご時世なかなかむずかしいようで出版社
からは出すことは叶わず、それならばと自分で出すことにしました。

 内容は簡単に言えば競馬古書に関するコラムです。ただ、ディック・
フランシスや大橋巨泉、井崎脩五郎らは名前は出てきても本の紹介はし
ていません。出てくるのは石塚栄五郎や出羽卓次郎、井上康文といった
面々です。連載中からマニアックすぎるいう声もありましたが、テーマ、
取り上げる書籍は基本的にはこちらで決め、かなり自由に書かせてもら
いました。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=12713

『競馬本温故知新』
蓑虫屋刊
大久保秀雄著
税込価格:2,000円
ISBNコード:978-4-600-01107-9
好評発売中!!
https://minomushiya.com/?pid=177730454

蓑虫屋ウェブサイト
https://minomushiya.com/

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━━

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「大学出版へのいざない」シリーズ 第13回

書名:『政治学原論講義』
著者名:下條慎一
出版社名:武蔵野大学出版会
判型/製本形式/ページ数:A5判/上製/232P
税込価格:2,970円
ISBNコード:978-4-903281-62-9
Cコード:C0031
2023年12月上旬発売予定!
https://www.ajup-net.com/bd/isbn978-4-903281-62-9.html
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『本の虫 二人抄』
ゆいぽおと刊
古田一晴・劉 永昇著
税込価格:1,760円
ISBNコード:978-4877585624
好評発売中!
https://www.yuiport.co.jp/book/view/131/
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『和本図譜 江戸を究める』
文学通信刊
日本近世文学会編
税込価格:2,090円
ISBNコード:978-4867660256
好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-86766-025-6.html
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『矢橋丈吉を探して『自伝叙事詩 黒旗のもとに』を読む』
文生書院刊
戸田桂太著
税込価格:3,520円
ISBNコード:978-4-89253-655-7
2023年12月8日発売予定!
https://www.bunsei.co.jp/category/original/new-publication/
https://bit.ly/3RawB74
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敗北を克服する松廼家露八(まつのやろはち)の力加減 『彰義隊、敗れて末のたいこもち—明治の名物幇間、松廼家露八の生涯』

敗北を克服する松廼家露八(まつのやろはち)の力加減 『彰義隊、敗れて末のたいこもち—明治の名物幇間、松廼家露八の生涯』

目時美穂

 いまから百数十年まえ。明治維新は、幕府をたおした薩長を中心とした討幕勢力という勝者と、破れた旧幕府側という敗者を生みだした。本書では敗者の側におかれた、ひとりの男の生涯を追う。男の名を土肥庄次郎(のちの松廼家露八)という。

 彼は天保4年、御三卿の一家、一橋家の家臣の家の跡取りとして生まれ、昔ながらの武士気質の気まじめな父の薫陶をうけて育った。が、模範的な武士にはならず、長じてからは酒と女に耽溺し、悪友とつるんで遊びまわるようになり、廃嫡された。さらには、吉原にいすわって、ついに武士を捨てて幇間になってしまった。そして、息子が幇間をしていることを知って激怒した父から逃れて、西国に逐電し、以後2年間、気ままな放浪生活を送った。

 そんな「軟派」な生き方をしていたにもかかわらず、幕府滅亡に際しては、ただ座して敗北を見送ることをよしとせず、庄次郎は、四人の弟(土肥家の男子全員)を引き連れて、彰義隊にくわわり上野にたてこもって戦い、戦友とみずからの血と汗にまみれた。箱館が陥落し、戊辰戦争がおわったとき、庄次郎は37歳であった。

 庄次郎こと露八に、明治という勝者の世を、敗者として生きる人生がはじまった。

 国破れてのち、露八は古巣の吉原で幇間をはじめた。だが、べつに、かつての敵、勝者に頭をさげるというマゾヒズム的な行動原理で幇間になったのではない。生活のため、生きていくために、身についた技術をいかしたのにすぎない。その証拠に、明治9年頃には妻のお徳とともに静岡に移住し、さまざまな商売の起業をして生活を立てようと奮闘しているのだ。しかし商売というのは、思いつきだけで簡単にできるものではない。

 結局失敗を繰り返して、東京にもどり、すでに56歳という当時では老年ともいえる年齢になっていた露八は、若者ばやりの吉原で、同業者や御茶屋に迷惑がられながらも苦労して幇間に復帰した。

 露八が松廼家の屋号を名乗るようになったのはこのときからだ(それ以前は荻江)。彼の名物幇間としての名声もこのときからはじまったといっていい。これまでの吉原や静岡でのこま切れの芸歴は、もちろん露八にとって顧客の人脈作りなどには益したかもしれないが、もし、このあと、彼が幇間として名をなすことがなかったならば、彼の存在は時代のなかに埋没し、風化して、記録にも記憶にも残ることはなかっただろう。

 しかし、人生の晩年にさしかかっていたこの老幇間が、いきのいい若手を御していちばん人気の幇間のひとりとなり得たのはなぜだろう。客に喜ばれたという仁王や狸をまねた芸だけでは、仮にそれがいくらすぐれていたとしても突出するのはむずかしかったのではないだろうか。

 露八の魅力は、芸よりも人格、その存在自体にあったにちがいない。かつての彰義隊の同志、本多晋は、客に媚びを売るでも、へつらうでもなく、幇間としての芸を売って堂々と生きる露八の姿を「洒々落々」といった。ものごとにこだわらないさっぱりした性格のことをいう。若年の露八の行動を見るに、江戸っ子らしい一本気な直情さは見受けられるが、直情的であることと、ものごとにこだわらないということはほぼ逆である。しかし、一本気な直情さからよけいな熱をとれば、腹に一物も持たないまっさらなものが残る。苦労の歳月は、彼からよけいな灰汁をぬき、その人格を磨きあげたのである。

 日本には「水に流す」という言葉がある。よい言葉だと思う。「水に流す」ことができなければ、100年でも1000年でも憎しみはそこにわだかまることになる。露八は、明治の世を生き抜くために、敗者として抱いていた様々な感情を水に流したのだろう。だが、もちろん流せないものもある。水を堰いて残ったものは、それなしでは自分が成り立たないほどのこだわり、その人の存在をかけた矜恃とでもいうべきものだ。露八が、けして水に流すことができなかったもの、それは毒舌・皮肉な性格、毎年かかさぬ亡き戦友たちへの追悼、彰義隊の生き残りとしてのふるまい、武人としておもかげなどとして残り、それが、お座敷の遊客をも惹きつけた彼の人間としての魅力のひとつであっただろうことはいうまでもない。

 敗者復活の手段は無数にある。だが、敗者の立場にこだわってなされたそれに、あまり幸福そうな成功例を知らない。敗者が敗者であることを手放したとき、精神の自在さを得る。大切なものは胸に秘め、人生をしばるもろもろの感情は水に流した松廼家露八のしなやかで懸命な生き様は、勝者、敗者にかかわらず、人が生きるためのちょうどよい力加減を教えてくれるように思うのだ。

 
 
 
 


『彰義隊、敗れて末のたいこもち—明治の名物幇間、松廼家露八の生涯』
文学通信刊
目時美穂著
税込価格:2,750円
ISBNコード:9784867660201
好評発売中!!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-86766-020-1.html

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『競馬本温故知新』

『競馬本温故知新』

大久保秀雄(競馬専門古書店蓑虫屋店主)

 本書は、KADOKAWA刊行の競馬月刊誌『サラブレ』に連載したコラムをまとめたものです。連載は思いのほか長く、雑誌休刊まで6年半以上続きましたが、単行本化はこのご時世なかなかむずかしいようで出版社からは出すことは叶わず、それならばと自分で出すことにしました。

 内容は簡単に言えば競馬古書に関するコラムです。ただ、ディック・フランシスや大橋巨泉、井崎脩五郎らは名前は出てきても本の紹介はしていません。出てくるのは石塚栄五郎や出羽卓次郎、井上康文といった面々です。連載中からマニアックすぎるいう声もありましたが、テーマ、取り上げる書籍は基本的にはこちらで決め、かなり自由に書かせてもらいました。
 
 連載のそもそものきっかけは古書目録でした。古本屋になったからには一度ぐらいは古書目録を出してみたいと思い、2012年に『蓑虫屋古書目録1』を出しました。在庫の中からピックアップしたものに新蒐集品を加え、巻頭特集は「戦前の地方競馬」としました。商品点数は600点、60頁のほどのささやかなものでしたが、今見ても割と良く出来ているような気もします。400部作成し、350部は当店のお客様に送付、一部は古書会館の受付にも置いたので、お手にとっていただいた方もいるかも知れません。残りは競馬マスコミ関係者の方々にお送りしました。あまり反応はなかったのですが、面白がってくれた一人が『サラブレ』の編集者さん。「なにかやりませんか」と声を掛けていただきましたが、このときは自信も余裕もなくお断りしました。ちなみに目録は「1」と付けましたが結局「2」は出せていません。
 
 その数年後、その編集者さんと血統評論家の栗山求さんの「一度蓑虫屋さん行ってみたいよね」という会話から実現したのが、『サラブレ』の別冊のようなムック『サラBLOOD! vol.3』の「日本最王手の競馬古書店蓑虫屋の書棚を見た!」という記事。栗山さんと私の対談という形式でしたが、栗山さんが住居兼事務所の当店に来て、二時間ほどあれやこれやと雑談して、本を買って帰るという感じで、こんなので大丈夫だろうかと思いましたが、編集者さんが見事にまとめて六頁ほどの記事になって掲載されました。この取材時に、再度声を掛けていただき、せっかくの機会ですし、思い切ってやってみようかということで連載は始まりました。

 取り上げた書籍の中で一番印象深いのは石塚栄五郎著の『輸入サラブレッド種馬名簿』。石塚は戦前小岩井農場の馬産を牽引した馬づくりの名人の一人で、戦後は軽種馬生産農業協同組合(後に日本軽種馬協会)の理事として活躍しました。組合がサラブレッド資源の不足を補うため、海外から種牡馬、繁殖牝馬を一括購入し、生産者に抽選頒布する事業で英国に赴き馬の選定・購入したのが石塚でした。この本は輸入した種牡馬1頭と繁殖牝馬19頭について、血統・繁殖成績、父や母の競走成績や繁殖成績などをタタソールズ社のセリ名簿風に記載したもの。父馬などの生写真を貼り込んだものは十部程度しか作成されなかったようです。このとき輸入された牝馬の系統からはミスターシービーをはじめ数多くの活躍馬が誕生しています。

 この本は、石塚と直接面識があったお客様からお売りいただきました。石塚は自身が寡筆だったこともあり、大変な業績をあげたにも関わらず書かれたものは多くありません。この方もそれを残念に思っていたようで、掲載された記事をお送りしたところ、大変喜んでいただけました。

 禄に文章も書いたことがない人間が、多くはないとは言えそれなりの分量の文章を毎月書くのはとても大変で時間がかかりました。書いているうちに気になることが出てきて国会図書館まで行って資料にあたったり、時には他の古本屋さんから購入したりと随分手間暇かかりました。大変でしたが充実感もあり、あまり他の人が書かないものになったのではないかと思います。

 当店ウェブサイトの販売ページで目次と1回分「有馬記念に名を残すJRA二代目理事長有馬頼寧の功績」という回を公開していますので、ご覧いただけると嬉しいです。

 
 
蓑虫屋ウェブサイト https://minomushiya.com/

 
 
 
 


『競馬本温故知新』
蓑虫屋刊
大久保秀雄著
税込価格:2,000円
ISBNコード:978-4-600-01107-9
好評発売中!!
https://minomushiya.com/?pid=177730454

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大宅壮一文庫 「集団知」が生んだ雑誌の宝庫 【書庫拝見19】

大宅壮一文庫 「集団知」が生んだ雑誌の宝庫 【書庫拝見19】

南陀楼綾繁

 10月4日、京王線・八幡山駅に降りる。外は雨が降っている。電車の乗り換えで手間取り、約束の時間に遅れそうなのでタクシーに乗る。左手には松沢病院が見える。

 大宅壮一文庫(以下、大宅文庫)の前に着くと、事務局次長の鴨志田浩さんが出迎えてくれた。開館時間より前なので、職員通用口から中へと入る。

大宅壮一文庫外観

 大宅文庫は、いわずと知れた雑誌の図書館だ。私がその存在を知ったのは、1986年に大学に入った頃だ。学部の図書室で前年に刊行された『大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録』全13巻を手に取った。

 人名編と件名編に分かれていて、後者は「政治・その他」「探検・移民」「天皇」「戦争」「犯罪・事件」「世相」「奇人変人」「マスコミ」「日本研究」「地方」など33の大項目に分類されている。「奇人変人」には「ビックリ人間」「天才」「英雄論」「ソックリさん」「ヌーディスト」「ストリーキング」「猟奇的なもの」「珍談」などの項目があり、そこに出てくる雑誌や記事のタイトルを眺めるだけで時間が過ぎていった。

『大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録』

 これらの分類は、図書館の十進分類法と異なる、大宅壮一独自のものだ。

 大宅は1900年(明治33)、大阪生まれ。東京帝国大学を経て、1926年(大正15)、『新潮』に書いた「文壇ギルドの解体期」で、ジャーナリストとしてデビューする。戦後は評論家として活躍し、「一億総白痴化」「駅弁大学」などの流行語を生みだした。

 現在の大宅文庫がある場所は、もともと大宅の自宅だった。戦時中の1944年(昭和19)、食糧難を見越し、自給自足の生活をしようと考えた大宅は、八幡山に土地を見つける。当時、まだ八幡山駅はなく、上北沢駅から田圃道を歩いてようやくたどり着いたと、妻の大宅昌は回想する(『大きな駄々っ子 夫・大宅壮一との40年』文春文庫)。

 建築好きだった大宅は、その土地に自宅を建てた後、増築を重ねている。1955年には庭先にブロック造り2階建ての書庫を建築した。ここが「雑草文庫」になるのだった。

雑草文庫から大宅文庫へ

 1952年、大宅は『実録・天皇記』(鱒書房)を発表。このときから資料を収集しはじめる。助手を務めた草柳大蔵は、次のように回想する。
「大宅氏は即売会があると、私を伴って必ず出かけた。自分がゆけないと私に三万円か五万円かをわたし、『すこしくらい高いと思っても必要なものはおさえるんだよ』と念を押した。私は、百円札や千円札の札束を手にしてふるえながら、即売会に入っていった」(大宅壮一『実録・天皇記』角川新書、解説)

 また、講演などで地方に出かけると、かならず古本屋に寄った。そこには大宅の「裏町好き」が反映していると、草柳は指摘する。
「大宅さんは、こういうツルンツルンの町が嫌いだった。すぐに横丁や裏道に入りたがるのである。 そして、古本屋は必ずそのような町筋にあった」(「助手の役得 大宅壮一の古本屋めぐり」『大宅文庫ニュース』第13号、1978年11月)

 同じ文章で、草柳は大宅に叱られたと書いている。
「なんだ、君は。いい歳をして本を読んでいるのか」(略)「君な。本はいちいち読むものではないよ。本は、引くもんなんだ」

 1956年、大宅の秘書を務めた奥田史郎は、大宅から書庫に呼ばれた。
「積み上げた山は、『政治』『経済』『天皇』『左翼』『右翼』『女もの』などに分類して、また棚に戻された」(「大宅文庫の草わけ時代」『大宅文庫ニュース』第32号、1988年9月)

 そういった分類に基づき、図書カードを記入する作業を行なった。
「『重要なものだけをとるようにしたらどうですか』とМさんが提案したとき、ジロリと『重要か重要でないかを誰がどうして決めるのかね』と答えた先生の態度が今でも印象に残っている」(同)

 大宅がこのとき、自分にとって必要なものだけをカードに記入させていたら、大宅文庫は誰もが利用できる図書館にはならなかっただろう。

 1957年には大宅が中心となり、「ノンフィクション・クラブ」を結成。青地晨、蘆原英了、藤原弘達、草柳大蔵、梶山季之らが集まった。メンバーだった末永勝介は「従来めぐまれなかったノンフィクション物にたずさわるライターを、大宅さんは個人でバックアップしようという気持があったようである」と書く(「ノンフィクション・クラブ」、『大宅壮一読本』蒼洋社。ただし末永は「昭和三十三年」と書いており、1年のズレがある)。

 このクラブのメンバーだった杉森久英は、雑草文庫の資料についてこう書く。
「これらの中には、正確さという点ではどうかと思われ、アカデミックな研究の資料にならないものも多かったが、そういうものの中に、ある人物なり事件なりの核心を一言でとらえたものもあって、単なる事実の羅列より参考になった」(「雑草文庫のこと」『大宅壮一読本』)

 大宅は1970年11月に亡くなるが、蔵書をマスコミ界に役立てたいという遺志を受けて、1971年5月に「財団法人大宅文庫」が設立された(1978年に「財団法人大宅壮一文庫」に改称)。出版社に協力を呼び掛け、雑誌の寄贈を募った。
開館当初の利用者は一日4、5人だったが、1974年、立花隆が『文藝春秋』に「田中角栄研究」を書くために、大宅文庫を活用したことが知られると、マスコミ関係者の利用が増えた。

 立花は「大宅文庫なしには『田中角栄研究』をはじめとする私の幾つかの仕事は、ほとんど不可能だったろう」とまで書く(阪本博志「大宅壮一と大宅壮一文庫」、阪本博志編『大宅壮一文庫解体新書 雑誌図書館の全貌とその研究活用』勉誠出版)。

 1985年からは会員向けのファクスサービスを開始。この年に起きた日航機墜落事故では、職員総出でファクス送付に対応したという。

1階の閲覧室

たわむ本棚

 大宅文庫に所蔵されている雑誌は現在、約1万3000誌、約80万冊。そのうち、約1万2000誌、約52万冊が八幡山の本館、残りは埼玉の越生分館に所蔵されている。
『大宅壮一文庫所蔵総目録』(皓星社)の阪本博志の解説によれば、所蔵雑誌は、(1)『キング』『主婦の友』『中央公論』など「それぞれの時代を知るためには柱となるような雑誌」、(2)『女性』『思想』など「マスマガジンではないものの、それぞれの時代のある断面を知るうえで重要な雑誌」、(3)『草の実』『ベ平連ニュース』などの「ミニコミ」、(4)『インドネシア時報』『週刊公論』など「大宅個人とかかわりの深い」雑誌、に分類できるという。

 同館の書庫は何度か見学しているが、来るたびに圧倒される。

情報系の雑誌が並ぶ棚

 1975年に書庫・事務室を増築し、1985年には新館を増築した。
「私は1985年の増築時に、本を移動するためのアルバイトとして入ったんです」と、鴨志田浩さんは話す。当時通っていた日本ジャーナリスト専門学校で、総合科のクラス担任だった末永勝介から「ヒマなら来い」と誘われたという。末永は大宅文庫の専務理事を務めていた。
「大宅邸の書庫から新館に本を移動させました。エアコンなしの中での作業はきつかったです」

 雑誌は発行される限り、かならず増殖していく。それだけに、大宅文庫では本棚の雑誌を移動させることは日常茶飯事だという。
「週刊誌は3年ごとに棚を動かして、次の3年分のアキを確保するんです、だから、時期によって配置が変わるんです」と、鴨志田さんは話す。

週刊誌が並ぶ棚

『週刊朝日』の棚。同誌は今年5月で休刊した

 本館2階には「女の部屋」と呼ばれる一角があり、以前は婦人雑誌を並べていたが、いまは別の雑誌も入っている。他に「非継続の部屋」「クロワッサンの部屋」などの通称を持つ一角がある。

 比較的、利用率の低いタイトルは、越生分館に移動させ、空きスペースをつくる。

 鴨志田さんは「雑誌の図書館 大宅壮一文庫」(『大宅壮一文庫解体新書』)で、「書庫の収容をおおまかに説明」しているが、簡単に引用できないぐらいややこしい。

 3棟8室に、週刊誌、月刊誌、隔月刊などの発行ペースに加えて、休刊したタイトルや、明治・大正期に出されたもの、複本など、さまざまな観点で分類された雑誌が並べられている。

『千一夜』

『キング』改題の『富士』

 利用者からすると、大宅文庫の雑誌が合本されず、1冊ずつを手にすることができるのはありがたい。しかし、管理する側にとっては、それが悩みの種になる。閲覧請求があると、スタッフはこの書庫に走り、目的の雑誌の号を取り出すのだが、相当の慣れが必要だろう。

スタッフが上り下りする階段

 古くから使われている棚は、重みでたわんでいる。月並みだが、デジタルには置き換えられない、紙の雑誌の存在感がある。

重さでたわむ棚

『宝島』のように、リニューアルするたびに、サイズや綴じ方が変わる雑誌は、その変化が目で判る。

『宝島』の棚。上部には前身誌『ワンダーランド』が置かれる

 新館地下2階には、明治・大正の創刊号606誌が並ぶ。これらは2000年に刊行されたCD-ROM『大宅壮一文庫創刊号コレクション 日本の雑誌』に全ページ収録されている。

『新青年』創刊号

『街』創刊号

 大宅文庫では、10年ほど前から月に一度、「迷宮書庫探検ツアー」を開催。新型コロナ禍の時期には中止されたが、今年10月から再開した。
「毎回10人ぐらいですが、いちど書庫に入ると、だいたい時間オーバーするんです」と。鴨志田さんは笑う。

索引の力

 大宅文庫の特色は、これらの蔵書を最大限に利用できる索引システムが構築されている点だ(以下、「雑誌の図書館 大宅壮一文庫」を参照)。

 雑草文庫では、雑誌の記事単位で分類した30万件の索引カードが作成されていた。

 最初の冊子体目録は1980年に刊行した『大宅壮一文庫索引目録』だ。1985年には私も使った『大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録』、1988年にその続編を刊行。

 1995年からは館内で利用者向けのデータベースを公開。そのデータをもとに、総目録もリニューアルされていく。データベースはCD-ROM時代を経て、2002年、インターネット上で「Web Oya-bunko」を公開。国会図書館などで利用できるので、私もさんざんお世話になっている。

 索引を専門に採録するスタッフは現在4名。ほかに過去データを遡及入力するスタッフが1名いる。

 そのひとり、小林恭子さんは1992年に大宅文庫に入り、3カ月後から索引の仕事を担当する。「2年目からは『週刊ダイヤモンド』の担当になりました。経済は苦手だったので大変でした」と振り返る。いまは経済、科学、犯罪、エログロ、オカルトなどを担当。『BUBKA』や『裏モノJAPAN』の話になると目が輝く。
「マイナー雑誌がまだ表に出ていない事件を扱っているのを採録して、のちに大きく報じられると『当たった』と思うんです」と小林さんは笑う。

小林さんが愛するマイナー雑誌が並ぶ「黒い棚」

 索引というものは、雑誌の目次をそのまま入力すれば済むものではない。一つ一つの記事に当たって、内容を確かめたうえで項目に入力する。雑誌の種類や慣れにもよるが、週刊誌の1号につき4、5時間はかかるという。

 取材時は、ちょうどジャニーズの創立者・ジャニー喜多川の性被害が明るみに出た時期だった。1965年、この疑惑を最初に報じた『週刊サンケイ』は、大宅文庫での利用率が高いという。
「これまでの『ジャニーズ事務所』の項目の中に、『ジャニー喜多川セクハラ問題』を新たに立てました」と、小林さんは云う。需要が多い記事については、少しでもヒットしやすくなるよう、後からキーワードなどを足すこともあるそうだ。

 そして今年7月には「Web OYA-bunko」の大リニューアルが行なわれた。

 これまでは、冊子版をベースにした1987年以前のデータと、1988年以降のデータは別々に検索する必要があったが、両者が統合されることによって、約732万件のデータを一括検索できるようになった。トップ画面も見やすくなった。

 ただ、これで完成ではなく、データは現在も手直しされている。
「冊子版で落ちている要素を、雑誌の現物を見直して入力する作業を行なっています。あと100万件、きれいにする必要がありそうです」と小林さんはあっさり云うが、気が遠くなるような作業量だ。

 また、1万3000誌のうち、索引が採録されているのは約2000誌。現在継続で受け入れている600誌では、200誌が索引対象となっている。著名な雑誌でも『POPEYE』は索引が作成されていない。創刊当時はカタログ誌として扱われたのだろうか。また、『週刊ベースボール』はなぜか1986年~1990年と1998年以降、索引対象となっている。

所蔵雑誌の台帳

雑誌の台帳を収めた棚

 そう考えると、大宅文庫の索引によって可視化された雑誌の後ろには、まだ隠れている雑誌がたくさんあるわけだ。

 大宅文庫では経営の赤字が続いている。2017年にはクラウドファンデングで運営資金を募り、2019年に新たにパトロネージュ制度をはじめた。索引を採る力のあるスタッフを育てるには時間もかかる。
「それでも、過去の雑誌にさかのぼってデータを採っていくことが、大宅文庫の存在意義を示すうえでも重要です」と、鴨志田さんは語った。

 近年、雑誌の休刊が続いている。紙版からウェブに移行する雑誌もある。
「あくまで雑誌の現物から索引を採っているので、雑誌の数が減ると、データが偏ってしまうという危機感はあります。右も左も同居しているのが、健全だと思うんですけど」と、小林さん。

 雑誌の魅力を伝えるために、今年からは閲覧室で「がんばれ雑誌」と称する展示を開催。女性誌の創刊号、憧れの「昭和スタア」などのテーマで、現物を並べる。
「探すのは大変でしたが、私たちも初めて見るようなタイトルを並べることができました」と、小林さんは云う。

 取材のあと、閲覧室で大宅文庫に関する記事を検索する。雑誌が出てくると、目的の記事の前後に、面白い記事や気になるニュースが見つかる。調べ物を終える頃には、夕方になっていた。

大宅が集めた書籍群

 数日後、打って変わって秋晴れの日に、埼玉の越生分館を訪れた。

 池袋から東武線に1時間以上揺られ、坂戸駅で東武越生線に乗り換える。沿線には田園の風景が広がり、旅行しているような錯覚に襲われた。

 東毛呂駅でタクシーに乗り、こんなところに施設があるの? と不安になった頃に、目的地に到着。丘の上に建つ白い建物は、なんだかちょっとアヤシイ。

越生分館

 この分館は1997年に開館。以前は定期的に開館していたが、2011年の東日本大震災の計画停電を受けて一時休館。再開後も利用者が少なかったことから、2016年から月1回の開館に。新型コロナ禍以降は、一般利用者向けには休館が続いている。云ってみれば、この館ぜんぶが閉架書庫みたいなものだ。
「職員もここには月1回来るだけなんです」と出迎えてくれたのは、下村芳央さん。本館では利用者サービスを担当している。

 入り口に立てかけてある箒は、前庭から落ちる葉っぱを掃除するためのもの。建物も古くなっており、あちこち修繕しながら資料を整理しているという。

 1階入って左側は閲覧スペースになっていて、大宅の愛用の机・筆記用具が置かれ、著作を収めたケースもある。

閲覧スペース

大宅の机

 それを壁のように取り囲むのは、索引カードのケースだ。表面には冊子版目録と同じ項目が貼り付けられている。以前は本館で使われていたもので、データベースが導入されて以降、ここに移されたという。

カードケース

カードケースに貼られた分類

 それとは別に、新聞記事を切り抜いたファイルもあった。「読書」「社会探訪」「宣伝広告」などと分類された、索引カードと同じサイズの袋に記事の切り抜きが入れられているのだ。

新聞記事のファイルケース

「奇人」の袋には、「谷中の杜の奇人」という見出しで、〈大名時計博物館〉の主で蒐集家の上口愚朗の記事があった。また、「永田雅一」の袋には、大映関係などの記事が入っている。このメモの字は大宅のものだろうか?

「奇人」の新聞記事

「永田雅一」の新聞記事

 下村さんの話では。このファイルケースはこれまであまり触れられていないようだ。袋に入っている記事をぜんぶスキャンして、雑誌のデータベースと関連付けたら、いい資料になりそうなのだが。

 書庫は1階と2階にある。

 1階の書庫は、右側の奥が未整理で重複している雑誌約2万5000冊と、未整理の書籍約1万5000冊。左側が大宅が収集した書籍約3万5000冊で構成されている。

未整理の雑誌・書籍の棚

 大宅が収集した書籍は、「移民」「右翼」「経済人物」「宗教」「女」「スパイ」「政治人物」「天皇」「東京裁判」「マスコミ」などと分類されて、並んでいる。これらは大宅生前の雑草文庫の時点で整理されていたようだ。

大宅収集の書籍の棚

 ジャンル自体も幅広いが、商業出版以外に社史や私家版、パンフレットなどさまざまな形態の本を集めていることに驚く。たとえば、マスコミ関係の棚には、『一記者の頭』『新聞街浪々記』『地方記者の三十年』『戦後20年 日本の出版界』などが並ぶ。

大宅収集のマスコミ関係の棚

 戦争関係では、『男児の意気』『真相箱』『大東亜諸国の実情を語る』『おほみいくさ』など、戦意を鼓吹した本が並ぶ。

大宅収集の戦争関係の棚

 犯罪関係では。『女探偵』『血と指紋とミイラの話』『趣味の探偵談』など、そそられるタイトルが多い。なかでも、『私立探偵養成講義』というパンフレットは読んでみたかった。

大宅収集の犯罪関係の棚

『私立探偵養成講義』

 古い本だけでなく、娯楽に関する本では、笑福亭鶴光、坂上二郎、山本コータローらのタレント本もちゃんとある。元ジャニーズで最初にジャニー喜多川を告発した北公次の『256ページの絶叫』は、いまとなってはレア本だ。大宅の死後に出た本もあるようだ。

タレント本が並ぶ棚

 これら大宅収集の書籍については、いまのところ、一部を除いて、紙にしろオンラインにしろ蔵書目録は存在しない。事務用にExcelでつくったものを分館で見られるだけだ。いずれは、サイトからOPAC(オンライン所蔵目録)で検索できるようにしてほしい。

多くの人の手で

 まだいくらでも見ていられるが、先を急ぐ。

 2階への階段の横には、上まで続く板が置かれている。これはなんだ?
「エレベーターがないので、雑誌の入った箱をカートに載せて運ぶんです」と下村さん。ご本人の手づくりだという。ちょっと涙ぐましい。

手づくりのレーン

 2階にあるのは、本館から移された約20万冊の雑誌だ。整理済みと未整理のもの、本館と重複しているものとここにしかないものがある。

2階の書庫

 ここにしかない雑誌は、たとえば『CAR GRAPHIC』『建築文化』『週刊日本の美をめぐる』など。索引に採録されていないタイトルばかりだ。

 所蔵雑誌はOPACで検索できるので、閲覧申請することはできる。ただ。スタッフが常駐していないため、東京本館で閲覧できるようになるまで1カ月ぐらいかかることもあるという。

 未製本の雑誌が並ぶ棚に、珍しく製本済みの雑誌もあった。出版元で所蔵していたゲーム雑誌を寄贈されたのだという。

製本されたゲーム雑誌

「大宅文庫の職員が集めた雑誌を寄贈することもあるんです」と下村さんが案内したのは、競馬雑誌が並ぶ一角だ。事務局次長の鴨志田さんが集めたものだという。意外な趣味を知ってしまった。

 別の職員も、音楽、プロレス、アニメなどの雑誌を寄贈している。ここにある『アニメージュ』には本館で所蔵していない号もあり、最近、全号が揃ったという。

 大宅文庫のスタッフにとっては、雑誌集めは趣味と実益を兼ね備えるものかもしれない。

 ほかにも「末永文庫」は、理事だった末永勝介の蔵書約4100冊を受け入れたもの。単行本や新書、文庫のほか、雑誌も並んでいる。実用本や小説、エッセイなどが混ざっている雑多な棚がとても面白い。ほかにも評論家の村上兵衛らの蔵書も受け入れている。

末永文庫

 こうしてみると、大宅文庫はじつに多くの人の協力で成り立っている。

 大宅壮一は戦前にバートン版『千夜一夜』の翻訳を、分業システムによる集団作業で行なった(有馬学「索引的思考」『大宅壮一文庫解体新書』)。雑草文庫も複数のスタッフとともに構築している。

 大宅がグループでつくった大宅文庫という知の拠点は、現在のスタッフによって守られている。そこでも集団の力が働いている。一人一人の本に対する情熱が合わさって、この場所はいまもここにあるのだ。

 
 
 
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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2023年11月10日号 第382号

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 古書市&古本まつり 第130号
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━【懐かしき古書店主たちの談話】━━━━━━━━

懐かしき古書店主たちの談話 第3回
                     日本古書通信社 樽見博

 神保町周辺の再開発が急ピッチで進んでいる。駿河台下交差点に立つ
と、工事中の三省堂本店の上にはポッカリ空間が出来ているのが見える。
古書店街だけれど三省堂書店がそこにある意味は大きいのだと改めて感
じる。神保町二丁目のさくら通りも、巌南堂書店のビルがいつの間にか
取り壊されて、その区画に大きなビルの建設が始まっている。

 さくら通りのモダンなデザインで知られた東洋キネマの建物が残って
いたのはもうかなり前になるのだろう。さくら通りは高級なオフィス街
に変貌している。

 神保町の姿が変わって行くのを見ていると、亡くなられた古書店主た
ちの記憶が逆に蘇ってくる。三茶書房の先代岩森亀一さんのエッセイ集
『古本屋と作家』を「こつう豆本」106として刊行したのは平成五年九月
だった。三好達治、佐藤愛子、中野重治、尾崎一雄、井伏鱒二との交流、
加えて岩森さんの古本屋としての最大の功績であった「芥川龍之介資料
始末記」を収めている。今回改めて読み直し、岩森さんの無駄のない、
それでいて情感にあふれた文章に接し、すっかり魅了されてしまった。

(「全古書連ニュース」2023年9月10日 第496号より転載)

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=12542

※当連載は隔月連載です

━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見19】━━━━━━━━━

大宅壮一文庫 「集団知」が生んだ雑誌の宝庫
                           南陀楼綾繁

 10月4日、京王線・八幡山駅に降りる。外は雨が降っている。電車の乗
り換えで手間取り、約束の時間に遅れそうなのでタクシーに乗る。左手
には松沢病院が見える。

 大宅壮一文庫(以下、大宅文庫)の前に着くと、事務局次長の鴨志田浩
さんが出迎えてくれた。開館時間より前なので、職員通用口から中へと入
る。

 大宅文庫は、いわずと知れた雑誌の図書館だ。私がその存在を知ったの
は、1986年に大学に入った頃だ。学部の図書室で前年に刊行された『大宅
壮一文庫雑誌記事索引総目録』全13巻を手に取った。

 人名編と件名編に分かれていて、後者は「政治・その他」「探検・移民」
「天皇」「戦争」「犯罪・事件」「世相」「奇人変人」「マスコミ」「日
本研究」「地方」など33の大項目に分類されている。「奇人変人」には
「ビックリ人間」「天才」「英雄論」「ソックリさん」「ヌーディスト」
「ストリーキング」「猟奇的なもの」「珍談」などの項目があり、そこに
出てくる雑誌や記事のタイトルを眺めるだけで時間が過ぎていった。

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南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

※今月の新コンテンツはありません。

YouTubeチャンネル「東京古書組合」
https://www.youtube.com/@Nihon-no-Furuhon-ya

━━━━━【11月10日~12月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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新橋古本まつり

期間:2023/11/06〜2023/11/11
場所:新橋駅前SL広場
https://twitter.com/slbookfair

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2023/11/09〜2023/11/12
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
https://www.kosho.ne.jp/?p=843

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ヨコハマ関内古本まつり(神奈川県)

期間:2023/11/09〜2023/11/12
場所:ヨコハマ関内セルテ4階
最寄駅:JR京浜東北線・根岸線関内駅北口改札前、横浜市営地下鉄関内駅2番出口1分
http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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趣味の古書展

期間:2023/11/10〜2023/11/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
https://www.kosho.tokyo

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第一回 1冊500円 3冊1000円古本即売会(広島県)

期間:2023/11/10〜2023/11/12
場所:フレスタモールカジル横川1F通路
   広島市西区横川町3-2-36 JR横川駅隣接
https://www.hiroshimabunko.com/

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高知蔦屋書店 古本まつり(高知県)

期間:2023/11/11〜2023/11/12
場所:高知蔦屋書店  高知市南御座6-10

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日本大学商学部 古書祭 in 砧スクエア~本の手触り 紙の香り~

期間:2023/11/13〜2023/11/17
場所:日本大学商学部 ガレリア  東京都世田谷区砧5-2-1

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西武本川越PePeのペペ古本まつり(埼玉県)

期間:2023/11/13〜2023/11/21
場所:西武新宿線 本川越駅前ペペ広場

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第8回南大沢古本まつり

期間:2023/11/16〜2023/11/22
場所:京王相模原線南大沢駅前~ペデストリアンデッキ~三井アウトレット前特設テント

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第11回 秋の古書市(福岡県)

期間:2023/11/16〜2023/11/27
場所:ジュンク堂書店福岡店 2階 MARUZENギャラリー
   〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名1丁目15-1 天神西通りスクエア

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第65回 名鯱会 古書即売会(愛知県)

期間:2023/11/17〜2023/11/19
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12
https://hon-ya.net/

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第189回神戸古書即売会(兵庫県)

期間:2023/11/17〜2023/11/19
場所:兵庫県古書会館  神戸市中央区北長狭通6-4-5(阪急花隈駅西口真裏の通り) 
https://hyogo-kosho.com/

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歳末古本掘り出し市(岡山県)

期間:2023/11/22〜2023/11/27
場所:岡山シンフォニービル1F  自由空間ガレリア

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2023/11/23〜2023/11/26
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)
https://twitter.com/urawajuku

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第1回 えべっさん古本まつり(兵庫県)

期間:2023/11/23〜2023/11/27
場所:西宮神社 兵庫県西宮市社家町1-17

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会津ブックフェア(福島県)

期間:2023/11/23〜2023/12/03
場所:會津商人館1F 会津若松市栄町1-20
https://aizubooksfair.com/

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和洋会古書展

期間:2023/11/24〜2023/11/25
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
https://www.kosho.ne.jp/?p=562

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五反田遊古会

期間:2023/11/24〜2023/11/25
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分
https://www.kosho.ne.jp/?p=567

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中央線古書展

期間:2023/11/25〜2023/11/26
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
https://www.kosho.ne.jp/?p=574

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書窓展(マド展)

期間:2023/12/01〜2023/12/02
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
https://www.kosho.ne.jp/?p=571

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西部古書展書心会

期間:2023/12/01〜2023/12/03
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
https://www.kosho.ne.jp/?p=563

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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2023/12/02〜2023/12/03
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10
http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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第108回 彩の国所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2023/12/06〜2023/12/12
場所:くすのきホール (西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)
https://tokorozawahuruhon.com/

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『BOOK DAY とやま駅』(富山県)

期間:2023/12/07〜2023/12/07
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)
https://bookdaytoyama.net/

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歳末赤札古本市

期間:2023/12/07〜2023/12/10
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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新興古書大即売展

期間:2023/12/08〜2023/12/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
https://www.kosho.ne.jp/?p=569

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2023/12/14〜2023/12/17
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)
https://twitter.com/urawajuku

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港北古書フェア(神奈川県)

期間:2023/12/14〜2023/12/25
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売
最寄駅:横浜市営地下鉄 センター南駅
    市営地下鉄センター南駅の改札を出て直進、右前方。※駅構内
http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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ぐろりや会

期間:2023/12/15〜2023/12/16
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
http://www.gloriakai.jp/

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五反田古書展

期間:2023/12/15〜2023/12/16
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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日本の古本屋メールマガジンその382 2023.11.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋」事業部
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  https://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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懐かしき古書店主たちの談話 第3回

懐かしき古書店主たちの談話 第3回

日本古書通信社 樽見博

 神保町周辺の再開発が急ピッチで進んでいる。駿河台下交差点に立つと、工事中の三省堂本店の上にはポッカリ空間が出来ているのが見える。古書店街だけれど三省堂書店がそこにある意味は大きいのだと改めて感じる。神保町二丁目のさくら通りも、巌南堂書店のビルがいつの間にか取り壊されて、その区画に大きなビルの建設が始まっている。

 さくら通りのモダンなデザインで知られた東洋キネマの建物が残っていたのはもうかなり前になるのだろう。さくら通りは高級なオフィス街に変貌している。

 神保町の姿が変わって行くのを見ていると、亡くなられた古書店主たちの記憶が逆に蘇ってくる。三茶書房の先代岩森亀一さんのエッセイ集『古本屋と作家』を「こつう豆本」106として刊行したのは平成五年九月だった。三好達治、佐藤愛子、中野重治、尾崎一雄、井伏鱒二との交流、加えて岩森さんの古本屋としての最大の功績であった「芥川龍之介資料始末記」を収めている。今回改めて読み直し、岩森さんの無駄のない、それでいて情感にあふれた文章に接し、すっかり魅了されてしまった。

 岩森さんはお店二階のガラスケースで囲われた所で、いつも何か本を読んでおられた。どこか凛とした風格があった。古本屋としても押しつけがましいところがなく、古書市場で入札している姿も一人どこまでも静かであった。そのようなお人柄が作家たちに好まれ信頼された要因だろう。

 本年六月半ばに、福井県坂井市の中野重治記念丸岡図書館を訪ねた。記念室が希望者に公開されていて、世田谷の旧居から二、三万冊はあるだろう蔵書が全て移管され、背文字が見えるように配架されている。驚いたのはその一、二割の本にカバーがかけられ中野の自筆で書名が書かれていたことだ。全体に保存が良く、中野が書物を大切にしていたことが伝わってくる。岩森さんの文章によれば定期的に用済みの本を整理されていたようだが、残る蔵書にも三茶書房で求めた本がかなりあるのではないだろうか。

 本を大切にしている方の蔵書は整理を依頼されても気持ちが良いが、時に虐待にも等しい本の扱いをする人もいて、それが一部で知られた研究者であっても反感の気持ちが湧いてくる。岩森さんと中野の出会いは共に幸運だった。それが創業二十五年記念目録への中野の四百字三枚の祝辞として実現したのだろう。
『古本屋と作家』は刊行間もなく品切れとなった。出てしばらくすると岩森さんが「いつまでも売れ残っているのはみっともないから」と殆どの在庫を買って行かれたのだ。物静かだけれど葛巻義敏や芝隆一(芝書店主)から資金に苦労しながらも芥川資料を買い続けた芯の強さをお持ちだった。岩森さんは「本好きの私は、自分の好きな作品や内容のよい本をみると、すぐに惚れこみ、つい高く仕入れてしまい、後で売値をつける時になって失敗に気付くことがよくある」と書かれている。あのご自慢の稀覯本を展示した店で静かに書見していた姿は書斎の作家のような佇まいだったなと今にして思う。(平成16年12月没、84歳)

 東陽堂書店の先代高林恒夫さんは、往年のプロ野球スター選手だったことは有名だが、気さくな方でよく声をかけて下さった。もう大分以前だが、郊外から神保町に移転して来て割合広い店を出した古本屋があった。何があったのか数年後「古書月報」に、所詮古本屋なんてと悪態の言葉を連ね他の商売を始めることにすると書いて店をやめた方があった。私は無性に腹がたち、「日本古書通信」の編集後記で、古本屋への思いがその程度なら辞めた方が良い、古本屋は覚悟が必要な商売なのだといったことを書いたことがある。高林さんはそれを読んで「あの記事は良かったよ、その通りだよ。私も腹を立てていたんだ」と、お店の前であったときに話してくれた。「古書通信」は毎号良く読んでいて下さり、時々簡単だけれど感想を伝えてくれ、嬉しかった。

 高林さんで思い出すのは、古書会館の即売会では毎週金曜日開場前から一般のお客さんと一緒に並んで待たれている姿だ。古書会館ばかりでなく各地のデパート古書展にも頻繁に出向かれていたようだ。早稲田のヤマノヰ書店のご子息で独立した勝文堂書店さんや、古書通信目録欄の常連だったアドニスさんも各地の古書展に出向かれていたが、高林さんにいつも会うと話していた。本来なら神保町の老舗古本屋の主がセドリに励む必要もない。高林さんも商売を離れて本が好きだったのだと思う。即売会は交換会で落札するのとはまた趣の違う、意外な本や資料に出会う楽しみがあるのだ。(平成21年9月没、71歳)

 平成十五年一月号から「古本屋の話」の連載を始めた。古書店主たちに話を伺い、一頁に収まるようにまとめた。その八回目が西神田の金文堂書店木内茂さんだった。その少し前に木内さんは『金文堂書店奮戦記』(一九九九年)という小さな本を出しておられた。小さな体の方だったが、逃げる泥棒を当身で倒し捕まえた話など読ませる内容だった。以前からファイトのある方だと思っていたが、記事のタイトルは「独立心を支えに」と題させてもらった。今はもうない本郷・木内書店主木内民夫さんの弟さんで、昭和三十五年に独立して駒込曙町に三坪の店を出すが、思うような仕入れはなく、参加していた古書会館の即売会和洋会のメンバーから「ゴミ金」と揶揄されたこともあると笑っておられた。その後明治ものブームもあり明治大正期の教科書とその背景にある東洋史関係の文献を専門と定め、目録を定期的に発行、海外にも販路を求めて行く。古書会館の書窓展と和洋会でも人気店となった。

「いつの時代でも、貴重な本は少ないと思いますが、反町さんの言われた中でも、古書の価値は、その内容、稀少性、流行性によるという教えは最も大事なことだと考えています。本を数多く見ることの大切さ、古書の商いを通してお客様が教えてくれることの多いのも確かです。本が売れないという話を聞きますが、努力して良い本を扱えば必ず売れるのです。大事なことは、周りに流されるのではなく、本屋としての独自性と独立心を心掛け、誇りを持って、時代の流れを見て、本屋自身が変化していくことなのだと思います」。これが談話の結びとなっている。記事掲載後お会いする度に、うまくまとめるものだね本当に関心したよと何度も言われるので恐縮するばかりだった。お話し下さることが面白ければ記事は自ずと良くなるのだ。木内さんはいつも奥様と行動を共にされていた。木内さんが亡くなられた後も奥様が商売を継続されて、古書市ばかりでなく道具の市でも盛んに落札されていると聞いていたが、惜しまれながら閉店された。(平成26年9月没、88歳)合掌

 
 


 
 
(「全古書連ニュース」2023年9月10日 第496号より転載)

※当連載は隔月連載です

 
 
日本古書通信社
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『第3版 教育の制度と経営 15講』 【大学出版へのいざない11】

『第3版 教育の制度と経営 15講』 【大学出版へのいざない11】

元明星大学教育学部教授 樋口修資

 本書は、教育職員免許法施行規則第6条に定める「教育の基礎理論に関する科目」のうち、「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項」に関する事項を取り扱う授業科目である「教育の制度と経営」のテキストとして執筆されたものです。したがって、本書は、主に教職を志す学生の利用を想定していますが、これら教職志望者にとどまらず教育に関心を寄せる一般の方々にも広く読んでいただけるよう、学校教育の制度・経営に関する仕組みの現状とその課題等に関する事柄を、15のテーマに分けて、できる限りコンパクトにわかりやすく紹介する内容となっています。

 今日の大学教育では、アクティブ・ラーニングの授業方法が強調され、学生の主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善が求められていますが、教職を志望する学生にとっては、まずは、教職の基礎的・専門的な知識や考え方をしっかりと修得することが求められており、これらの基礎的・専門的な知識理解に立って、それらを活用して批判的に思考し、判断するなどの資質や能力を形成することが大切であると考えます。

 今日の学校教育は、すべての国民にひとしく「教育を受ける権利」を保障し、「義務教育の無償」を定める日本国憲法の教育条項とそれを受けて教育の理念と教育制度の基本を定める教育基本法に基づき営まれています。学校教育の在り方を考える上で、戦前教育の痛切な反省に立って行われた戦後教育改革の法制的枠組みである「憲法・教育基本法法制」を踏まえて、教育の民主化・地方分権化・自主性の保障の3大原則の実現が図られてきていることをきちんと認識すべきでしょう。また、学校教育は、国の教育行政の役割として「ナショナルミニマム」の実現を、そして、地方の教育行政の役割として「ローカル・オプティマム」の実現を調和的に図っていくという、国と地方の役割分担と相互の協力の下に、適正に実施されることが重要であると理解していただきたいと思います。

 本書では、憲法・教育基本法体制及び公教育制度を支える国と地方の教育行政の仕組みを踏まえて、学校制度と就学制度、学校の管理運営と組織編制、教職員の身分・服務と勤務管理や研修制度、学校の説明責任と地域参画の学校づくりなど教育の制度的・経営的事項の全体像を明らかにすることをねらいとしています。また、学校における教育活動の車の両輪ともいうべき、教育課程と生徒指導について取上げるとともに、児童・生徒の安全安心な学校生活を確保するための学校の保健安全管理の事項についても取り上げています。

 本書では、特に教育課程に関する事項と生徒指導に関する事項を重視して取り上げています。教育課程に関する事項については、国が定める学習指導要領と各学校で編成実施する教育課程とのかかわりを整理し、学習指導要領は最小限基準を定めるものであって、教育課程の編成に当たる学校では最小限基準を超える内容について創意工夫を図るなどの裁量性を有していることを詳細に明らかにしています。また、生徒指導に関する事項については、懲戒と体罰に関する取扱いやいわゆる「ブラック校則」をめぐる問題、あるいは、いじめ防止や児童虐待防止など今日的な生徒指導上の問題を取り上げ、どのような改善の取組みが求められているか明らかにしています。

 さらに、今日の学校教育をめぐる重要なトピックとして、学校教育において喫緊の課題となっている教員の多忙化解消に向けての学校の働き方改革はじめ、子供の貧困と就学援助、学校徴収金と私費負担の公会計化、学校選択制と教育バウチャー、いじめ防止と児童虐待防止、不登校とフリースクール、特別支援教育とインクルーシブ教育、外国とつながりのある児童生徒の教育の課題などを幅広く取り上げ、これらの問題に対する読者の関心と理解を深めていただくことを期待しています。

 教職を志す学生が、本書で明らかにした学校教育の基本的仕組みとその運用の現状と課題について理解を深め、教職の専門性を磨き、「チーム学校」の一員として学校運営に携わる上で、本書が少しでもお役に立つことができれば望外の喜びです。

 
 
 
 
 


書名:『第3版 教育の制度と経営 15講』
著者名:樋口修資
出版社名:株式会社 明星大学出版部
判型/製本形式/ページ数:A5判/並製/298ページ
税込価格:2,640円
ISBNコード:978-4-89549-232-4
Cコード:C3037
好評発売中!
http://www.meisei-up.co.jp/books/330/

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2023年10月25日号 第381号

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☆INDEX☆
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1.「ここ“も”愉しい古本屋さん」を編んで
                   月刊「望星」編集部 石井靖彦

2.『笠置シヅ子ブギウギ伝説』
     佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)

3.『第3版 教育の制度と経営 15講』
                 元明星大学教育学部教授 樋口修資

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━━━━━━━━━━━【編集長登場シリーズ】━━━━━━━━━━━

「ここ“も”愉しい古本屋さん」を編んで
                   月刊「望星」編集部 石井靖彦

 文筆家であり古書大好き人間の岡崎武志さんと会ったとき、「なにかや
りましょうよ」と持ちかけた。「そやなぁ、ボクがやるんやったら、やっ
ぱり古本と古本屋さんの特集やなあ」と口を滑らせたので、「じゃお願い
します。構成案考えてえてださい」「ヨッシャ!」となり、十月号の特集
「ここ“も”愉しい古本屋さん」とあいなった。

 古本屋さんといってもいろいろで、誌面で取り上げるのであれば、強い個
性を持ち、古書店の範疇に入りきらないようなところを紹介してみたい――
これがこちらの要望。それに対して岡崎さんが半世紀にならんとする古書店
巡り人生から、ピックアップしてくれたのが、「古書 日月堂」(東京)、
「book café 火星の庭」(仙台)、「盛林堂」(東京)、「古書 善行堂」
(京都)である。本当はもっと多くの古書店を取り上げたかったが、マイナー
誌ゆえの財力、機動力のなさから仕方ない。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=12470

月刊『望星2023年10月号』 ここ”も”愉しい古本屋さん
東海教育研究所刊
税込価格:660円
ISBNコード:4910087131039
好評発売中!
https://www.tokaiedu.co.jp/bosei/contents/2310.html

━━━━━━━━━━━━【プレゼント企画】━━━━━━━━━━━━

今月号でご紹介した「月刊『望星2023年10月号』ここ”も”愉しい古本屋さん」を
抽選で10名様にプレゼント致します。
ご応募お待ちしております。

応募申込は下記ページにてお願い致します。
 締切日 10月30日(月)午前10時

https://www.kosho.ne.jp/entry2023/1025/1025.html

━━━━━━━━【大阪古書組合からのお知らせ】━━━━━━━━

大阪古書組合では下記要項にて
【あなたも古本屋になりませんか? 古本大学講座2023年】を開催いたします。

開催日時:2023年10月29日(日) 12時30分開場・13時から2時間程度
  場所:大阪古書会館6階
 参加費:1,000円 (※定員30名 要事前申込 定員に達し次第締切)
参加方法:メール・FAX・往復ハガキで、お名前・ご住所・電話番号を明記の上
     大阪古書組合までお申し込みください。
  主催:大阪府古書籍商業協同組合

お問合せ、お申し込みは大阪古書組合まで
詳しくは下記URLにて
http://www.osaka-kosho.net/news/1846/

━━━━━━━━━━━【自著を語る(314)】━━━━━━━━━━━

『笠置シヅ子ブギウギ伝説』
     佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)

 10月2日からスタートした連ドラ「ブギウギ」のヒロイン、花田鈴子
(趣里)は、小学校を卒業した春、大阪道頓堀・花丸劇場でレビューを上
演している「花丸少女歌劇」に入団。そこから福来スズ子のステージ人生
が始まります。

 スズ子のモデルは、戦後「東京ブギウギ」で一斉を風靡、「ブギの女王」
として昭和20年代を駆け抜けた、不世出のスター・笠置シヅ子です。その時、
彼女は33歳。生まれたばかりの乳飲子を抱えたシングルマザーとして生きる
ため、戦前からの音楽パートナーだった服部良一に「センセ、頼んまっせ」
と依頼して出来たのが「東京ブギウギ」でした。

 ぼくは娯楽映画研究家、オトナの歌謡曲プロデューサーとして、戦前、
戦中、戦後のエンタテインメント史をライフワークとしてきました。エノ
ケン=榎本健一、ロッパ=古川緑波、岸井明やあきれたぼういず、クレイ
ジーキャッツなどの音楽パフォーマンスを、今の世代にも楽しんでもらい
たい。という気持ちで音楽CDを企画してきました。笠置シヅ子もその一人
です。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=12435

『笠置シヅ子ブギウギ伝説』
興陽館刊
佐藤利明著
税込価格:1,540円
ISBNコード:978-4-87723-314-3
好評発売中!
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784877233143

━━━━━━━━━【大学出版へのいざない11】━━━━━━━━━━━

『第3版 教育の制度と経営 15講』
                  元明星大学教育学部教授 樋口修資

 本書は、教育職員免許法施行規則第6条に定める「教育の基礎理論に関す
る科目」のうち、「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項」に関する
事項を取り扱う授業科目である「教育の制度と経営」のテキストとして執筆
されたものです。したがって、本書は、主に教職を志す学生の利用を想定し
ていますが、これら教職志望者にとどまらず教育に関心を寄せる一般の方々
にも広く読んでいただけるよう、学校教育の制度・経営に関する仕組みの現
状とその課題等に関する事柄を、15のテーマに分けて、できる限りコンパ
クトにわかりやすく紹介する内容となっています。

 今日の大学教育では、アクティブ・ラーニングの授業方法が強調され、学
生の主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善が求められていますが、
教職を志望する学生にとっては、まずは、教職の基礎的・専門的な知識や考
え方をしっかりと修得することが求められており、これらの基礎的・専門的
な知識理解に立って、それらを活用して批判的に思考し、判断するなどの資
質や能力を形成することが大切であると考えます。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=12451

書名:『第3版 教育の制度と経営 15講』
著者名:樋口修資
出版社名:株式会社 明星大学出版部
判型/製本形式/ページ数:A5判/並製/298ページ
税込価格:2,640円
ISBNコード:978-4-89549-232-4
Cコード:C3037
好評発売中!
http://www.meisei-up.co.jp/books/330/

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━━

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「大学出版へのいざない」シリーズ 第12回

書名:『構成 高橋正人の遺した造形教育』
著者名:白尾隆太郎
出版社名:武蔵野美術大学出版局
判型/製本形式/ページ数:A4判変型、並製、256頁
税込価格:3,850円
ISBNコード:ISBN978-4-86463-159-4
Cコード:C3072
11月17日発売!
https://www.musabi.co.jp/books/b463159/
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
『大正期北海道映画史』
亜璃西社刊
前川公美夫著
税込価格:4,400円
ISBNコード:978-4906740598
好評発売中!!
https://www.alicesha.co.jp/books/0322/index.html
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━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

10月~11月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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『笠置シヅ子ブギウギ伝説』

『笠置シヅ子ブギウギ伝説』

佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)

 10月2日からスタートした連ドラ「ブギウギ」のヒロイン、花田鈴子(趣里)は、小学校を卒業した春、大阪道頓堀・花丸劇場でレビューを上演している「花丸少女歌劇」に入団。そこから福来スズ子のステージ人生が始まります。

 スズ子のモデルは、戦後「東京ブギウギ」で一斉を風靡、「ブギの女王」として昭和20年代を駆け抜けた、不世出のスター・笠置シヅ子です。その時、彼女は33歳。生まれたばかりの乳飲子を抱えたシングルマザーとして生きるため、戦前からの音楽パートナーだった服部良一に「センセ、頼んまっせ」と依頼して出来たのが「東京ブギウギ」でした。

 ぼくは娯楽映画研究家、オトナの歌謡曲プロデューサーとして、戦前、戦中、戦後のエンタテインメント史をライフワークとしてきました。エノケン=榎本健一、ロッパ=古川緑波、岸井明やあきれたぼういず、クレイジーキャッツなどの音楽パフォーマンスを、今の世代にも楽しんでもらいたい。という気持ちで音楽CDを企画してきました。笠置シヅ子もその一人です。

 2014(平成26)年、笠置シヅ子生誕100年を記念して、コロムビアから「ブギウギ伝説〜笠置シヅ子の世界」を企画、監修して解説書を執筆。その頃から笠置シヅ子の音楽人生を執筆したいと思っていました。CDリリースから九年、連ドラ「ブギウギ」をきっかけに、興陽館の編集・本田道生氏からのお声がけで、書き下ろしたのが「笠置シヅ子ブギウギ伝説」です。

 ぼくは1963(昭和38)年生まれなので、昭和30年代前半に、歌手引退を表明して女優に転向した笠置シヅ子は、映画やドラマでの大阪のおばちゃんのイメージしかありませんでした。子供の頃、日曜の昼に放送していた「家族そろって歌合戦」の審査員の姿や、クレンザーのCMで親しんでいました。彼女が「時代を変えた歌手」であることを意識したのは、中学生になってから。ラジオから流れてきた「買物ブギー」のリズム感、グルーブ感に圧倒されてからです。

 映画やドラマの焼跡、闇市のシーンに「時代を象徴する歌」として流れる「東京ブギウギ」をレコーディングした1947(昭和22)年、笠置シヅ子は、すでに二十年のステージキャリアでした。

 「ブギの女王」になるまでの彼女の音楽人生は、まさに昭和エンタテインメントの黎明期です。服部良一との出会いは1938(昭和13)年。松竹が日比谷・帝国劇場で、男女混成のミュージカル劇団「松竹楽劇部(SGD)」を立ち上げることになり、松竹少女歌劇(OSSK)のスター・笠置シヅ子を、メインのスターとして迎えることになってからのこと。その頃、服部良一は、ジャズプレイヤーから作曲家となり、コロムビア専属の気鋭の音楽家。SGDの副指揮者として、笠置シヅ子と出会ったのです。

 ここで笠置シヅ子は「少女歌劇」の十年選手のベテラン・スターから、ミュージカル舞台でジャズソングを歌って「スウィングの女王」として大輪の花を咲かせます。SGDがスタートして一年、服部が笠置のために書き下ろしたホット・ジャズ「ラッパと娘」で、彼女はコロムビアから本格的にレコード・デビューを果たします。1939(昭和14)年12月のことでした。

 その「ラッパと娘」を聴くと、戦前、日本のショウビジネス、ジャズ界がいかに成熟していたかは一聴瞭然です。服部は次々と笠置のためにジャズ・ソングを作曲、レコードも連続リリースされます。

 しかし1941(昭和16)年、日本が連合国に宣戦布告、第二次大戦は太平洋戦争へと広がっていき、アメリカのジャズは「敵性音楽」として、歌うことが禁止されてしまいます。当局から敵性歌手としてマークされた笠置シヅ子は、派手なパフォーマンスが禁止され「マイクの前、三尺四方からはみ出してはならない」と厳命されました。

 「笠置シヅ子ブギウギ伝説」では、昭和初期の「少女歌劇の時代」、戦前の「スウィングの女王の時代」、戦時中の苦労、そしてシングルマザーとして再び舞台に立って「ブギの女王」として、日本中を席巻していく、笠置シヅ子の音楽人生を綴りました。笠置シヅ子を語ることは、昭和のエンタテインメント史をたどることでもあります。

 幸いなことに、彼女がコロムビアに残した五十数曲のレコード音源は、現存するものは全てCD化され、配信でも気軽に聴くことができます。しかし、その曲の成立ちや、ヒットした背景、時代については、知る機会が少なくなっています。

 そこで本書では、笠置シヅ子のステージや楽曲をフィーチャーして、少女歌劇時代の初レコード「恋のステップ」「ラッパと娘」や、戦後の「東京ブギウギ」「買物ブギー」などの楽曲にまつわるエピソードや、遅れてきた世代が唯一「動く笠置シヅ子」を観ることができる映画での歌唱を紹介。舞台、レコード、映画でのパフォーマンスについても詳説しております。

 CDや配信で彼女の圧倒的なパフォーマンスを味わいながら、また連ドラ「ブギウギ」の背景を知るために、「笠置シヅ子とその時代」へのガイドとして楽しんで頂ければ、何よりです。(文中敬称略)

 
 
 
 


『笠置シヅ子ブギウギ伝説』
興陽館刊
佐藤利明著
価格:1,540円(税込)
ISBNコード:978-4-87723-314-3
好評発売中!
https://koyokan.co.jp/9784877233143/

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