本居宣長記念館 希代の学者の頭の中【書庫拝見26】南陀楼綾繁 |
「今、空は悲しいまで晴れていた。そしてその下に町は甍を並べていた 白堊(はくあ)の
小学校。土蔵作りの銀行。寺の屋根。そしてそこここ、西洋菓子の間に詰めてあるカンナ屑 めいて、緑色の植物が家々の間から萌え出てゐる」 松坂城跡公園の月見櫓跡にある梶井基次郎文学碑には、『城のある町にて』の一節が記されている。梶井は学生の頃、姉夫婦が暮らす松阪に滞在した。この碑の建つ場所からは、松阪の風景が一望できる。 この碑から坂を下ったところにある松阪市立歴史民俗資料館では、ちょうど梶井に関する 同じく松坂城跡公園にあるのが、本居宣長記念館だ。 そこで出迎えてくださったのが、名誉館長の吉田悦之さんだ。 しかし、松阪に移住した山﨑さんからの「吉田さんが何でも教えてくれるから」という言葉に従って、思い切ってこの館を取材することに決めたのだ。 松坂に暮らし、学び、書く 本居宣長は1730年(享保15)、松坂本町に生まれた。幼名は富之助。松坂は紀州徳川家の飛び地で、商人の町として栄えた。 宣長の『玉勝間』にも、次の一節がある。 松坂の商人には、江戸に進出する「江戸店持ち商人」は多かった。江戸時代屈指の豪商で その後、京都に遊学。儒学者の堀景山に師事し、荻生徂徠や契沖を学ぶ。松坂に帰ってからは、自宅で医師を開業しながら、国学の研究にうちこんだ。 1801年(享和元)、72歳で亡くなる。京都遊学などを除けば、生涯、松坂の地で過した。 この書斎で、蔵書は次のように整理されていた。 宣長の死後、鈴屋と蔵書は本居家が保存する。「一切、外に出すなと伝えられたそうです」と吉田さんは云う。遺族は付箋ひとつもおろそかにしないようにしたという。 1893年(明治26)、魚町の中心部で大火が発生したが、宣長の旧宅は無事だった。 資料についてはどうか。 5代目の本居清造は東京に住み、主要な資料も東京に移された。清造は戦時中、防空壕を築いてこれらを守ったという。また、一部は松阪の木綿問屋・長谷川家に預けられた。 メモや付箋もすべて残す「ここは宣長の頭の中なんです」 光量を抑えた室内は板張りで、棚も木製だ。明るい展示室からここに入ると、宣長のいた 宣長が参照した資料や自筆稿本、書簡、記録、自著の版木など、まさに宣長の頭の中のすべてがここに詰まっている。 宣長は日記に並行して、来訪者の一覧、土産物の記録、金の出し入れ、住所録など、用途に応じた記録を付けていた。購入した本や写本をつくったものについては、『購求謄写書籍』に記録する。それらを照合すると、彼の人生が浮かび上がってくるのだ。 吉田さんによると、それだけの記録魔でありながら、宣長があえて書き残さなかったことも多いという。「自分の生涯を編集した人だったと思います」と話す。 また、『古事記』研究のベースとなった『延喜式』には、関連する資料の巻数やページ数を書き入れたり、地図を書き加えた紙を貼ったりしている。 畢生の大著『古事記伝』に関する資料は、桐でつくられた棚に収められている。 京都滞在時に購入した『古事記』の版本には、異本との校合、関連する文献の情報などが書き込まれている。付箋も多く立てられており、その厚みで本が膨らんでいる。 付箋と云えば、取材時の企画展「ノートを書く人びと」には、『書抜物』と題する資料が 自著を流通させる 収蔵庫に話を戻す。 「こんなものもありますよ」と、吉田さんに見せてもらったのは、一枚の絵図だった。 この絵図を書いたとき、宣長は19歳頃だった。その前には京都に関する記事を書き込んだ『都考抜書』をまとめているので、京都というまだ見ぬ都市への憧れが、こんなかたちで現れたのか。 なお、記念館では2020年にこの図の空白区画の50 区画分を分譲販売するという、ユニークなクラウドファンデングを実施。全部の区画が完売したという。また、円城塔氏の小説『宣長の仮想都市』(『新潮』2024年3月号)のモチーフにもなっている。多くの人の想像力を刺激するのだろう。 草稿や写本だけでなく、多くの版木が保管されている。その数は約1400枚。その中には『古事記伝』の版木もある。 「宣長は自著を出版することに意欲的でした。資金調達から本屋との交渉、序文や跋文の指示まで自分で行ない、装丁についてもはっきりとした好みがありました」と、吉田さんは解説する。本屋で売る場合のキャッチフレーズまで考案したという。 写本ではなく、版本を流通させることによって、多くの読者の元に、自分の考えを届ける 自著が全国的に広がることによって、宣長の元には多くの人が訪れて、教えを乞うた。 また、宣長は自分の蔵書を必要な人に貸し出していた。『古事記伝』も出版前に何人かに ジグソーパズルのような思想家 収蔵庫の見学を終えて、改めて吉田さんに話を聞く。 「1977年に小林秀雄の『本居宣長』(新潮社)が刊行されたことで、宣長への注目度は 「宣長は、いい意味での多重人格で、医師、古事記研究者、源氏物語研究者、歌人など、 「もっと時代が経てば、AIなども使いながら、宣長が残した資料のすべての関連性を明らかにすることができる日が来るかもしれません。そうなれば、日本文化を研究する上での基礎資料になると思います」 「学問は時代によって進んでいくものだという信念があり、自分の学問もいつか乗り越えられると感じていたのかもしれません。その批判の材料として、自分に関する資料を徹底的に残したのではないでしょうか」 東京に帰ってから、何度も挫折した小林秀雄の『本居宣長』を読みはじめた。あいかわらずよく判らないところが多かったが、何とか読み終えることができたのは、本居宣長記念館の 小林はこう書く。 1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。 X(旧Twitter) |
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調べる古本⑤ 古本の値段を調べる――価格履歴ソフト、弘文荘目録の索引、そして水谷不倒が言う「古書の無価値時代」
調べる古本⑤ 古本の値段を調べる
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ゼロ年代は古本の爆発期だったかも 奇禍により閑職に転じたのを幸いに、古本趣味を復活させたのが2005年のことだった。 古書価にも長期波動があるのでは 私も協力している『近代出版研究』。その3号座談会で書物雑誌の盛衰が話題になっていたのだが、実は書物雑誌には20年から25年周期で流行りがあるとのことだった。経済学の理論に「コンドラチェフの波」というのがある。これは景気循環(サイクル)に関する学説のひとつで、景気が約50年周期で循環するという考え方だ。他にも約10年の「ジュグラーの波」、約20年の「クズネッツの波」などがある。それぞれ、技術革新や設備投資、他建物の建て替えが主要因とされる。そんな感じの波が本の世界にもある気がする。 短期個別の相場変遷を知る 短期波動、長期波動、別に成立するとはいっても、一消費者として気になるのはやはり、 古典籍の類なら従来も検索できたが インターネット以前の世界でも、高い善本、古典籍の類は価格の記録が次の索引から調べられた。反町茂雄の古書肆弘文荘(1932〜)の販売目録『弘文荘待賈古書目』55冊などに載った約20,000点の販売記録である。 高すぎず安すぎずフツーの本の相場を知る――業者向け一覧表 ただし、古書業者にせよ、一般消費者にせよ、多く求められた古書価は安すぎず高すぎない本の古書価であった。あるいは高くても文学書の初版本や限定本など個人の収集家が集めるようなジャンルに属するものだった。 マニア向け一覧表 コレクター向けのマストアイテムのリストというか、趣味人によるレアアイテムの一覧表に価格が示されていることがある。例えば特殊な古本屋だった伊藤竹酔が作った『明治以降稀覯本索引』(粹古堂書店、1940)だと『我楽多文庫』は「全揃 時価三十五円位」とある【図3】。こちらの価格は仕入れ値(BtoB)でなく、小売り価格相場(BtoC)であろう。梅原北明が1927年に復刻する際に、発行部数は150部ほどだったので「一揃ひ安くて二十円お客次第では三十円から四十円までの馬鹿々々しい高値を呼んでゐます」と嘆いている。 「古書の無価値時代」と現在 で、話を長期波動に戻したい。 古老の話に由ると、維新当時江戸では、大八車に満載した書籍が、何貫何文といふ 不倒はこの「古書の無価値時代」の理由を、「何でも新式、西洋風になつた」がゆえと文明開化に求めている。それも一理あろう。しかし私は不倒の証言する「古書の受難期」を読むと、何でも電子式になった現在の「大均一祭」を思い出してしまうのだ。 150年ぶりのメディア変換期に 明治19年頃に和装本は洋装本に駆逐される(橋口侯之介のいう「明治20年問題」)。江戸期の「大書林」(大きな本屋、版元)も前後して没落。水谷不倒は「明治十五六年頃までは、まだまだ古書を弄ぶものなど殆どなく、依然として無価値時代を続けてゐた」という。
X(旧Twitter) ※当連載は隔月連載です |
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2024年6月10日号 第396号
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古書市&古本まつり 第137号
。.☆.:* 通巻396・6月10日号 *:.☆. 。
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━━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見26】━━━━━━━━━━
本居宣長記念館 希代の学者の頭の中
南陀楼綾繁
「今、空は悲しいまで晴れていた。そしてその下に町は甍を並べていた
白堊(はくあ)の小学校。土蔵作りの銀行。寺の屋根。そしてそこここ、
西洋菓子の間に詰めてあるカンナ屑めいて、緑色の植物が家々の間から
萌え出てゐる」
松坂城跡公園の月見櫓跡にある梶井基次郎文学碑には、『城のある町
にて』の一節が記されている。梶井は学生の頃、姉夫婦が暮らす松阪に
滞在した。この碑の建つ場所からは、松阪の風景が一望できる。
松坂城跡公園からの風景
この碑から坂を下ったところにある松阪市立歴史民俗資料館では、
ちょうど梶井に関する企画展が開催中だった。同館の2階には小津安二郎
松阪記念館を併設。映画監督の小津安二郎が、9歳から19歳までをこの地で
過ごした足跡を展示している。
同じく松坂城跡公園にあるのが、本居宣長記念館だ。
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14706
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。
X(旧Twitter)
https://twitter.com/kawasusu
本居宣長記念館
松阪市殿町1536-7
https://www.norinagakinenkan.com/
━━━━━━━━━━━【調べる古本5】━━━━━━━━━━━━
古本の値段を調べる――価格履歴ソフト、
弘文荘目録の索引、そして水谷不倒が言う「古書の無価値時代」
書物蔵
ゼロ年代は古本の爆発期だったかも
奇禍により閑職に転じたのを幸いに、古本趣味を復活させたのが
2005年のことだった。
週末古書展にも行きはじめたが、同時並行でeasy seekやスーパー源氏
など、ネット通販でも古本を買い始めた。
当時、古本フレンズらと開催していた「古本合戦」(新着古本の
自慢会)で、以前からの古本ファンでもあった恩師が「いま、古本屋に
長い間滞留してきた古本がネットという新しい販路で出てきているんだ
よ」と言っていた。
当時よくわからなかったが、それから二〇年。アマゾンマケプレで
1円で古本が売られたり、週末古書展にも大均一祭といった破格の
展覧会ができたりして、古本の値段も大きく変わってきた。そして
先生の言っていた長期的展望もなんとなくわかってきた。
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14703
※当連載は隔月連載です
━━━━━━━━━【展示会のお知らせ】━━━━━━━━━
東京古書会館で開催されたアンダーグラウンドブックカフェという
古書展のイベントで「佐野繁次郎の装幀モダニズム展」が
2008年6月に行われました。
同じ会場で今回は会期1週間、新しい蒐集品と継続所蔵している
コレクションを展示します。トークイベントも開催予定です。
「佐野繁次郎の仕事展 装幀本を中心にデザイン含めて」
6月8日(土)-6月15日(土)※6月9日(日)は休館日
月曜~金曜:10時-18時 / 土曜:10-17時
会場:東京古書会館 2階情報コーナー
料金:無料
主催:佐野繁次郎装の仕事展実行委員会
共催:東京都古書籍商業協同組合
イベント最新情報はこちら
https://x.com/sanoshige1900
東京古書組合WEBサイト「東京の古本屋」
https://www.kosho.ne.jp/?p=1069
━━━━━━━━━【書影から探せる書籍リスト】━━━━━━━━━
「日本の古本屋」で販売している書籍を、テーマを深掘りして書影から
探せるページをリリースしました。「日本の古本屋」には他のWebサイト
には無い書籍がたくさんあります。ぜひ気になるテーマから書籍を探して
みてください。
「日本の古本屋」書影から探せる書籍リスト
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「コショなひと」始めました
YouTubeチャンネル「東京古書組合」
https://www.youtube.com/@Nihon-no-Furuhon-ya
今回は更新ありません
━━━━━【6月10日~7月15日までの全国即売展情報】━━━━━
⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init
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第3回 戸田書店やまがた古本まつり(山形県)
期間:2024/04/25~2024/06/30
場所:戸田書店山形店 特設会場
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第10回南大沢古本まつり
期間:2024/06/11~2024/06/17
場所:京王相模原線南大沢駅前
ペデストリアンデッキ~三井アウトレット前特設テント
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フィールズ南柏 古本市(千葉県)
期間:2024/06/14~2024/07/01
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場
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第19回 カジル横川古本市(広島県)
期間:2024/06/14~2024/06/25
場所:フレスタモールカジル横川1F通路
URL:https://x.com/BookHiroshima
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書窓展(マド展)
期間:2024/06/14~2024/06/15
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=571
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BOOK DAY とやま駅(富山県)
期間:2024/06/15~2024/06/15
場所:富山駅南北自由通路
(あいの風とやま鉄道中央口改札前)
URL:https://bookdaytoyama.net/
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光が丘 夏の古本市
期間:2024/06/19~2024/08/04
場所:リブロ光が丘店 練馬区光が丘5-1-1 リヴィン光が丘5階
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フジサワ古書フェア(神奈川県)
期間:2024/06/20~2024/07/17
場所:フジサワ名店ビル 有隣堂藤沢店4階ミニ催事場
URL:http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm
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第150回 倉庫会 古書即売会(愛知県)
期間:2024/06/21~2024/06/23
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12
URL:https://hon-ya.net/
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新興古書大即売展
期間:2024/06/21~2024/06/22
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=569
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第3回 高円寺優書会
期間:2024/06/22~2024/06/23
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=726
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第106回シンフォニー古本まつり(岡山県)
期間:2024/06/26~2024/07/01
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア
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浦和宿古本いち(埼玉県)
期間:2024/06/27~2024/06/30
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)
URL:https://twitter.com/urawajuku
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文博ろうじの古本まつり(京都府)
期間:2024/06/28~2024/06/30
場所:京都文化博物館 ろうじ店舗前 京都市中京区三条高倉
URL:https://kyoto-kosho.jp/news/
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ぐろりや会
期間:2024/06/28~2024/06/29
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://www.gloriakai.jp/
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大均一祭
期間:2024/06/29~2024/07/01
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=622
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西部古書展書心会
期間:2024/07/05~2024/07/07
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=563
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東京愛書会
期間:2024/07/12~2024/07/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/
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横浜めっけもん古書展(神奈川県)
期間:2024/07/13~2024/07/14
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10
URL:http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm
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日本の古本屋メールマガジンその396 2024.6.10
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【発行者】
広報部・編集長:藤原栄志郎
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☆INDEX☆
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1.『「印象派の道」を翻訳して』
長峯朗(渡内書店)
2.『近代出版研究 第3号』
小林昌樹(近代出版研究所主宰)
3.『三浦按針の謎に迫る 家康を支えたイギリス人臣下の実像』
森良和(元玉川大学教授)
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━━━━━━━━━【自著を語る(番外編)】━━━━━━━━━━━
『「印象派の道」を翻訳して』
長峯朗(渡内書店)
「印象派の道」(リオネッロ・ヴェントゥーリ)は元々、神奈川近代
美術館の酒井忠康氏の勧めもあり翻訳したものです。三省堂書店の
山口さんのお手を煩わせて、なかなか綺麗な本に仕上がりました。
中身は印象派を網羅的に訳したもので、全体像が分かる貴重な本となりました。
イタリアのネッロ・ボランテ氏は序文の一部でヴェントゥーリの特徴をこう
書いています。
「ヴェントゥーリの代表作は、「プリミティブ派の趣味」であり、その中で
印象派を実証的に研究し、安易な図式化を拒み、詳しい内容を盛り込んだ。これは、
ニューヨークのコロンビア大学での講義をまとめたもので、ジョルジョーネ、
カラバッジョ、マネ、セザンヌの重要な作品を検証したものであった。
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14123
『印象派の道』
リオネッロ・ヴェントゥーリ 著
長峯朗(渡内書店) 訳
三省堂書店/創英社 刊
税込価格:5,500円(税込)
ISBNコード:978-4-87923-222-9
好評発売中!
https://www.books-sanseido.co.jp/soeisha_books/2414111
━━━━━━━━━【自著を語る(番外編)】━━━━━━━━━━━
『近代出版研究が三号雑誌になりました!
――戦後「書物雑誌」のまとめ記事も掲載です』
小林昌樹(近代出版研究所)
「三号雑誌」になりました
出版史上の「小さい問題の登録」(by柳田國男)を目指す本誌も、
はや3号。少なくとも「三号雑誌」にまではなりました。
本誌は全国配本されるような雑誌ではありません。東京なら神保町の
東京堂でフェア展開をしてくださっていますので、そこでバックナンバーも
含め購入できるでしょう。京都では古書店・善行堂さんが多く仕入れて
くださっています。他にも意のある独立系書店や古書店さんが仕入れておられ
ます。例えば、兵庫県・朝来市にある『本は人生のおやつです!!』さんなどです。
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14521
『近代出版研究 第3号』
近代出版研究所 刊
皓星社 発売
税込価格:2,530円
ISBN:978-4-7744-0820-0
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774408200/
━━━━━━━━━━━【大学出版へのいざない18】━━━━━━━━━━━
『近年の新知見をふまえて三浦按針像を描きなおす』
森良和(元玉川大学教授)
三浦按針をご存じでしょうか。
関ヶ原の戦いの半年前、オランダ船リーフデ号が豊後の海岸に辿り着きました。
1年10ヶ月にも及ぶ過酷な航海で、生存者は出発時のほぼ5分の1、20数人にまで
激減しました。その船の航海士がイギリス人ウィリアム・アダムス(日本名三浦按針、
以下「按針」)です。
まもなく按針は大坂に移送され、時の最高権力者徳川家康の尋問を受けます。
家康は問いに誠実に答えるこの異人を大いに気に入り、自らの臣下に加えると
ともに、やがて相模国に領地まで与えました。日本の歴史を通じて外国人が
領主となった唯一の例です。
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14037
『三浦按針の謎に迫る 家康を支えたイギリス人臣下の実像』
森 良和・フレデリック・クレインス・小川 秀樹 編著 著
玉川大学出版部 刊
税込価格:2,860円
ISBNコード:978-4-472-30314-2
Cコード:3332
好評発売中!
https://www.tamagawa-up.jp/book/b607092.html
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━【展示会のお知らせ】━━━━━━━━━
東京古書会館で開催されたアンダーグラウンドブックカフェという
古書展のイベントで「佐野繁次郎の装幀モダニズム展」が
2008年6月に行われました。
同じ会場で今回は会期1週間、新しい蒐集品と継続所蔵している
コレクションを展示します。トークイベントも開催予定です。
「佐野繁次郎の仕事展 装幀本を中心にデザイン含めて」
6月8日(土)-6月15日(土)※6月9日(日)は休館日
月曜~金曜:10時-18時 / 土曜:10-17時
会場:東京古書会館 2階情報コーナー
料金:無料
主催:佐野繁次郎装の仕事展実行委員会
共催:東京都古書籍商業協同組合
イベント最新情報はこちら
https://x.com/sanoshige1900
東京古書組合WEBサイト「東京の古本屋」
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━━━━━━━━━【書影から探せる書籍リスト】━━━━━━━━━
「日本の古本屋」で販売している書籍を、テーマを深掘りして書影から
探せるページをリリースしました。「日本の古本屋」には他のWebサイト
には無い書籍がたくさんあります。ぜひ気になるテーマから書籍を探して
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「日本の古本屋」書影から探せる書籍リスト
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━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━━
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書名:もっと調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス2
著者名:小林昌樹
出版社:皓星社
価格:2,200円
ページ数:216頁
判型:A5判並製
装幀・造本:藤巻亮一
ISBN:978-4-7744-0832-3
2024年6月18日発行予定
https://libro-koseisha.co.jp/
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書名:佐野繁次郎装幀集成 増補版 ―西村コレクションを中心として
編著:西村義孝
構成・装幀:林哲夫
出版社:みずのわ出版
ページ数:B5判並製本 143頁
価格 6,930 円(税込)
ISBN:978-4-86426-053-4
2024年6月発行予定
https://mizunowa.com/pub/845/
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「大学出版へのいざない」シリーズ 第19回
書名:大相撲の方向性と行司番付再訪
著者名:根間弘海
出版社名:専修大学出版局
判型/製本形式/ページ数:A5判/上製本/308頁
税込価格:3,300円
ISBNコード:978-4-88125-393-9
Cコード:C3075
2024年6月27日発行予定
http://www.senshu-up.jp/author/a93212.html
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━━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━━
5月~6月の即売展情報
⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init
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日本の古本屋メールマガジン その395・5月24日
【発行】
東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋」事業部
東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
URL https://www.kosho.or.jp/
【発行者】
広報部・編集長:藤原栄志郎
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近代出版研究が三号雑誌になりました! ――戦後「書物雑誌」のまとめ記事も掲載です
近代出版研究が三号雑誌になりました!――戦後「書物雑誌」のまとめ記事も掲載です小林昌樹(近代出版研究所主宰) |
「三号雑誌」になりました 出版史上の「小さい問題の登録」(by柳田國男)を目指す本誌も、はや3号。少なくとも「三号雑誌」にまではなりました。 東京堂(神保町)さんで三位いつもなら瞬間1位になる東京堂(神保町)さんのベストセラーリストでは、残念! 本屋大賞1位の宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』などにはばまれ(笑)、3位に終わりました(それでもスゴイとは思います)。いつも通っている東京堂さんには頭があがりません。 年刊でも「雑誌」なのでレパートリーは豊か 出版業界紙、火保図(戦前住宅地図代替)、「白ポスト」(絶滅危惧種!)、明治エロ絵葉書の流通、新聞の欄外や版次、まんじゅう本、出版社マーク、出版社史本、税関検閲、雑誌祭、カセットブック、版権などなど。どれもこれもそこそこ知られてはいるけれど、論じられることがほとんどなかったものばかりです。そのうえどれもこれもオモシロい。オモシロくってタメになる?!!! 昭和30年、少雨荘・斎藤昌三が展望して以来69年ぶり――書物雑誌の歴史 巻頭座談会「「書物雑誌」と雑誌の「書物特集」:『近代出版研究』の先祖調べ、あるいは偽系譜作りの試み」をちょっとご紹介。 書物雑誌にコンドラチェフの波動説!?個別の分析もさりながら、座談会ゆえに思ってもみなかった仮説が飛び出したのには皆びっくり。すなわち〈書物雑誌20〜25年周期説〉です。関東大震災(1923年)をきっかけに書物雑誌ブームが発生したのはつとに有名でしたが、実はそれから20ないし25年周期で書物雑誌がブームになっていたと判明したのです! 本当にびっくりしました。 とある国会図書館OBからも、「書物雑誌コンドラチェフの波動説、なかなか面白い「仮説」だと思います。ポアンカレを待つまでもなく、仮説こそ科学の母ですから」との言葉をいただきました。20年周期なので、クズネッツの循環説のほうが近い気もしますが、そこいらへんはご寛恕いただいて、おどろきのオモシロさをご堪能ください。 近代出版を調べるには 3号の特集は近代出版を調べる技術です。これは当初予定の特集「新聞書誌学」――本当にこういったものが1980年代なかばに提唱されました――が空中分解したので、代わりに編成されたもの。編集途中で研究員が「これらって「調べる技術」要素が多いのでは」と言い出したのがきっかけでした。たまたま私が『調べる技術:国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』という本を出して当たっていたのです(8刷で3万部)。 エロ本を調べるのにも調べる本があるのです 私も前職の国会図書館でで仕事がらエロ本の調べ方を案内したことがありました。前職場は収集率が2割以下ながらその手の本も法定納本で収集しているので、実際に篤実な研究者が 「三号雑誌」の語誌も ページ数が増えたうえに物価高。やむを得ず定価を300円あげましたが、前号にまけずオモシロいのでぜひご採用ください。ようやく三号雑誌になれたので「三号雑誌」という複合語の語誌についてもコラムを用意しました。こういった「小さい問題の登録」をこれからも続けてまいります。 |
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『「印象派の道」を翻訳して』
『「印象派の道」を翻訳して』永峯 朗(渡内書店) |
「印象派の道」(リオネッロ・ヴェントゥーリ)は元々、神奈川近代美術館の酒井忠康氏の勧めもあり翻訳したものです。三省堂書店の山口さんのお手を煩わせて、なかなか綺麗な本に仕上がりました。
中身は印象派を網羅的に訳したもので、全体像が分かる貴重な本となりました。イタリアのネッロ・ボランテ氏は序文の一部でヴェントゥーリの特徴をこう書いています。 「ヴェントゥーリの代表作は、「プリミティブ派の趣味」であり、その中で印象派を実証的に研究し、安易な図式化を拒み、詳しい内容を盛り込んだ。これは、ニューヨークのコロンビア大学での講義をまとめたもので、ジョルジョーネ、カラバッジョ、マネ、セザンヌの重要な作品を検証したものであった。 その源泉は、過去の芸術作品についての深い認識であり、リオネッロ・ヴェントゥーリの印象派及び印象派の芸術家たちや派生した印象派に関する論文集は、彼が芸術史研究を刷新するために行った貢献を理解する上で、基礎となるのは芸術作品それ自体ではなく、その内容、すなわち詩的性格そのものであった。 別の図では、ヴェントゥーリは、偉大な歴史家である父親のアドルフォの流派から出発しながら、父親の狭い、単なる文献学を超越し、同様に単なる視覚的な批評をも超越し、作品を 「よくみるとよい-とヴェントゥーリは、1866年の作品と比較して言うー論争的な性格は消滅していて、明暗法の対比は繊細な技法にとって代わられている。この絵では、個々の 1866年の平板な画面は、1875年には大気の塊状になり、以前の平面的なヴィジョンの不愉快なコントラストやアカデミックな遠近法的構図は、大気の充満した空間を構成する霧状の色彩と空間を発見することで乗り越えられている。趣味の変化ばかりではなく、芸術が枠組みから抜け出す様子を、二つの作品の画布の縁の部分を見るだけで知ることができよう。 モネは自然に浸りきることをテーマとして、光線をその導き手として新たな自然を創造しようとした。すべての事象を光線の中に参加させ、閉鎖的でなく、切り離されてもいず、体系的でもなく世界全体が光で揺らめき、生命と絶頂感の源泉そのものとなる新しいフォルムを創造する」「印象派(芸術)誌38巻1935年第二部」 『印象派の道』 |
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近年の新知見をふまえて三浦按針像を描きなおす【大学出版へのいざない18】
『近年の新知見をふまえて三浦按針像を描きなおす』【大学出版へのいざない18】森 良和(元玉川大学教授) |
三浦按針をご存じでしょうか。
関ヶ原の戦いの半年前、オランダ船リーフデ号が豊後の海岸に辿り着きました。1年10ヶ月にも及ぶ過酷な航海で、生存者は出発時のほぼ5分の1、20数人にまで激減しました。その船の航海士がイギリス人ウィリアム・アダムス(日本名三浦按針、以下「按針」)です。まもなく按針は大坂に移送され、時の最高権力者徳川家康の尋問を受けます。家康は問いに誠実に答えるこの異人を大いに気に入り、自らの臣下に加えるとともに、やがて相模国に領地まで与えました。日本の歴史を通じて外国人が領主となった唯一の例です。 按針は西洋に関する多くの新鮮な情報を家康にもたらしました。それまで日本で得られる西洋の情報は、もっぱらカトリックの宣教師を通じてのものでしたが、按針はヨーロッパが宗教的に二分され、対立国同士が戦争状態にあることを教えました。さらに西洋船を建造して優れた西洋の技術を具体的に示すとともに、オランダやイギリス関係の外交文書を作成したり、大坂の陣で用いられた大砲の輸入を斡旋したりしました。 それでも按針の生涯や事績にはなお不明な点が多く残されています。1613年のイギリス船の来航以前に按針に言及した史料はかなり限られ、そのため根拠の乏しい創作話が流布する場合さえあります。歴史にロマンを求めることは楽しいですが、もちろん史実とフィクションには区別が必要です。本書ではそれを踏まえて、諸分野の専門家がそれぞれの立場から信頼のおける史料に基づいて作成した論考を集めています。 各章では従来あまり取り上げられなかった按針論や、先行研究とは異なる視点から捉えた論考が展開されています。すなわち、按針がオランダ船でやってきた背景、カトリック勢力との関係、幕府や平戸藩との権力関係、帰国しなかった理由、船手奉行向井一族との関わり、アダムスが作成した日本地図の探求、オランダ商館との関わり、イギリス商館衰退の理由などが追究されています。 さらに本書の構想段階で、平戸にある伝按針墓の発掘作業が終了し、そこから出土した遺骨の科学的鑑定結果も発表されました。本書でもかなりの紙幅を割いて、それについて論じています。詳細については内容にあるとおりですが、遺骨の年代測定やDNAの分析結果を援用して歴史学的検証と照合させると、遺骨が按針のものである確率はかなり高まったと言えそうです。 江戸時代初期は日本の近世史上でも例外的なグローバル時代でした。カトリック国のポルトガルとスペイン、プロテスタント国のオランダとイギリスなどが、極東の地でそれぞれ、両グループの内部対立も抱えながら相争い、これに中国明朝の商人も絡んで勢力拡大を図りました。按針はそのいずれとも多かれ少なかれ関わっています。 本書を一読した読者は按針の奥深い魅力にいっそう引き込まれるとともに、按針を通じて、近世初期の日本を舞台にした世界史的スケールでの歴史のダイナミズムを再認識できるでしょう。 |
Copyright (c) 2024 東京都古書籍商業協同組合 |
2024年5月10日号 第394号
。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
古書市&古本まつり 第136号
。.☆.:* 通巻394・5月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。
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━━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見24】━━━━━━━━━━
松浦武四郎記念館 旅と蒐集に生きた奇人
南陀楼綾繁
2月29日。朝、東京から新幹線に乗り、名古屋で在来線に乗り換えて、
松阪駅に着いた。
大学3年生のとき、民俗学研究会の調査で三重県と和歌山県の県境にある
集落に何度か滞在した。その際、名松線の乗り換えで松阪は通っているが、
町なかを歩いた記憶はあまりない。一度だけ、ひとりで松阪の商人宿
みたいなところに泊まったことがあるが、10時過ぎると玄関を閉められて
外に出ることはできなかった。それから、もう35年が経つ。
松阪駅では山﨑範子さんが出迎えてくれる。『地域雑誌 谷中・根津・
千駄木』を発行した谷根千工房のメンバーだが、昨年この地に移住した。
いまは松坂城の近くに並ぶ〈御城番屋敷〉という重要文化財の武家屋敷の
一区画にお住まいで、私も泊めてもらう。ここを拠点に、松阪の3つの
資料館の書庫を取材するのだ。
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14295
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。
X(旧Twitter)
https://twitter.com/kawasusu
松浦武四郎記念館
三重県松阪市小野江町383
https://takeshiro.net/information
「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」
6月9日まで開催(休館日はサイトで確認してください)
静嘉堂@丸の内
東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
https://www.seikado.or.jp/
━━━━━━━━【懐かしき古書店主たちの談話】━━━━━━━━
懐かしき古書店主たちの談話 第6回
日本古書通信社 樽見博
昭和60年10月に、東京都古書籍商業協同組合東部支部二十周年を記念した
『下町古本屋の生活と歴史』(発行者・鈴木明弘・荒川区鈴木書店)が刊行
された。編集は青木正美、小林静生、中山信行の三氏が担当した。
稲垣書店の中山さんが「編集後記」で「読めるものにするためには具体的な
生活ぶりとホンネの意見を、残るものとするためには歴史的資料の記録化を
目指した。」と書いている。
その中山さんが「東部支部に三十周年は来るか」を書いているが、東部古書
会館が平成22年に閉鎖された今となっては貴重な記念誌である。この記念誌と
時を合わせるように、昭和61年1月『古本屋―その生活・趣味・研究』という
表紙、本文用紙とも記念誌と同じ体裁の雑誌が創刊された。
編集・発行人は青木正美、小林静生、石尾光之祐で、青木文庫発行となっている。
当初から10号までと決め、平成2年9月で終刊した。
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=13514
※当連載は隔月連載です
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「コショなひと」始めました
YouTubeチャンネル「東京古書組合」
https://www.youtube.com/@Nihon-no-Furuhon-ya
今回のお店は表参道から洗足に移転したばかりの「日月堂」です。
ポスター、チラシ、パンフレット、紙袋から直筆の手紙まで、
縦横無尽の「エフェメラ」とは何なのか、
店主の佐藤真砂さんにお伺いしました。
━━━━━【5月10日~6月15日までの全国即売展情報】━━━━━
⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init
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第3回 戸田書店やまがた古本まつり(山形県)
期間:2024/04/25~2024/06/30
場所:戸田書店山形店 特設会場 山形市嶋北4丁目2-17
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港北古書フェア(神奈川県)
期間:2024/04/30~2024/05/14
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売※駅構内
URL:http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm
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第51回 古本浪漫洲 Part.1
期間:2024/05/09~2024/05/11
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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ふつうの古本まつり(福岡県)
期間:2024/05/09~2024/05/20
場所:ジュンク堂書店福岡店 2階 MARUZENギャラリー
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東京愛書会
期間:2024/05/10~2024/05/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/
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中央線古書展
期間:2024/05/11~2024/05/12
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=574
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第51回 古本浪漫洲 Part.2
期間:2024/05/12~2024/05/14
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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新橋古本まつり
期間:2024/05/13~2024/05/18
場所:新橋駅前SL広場
URL:https://twitter.com/slbookfair
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第51回 古本浪漫洲 Part.3
期間:2024/05/15~2024/05/17
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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五反田遊古会
期間:2024/05/17~2024/05/18
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=567
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フリーダム展
期間:2024/05/17~2024/05/18
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=644
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第51回 古本浪漫洲 Part.4
期間:2024/05/18~2024/05/20
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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第51回 古本浪漫洲 Part.5(300円均一)
期間:2024/05/21~2024/05/23
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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浦和宿古本いち(埼玉県)
期間:2024/05/23~2024/05/26
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)
URL:https://twitter.com/urawajuku
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BOOK & A(ブック&エー)
期間:2024/05/23~2024/05/26
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=843
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趣味の古書展
期間:2024/05/24~2024/05/25
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.tokyo
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第11回 BOOK DAY とやま駅(富山県)
期間:2024/05/25~2024/05/26
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)
URL:https://bookdaytoyama.net/
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第32回紙屋町シャレオ古本まつり(広島県)
期間:2024/05/25~2024/06/02
場所:広島市中区紙屋町シャレオ中央広場
URL:https://twitter.com/koshohiroshima
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第110回 彩の国所沢古本まつり(埼玉県)
期間:2024/05/29~2024/06/04
場所:くすのきホール
(西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)
URL:https://tokorozawahuruhon.com/
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オールデイズクラブ古書即売会(愛知県)
期間:2024/05/31~2024/06/02
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12
URL:https://hon-ya.net/
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和洋会古書展
期間:2024/05/31~2024/06/01
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=562
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杉並書友会
期間:2024/06/01~2024/06/02
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=619
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反町古書会館展 (神奈川県)
期間:2024/06/01~2024/06/02
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10
URL:http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm
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ミエル川口 古本市(埼玉県)
期間:2024/06/04~2024/06/09
場所:ミエル川口 川口市本町2-7-25
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萬書百景市(ばんしょひゃっけいいち)
期間:2024/06/07~2024/06/08
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=959
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好書会
期間:2024/06/08~2024/06/09
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=620
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第10回南大沢古本まつり
期間:2024/06/11~2024/06/17
場所:京王相模原線南大沢駅前
~ペデストリアンデッキ~三井アウトレット前特設テント
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フィールズ南柏 古本市(千葉県)
期間:2024/06/14~2024/07/01
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場 柏市南柏中央6-7
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書窓展(マド展)
期間:2024/06/14~2024/06/15
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=571
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BOOK DAY とやま駅(富山県)
期間:2024/06/15~2024/06/15
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)
URL:https://bookdaytoyama.net/
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松浦武四郎記念館 旅と蒐集に生きた奇人【書庫拝見25】
松浦武四郎記念館 旅と蒐集に生きた奇人【書庫拝見25】南陀楼綾繁 |
2月29日。朝、東京から新幹線に乗り、名古屋で在来線に乗り換えて、松阪駅に着いた。 大学3年生のとき、民俗学研究会の調査で三重県と和歌山県の県境にある集落に何度か滞在した。その際、名松線の乗り換えで松阪は通っているが、町なかを歩いた記憶はあまりない。一度だけ、ひとりで松阪の商人宿みたいなところに泊まったことがあるが、10時過ぎると玄関を閉められて外に出ることはできなかった。それから、もう35年が経つ。 松阪駅では山﨑範子さんが出迎えてくれる。『地域雑誌 谷中・根津・千駄木』を発行した谷根千工房のメンバーだが、昨年この地に移住した。いまは松坂城の近くに並ぶ〈御城番屋敷〉という重要文化財の武家屋敷の一区画にお住まいで、私も泊めてもらう。ここを拠点に、松阪の3つの資料館の書庫を取材するのだ。 荷物を置かせてもらって、松阪駅から近鉄で伊勢中川駅へ。ロータリーで待っていると、 電車の中で、山本さんの『幕末の探検家 松浦武四郎入門』(月兎舎)を読みながら来たと話すと、「この記念館で働くまで、武四郎のことはほとんど知らなかったんです」という、 【蝦夷地探検とコレクター】館の入り口には、武四郎の歌碑が建つ。「陸奥(みちのく)の蝦夷の千島を開けとて 神もや我を作り出しけむ」という和歌で、蝦夷地探検は自分の使命だという気持ちが込められている。その後ろには、白い玉石で北海道の形が描かれている。
【武四郎の魅力を伝える】 ここで、記念館と収蔵資料について見ておこう(『松浦武四郎記念館(小野江コミュニティセンター)20年のあゆみ』を参照)。 一方、東京松浦家にも、資料保存をめぐるドラマがある。 終戦後、東京松浦家の一部の資料は文部省史料館(現・国文学研究資料館)に寄託され、 【収蔵庫の中で】 山本さんの案内で、いよいよ収蔵庫へと向かう。 棚には地震対策用のネットが掛かっているので、外からはどんな資料があるか判らない。
【「武四郎涅槃図」の奥深さ】 2か月後の4月21日。今度は東京で松浦武四郎に出会った。 1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。 X(旧Twitter) |
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懐かしき古書店主たちの談話 第6回
懐かしき古書店主たちの談話 第6回日本古書通信社 樽見博 |
昭和60年10月に、東京都古書籍商業協同組合東部支部二十周年を記念した『下町古本屋の生活と歴史』(発行者・鈴木明弘・荒川区鈴木書店)が刊行された。編集は青木正美、小林 執筆者は基本古書店主で三橋猛雄、出久根達郎、中川賢典、花井敏夫、飯田淳次、反町茂雄、山田朝一、中山信行、藤井正、尾上政太郎、奥平晃一、相川章太郎、斎藤孝夫、夏目順、永島富士雄、山岡吉松、八鍬光晴、森井健一、品川力、杉野宏、井上昭直、小梛精以知、後藤憲二、岩森亀一、蝦名則、田中正人、吉田文夫、小野敏之、森川忠信、八木福次郎、川野寿一。 『古本屋』創刊号が完成したとき、小林さんが八木福次郎、私、折付桂子を誘って八木の行きつけの居酒屋赤柿で小さなお祝いを開いた。小林さんは茨城県筑波山麓の出身で、同じく筑波山西麓の下館在住の私を何かと目にかけてくれた。雑誌が完成し高揚した小林さんは「樽見、これを読んでどう思った」と聞いてきた。私はその日もらったばかりで殆ど読んでいなかったが「古本屋自身が古本屋の生活を記録する雑誌で貴重だと思います」と当たり障りのない返事をしたら「違うんだ」と言って後は何も言わなかった。 その後も小林さんは酒席の時など「樽見、お前に話したいことがあるんだ」と何度も言うのだが結局何も語らなかった。恐らく「古通も継続が難しくなって年齢的にも八木さんも辛い。続けているのはお前たちの生活を考えてだろう。お前から終刊にしようと言うべきではないか」ということではなかったかと思う。小林さんと八木は『東京古書組合五十年史』編纂を通して親しくなり、ことに八木の晩年十年間ほどは明治古典会のある金曜日には必ず、会館即売会に来る内藤健二さんと三人で喫茶店に行きおしゃべりすることが習いになっていた。ただ、私も八木の苦悩は痛いほど分かっていたが、私がそう言って終刊が決まるほど簡単なものではない。小林さんが言い淀む訳もその辺に理由があったのだろう。小林さんは本当に晩年の八木に尽くしてくれた方で有り難かった。 『古本屋』発行人の一人石尾光之祐さんの屋号は江東文庫で、私が入社した昭和50年代の古書目録掲載店の常連の一軒だった。古書会館で出会うと、座っていた席から立ってニコニコしながら若造の私にも丁寧な挨拶をされた。表面極めて慇懃丁寧だけれど心に何か顰めた方であることはすぐに分かる。石尾さんの文才を青木、小林両氏は高く買っていた。青木さんの初期の本は石尾さんの徹底的な指導を受けたらしい。石尾さんは創刊号以来、「日の丸堂・その他」「麒麟の会のこと」「捕物帳の周囲」「古本屋の客」「なみだの通販」「はりかい・しうりいたし〼」「夜明けのラーメン」「ひとそれぞれ」「デパート古本市(顚)「訛伝・小沢行二」を書いている。大学時代に文学同人誌に参加していたが、晩年執筆熱が再燃したようだった。 昭和63年に『無邪気な季節』という青春記を青木、小林両氏の勧めで刊行したが、限定30部だった。私は青木さんから一冊頂いたが、残念ながらどこかに埋もれて出てこない。学生時代の作品だろうか。「なみだの通販」は「日本古書通信」にも関する内容で「掲載料が三万となりやめた」とある。当時は古書目録掲載希望店が多く、足元を見たわけではないが、壁を少し高くして固定化した掲載店を制限し新しい古書店の掲載を呼び込めるかなと考えていた。掲載希望者が殆どいなくなった今、忸怩たる思いである。(平成9年没・75歳) 『古本屋』の執筆者の内、「日本古書通信」でも取り上げるとよいだろうと青木さんが世田谷の由縁堂書店相川章太郎さんを紹介してくれた。相川さんは第三号に「想えば「こんぺうる」」という12頁に及ぶいわば青春記を寄稿している。古本屋を始めた経緯も書かれているが、主に好きだった歌舞伎や寄席との関わりが詳しく回想され、中でも芸術祭男と称された湯浅喜久治というプロデュサーとのかかわりを描いて秀逸な内容の回想記である。趣味などという域ではなく、相川さんはそのまま芸能の世界でも生きてゆけたのではないだろうか。それとも、悲劇的な結末に至ってしまった湯浅喜久治のようにならずに済み、生涯歌舞伎や寄席を趣味に出来たことは、古本屋として堅実な人生を送られたからだろうか。 『古本屋』第三号に、相川さんが『古書月報』に書かれた「演劇映画ちょっと本の話」と それと生まれは船橋だが小学校は四谷第五小学校で東京人らしい歯切れの良い話し方、それと、よく東京の水で洗ったようなというが、色白で肌や白髪に艶があり、いかにも江戸っ子の風情である。本郷の木内書店の木内民夫さんや、戦後、銀座近藤書店内に秦川堂を開いた永森慶二さん(後に大塚,下谷、神保町に移転。故秦川堂永森譲さんの父上)など、以前はきれいな容姿でべらんめー口調の古本屋さんを見かけたが、相川さんは「べらんめー」ではなかったが、そんな東京の粋な古本屋のお一人だったと思う。 「歌舞伎が好きで」の前半は『古本屋』の回想記をなぞるものだが、後半は古本屋、特に戦後の古書市場再興や即売会の運営、南部支部創設、南部古書会館の建設について話されている。 (「全古書連ニュース」2024年3月10日 第499号より転載) ※当連載は隔月連載です 日本古書通信社 |
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