2020年1月10日 第290号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第84号
      。.☆.:* 通巻290・1月10日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

北陸古本案内 その1
               オヨヨ書林 山崎 有邦

東京で10年営業し、金沢に移転してからも早10年が経とうとしてお
ります。今年の冬は暖かくて物足りない、一昨年の大雪の時は、な
んて会話が普通に出てくるほどになりましたし、お客さんからまと
まった蔵書を任せていただく事などもあり、徐々にこちらに馴染み
つつあるのかなと思います。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5437

オヨヨ書林
https://oyoyoshorin.jp/

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第13回 井下拓也さん 人生の谷間を本で乗り切るひと

                       南陀楼綾繁

 古本屋めぐりの体験をネットで書いている人は多い。井下拓也さ
んもその一人で、2013年からFacebookで「古書店巡礼」と称して、
訪れた古本屋とそこで買った本について書いている。最近の記事に
312店目とある。東京の主要な店にはほぼ足を運んでいるのではな
いか。
「自分の見たままの印象を正直に書いています。訪れた店では礼儀
として、必ず1冊は買うようにしています」と井下さんは云う。文学
等、音楽、映画、美術などの本を中心に集めているようだ。著者の
署名本もお好きらしい。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5435

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【1月10日~2月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

--------------------------
フィールズ南柏古本市(千葉県)

期間:2019/12/23~2020/01/10
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場  
柏市南柏中央6-7

--------------------------
第12回 上野広小路亭古本まつり

期間:2020/01/06~2020/01/19
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36  
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階

--------------------------
第38回古本浪漫洲 Part1~Part4(300円均一)

期間:2020/01/10~2020/01/22
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場) 
新宿区歌舞伎町1-2-2
※各パート毎に出展者が変わります。

--------------------------
オールデイズクラブ(愛知県)
期間:2020/01/10~2020/01/12
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12 

--------------------------
東京愛書会

期間:2020/01/10~2020/01/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/

--------------------------
京都マルイ新春古本市(京都府)

期間:2020/01/10~2020/01/13
場所:京都マルイ1階店頭(四条通側) 
   京都市下京区 四条河原町 真町68
URL:https://machimachi-books.com/index1/newyearbookfair2020.JPG

--------------------------
大均一祭

期間:2020/01/11~2020/01/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
さんちか古書大即売会(兵庫県)

期間:2020/01/16~2020/01/21
場所:神戸・三宮さんちか3番街さんちかホール

--------------------------
アクロスモール新鎌ヶ谷古本市(千葉県)

期間:2020/01/16~2020/01/26
場所:アクロスモール新鎌ヶ谷 1F 中央エレベーター前  
千葉県鎌ケ谷市新鎌ヶ谷2-12-1

--------------------------
たにまち月一古書即売会(大阪府)

期間:2020/01/17~2020/01/19
場所:大阪古書会館 大阪府大阪市中央区粉川町4-1

--------------------------
調布の古本市

期間:2020/01/17~2020/01/31
場所:調布パルコ5階催事場 調布市小島町1-38-1

--------------------------
趣味の古書展

期間:2020/01/17~2020/01/18
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
和洋会古書展

期間:2020/01/24~2020/01/25
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
五反田遊古会

期間:2020/01/24~2020/01/25
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4

--------------------------
中央線古書展

期間:2020/01/25~2020/01/26
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
第21回紙屋町シャレオ古本まつり(広島県)

期間:2020/01/27~2020/02/02
場所:紙屋町シャレオ中央広場 広島県広島市中区基町地下街100-11

--------------------------
BOOK & A(ブック&エー)

期間:2020/01/30~2020/02/02
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
我楽多市(がらくたいち)

期間:2020/01/31~2020/02/01
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
上野広小路古本祭り

期間:2020/02/03~2020/02/09
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36  
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階

--------------------------
三省堂書店池袋本店古本まつり

期間:2020/02/04~2020/02/11
場所:西武池袋本店別館2階=特設会場(西武ギャラリー)

--------------------------
書窓展

期間:2020/02/07~2020/02/08
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
杉並書友会

期間:2020/02/08~2020/02/09
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2020/02/14~2020/02/28
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場 柏市南柏中央6-7

--------------------------
第6回 古書会館de古本まつり(京都府)

期間:2020/02/14~2020/02/16
場所:京都古書会館 3階 京都市中京区高倉通夷川上る

--------------------------
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

次回メールマガジンは1月下旬に発行です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国950書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=33

┌─────────────────────────┐
 次回は2020年1月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================

日本の古本屋メールマガジンその290 2020.1.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

==============================

・メールマガジンの購読停止、アドレスの変更はこちら
 https://www.kosho.or.jp/mypage/

・このメールアドレスは配信専用です。
 返信いただいても対応致しかねます。ご了承下さい。

・メールマガジンの全てまたは一部を無断転載することを禁じます。

・メールマガジンの内容に対するご意見、ご感想は
  melma@kosho.ne.jp までお願い致します。

・メールマガジン内容以外のご質問は info@kosho.or.jp へお願い
 いたします。なお、ご質問の内容によりましては、返信が大幅に
 遅れる場合もございます。ご了承下さい。

============================================================
☆*.:*゜*・゜☆*.:*゜*・゜☆*.:*゜*・゜☆*.:*゜*・゜☆*.:*・
============================================================

no-image

第13回 井下拓也さん 人生の谷間を本で乗り切るひと

第13回 井下拓也さん 人生の谷間を本で乗り切るひと

南陀楼綾繁

 古本屋めぐりの体験をネットで書いている人は多い。井下拓也さんもその一人で、2013年からFacebookで「古書店巡礼」と称して、訪れた古本屋とそこで買った本について書いている。最近の記事に312店目とある。東京の主要な店にはほぼ足を運んでいるのではないか。
「自分の見たままの印象を正直に書いています。訪れた店では礼儀として、必ず1冊は買うようにしています」と井下さんは云う。文学等、音楽、映画、美術などの本を中心に集めているようだ。著者の署名本もお好きらしい。

記事の印象通り、穏やかに話す好青年でエキセントリックな感じはない。会社員として働きながら、好きなことをマイペースで続けてきたという印象だ。しかし、子どもの頃からの話を聞いてみると、極度の凝り性であることが判ってきた。

井下さんは1978年に東京都で生まれ、埼玉県浦和市で育つ。会社員の父は本好きで、家じゅうに小説や歴史に関する本があふれていた。父方の親戚に真鍋鱗二郎という愛媛県在住の作家がいて、著作が出版されるとその献呈本が家に送られてきたという。
「小学1年のとき、父が子ども向けの歴史人物事典を買ってくれました。それが面白くて、図書館にある人物事典を片っ端から借りて、そこから引用してオリジナルの人物事典を手書きでつくっていました。熱中していたので、友だちが家に泊まりに来ても、作業のキリが付くところまで待ってもらったほどです(笑)。テレビやゲームには興味がなく、夜も本ばかり読んでいたので、目が悪くなりました」

母は、若い頃からバンドでボーカルをやっていた。その影響で、井下さんは4歳でピアノを習いはじめる。井下さんが幼い頃、母が入院して青森の親戚に預けられていたことがある。
「寂しくて、子ども向けの伝記をたくさん読みました。バッハやベートーベン、シューベルトらの生涯を知って、こういう人がこの曲をつくったんだと思いました」
 人物への興味はこの頃から生まれていたのだろう。

 小学生の頃は、図書館で借りた江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズを読破したり、エドガー・アラン・ポーの『赤死病の仮面』の挿絵が怖くて、熱を出して寝込んだりした。自分で雑誌をつくり、それを母のバンドが練習していたスタジオに持っていって大人に見せたという。

 しかし、中学になるとハードロックに目覚めたこともあり、本から離れてしまう。授業をさぼりがちになり、友だちと学校を抜け出して遊びに行ったこともある。高校でも音楽漬けの日々が続く。ところが、浪人生になると、本の世界に戻り、図書館の文庫コーナーを著者の50音順に片っ端から読んでいった。「自分にノルマを課したい気分だったんです」。とくに明治・大正の小説が好きになった。
 有島武郎の「生まれいずる悩み」と「惜しみなく愛は奪う」を読み、自分に正直に理想を追い求める生きかたに感銘を覚える。大学では文学部に入り、卒論は有島武郎をテーマにした。
「卒論のために作家論や作品論をたくさん読みました。調べて書くことが好きなんだと、改めて思いました」
 音楽サークルでバンドにのめり込んでいたが、一人になりたいときには研究室の書庫に籠った。本に囲まれると安心したという。

 大学卒業後は、一人で曲をつくり、小さなプロダクションに属したが、仕事としてではなく自分の音楽をつくりたいということで、会社に就職する。しかし、そこを辞めて、実家で引きこもった。
「当時は音楽を聴けない状態で、音のない本に没頭しました。家にある世界文学全集の類いを読みまくりました。ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだときは、自分のなかで何かが変わったようでした」
 井下さんは「僕は人生にストップがかかるたびに本にハマるようです」と言う。浪人時代に続き、第二のストップも本で乗り切ることができた。

 家にある本を読み尽くし、もっと読みたくなって、ネットで知った古本屋に足を運ぶようになる。
 2010年頃、神保町の〈小宮山書店〉で三島由紀夫の初版本が並んでいるのを見て、集めようと思った。その後、都内の古本屋を回って、本を買うようになった。
「ある作家やテーマから次第に範囲が広がっていきました。三島経由で、澁澤龍彦が訳した幻想文学を読み、そこから美術やゴシックの本を読むようになりました。いまは、カミュ、カフカ、サルトルなど不条理をテーマに書いた作家が好きです」
 坂本龍一の音楽が好きで、彼が影響を受けたドビュッシーを通じて、フランス文化への興味を持ち、現代音楽に関する本も読む。映画のDVDも数千本集めている。それらすべての体験が、自分のつくる曲にも反映されていると井下さんは言う。

 2010年にいまの会社に就職してからは、仕事が終わると古本屋をめぐる。
「神保町の〈三茶書房〉で、閉店間際の時間に三島関係の本を買ったとき、店主が三島由紀夫文学館の話をしてくれました。開館の際、資料収集に関わったそうです。とっくに閉店時間を過ぎたのに、1時間ぐらい話し込んでしまいました(笑)。そのとき、文学館の初代館長だった佐伯彰一さんの話も出ましたが、家に帰ってネットを見たら、佐伯さんが亡くなったというニュースが流れていて、不思議な気分になりました」
 Facebookでは、すでになくなった古本屋の思い出も書かれている。
「池袋の〈夏目書房〉にはよく行きました。おばあさんの店主がとてもいい人でした。閉店したのが残念です」

 毎日のように買っているので、家には本が増殖し、近くに倉庫を借りた。
「『この本、欲しかった!』と喜んで買って、家に帰るとすでにあった、などはザラですね。同じ本が4冊もあったこともあります(笑)」
 読んだ本はExcelでリストに記録している。年間200冊近くは読んでいるそうだ。

 じつはこの10年間も、心身ともに不調が続き自分にストップがかかっていたと井下さんは言う。
「思うように動けないなかで、本や映画、音楽からインプットしつづけてきました。そろそろ、表現するほうにシフトを切り替えていきたいと思っています。曲だけじゃなくて、伝えかたや場のつくりかたも含めて、自分の音楽をつくろうと思っています」
 今後も古本屋通いはつづけるとのこと。本に助けられ、本から得たものが、どんな音楽となって発信されていくのだろうか。

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

susumeru
『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

no-image

北陸古本案内 その1

北陸古本案内 その1

オヨヨ書林 山崎 有邦

東京で10年営業し、金沢に移転してからも早10年が経とうとしております。
今年の冬は暖かくて物足りない、一昨年の大雪の時は、なんて会話が普通に出てくるほどになりましたし、お客さんからまとまった蔵書を任せていただく事などもあり、徐々にこちらに馴染みつつあるのかなと思います。
移転の後、古本屋ツアー・イン・ジャパン、小山さんのご来店を待ち焦がれていましたが、なかなかお見えになられませんので致し方なく、今回は私の方で石川県の古本屋を紹介させていただきます(敬称略)。因みに、古ツアさんのブログでは、2008年6月に文学堂と明治堂が紹介され、「金沢は離れた場所に店が点在している。時間が少ないのもあったが、ダッシュで二店が限界でした。」それはその通りなのですが、街の規模自体がそれほど大きくないため、丸一日あれば街なかの古本屋は大方回れるかと思います。

まずは、創業が寛政元年という老舗中の老舗・近八書房。郷土史や仏書、和本などが隙間なく並び、古書肆然とした佇まい。古書店が登場するテレビ番組の撮影にも使われることがあるそうです。

加能屋書店(武蔵店)は、美術書・郷土史・文庫を中心とし、各分野まんべんなくバランスよい品揃えです。

金沢文圃閣は、自動車販売店の一角を利用した、“3冊で500円均一”コーナーが、文字通りのガレージセール。雑多な書籍や雑誌が堆く積み上げられ、質・量ともに「コミガレ」に勝るとも劣らず充実しています。掘り出し物も多く、ここ目当てに訪れる古書ファンも多い店です。近代書誌・書物学の文圃文献類従シリーズなど、出版も手がけています。

文学堂は、こぢんまりとした店構えで、文学書が多い。古くから続く店で(現在は2代目)、仕入れた本に、こちらの店の値札ラベルがついていることがよくあります。落ち着いた茶色で、屋号の背景に白山連峰が版画風にあしらわれた、蔵書ラベルの見本のような、たいへん洒落たデザインです。

あうん堂は今年で創業17年目というブックカフェ。在庫冊数はそれほど多くないものの、丁寧にセレクトされた本とおいしいコーヒーで、本好き・本の話好きの集う店となっています。一箱古本市など、イベントも積極的に開催されています。

高橋麻帆書店は、神保町・田村書店の洋書部にて修行。ドイツ語を中心とした稀覯書、版画等を取り扱い。店舗はなく、目録販売、ギャラリー・古書市等での展示販売などが中心です。

古ツアにも掲載の明治堂は、現在はネット販売を中心とした営業となり、店は閉まっていることが多いようです。

そして弊店ですが、最初に金沢に引っ越したときは、竪町でしたが、その後、長町にせせらぎ通り店が出来、竪町店は新竪町店に移転。絵本や文芸書をメインにしたせせらぎ通り店と、美術書とその通信販売をメインとした新竪町店の2店舗にて営業中です。

次に街なか以外の店を。一日で回るのは車がないと少し難しいかもしれません。

古書Duckbillは、深谷温泉の先、山の上の薪ストーブのある古民家にて営業。天井までの手作りの本棚に、人文・社会科学系の学術書から美術書まで、幅広い品揃えです。

古本一刻館は、コミックがメインのお店です。

古本LOGOSは、能登半島の先端、珠洲市飯田のイングリッシュ・カフェ内にて、週末のみの予約営業。今年は奥能登国際芸術祭(トリエンナーレ)の第2回目が開催されるので、それにあわせての訪問もおすすめです。

KIZUKI BOOKSは小松市。メインは中古農機具の販売ですが、併設された古本屋も絵本を中心としたなかかなの品揃えです。広めの店内にゆったりとレイアウトされた居心地のよい店です。

古本屋巡りのお供に、石川古書組合にて「石川の古書店案内」を発行しています。たいていの店で配布しておりますので、まずはこの地図を手に入れられる事をお勧めします。
また、店舗販売とは別に、北陸の古本屋有志にて合同目録『金沢書友会』を年に2回行しています(頒価300円)。郵送希望の方は文学堂または弊店までお申込みください。

次回は富山県・福井県の古本屋を紹介の予定です。

1map-omote
1map-ura

オヨヨ書林
https://oyoyoshorin.jp/

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

2019年12月25日 第289号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.☆.:* その289・12月25日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国930書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.『東北の古本屋』
  ~大震災を乗越え地域の文化をつなぐ古本屋さんへの応援歌~
             折付 桂子(日本古書通信社編集部)
2.戦前の愛書家、古本者の全体像は本書から――
  『昭和前期蒐書家リスト―趣味人・在野研究者・学者4500人』
                 トム・リバーフィールド
3.『お弔いの現場人 ルポ 葬儀とその周辺を見にいく』
                         朝山実

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

━━━━━━━━━━━【自著を語る(234)】━━━━━━━━━

『東北の古本屋』
~大震災を乗越え地域の文化をつなぐ古本屋さんへの応援歌~

             折付 桂子(日本古書通信社編集部)

 東日本大震災から8年半が過ぎた。私の故郷は福島県。神保町古
書街近くの勤務先で、崩れ落ちる本と書類の山にまみれながら、連
絡のとれない故郷に不安が募ったことを思い出す。原発事故の後に
は、故郷がなくなるかもしれないという恐怖にかられた。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5391

『東北の古本屋』 折付桂子 著
日本古書通信社 刊 定価:1100円(税込)+送料180円
お申込はメールにて kotsu@kosho.co.jp

━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━━

戦前の愛書家、古本者の全体像は本書から――
『昭和前期蒐書家リスト―趣味人・在野研究者・学者4500人』

               トム・リバーフィールド

 ブログ「書物蔵―古本オモシロガリズム」の記事「蒐書家(ブッ
クコレクター)人名事典の提唱及び作り方について」
https://shomotsugura.hatenablog.com/entry/20140428/p3 )に
触発され、実際に人名事典の執筆を進めている過程の副産物、それ
が本書(全174頁)である。一言でいうと、昭和前期の各種蒐書家
名簿を統合したリストで、この夏お会いした同好の士に勧められた
ことから、急ぎ同人誌として出版することにした。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5305

『昭和前期蒐書家リスト―趣味人・在野研究者・学者4500人』
トム・リバーフィールド編 書物蔵 監修・解説
https://shomotsugura.hatenablog.com/entry/2019/11/13/075500

━━━━━━━━━━━【自著を語る(235)】━━━━━━━━━

『お弔いの現場人 ルポ 葬儀とその周辺を見にいく』

                         朝山実

 茨城県にある工場を見学するまで「霊柩車」は、自動車メーカー
が生産しているものだとおもいこんでいた。
実際は専門の工場が新車を購入して改造(後部座席を取り除き、車
輌を切断。棺を載せるため後ろに空間を伸ばし、後輪も付け替える
など)するのだと聞いて「わざわざ感」に驚いた。こちらが何も知ら
ないものだから、社長さん(もともとは歯科技工士だった)や工員さ
んたちから代わる代わるその工程を懇切丁寧に説明していただき、
それがおもしろく、小学生の頃にパン工場を社会科見学した際の焼
きたての匂いをおもいだした。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5381

朝山実
あさやま・じつ 1956年、兵庫県生まれ。インタビューライター。
書店員などいくつか転職の末、上京。現職について30年。
著書に『イッセー尾形の人生コーチング』『アフター・ザ・レッド 
 連合赤軍 兵士たちの40年』『父の戒名をつけてみました』など。

『お弔いの現場人 ルポ 葬儀とその周辺を見にいく』 朝山実 著
中央公論新社 本体:1700円(税別) 好評発売中!
http://www.chuko.co.jp/tanko/2019/10/005242.html

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

高橋 秀行 (前 東京古書組合事務局長) 個展
1月27日(月)~2月1日(土)
AM11:00 ~ PM6:30(最終日 PM4:00まで)

光画廊
東京都中央区銀座7-6-6
丸源ビル24(1階)

「2019年の古ツアをふり返る」(仮題) 
 古本屋ツアーインジャパン 小山力也
 http://furuhonya-tour.seesaa.net/

古本乙女の独り言⑦
夜行バスに揺られて
カラサキ・アユミ

古本乙女の独り言⑥ はこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5238

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

12月~1月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=33

┌─────────────────────────┐
 次回は2020年1月中旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================

日本の古本屋メールマガジンその289 2019.12.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎

==============================

tomurai

『お弔いの現場人 ルポ葬儀とその周辺を見にいく』

『お弔いの現場人 ルポ葬儀とその周辺を見にいく』

朝山実

 茨城県にある工場を見学するまで「霊柩車」は、自動車メーカーが生産しているものだとおもいこんでいた。
実際は専門の工場が新車を購入して改造(後部座席を取り除き、車輌を切断。棺を載せるため後ろに空間を伸ばし、後輪も付け替えるなど)するのだと聞いて「わざわざ感」に驚いた。こちらが何も知らないものだから、社長さん(もともとは歯科技工士だった)や工員さんたちから代わる代わるその工程を懇切丁寧に説明していただき、それがおもしろく、小学生の頃にパン工場を社会科見学した際の焼きたての匂いをおもいだした。
昔は、高級車の新車を活用したものだが、近頃は中古車を改造することが多いという。価格の問題からだ。こんなところからも葬儀業界が激安競争の中にあることがわかる。そればかりか、使い込んだ霊柩車のエンジンを付け替えリフレッシュさせたものの需要もあると聞いて、還暦こえたジブンもまだやれそうな気になった。

このほかにも話を聞きにいったのは、年末に亡くなった母親が使っていたベッドを廃棄するのはもったいないと、お正月にベッドを解体し「仏壇」に作り直したひと(音楽ユニット「明和電機」の土佐さん)。その話をすると、「すばらしい」と仏壇の謂れを説明していただいたお坊さん(脱サラして仏門に入られた)。
バブル時代は広告代理店でイベント担当をしていたが、いまは「墓じまい」の依頼に追われているという石屋さん。遺品整理で出た品々を東南アジアにリユース輸出している倉庫を見せてもらったり(北海道土産の定番だった木彫りのクマやファンシーな縫いぐるみが人気なのだとか)。行き場のない「遺骨」をゆうパックで受け取り、わずかな料金で永代供養を請け負う住職など、会って「へー」、覗いて「ほぅ」となることが多かった。
ルポのあいだ頭の中にあったのは「ひとは、なぜ弔いの儀式をするのだろうか?」だった。

じつは、取材者であるわたし自身も現在「現場」の一端にかかわっている。東日本大震災があった年の同じ月に父が亡くなり、「父の戒名」をわたしがつけたのが始まり。父がまだ元気だったころ、ベストセラーになっていた宗教学者の島田裕巳さんの『戒名は、自分で決める』という新書本のことを話したところ、「おまえがつけるんか?」と面白がっていたのをおもいだし、新幹線の車中で戒名を考えたのだった。
葬儀社を頼み、檀家だったお寺の住職に話をすると「ひとのビジネスに手をだすな」と声をあらげられ「墓は出ていってもらう」とまで言われる始末。由緒あるお寺のご住職が「ビジネス」と口にしたのには、わが耳を疑うほど驚いた。
そんなあれやこれやを『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社)にまとめたのが6年前。本書は以来もやもやっと芽生えた疑問にもとづく続編にあたる。

「現場の一端にある」というのは、阪神淡路の震災で半壊した実家を父が再建はしたものの、家族は誰ひとり住むことなく(建てた父自身も、旧実家の側の倉庫を改造したバラックの家に頑固に十数年住まいつづけた)「空き家」となった実家を相続、思案の末に「葬儀会館」として利用してもらっているからだ。
活用してもらっているのは、父の葬儀のときの霊柩車の運転手さん(当時楽天イーグルスの正捕手だった嶋選手に似ている)で、振り返ると、火葬場までの30分ほどの「助手席の座り心地のよさ」が決め手になった。
わたしの本業はインタビューして書くこと。取材の場では自身について語ることはないのだが、ゆきがかりからこの本では実家を葬儀会館にするまでの経緯も記させていただいています。お気持ちがうごくようでしたら御一読いただけましたら幸いです。

朝山実
あさやま・じつ 1956年、兵庫県生まれ。インタビューライター。
書店員などいくつか転職の末、上京。現職について30年。
著書に『イッセー尾形の人生コーチング』『アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年』『父の戒名をつけてみました』など。

tomurai
『お弔いの現場人 ルポ 葬儀とその周辺を見にいく』 朝山実 著
中央公論新社 本体:1700円(税別) 好評発売中!
http://www.chuko.co.jp/tanko/2019/10/005242.html

Copyright (c) 2019 東京都古書籍商業協同組合

tohoku

『東北の古本屋』~大震災を乗越え地域の文化をつなぐ古本屋さんへの応援歌~

『東北の古本屋』~大震災を乗越え地域の文化をつなぐ古本屋さんへの応援歌~

折付 桂子(日本古書通信社編集部)

 東日本大震災から8年半が過ぎた。私の故郷は福島県。神保町古書街近くの勤務先で、崩れ落ちる本と書類の山にまみれながら、連絡のとれない故郷に不安が募ったことを思い出す。原発事故の後には、故郷がなくなるかもしれないという恐怖にかられた。

 雑誌『日本古書通信』や『全国古本屋地図』などでお世話になった古書業界の方々も大きな被害をうけた。業界の片隅にいる自分にできることは何かと考え、2011年以来、被災地の古書店を継続的に取材し、『古書通信』誌上で、震災・津波・原発事故、そして古書にまで及んだ風評被害に負けずに頑張る古書業界の姿を伝えてきた。

 震災の年、広範囲の甚大な被害にもかかわらず、営業を辞める古書店はなかったが、徐々に様相が変っているようだ。その変化を反映した古本屋案内を作りたいと考えていた時、一昨年の岩手の古書市場で業者の方々からも他地域の様子を知りたいとの声があった。そこで、現在、古書店はどのような状況なのか、店は何軒あるのか、東北6県全体の実態を記録しようと考えた。店舗のある店は直接伺って話を聞き、地図や写真も添えて案内、無店舗の方もできるだけ特色が解るように紹介した「東北の古本屋」を連載したのが昨年のことである。

 連載が好評だったこともあり、今回1冊にまとめることにした。その後の動きを修正、加筆し、リストは各県組合に確認していただいた(掲載したのは全古書連加入の古書組合員)。カラー版にしたことで、棚の様子や店の雰囲気がよりはっきり伝わる本になったと思う。

 この詳細な案内の土台には8年間の取材の積み重ねがある。本書の後半には2011年以来の震災取材記事のダイジェスト版を収録した。阪神淡路大震災の記録は兵庫組合の記録誌があり、熊本地震の記録も残されている。本書が古本屋から見た東日本大震災の記録となれば幸いである。

 残念ながら古本屋は少しずつ減っている。全古書連組合員は今年3月現在2056軒で、20年前に比べ2割強の減少。それでも、新刊書店が半減し、日書連加盟店が激減している状況をみると、古本屋はかなり頑張っていると思う。

 ただ、実数以上に少なくなった印象を受けるのは、店の形が変ったためだろう。ネット販売の隆盛で店舗をもたない形が増えた。実際、東北6県の組合員は20年前は70数軒で殆どが店舗営業だったが、現在64軒のうち店舗は41軒(倉庫的な店も含む)で6割強。この数字はまだ高い方で、全国的には店舗率はもっと低いと思われる。駅を降りれば、地域の香りのする古本屋を何軒もはしご出来たという時代は遠くなってしまった。

 ただ、今回取材して感じたのは、それでも、少ない古本屋がしっかり地域を支えているということ。街の風景が画一化する中で、古本屋には地域のカラーが残っている。

 「たいした店じゃないよ」と謙遜されていても、話を伺ううち、言葉の端々に〈郷土への思い〉〈古本屋としての矜持〉が滲んでくる。「何十年も寝かせて売れる本もある。じっくり腰を据え地元の文化をつなぎたい」「東北の資料は白河の関を越えて流失はさせない」など、郷土への熱い思いに胸を打たれた。重厚な書籍や資料を扱う老舗だけではない。「普通の街の古本屋として地域と共に」「どんなお客様も先生」という言葉も重い。〈街の古本屋〉は一朝一夕ではなりえないから。改めて、古本屋は、本と人をつなぎ、地域に根差し文化を支えてゆく存在なのだと実感した。

 店の形は多様でいい。ただ、街には、広く深い古本の世界と出会える場があり続けてほしい。35年、業界の片隅にいて、いま強くそう願わずにはいられない。そんな思いも込めての、古本屋さんへの応援歌である。

tohoku
『東北の古本屋』 折付桂子 著
日本古書通信社 刊 定価:1100円(税込)+送料180円
お申込はメールにて kotsu@kosho.co.jp

Copyright (c) 2019 東京都古書籍商業協同組合

2019年12月10日 第288号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第83号
      。.☆.:* 通巻288・12月10日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

第三回 古本屋稼業十年目の呟き
                    善行堂 山本善行

 ふと、あと何年古本屋を続けていけるのだろうかと考えることが
ある。身体と頭が動く限り、多少鈍くなっても、最後の最後まで古
本屋でいたいと思うが、すでにかなりの鈍さを日々味っているので、
とりあえず後十年を目標にしたい。まだまだやりたいことがあるの
で、今回はそのことについて書いてみよう。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5379

山本善行

2009年、銀閣寺近くに「古書善行堂」を開店する。
著書に「古本泣き笑い日記」「関西赤貧古本道」「漱石全集を買
った日」など。
雑誌「APIED」と関西ジャズ情報誌「WAY OUT WEST」に連載中。

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第12回 菊池雅人さん 本棚をパトロールするひと

                       南陀楼綾繁

10年ほど前、私は仙台の書店で『仙台学』という雑誌を手にした。
荒蝦夷という地元の出版社が発行する同誌は、仙台をめぐるさまざ
まな特集を組んでいた。その頃、私は一箱古本市の縁で、仙台に来
る機会が増えていた。『仙台学』は、それまで知らなかった街を歩
くときの手がかりになった(もう一誌、郷土史家の渡邊愼也さんが
発行していた『仙臺文化』も読んでいた)。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5384

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【12月10日~1月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init
--------------------------
マルイファミリー溝の口古本市(神奈川県)

期間:2019/11/29~2019/12/15
場所:マルイファミリー溝の口 B1階 特設催事場 
神奈川県川崎市高津区溝口1丁目4-1

--------------------------
第92回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2019/12/04~2019/12/10
場所:くすのきホール
   西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場

--------------------------
博物館古書市(愛知県)

期間:2019/12/07~2019/12/15
場所:名古屋市博物館 名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1

--------------------------
浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/12/12~2019/12/15
場所:JR浦和駅西口 さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
URL: https://twitter.com/urawajuku

--------------------------
新興古書大即売展

期間:2019/12/13~2019/12/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

--------------------------
立川フロム古書市

期間:2019/12/13~2019/12/27
場所:フロム中武 3階バッシュルーム(北階段際)
  立川駅北口徒歩5分(ビッグカメラ隣) 

--------------------------
第3回 文博ろうじの古本まつり 前まつり(さきまつり)(京都府)

期間:2019/12/13~2019/12/15
場所:京都文化博物館内「ろうじ店舗」 
   京都府京都市中京区三条高倉上る

--------------------------
第16回 つちうら古書倶楽部古本まつり(茨城県)

期間:2019/12/14~2019/12/22
場所:つちうら古書倶楽部 
   土浦市大和町2-1 パティオビル1階

--------------------------
杉並書友会

期間:2019/12/14~2019/12/15
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9  

--------------------------
吉祥寺パルコの古本市

期間:2019/12/14~2020/01/05
場所:吉祥寺パルコ地下1階 武蔵野市吉祥寺本町1-5-1

--------------------------
MM駅ナカ古本&ワインフェスタ

期間:2019/12/19~2019/12/25
場所:横浜みなとみらい線みなとみらい駅構内
   みらいチューブ(イベントホール) 駅改札口より徒歩30秒

--------------------------
ぐろりや会

期間:2019/12/20~2019/12/21
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL: http://www.gloriakai.jp/

--------------------------
五反田遊古会

期間:2019/12/20~2019/12/21
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4 

--------------------------
第3回 文博ろうじの古本まつり 後まつり(あとまつり)(京都府)

期間:2019/12/20~2019/12/22
場所:京都文化博物館内「ろうじ店舗」 
   京都府京都市中京区三条高倉上る

--------------------------
倉庫会(愛知県)

期間:2019/12/20~2019/12/22
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12

--------------------------
京都マルイ歳末古本市(京都府)

期間:2019/12/26~2019/12/29
場所:京都マルイ(四条河原町)1階店頭 四条通側

--------------------------
第69回 東武古書の市(栃木県)

期間:2019/12/27~2020/01/05
場所:東武宇都宮百貨店5階イベントプラザ 
   宇都宮市宮園町5-4

--------------------------
好書会

期間:2019/12/28~2019/12/29
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9  

--------------------------
銀座松屋古書の市

期間:2020/01/04~2020/01/08
場所:松屋銀座 8階イベントスクエア 中央区銀座3-6-1

--------------------------
下町書友会

期間:2020/01/04~2020/01/05
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 
※今回は、土・日曜の開催です

--------------------------
杉並書友会

期間:2020/01/04~2020/01/05
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
第12回 上野広小路亭古本まつり

期間:2020/01/06~2020/01/19
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36  
   台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階
   (「上野御徒町」駅 A4出口前/「上野広小路」駅 A4出口前/
   「御徒町」駅北口 徒歩3分)

--------------------------
第38回古本浪漫洲 Part1~Part4(300円均一)

期間:2020/01/10~2020/01/22
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場) 
   新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111
※Part毎に出店書店が変わります

--------------------------
東京愛書会

期間:2020/01/10~2020/01/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/

--------------------------
大均一祭

期間:2020/01/11~2020/01/13
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

次回メールマガジンは12月下旬に発行です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国950書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】

https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=33

┌─────────────────────────┐
 次回は2019年12月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================
日本の古本屋メールマガジンその288 2019.12.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

==============================

第12回 菊池雅人さん 本棚をパトロールするひと

第12回 菊池雅人さん 本棚をパトロールするひと

南陀楼綾繁

 10年ほど前、私は仙台の書店で『仙台学』という雑誌を手にした。荒蝦夷という地元の出版社が発行する同誌は、仙台をめぐるさまざまな特集を組んでいた。その頃、私は一箱古本市の縁で、仙台に来る機会が増えていた。『仙台学』は、それまで知らなかった街を歩くときの手がかりになった(もう一誌、郷土史家の渡邊愼也さんが発行していた『仙臺文化』も読んでいた)。
なかでも、「駅前物語」という特集の8号に載った「70年代せんだい書店回顧録」は、この時代の新刊書店について具体的に綴られた記事で、駅前にチェーン系書店が展開して以降しか知らない私にとって刺激的だった。ここに載った当時の書店の分布図を見ると、まさに時代の空気が伝わってくる。筆者の菊池雅人というひとは何者なんだろう? 

今年、仙台で本についての活動を行う「Book! Book! Sendai」(BBS)の10年間の活動をまとめた冊子『本があるから Book! Book! Sendai→Book! Book! Miyagi 2008-2018』が刊行された。その中に「仙台直近10年 書店激烈盛衰録」という記事がある。2000年代の仙台の書店分布図があり、それぞれの店の特徴が載っているのは、例の記事と同じ構成だ。筆者は「GAZIN菊池」、つまりあの菊池雅人だった。ぜひ会ってみたいと、冊子を編集した〈book cafe火星の庭〉の前野久美子さんに紹介してもらい、菊池さんにインタビューを申し込んだ。

「あの記事はほとんど記憶だけで書きました。調べて書くとなんだかつまらないんですよね。前に、本を買った店のカバーを付けて本棚に並べていたんですが、カバーに支店の情報が入っていたのは参考になりました。『仙台学』にはその後、同じように仙台の映画館とレコード店についても書きました。他にも、喫茶店やグランドキャバレーについても書きたかったのですが、実現していません」
 市内にあるご自宅に伺うと、菊池さんはそう云った。菊池さんは1953年にこの地で生まれ、戦前に建てられた家で育った。現在の家は10年ほど前に建て替えた。
 祖父は学校の教師で、短歌の会を主宰していたため、同人が家に集まったという。父は俳句を詠み、同人誌の編集もしていた。

 小学校の3、4年頃に市民図書館に通い、ジュール・ヴェルヌやルパン、ホームズなどを読む。マンガも好きで、さまざまなマンガ雑誌をクラスの同級生と手分けして買い、貸し借りしていた。菊池さんが買っていたのは、組み立て付録が充実している『ぼくら』だった。また、近くの貸本屋で貸本マンガ誌の『影』を借り、佐藤まさあきやさいとうたかをなどの大人っぽい作品を読む。「ずっと寝床で読んでいたので、目が悪くなりました」と言う。

 中学1年生の春休み、父の本棚で松本清張の『点と線』を見つける。
「あとがきに、クロフツの『樽』に影響されたと書いてあったのですが、友人の家の本棚で創元推理文庫の『樽』を見つけた。それで『樽』を読み、すぐ『点と線』も読みましたが、とんでもなく面白かった。『情死』というのが判らなくて親に訊いたら、黙られました(笑)」
 ミステリの面白さに目覚め、新刊書店でカッパノベルスの松本清張を買ったり、創元推理文庫の海外ミステリを買うように。
「小遣いが週に500円だったので、文庫が2冊買える。500円になるようにその組み合わせを考えるのが楽しかった。読書感想文で殺人が出てくるクロフツの『2つの密室』を書いたら、学校に親が呼び出されて、『息子さん、大丈夫ですか?』と心配されました」

 大学生になると、〈東北劇場〉という洋画専門の映画館でアルバイトをする。従業員やアルバイトにミステリ好きが多く、グループをつくることになった。『ミステリアン』というガリ版刷りの雑誌も1号だけ出した。ほかにも、映画館通い、中古レコード集めと趣味に忙しい生活を送っていた。
 大学卒業後の1977年、市内の私立学校に事務員として就職。当時は時間に余裕があったこともあり、知り合いを集めて、「ミステリクラブ謎謎」を結成。毎月例会を開き、会員内の通信を発行。年に一回程度、機関誌『謎謎』をオフセット印刷で発行した。
「例会では、ディベート形式の裁判ゲームとか、ミステリの傑作のランキングなどをやりました。会員は最大で40人ぐらいいました。機関誌は〈高山書店〉〈アイエ書店〉〈金港堂〉〈宝文堂〉などの新刊書店に持ち込んで、置いてもらいました」
 『謎謎』6号(1984年)では当時忘れられていた、東北大学出身のミステリ作家・高城高が、北海道に住んでいることを知り、インタビューを掲載した。
「この記事はミステリ評論家の権田萬治さんにほめてもらいました。のちに荒蝦夷が『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』を刊行しますが、これがきっかけになったかもしれません」
 謎謎は10年間続けたが、仕事が忙しくなって活動を停止した。
 
 新刊書店には学生時代から現在まで、毎日のように通っている。
「地元の書店はざっと見られる気楽さがありますね。昔は配達もしてくれましたし。また、郷土の本に強いです。〈宝文堂〉は出版もしていました。職場にも出入りしていたので、顔見知りの店員もいました。1997年に〈ジュンク堂書店〉が進出したときには、扱う本の量の多さに驚きました。ひととおり棚を眺めると、知らない本が見つかる。書店をクルージングする楽しさがあります」
 なお、菊池さんによると、仙台では1月2日の「初売り」が盛んで、その日だけの景品を求めて前夜から行列する客がいるほどだという。新刊書店でも初売りが行われるが、カレンダーや地図、その店で使える割増商品券などを景品として出しているそうだ。
「古本屋さんの初売りは聞いたことないですね。あったら、行くけど」と菊池さんは笑う。

本は新刊書店で買うことが多かったが、東北大学の近くに並んでいた古本屋にはときどきいって、松本清張の初版本を探していた。
「太白区鈎取本町にある〈萬葉堂書店〉は、本の量が多いので、棚を眺めるのが楽しいです。ここでは、松本清張の同じ文庫本のカバー違いを集めました。閉店してしまったけど愛子(あやし)にあった〈開成堂〉は巨大な倉庫みたいな店でした」
 清張に関しては、著作や関連書だけでなく、清張の名前や作品名が出てくるミステリ小説を100冊ほど集めている。
「批判的な取り上げかたで、清張を出している小説もあります。『清張以後』という云い方がありますが、いまでも結構意識されているんですよね」
 仙台以外では、山形市の古本屋や中古レコード屋に行ったり、上京すると必ず神保町に行ってひととおり古本屋をめぐる。

「家を建て替える際に、増えすぎた本や雑誌を古本屋に売ったり、図書館に寄贈したりしました。段ボール箱で100以上あったと思います」
 その後、東日本大震災が発生し、しばらくは本を買う気持ちの余裕がなくなったというが、現在も本棚に5000冊ほどあるという。
 案内していただくと、単行本や文庫、雑誌がびしっと本棚に並べられていた。テーマごとにだいたいの区分けがされている。
 清張関係は別格として、「宮城県が舞台になったミステリ」「ビートルズが出てくる小説」「タイトルに西暦が入っている本」「『遠野物語』が出てくる小説」「目の病気が出てくるミステリ」など、じつにさまざまなテーマで本を集めている。
「本屋に行くと、いろんな本をひたすらめくって探すんです。見つかると、喜んで買う(笑)。タイトルに西暦が入った本は1945年から2000年まで集まったら、それをもとに文章を書いてみたいです」

 このほか、書庫には新聞や雑誌から切り抜いた書評を貼りつけたスクラップブックもある。
 菊池さん自身も書評を書くのが好きで、月に1回程度、希望者にメールで「GAZIN B00K REVIEW」を送っている。私も読んでいるが、かなり的確でときに辛口だ。
 最新の202回で紹介されたのは、柏耕一『交通誘導員ヨレヨレ日記』、逢坂剛『百舌落とし』、佐高信『いま、なぜ魯迅か』の3冊。この並びを見るだけで、守備範囲の広さがうかがえる。
 
 本屋に行くと、いろいろ見るものが多いという菊池さん。きっと、何時間いても飽きないに違いない。この先も、仙台じゅうの書店の本棚をパトロールしつづけてほしい。

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

susumeru
『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

Copyright (c) 2019 東京都古書籍商業協同組合

zenkou

第三回 古本屋稼業十年目の呟き

第三回 古本屋稼業十年目の呟き

山本善行

 ふと、あと何年古本屋を続けていけるのだろうかと考えることがある。身体と頭が動く限り、多少鈍くなっても、最後の最後まで古本屋でいたいと思うが、すでにかなりの鈍さを日々味っているので、とりあえず後十年を目標にしたい。まだまだやりたいことがあるので、今回はそのことについて書いてみよう。それにしても、いつまでも古本屋を続けたいというこの気持ち、古本屋のどこにそんな魅力があるのでしょうね。

 いつの日か「善行堂目録」を出したい。古本屋の目録発行は年々減っているように感じるが、目録を読み、あれこれ考えて注文する楽しみは他に代え難いと思うし、実際私自身が大好きなのだ。例えば、福島書房さんから目録が届くと、仕事はさておき、すぐに封筒を開く。本のタイトルと作者が並んでいるだけだが、それを見ていくのが、どれだけ楽しいか。きっと私と同じような人がいると思う。

 目録は本を売る方法としても優れたものだと思っていて、今までに、この本を目録に出せたら良いのにと思ったことは何度もあった。普通によくある本は良い本で本であっても目録向きではない。例えば、大きなまとまった買取りで、個性のある蒐集書物であったなら、それを丁寧に売るには目録が一番だと思う。
 人が一生をかけてコツコツと集めてきた書物を全て引き取らせてもらう、ということが古本屋にはあって、私はいつも不思議に思うのだが、それが大量の書物であっても、古本屋を続けて行くためには何人も何人もの本が必要なのだ。こんなに良い本がこんなにたくさんあるのに、一年もしない内に、売れていったり、どこかに消えて行ってしまう。

 自分の目だけで判断しないで、目録に載せて、お客さんに判断してもらうのも楽しみの一つになるだろう。まず大事なのは、コレクターの人の住所録を作ること。目録ができてもそれを必要とする人に送れないと話にならない。
 私はまた昔の古書目録を見るのが好きだ。京都から出ていた古書目録、「CHIJITSU」や「書肆かみかわ」は本を整理しているとき、見つかることがよくあるが、つい仕事の手を休めてしばらく読んでしまう。
 他にやりたいことは、今読みにくくなっている作家の作品集を編集したい。私は、今までに、黒島伝治、上林暁、埴原一亟、の作品を編み、解説を書いてきたが、さらに例えば、宮地嘉六、衣巻省三、田畑修一郎、光田文雄、の作品集を編みたいと思っている。もちろん、講談社文芸文庫向きの作家たちなので、そこに入れば、私の選でなくても読者として嬉しい。

 あと、絵本も作りたい。上林の作品で絵本にしたいのがあって、これはどうしても自分で手がけたい。絵が入れば楽しめるだろうな、という小説が上林の中にあって、その作品を中心に「星を撒いた街」の続編を編んで、絵本にもするというのが私の夢である。私は、上林暁全集(全19巻)を、ほぼ毎日夜に読み続けている。毎日少しずつだけれど、もう3周目の第6巻に入っている。繰り返し読むことが良いことかどうかはわからないが、繰り返し読むことでわかってくることもある。

 そしてこれは、今年中に始める予定だが、好きな作品を筆写していこうと思っている。自分の満足以外何物も生み出さないかもしれないが、自分の満足だけでもいい、それにもしかするとそこから何かが生まれるかも知れない。とにかく思いついたことはやってみる。そう考えてこの十年、やってきたのだ。

zenkou
『漱石全集を買った日』山本善行 清水裕也 著
夏葉社 刊 本体1300円+税 好評発売中!
http://natsuhasha.com/

山本善行
2009年、銀閣寺近くに「古書善行堂」を開店する。
著書に「古本泣き笑い日記」「関西赤貧古本道」「漱石全集を買った日」など。雑誌「APIED」と関西ジャズ情報誌「WAY OUT WEST」に連載中。

Copyright (c) 2019 東京都古書籍商業協同組合

2019年11月25日 第287号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.☆.:* その287・11月25日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国930書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.『未来趣味 増刊 横田順彌追悼号』    北原尚彦
2.『近代出版史探索』            小田光雄
3.『「言論統制」の近代を問いなおす
            検閲が文学と出版にもたらしたもの』
                       金 ヨンロン
4.ある日の古本屋にて          カラサキ・アユミ

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

『未来趣味 増刊 横田順彌追悼号』

             日本古典SF研究会会長 北原尚彦

 横田順彌さんはSF作家であり、かつ明治研究家でした。そして
何より、古本が大好きで古書研究家でもありました。
 そんな横田さんが、2019年1月に亡くなりました。横田さんを中
心に活動してきた日本古典SF研究会の会長をわたくし北原尚彦が
務めていた関係で、蔵書の整理や追悼行事を全て率いることになり
ました。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5327

『未来趣味 増刊 横田順彌追悼号』
発行:日本古典SF研究会 頒価:2,000円
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/

━━━━━━━━━━━【自著を語る(233)】━━━━━━━━━

『近代出版史探索』

                     小田光雄

 『近代出版史探索』は拙ブログ「出版・読書メモランダム」にお
いて、2009年9月から現在に至るまで、「古本夜話」のタイトルで
1000編近く連載してきた最初の200編を収録している。
 これも「自著を語る」で紹介した前著『古本屋散策』が短編集と
すれば、『近代出版史探索』は連作長編として書かれ、すべてがリ
ンクしていくという構成である。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5315

『近代出版史探索』小田光雄 著
論創社 価格:6000円+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/

━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━━

『「言論統制」の近代を問いなおす:
検閲が文学と出版にもたらしたもの』

                      金ヨンロン

 本書の構想は、2018年1月26日に十重田裕一氏の企画で開かれた
「国際検閲ワークショップ」(於早稲田大学)が切掛けになってい
る。その場に集まった5人の若手研究者はその後も議論を重ね、互
いの論文を読み合った。企図したのは、戦時中の内務省検閲、占領
期のGHQ/SCAP検閲に関するこれまでの研究成果を踏まえたうえで、
新たな研究の方向を模索することであった。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5320

『「言論統制」の近代を問いなおす 検閲が文学と出版にもたらしたもの』
金 ヨンロン(編)尾崎 名津子(編)十重田 裕一(編)牧 義之(執筆)
村山 龍(執筆)逆井 聡人(執筆)
発行:花鳥社 価格 3,200円+税
https://kachosha.com/books90983211/

━━━━━━━━━【古本乙女の独り言⑥】━━━━━━━━━━

  ある日の古本屋にて

                  カラサキ・アユミ

「あのぅ…ちょっとお尋ねしたいんですが…」
静寂に包まれた店内に響きわたる声。棚と棚の隙間から目を向ける
とカウンター越しに店主に向かって話しかけながら歩み寄るサラリ
ーマン風の男性客の姿があった。男性はあまり古本屋の空間に慣れ
ていない様子でキョロキョロと辺りを見回している。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5238

ツイッター
https://twitter.com/fuguhugu

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『東北の古本屋』 折付桂子 著
日本古書通信社 刊 定価:1100円(税込)+送料180円
お申込はメールにて kotsu@kosho.co.jp

『昭和前期蒐書家リスト―趣味人・在野研究者・学者4500人』
トム・リバーフィールド編 書物蔵 監修・解説
https://shomotsugura.hatenablog.com/entry/2019/11/13/075500

『お弔いの現場人 ルポ 葬儀とその周辺を見にいく』 朝山実 著
中央公論新社 本体:1700円(税別) 好評発売中!
http://www.chuko.co.jp/tanko/2019/10/005242.html

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

11月~12月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=33

┌─────────────────────────┐
 次回は2019年12月中旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================

日本の古本屋メールマガジンその287 2019.11.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎

==============================

Just another WordPress site