2024年6月25日号 第397号

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☆INDEX☆
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1.古本屋なしにはできなかった『麻雀漫画50年史』
                              V林田

2.『佐野繁次郎装幀集成 増補版』作成について
                            西村義孝

3.新刊『もっと調べる技術』
  ――ベストセラーの続編は、推し活、趣味、本の本でもあるのです
               小林昌樹(『近代出版研究』編集長)

4.『大相撲の方向性と行司番付再訪』
                   根間弘海(専修大学名誉教授)

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━━━━━━━━━【自著を語る(327)】━━━━━━━━━━━

古本屋なしにはできなかった『麻雀漫画50年史』
                             V林田

 2024年5月に文学通信より刊行された筆者の初単著『麻雀漫画50年史』は、
タイトル通り、専門誌『近代麻雀』(竹書房)が刊行され続けているなど
日陰者気味ながら日本の漫画シーンの中で独特の地位を築いている「麻雀
漫画」というジャンルについて、その発祥から現在までの歴史をまとめた
ものとなります。

 この原稿を読んでいる方の多くは、麻雀漫画というジャンルについて、
『ぎゅわんぶらあ自己中心派』『哭きの竜』『アカギ』『咲-Saki-』などと
いった一部の有名作品については読んだことがあるか名前を聞いたことが
あるかはあっても、ジャンルの全貌についてはあまりご存知ないことでしょう。

「読み捨て」的な要素が強い大衆娯楽ジャンルであることから評論などの
場で取り上げられることは少なく、作家や作品、専門誌の数々はかなりが
忘れ去られているためです。

 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=15055
 

『麻雀漫画50年史』
V林田 著
文学通信 刊
税込価格:2,640円(税込)
ISBNコード:978-4-86766-049-2
 

好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-86766-049-2.html
 
━━━━━━━━━【自著を語る(328)】━━━━━━━━━━━

『佐野繁次郎装幀集成 増補版』作成について
                           西村義孝

 『佐野繁次郎装幀集成』は2008年11月に刊行されました。佐野繁次郎
装幀本の蒐集のきっかけは、『sumus』2号(2000年1月発行)特集「画家の
装幀本」の中のひとつ林哲夫氏「佐野繁次郎」でした。

 佐野繁次郎が装幀した辻静雄の著作は既に所蔵しておりました愛読書として。
佐野の文字を使用した作品である装幀本をもっと見たくなり、画集がないことも
あり装幀本だけでなく雑誌の蒐集が始まりました。

 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=15023

 
『佐野繁次郎装幀集成 増補版 ―西村コレクションを中心として』
西村義孝 著
みずのわ出版 刊
税込価格:6,930円
ISBN:978-4-86426-053-4

好評発売中!
https://mizunowa.com/pub/845/
 

━━━━━━━━━【自著を語る(329)】━━━━━━━━━━━

新刊『もっと調べる技術』
――ベストセラーの続編は、推し活、趣味、本の本でもあるのです
                 小林昌樹(『近代出版研究』編集長)

ベストセラーの続編を書きました

 在野研究者のため、トガッた文献参照法を紹介するメルマガ連載を本に
まとめたところ、3万部ほど売れました。その前著【図1】については以前、
こちらの日本の古本屋で自著紹介をしたことがあります。
 けれど、本を出した2週間後に国会図書館(NDL)のデジタルコレクション
(大規模電子図書館)が大幅に刷新され、その後ネットで直接見られる範囲も
大拡大。調べる環境がガラリと変わったので、版元に請われて続編を書きました。
それが6月末に発売された『もっと調べる技術』ということになります。

 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14984

 
『もっと調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス2』
小林昌樹 著
皓星社 刊
税込価格:2,200円
ISBN:978-4-7744-0832-3

好評発売中!
https://libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774408323/
 

━━━━━━━━━━━【大学出版へのいざない19】━━━━━━━━━━━

『大相撲の方向性と行司番付再訪』
                    根間弘海(専修大学名誉教授)

筆者は長い間、大相撲の行司に焦点を絞り研究を続けている。行司は、相撲の
取組を裁く審判者としてだけでなく、大相撲という組織を裏から支えてきた。
また行司の世界は、力士の世界や相撲界と同様にその歴史はさまざまな変遷を
経ている。いずれの世界も密接に絡み合っているので、どのテーマであれ、
面白い研究になるのである。
 
本書では、筆者の今までの研究の中から大相撲関連の九つの話題を取り上げ、
それぞれを論考形式でまとめている。ここでは、その中から二つの話題を
取り上げて紹介しよう。
 
 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14948
 
 
『大相撲の方向性と行司番付再訪』
根間弘海 著 
専修大学出版局 刊
税込価格:3,300円
ISBNコード:978-4-88125-393-9
 
 
好評発売中!
http://www.senshu-up.jp/author/a93212.html
 
 

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━━━━━━━━━【展示会のお知らせ】━━━━━━━━━

麻雀漫画は、どのような変遷をたどってきたのか
麻雀漫画の歴史について記した研究書
V林田『麻雀漫画50年史』(文学通信)の刊行にあわせ
同書を書くために著者がこれまで集めた
麻雀漫画単行本・雑誌および関連資料を展示します
 
 
「『麻雀漫画50年史』刊行記念 麻雀漫画の歩み展~1969―2024~」
 
7月12日(金)-7月20日(土)
※7月14日(日)15日(月・祝)は休館日 
時間:月曜~金曜 10時-18時/土曜 10-17時
会場:東京古書会館 2階情報コーナー
料金:無料
主催:文学通信
共催:東京都古書籍商業協同組合

イベント最新情報はこちら
文学通信
https://bungaku-report.com/MahjongManga50.html

東京古書組合WEBサイト「東京の古本屋」
https://www.kosho.ne.jp/?p=1083
 
 
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━━━━━━━━━【書影から探せる書籍リスト】━━━━━━━━━

「日本の古本屋」で販売している書籍を、テーマを深掘りして書影から
探せるページをリリースしました。「日本の古本屋」には他のWebサイト
には無い書籍がたくさんあります。ぜひ気になるテーマから書籍を探して
みてください。
 
「日本の古本屋」書影から探せる書籍リスト
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=13964

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━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━━

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書名:『すこし広くなった  「那覇の市場で古本屋」それから』
著者名:宇田智子(市場の古本屋ウララ)
出版社:ボーダーインク
価格:1,980円(税込)
ページ数:248ページ
判型:四六判ソフトカバー
ISBN:978-4-89982-465-7

好評発売中!
https://borderink.com/?pid=180729928

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「大学出版へのいざない」シリーズ 第20回

書名:ウィーン1938年 最後の日々――オーストリア併合と芸術都市の抵抗
著者名:高橋義彦
出版社名:慶應義塾大学出版会
判型/製本形式/ページ数:四六判/上製/288頁
税込価格:2,970円
ISBNコード:978-4-7664-2972-5
Cコード:C0022

2024年8月発行予定
https://www.keio-up.co.jp/np/index.do

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━━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━━
6月~7月の即売展情報

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日本の古本屋メールマガジン その397・6月25日

【発行】
東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋」事業部
東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
URL  https://www.kosho.or.jp/

【発行者】
広報部・編集長:藤原栄志郎

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本居宣長記念館 希代の学者の頭の中【書庫拝見26】

本居宣長記念館 希代の学者の頭の中【書庫拝見26】

南陀楼綾繁

「今、空は悲しいまで晴れていた。そしてその下に町は甍を並べていた 白堊(はくあ)の
小学校。土蔵作りの銀行。寺の屋根。そしてそこここ、西洋菓子の間に詰めてあるカンナ屑
めいて、緑色の植物が家々の間から萌え出てゐる」

 松坂城跡公園の月見櫓跡にある梶井基次郎文学碑には、『城のある町にて』の一節が記されている。梶井は学生の頃、姉夫婦が暮らす松阪に滞在した。この碑の建つ場所からは、松阪の風景が一望できる。

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〇松坂城跡公園からの風景

 この碑から坂を下ったところにある松阪市立歴史民俗資料館では、ちょうど梶井に関する
企画展が開催中だった。同館の2階には小津安二郎松阪記念館を併設。映画監督の小津安二郎が、9歳から19歳までをこの地で過ごした足跡を展示している。

 同じく松坂城跡公園にあるのが、本居宣長記念館だ。
 3月1日、今回泊めていただいている山﨑範子さん宅がある御城番屋敷を出て、わずか
2、3分で館の入り口に着いた。

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〇本居宣長記念館

 そこで出迎えてくださったのが、名誉館長の吉田悦之さんだ。
 じつは私は最初、この館の取材には及び腰だった。もともと近代以前の資料については
ほとんど知識がない。この連載で取材してきた図書館や資料館でも、主に近代以降の資料に
ついて書いてきた。
 なによりも、何度かチャレンジし、その度に途中で読むのをやめた小林秀雄の『本居宣長』の影響で、本居宣長ってなんだかよく判らない人だと感じていたのが大きい。

 しかし、松阪に移住した山﨑さんからの「吉田さんが何でも教えてくれるから」という言葉に従って、思い切ってこの館を取材することに決めたのだ。
 以下、本居の生涯については、吉田さんのお話と著書『宣長にまねぶ』(致知出版社)を
参照する。

松坂に暮らし、学び、書く

 本居宣長は1730年(享保15)、松坂本町に生まれた。幼名は富之助。松坂は紀州徳川家の飛び地で、商人の町として栄えた。
「神宮のある伊勢や藤堂藩が置かれた津と違い、松坂は権威から自由な町だったんです」と、吉田さんは話す。

 宣長の『玉勝間』にも、次の一節がある。
「松坂はことによき里にて、(中略)、富める家おほく、江戸に店という物をかまへおきて、手代といふ物をおほくあらせて、あきなひさせて、あるじは国にのみ居てあそびをり、
うはべはさしもあらで、うちうちはいたくゆたかにおごりてわたる」

 松坂の商人には、江戸に進出する「江戸店持ち商人」は多かった。江戸時代屈指の豪商で
あった三井家の発祥の地も松坂である。宣長の家は木綿問屋で、江戸店持ち商人だった。
 富之助は子どもの頃から読書が好きで、14歳で法然上人の伝記『円光大師伝』を写すなど、学問に励んだ。家を継いだあとも商売には関心を持たず、医師を志す。

 その後、京都に遊学。儒学者の堀景山に師事し、荻生徂徠や契沖を学ぶ。松坂に帰ってからは、自宅で医師を開業しながら、国学の研究にうちこんだ。
34歳の時、江戸の国学者・賀茂真淵と松坂で対面し、『古事記』研究の志を打ち明ける。
「松坂の一夜」と呼ばれる出会いだ。宣長はその後、35年をかけて1797年(寛政10)に
『古事記伝』全44巻を完成させた。

 1801年(享和元)、72歳で亡くなる。京都遊学などを除けば、生涯、松坂の地で過した。
 記念館の隣には、宣長の旧宅が移築されている。宣長が12歳のとき、本町の屋敷から魚町に移り住んだ。その屋敷で宣長は生涯を過ごした。
 1782年(天明2)、宣長はこの家の二階に書斎をつくる。床の間に掛けた「柱掛鈴」から「鈴屋」と命名した。宣長は鈴の音を好んだという。

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〇本居宣長旧宅

 この書斎で、蔵書は次のように整理されていた。
「蔵書は『アサヨヒニ』のラベルを貼った十三の本箱に整然と整理され、『書斎中蓄書目』という蔵書目録を作った。(略)ちなみにラベルの文字の意味は、『朝宵に取り出づる文』と『大』である。『大』は大きな本箱」(『宣長にまねぶ』)

 宣長の死後、鈴屋と蔵書は本居家が保存する。「一切、外に出すなと伝えられたそうです」と吉田さんは云う。遺族は付箋ひとつもおろそかにしないようにしたという。

 1893年(明治26)、魚町の中心部で大火が発生したが、宣長の旧宅は無事だった。
そのことから、旧宅を保存すべきだという声が上がるようになった。その後、鈴屋遺跡保存会が設立され、1909年(明治42)に現在の場所に移築された。

 資料についてはどうか。
 宣長の死後、実子である春庭の子孫には宣長旧蔵書、稿本、遺品などが伝わった。また、
養子である大平の子孫の家には大平とその門人資料、宣長自筆資料の一部が伝わったという。

5代目の本居清造は東京に住み、主要な資料も東京に移された。清造は戦時中、防空壕を築いてこれらを守ったという。また、一部は松阪の木綿問屋・長谷川家に預けられた。
 1970年11月、鈴屋の隣接地に本居宣長記念館が開館。保存場所が分かれていた宣長の資料は、ここで再び一緒になったわけだ。  

メモや付箋もすべて残す

「ここは宣長の頭の中なんです」
 2階奥の収蔵庫の扉を開けながら、吉田さんは云う。

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〇収蔵庫の内部

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〇名誉館長の吉田悦之さん(撮影・山﨑範子)

 光量を抑えた室内は板張りで、棚も木製だ。明るい展示室からここに入ると、宣長のいた
時代にタイムスリップした気分になる。
 正倉院をモデルにした高床式で、湿度や温度を厳密に管理している。
 ここに収蔵されている資料は現在1万6000点以上。開館当時は9000点だったが、その後
寄贈などで増加した。
そのうち1949点が国の重要文化財に指定されている。

 宣長が参照した資料や自筆稿本、書簡、記録、自著の版木など、まさに宣長の頭の中のすべてがここに詰まっている。
 たとえば、日記。面白いことに、宣長はこれを自分が生まれた日から書きはじめている。
そして、亡くなる13日前まで書き継いだ。その記録はきわめて簡単なものだった。
「それでも、浅間山の噴火、おかげ参りなどの出来事や、自身が怪異星を見たことなどを
書き留めていて興味深いです」

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〇宣長日記(提供:本居宣長記念館)

 宣長は日記に並行して、来訪者の一覧、土産物の記録、金の出し入れ、住所録など、用途に応じた記録を付けていた。購入した本や写本をつくったものについては、『購求謄写書籍』に記録する。それらを照合すると、彼の人生が浮かび上がってくるのだ。

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〇『購求謄写書籍』(提供:本居宣長記念館)

 吉田さんによると、それだけの記録魔でありながら、宣長があえて書き残さなかったことも多いという。「自分の生涯を編集した人だったと思います」と話す。
 宣長が自分の研究を進めるために参照した資料(手沢本)には、契沖『百人一首改観抄』、『旧事本紀』、『春秋左氏伝』などがある。宣長の書入れがある本も多い。

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〇『百人一首改観抄』(提供:本居宣長記念館)

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〇『旧事本紀』(提供:本居宣長記念館)

 また、『古事記』研究のベースとなった『延喜式』には、関連する資料の巻数やページ数を書き入れたり、地図を書き加えた紙を貼ったりしている。

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〇『延喜式』の書入れ

 畢生の大著『古事記伝』に関する資料は、桐でつくられた棚に収められている。

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〇『古事記伝』関連資料の棚

京都滞在時に購入した『古事記』の版本には、異本との校合、関連する文献の情報などが書き込まれている。付箋も多く立てられており、その厚みで本が膨らんでいる。
「書き込みや付箋が残されていることによって、宣長の思考の過程が窺えるんです」

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〇『古事記』

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〇付箋の厚みで膨らんだ『古事記』

 付箋と云えば、取材時の企画展「ノートを書く人びと」には、『書抜物』と題する資料が
展示されていた。書籍からの抜き書きや言葉の語源をメモした小さな紙88枚を袋に入れて
保存し、わざわざ目録までつくっているのだ。
 この企画展では、日記や本からの抜き書き、情報収集のノートなどが展示されていて興味深かった。

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〇展示室

自著を流通させる

 収蔵庫に話を戻す。
 草稿には、和歌について考察した『排蘆小船(あしわけおぶね)』、源氏物語を論じた
『紫文要領』、係り結びの法則を論じた『詞(ことば)の玉緒』などがある。

「こんなものもありますよ」と、吉田さんに見せてもらったのは、一枚の絵図だった。
その『端原氏城下絵図』は、一見、ありふれた地図に見えるが、じつは架空の城下町を描いた地図なのだ。
「元号や登場人物など一切が架空。基本構図は京都図を九〇度回転させた形に近い。
(略)町は御所を中心に武家屋敷があり、周囲には碁盤の目のように町が広がる」
(『宣長にまねぶ』)

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〇『端原氏城下絵図』

 この絵図を書いたとき、宣長は19歳頃だった。その前には京都に関する記事を書き込んだ『都考抜書』をまとめているので、京都というまだ見ぬ都市への憧れが、こんなかたちで現れたのか。

 なお、記念館では2020年にこの図の空白区画の50 区画分を分譲販売するという、ユニークなクラウドファンデングを実施。全部の区画が完売したという。また、円城塔氏の小説『宣長の仮想都市』(『新潮』2024年3月号)のモチーフにもなっている。多くの人の想像力を刺激するのだろう。

 草稿や写本だけでなく、多くの版木が保管されている。その数は約1400枚。その中には『古事記伝』の版木もある。

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〇版木を収めた棚

「宣長は自著を出版することに意欲的でした。資金調達から本屋との交渉、序文や跋文の指示まで自分で行ない、装丁についてもはっきりとした好みがありました」と、吉田さんは解説する。本屋で売る場合のキャッチフレーズまで考案したという。

 写本ではなく、版本を流通させることによって、多くの読者の元に、自分の考えを届ける
ことができる。
「地方の読者には通信販売も行なっています。自分でも地方にいて研究する大変さを身に
染みて判っていたからではないでしょうか」

 自著が全国的に広がることによって、宣長の元には多くの人が訪れて、教えを乞うた。
それとともに、さまざまな情報がもたらされる。1784年(天明4)に志賀島(福岡県)で
「漢委奴国王」と刻まれた金印が発見されたという知らせも、いち早く届いている。
松坂から動かずにして、最新のニュースに接することができたのだ。

 また、宣長は自分の蔵書を必要な人に貸し出していた。『古事記伝』も出版前に何人かに
見せている。貴重な本を独り占めせずに世の中に広めるべきだという考えを、宣長は持って
いた。
 そうすることで、松坂という地に、宣長を中心とする知のネットワークが生まれたのだ。
亡くなった際、宣長には500人近い門人がいたという。
 

ジグソーパズルのような思想家

 収蔵庫の見学を終えて、改めて吉田さんに話を聞く。
 吉田さんは1957年、松阪市生まれ。國學院大學で国文学を学び、1980年に本居宣長記念館の研究員となる。

「1977年に小林秀雄の『本居宣長』(新潮社)が刊行されたことで、宣長への注目度は
高かったです」と、吉田さんは当時を振り返る。
 1979年には本居家の第6代・本居彌生氏より資料1781点の追加があった。吉田さんはその
整理に携わり、目録を編集した。
 2009年には館長に就任。2020年には名誉館長となる。現在でも、各地を巡って宣長や松阪の魅力を発信しつづけている。

「宣長は、いい意味での多重人格で、医師、古事記研究者、源氏物語研究者、歌人など、
さまざまな顔を持っていました。だから、かえって一人の人間として理解するのが難しいのかもしれません。宣長はいわば大きなジグソーパズルのような存在です。だから宣長を研究することは壮大なゲームに取り組んでるのと同じです」と、吉田さんは熱っぽく話す。

「もっと時代が経てば、AIなども使いながら、宣長が残した資料のすべての関連性を明らかにすることができる日が来るかもしれません。そうなれば、日本文化を研究する上での基礎資料になると思います」
 宣長は契沖や荻生徂徠に影響を受け、賀茂真淵を師と仰ぎながらも、間違っていると思う
説には猛烈に反論した。

「学問は時代によって進んでいくものだという信念があり、自分の学問もいつか乗り越えられると感じていたのかもしれません。その批判の材料として、自分に関する資料を徹底的に残したのではないでしょうか」

 東京に帰ってから、何度も挫折した小林秀雄の『本居宣長』を読みはじめた。あいかわらずよく判らないところが多かったが、何とか読み終えることができたのは、本居宣長記念館の
書庫で宣長の頭の中を覗いたおかげだろう。

 小林はこう書く。
「この誠実な思想家は、言わば、自分の身丈に、しっくり合った思想しか、決して語らなかった。その思想は、知的に構成されているが、又、生活感情に染められた文体でしか表現出来ぬものでもあった。この困難は、彼によく意識されていた」
 縁遠かった思想家が、松阪という町を通して、少しだけ身近なものに感じられた。

 
 
本居宣長記念館
松阪市殿町1536-7
https://www.norinagakinenkan.com/



南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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調べる古本⑤ 古本の値段を調べる――価格履歴ソフト、弘文荘目録の索引、そして水谷不倒が言う「古書の無価値時代」

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書物蔵

ゼロ年代は古本の爆発期だったかも

 奇禍により閑職に転じたのを幸いに、古本趣味を復活させたのが2005年のことだった。
週末古書展にも行きはじめたが、同時並行でeasy seekやスーパー源氏など、ネット通販でも古本を買い始めた。
 当時、古本フレンズらと開催していた「古本合戦」(新着古本の自慢会)で、以前からの
古本ファンでもあった恩師が「いま、古本屋に長い間滞留してきた古本がネットという新しい販路で出てきているんだよ」と言っていた。
 当時よくわからなかったが、それから二〇年。アマゾンマケプレで1円で古本が売られたり、週末古書展にも大均一祭といった破格の展覧会ができたりして、古本の値段も大きく
変わってきた。そして先生の言っていた長期的展望もなんとなくわかってきた。

古書価にも長期波動があるのでは

 私も協力している『近代出版研究』。その3号座談会で書物雑誌の盛衰が話題になっていたのだが、実は書物雑誌には20年から25年周期で流行りがあるとのことだった。経済学の理論に「コンドラチェフの波」というのがある。これは景気循環(サイクル)に関する学説のひとつで、景気が約50年周期で循環するという考え方だ。他にも約10年の「ジュグラーの波」、約20年の「クズネッツの波」などがある。それぞれ、技術革新や設備投資、他建物の建て替えが主要因とされる。そんな感じの波が本の世界にもある気がする。
 古本の価格(古書価)にも大きな波を考えてもいいのではないか。というか、古書価は個別タイトルの上下、小さな波の話がもっぱらだった。

短期個別の相場変遷を知る

 短期波動、長期波動、別に成立するとはいっても、一消費者として気になるのはやはり、
自分の買おうとしている本の短期波動のほうだろう。うっかり最近まで知らなかったのだが、アマゾンマケプレにおいて過去数年間の価格変動を知るアプリがあるのを知ったので紹介する。
 ・Keepa – Amazon Price Tracker
 このキーパはアマゾンの全商品の価格変動を記録、表示するものらしい。ただアマゾンの
当該画面を見るだけではダメで、ダウンロードして自分のPCのブラウザにキーパを入れておかないといけないが、そうしておくとグラフが表示されるようになる。
 
 ためしに私が若い頃読んで大変ためになった志多三郎『街の古本屋入門』の光文社文庫版(1982)の価格履歴を見ると次の【図1】のようである。ここ10年ほど、30円から950円の間を乱高下している
 
【図1】アマゾンの当該ページでキーパを表示させたもの
【図1】アマゾンの当該ページでキーパを表示させたもの
 
 一昔前まで、こういった安い本の古書価というものは基本、記録に残らなかった。ちなみに我が(?)日本の古本屋を同じ本で検索すると400円から800円ぐらいで出品されている。
言わずもがなだが、相場感を持った古書店主が多い日本の古本屋は、アマゾンマケプレより
価格が安定している。あくまで一般論だが日本の古本屋のほうがあまり悩まずに古書を買えそうだ。

古典籍の類なら従来も検索できたが

 インターネット以前の世界でも、高い善本、古典籍の類は価格の記録が次の索引から調べられた。反町茂雄の古書肆弘文荘(1932〜)の販売目録『弘文荘待賈古書目』55冊などに載った約20,000点の販売記録である。
 ・『弘文荘待賈古書目総索引 増訂版』八木書店、1998

高すぎず安すぎずフツーの本の相場を知る――業者向け一覧表

 ただし、古書業者にせよ、一般消費者にせよ、多く求められた古書価は安すぎず高すぎない本の古書価であった。あるいは高くても文学書の初版本や限定本など個人の収集家が集めるようなジャンルに属するものだった。
 今も続く『日本古書通信』(1934〜)が当初、業者向きの業界誌で、古書価の相場表を
売りにしていたことはそのスジの人は知っているだろう。ただし、この手の試みはすでに
同時期に行われており、有名なのは『古本年鑑』に載せられた「古本時価表」だろう。
例えば、梅原北明が復刻した『我楽多文庫』が『古本年鑑 第2年版』(1934)を見ると
8円とある(複製は50銭)【図2】。
 
【図2】『古本年鑑 第2年版』
【図2】『古本年鑑-第2年版』
 
 ただし『古本年鑑』や当初の「古通」の価格表は古書市場における相場ないし実績価格で、ふつうでいうと仕入れ価格にあたる。

マニア向け一覧表

 コレクター向けのマストアイテムのリストというか、趣味人によるレアアイテムの一覧表に価格が示されていることがある。例えば特殊な古本屋だった伊藤竹酔が作った『明治以降稀覯本索引』(粹古堂書店、1940)だと『我楽多文庫』は「全揃 時価三十五円位」とある【図3】。こちらの価格は仕入れ値(BtoB)でなく、小売り価格相場(BtoC)であろう。梅原北明が1927年に復刻する際に、発行部数は150部ほどだったので「一揃ひ安くて二十円お客次第では三十円から四十円までの馬鹿々々しい高値を呼んでゐます」と嘆いている。
 
【図3】『明治以降稀覯本索引』
【図3】『明治以降稀覯本索引』
 
 同じく伊藤が戦後になって出した「文学書及限定本相場帖」(書痴往来社、1955)によると、「全揃時価三千五百円位」とほぼ100倍になっている。
 実は『東京古書組合五十年史』(1974)で、1935(昭和10)年から1970(昭和45)年にかけての「古書価の変遷」(小売価格ベース)タイトル表及び集計表が作られている。それによると1935年の古書価を1とすると1950年は116倍、70年には35年の1645倍という係数になるという(p.809)。

「古書の無価値時代」と現在

 で、話を長期波動に戻したい。
 明治半ばから昭和期の古書収集家だった水谷不倒(1858-1943)。彼は『明治大正古書価の研究』(駿南社、1933)の冒頭で「明治最初の十年間」を「古書の受難期」と位置づける。

   古老の話に由ると、維新当時江戸では、大八車に満載した書籍が、何貫何文といふ
   端銭で売飛ばされ。大阪でさへ、八文字屋ものなど軟派の珍書が、漉返しの材料に
   潰されたと云ふ。

 不倒はこの「古書の無価値時代」の理由を、「何でも新式、西洋風になつた」がゆえと文明開化に求めている。それも一理あろう。しかし私は不倒の証言する「古書の受難期」を読むと、何でも電子式になった現在の「大均一祭」を思い出してしまうのだ。
 
 ひとつには古書(当時は和本)のコンテンツが旧弊になったがゆえに和本がつぶされたことだろう。しかし、それだけでなく、「古書の受難期」は主たるメディア形式も変わったことが原因、むしろ主因ではなかろうか。その証拠にその後、「古典の復活」「欧化主義への反動」で古書、つまり和本の価格も「漸く平価に達することが出来た」という。コンテンツもまた
明治20年代、博文館の帝国文庫など古典の復刻シリーズとしてメディア変換して再生されていく。不倒はこれに協力した。

150年ぶりのメディア変換期に

 明治19年頃に和装本は洋装本に駆逐される(橋口侯之介のいう「明治20年問題」)。江戸期の「大書林」(大きな本屋、版元)も前後して没落。水谷不倒は「明治十五六年頃までは、まだまだ古書を弄ぶものなど殆どなく、依然として無価値時代を続けてゐた」という。
 せんだって春の大阪四天王寺古本まつりで5冊800円の山の中から『水谷不倒著作集 第8巻』(中央公論社1977)を掘り出した。これに初出の「不倒翁八十年の思出話」が読みたいと思って十数年。読むと不倒は33才で東京専門学校に入るなど晩学で驚いた(それまで陸軍で下士官)。
 
 大均一祭に行くたび不倒を思い出し、「今が明治初年かも」「今が150年ぶりの買い時かも」と思う。反町弘文荘はさきの大戦時、第一次でのドイツ敗戦後の状況を知っていたので
日本敗戦前から戦後を見越した立ち回りをみせていた、なんてことが思い出される。
 ちなみに「不倒」とは不倒翁、起き上がり小法師のことである。その不倒翁、八十を過ぎて人生を回顧し、自分に欲がないのが「すべての事に成功を欠いた所以と思つてゐる。しかし
唯一つの例外がある」という。「何であるかといへば、古書に就いてである」と。

 

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※当連載は隔月連載です

Copyright (c) 2024 東京都古書籍商業協同組合

2024年6月10日号 第396号

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       古書市&古本まつり 第137号
      。.☆.:* 通巻396・6月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見26】━━━━━━━━━━

本居宣長記念館 希代の学者の頭の中
                           南陀楼綾繁

「今、空は悲しいまで晴れていた。そしてその下に町は甍を並べていた 
白堊(はくあ)の小学校。土蔵作りの銀行。寺の屋根。そしてそこここ、
西洋菓子の間に詰めてあるカンナ屑めいて、緑色の植物が家々の間から
萌え出てゐる」
 松坂城跡公園の月見櫓跡にある梶井基次郎文学碑には、『城のある町
にて』の一節が記されている。梶井は学生の頃、姉夫婦が暮らす松阪に
滞在した。この碑の建つ場所からは、松阪の風景が一望できる。

松坂城跡公園からの風景

 この碑から坂を下ったところにある松阪市立歴史民俗資料館では、
ちょうど梶井に関する企画展が開催中だった。同館の2階には小津安二郎
松阪記念館を併設。映画監督の小津安二郎が、9歳から19歳までをこの地で
過ごした足跡を展示している。
 同じく松坂城跡公園にあるのが、本居宣長記念館だ。


続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14706


南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。


X(旧Twitter)
https://twitter.com/kawasusu


本居宣長記念館
松阪市殿町1536-7
https://www.norinagakinenkan.com/

━━━━━━━━━━━【調べる古本5】━━━━━━━━━━━━

古本の値段を調べる――価格履歴ソフト、
弘文荘目録の索引、そして水谷不倒が言う「古書の無価値時代」
                            書物蔵

ゼロ年代は古本の爆発期だったかも

 奇禍により閑職に転じたのを幸いに、古本趣味を復活させたのが
2005年のことだった。
週末古書展にも行きはじめたが、同時並行でeasy seekやスーパー源氏
など、ネット通販でも古本を買い始めた。

 当時、古本フレンズらと開催していた「古本合戦」(新着古本の
自慢会)で、以前からの古本ファンでもあった恩師が「いま、古本屋に
長い間滞留してきた古本がネットという新しい販路で出てきているんだ
よ」と言っていた。

 当時よくわからなかったが、それから二〇年。アマゾンマケプレで
1円で古本が売られたり、週末古書展にも大均一祭といった破格の
展覧会ができたりして、古本の値段も大きく変わってきた。そして
先生の言っていた長期的展望もなんとなくわかってきた。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14703

※当連載は隔月連載です


━━━━━━━━━【展示会のお知らせ】━━━━━━━━━

東京古書会館で開催されたアンダーグラウンドブックカフェという
古書展のイベントで「佐野繁次郎の装幀モダニズム展」が
2008年6月に行われました。

同じ会場で今回は会期1週間、新しい蒐集品と継続所蔵している
コレクションを展示します。トークイベントも開催予定です。

「佐野繁次郎の仕事展 装幀本を中心にデザイン含めて」
 
6月8日(土)-6月15日(土)※6月9日(日)は休館日 
月曜~金曜:10時-18時 / 土曜:10-17時
会場:東京古書会館 2階情報コーナー
料金:無料
主催:佐野繁次郎装の仕事展実行委員会
共催:東京都古書籍商業協同組合

イベント最新情報はこちら
https://x.com/sanoshige1900

東京古書組合WEBサイト「東京の古本屋」
https://www.kosho.ne.jp/?p=1069

━━━━━━━━━【書影から探せる書籍リスト】━━━━━━━━━

「日本の古本屋」で販売している書籍を、テーマを深掘りして書影から
探せるページをリリースしました。「日本の古本屋」には他のWebサイト
には無い書籍がたくさんあります。ぜひ気になるテーマから書籍を探して
みてください。
 
「日本の古本屋」書影から探せる書籍リスト
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=13964


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コショなひと」始めました

YouTubeチャンネル「東京古書組合」
https://www.youtube.com/@Nihon-no-Furuhon-ya

今回は更新ありません


━━━━━【6月10日~7月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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第3回 戸田書店やまがた古本まつり(山形県)

期間:2024/04/25~2024/06/30
場所:戸田書店山形店 特設会場

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第10回南大沢古本まつり

期間:2024/06/11~2024/06/17
場所:京王相模原線南大沢駅前
   ペデストリアンデッキ~三井アウトレット前特設テント

------------------------------
フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2024/06/14~2024/07/01
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場

------------------------------
第19回 カジル横川古本市(広島県)

期間:2024/06/14~2024/06/25
場所:フレスタモールカジル横川1F通路
URL:https://x.com/BookHiroshima

------------------------------
書窓展(マド展)

期間:2024/06/14~2024/06/15
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=571

------------------------------
BOOK DAY とやま駅(富山県)

期間:2024/06/15~2024/06/15
場所:富山駅南北自由通路
   (あいの風とやま鉄道中央口改札前)
URL:https://bookdaytoyama.net/

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光が丘 夏の古本市

期間:2024/06/19~2024/08/04
場所:リブロ光が丘店 練馬区光が丘5-1-1 リヴィン光が丘5階 

------------------------------
フジサワ古書フェア(神奈川県)

期間:2024/06/20~2024/07/17
場所:フジサワ名店ビル 有隣堂藤沢店4階ミニ催事場
URL:http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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第150回 倉庫会 古書即売会(愛知県)

期間:2024/06/21~2024/06/23
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12
URL:https://hon-ya.net/

------------------------------
新興古書大即売展

期間:2024/06/21~2024/06/22
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=569

------------------------------
第3回 高円寺優書会

期間:2024/06/22~2024/06/23
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=726

------------------------------
第106回シンフォニー古本まつり(岡山県)

期間:2024/06/26~2024/07/01
場所:岡山シンフォニービル1F  自由空間ガレリア

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2024/06/27~2024/06/30
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)
URL:https://twitter.com/urawajuku
------------------------------
文博ろうじの古本まつり(京都府)

期間:2024/06/28~2024/06/30
場所:京都文化博物館 ろうじ店舗前  京都市中京区三条高倉
URL:https://kyoto-kosho.jp/news/

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ぐろりや会

期間:2024/06/28~2024/06/29
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://www.gloriakai.jp/

------------------------------
大均一祭

期間:2024/06/29~2024/07/01
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=622

------------------------------
西部古書展書心会

期間:2024/07/05~2024/07/07
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=563

------------------------------
東京愛書会

期間:2024/07/12~2024/07/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/

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横浜めっけもん古書展(神奈川県)

期間:2024/07/13~2024/07/14
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10
URL:http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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 次回は2024年6月下旬頃発行です。お楽しみに!
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全古書連は全国古書籍商組合連合会(約2,000店加盟)の略称です

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日本の古本屋メールマガジンその396 2024.6.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋」事業部
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  https://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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 いたします。なお、ご質問の内容によりましては、返信が大幅に
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2024年5月24日号 第395号

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    。.☆.:* その395 5月24日号 *:.☆. 。
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☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.『「印象派の道」を翻訳して』
                       長峯朗(渡内書店)

2.『近代出版研究 第3号』
                 小林昌樹(近代出版研究所主宰)

3.『三浦按針の謎に迫る 家康を支えたイギリス人臣下の実像』
                    森良和(元玉川大学教授)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━【自著を語る(番外編)】━━━━━━━━━━━

『「印象派の道」を翻訳して』
                       長峯朗(渡内書店)

 「印象派の道」(リオネッロ・ヴェントゥーリ)は元々、神奈川近代
美術館の酒井忠康氏の勧めもあり翻訳したものです。三省堂書店の
山口さんのお手を煩わせて、なかなか綺麗な本に仕上がりました。

 中身は印象派を網羅的に訳したもので、全体像が分かる貴重な本となりました。
イタリアのネッロ・ボランテ氏は序文の一部でヴェントゥーリの特徴をこう
書いています。

 「ヴェントゥーリの代表作は、「プリミティブ派の趣味」であり、その中で
印象派を実証的に研究し、安易な図式化を拒み、詳しい内容を盛り込んだ。これは、
ニューヨークのコロンビア大学での講義をまとめたもので、ジョルジョーネ、
カラバッジョ、マネ、セザンヌの重要な作品を検証したものであった。

 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14123
 

『印象派の道』
リオネッロ・ヴェントゥーリ 著
長峯朗(渡内書店) 訳
三省堂書店/創英社 刊
税込価格:5,500円(税込)
ISBNコード:978-4-87923-222-9
 

好評発売中!
https://www.books-sanseido.co.jp/soeisha_books/2414111
 

━━━━━━━━━【自著を語る(番外編)】━━━━━━━━━━━

『近代出版研究が三号雑誌になりました!
――戦後「書物雑誌」のまとめ記事も掲載です』
                    小林昌樹(近代出版研究所)

「三号雑誌」になりました

 出版史上の「小さい問題の登録」(by柳田國男)を目指す本誌も、
はや3号。少なくとも「三号雑誌」にまではなりました。

 本誌は全国配本されるような雑誌ではありません。東京なら神保町の
東京堂でフェア展開をしてくださっていますので、そこでバックナンバーも
含め購入できるでしょう。京都では古書店・善行堂さんが多く仕入れて
くださっています。他にも意のある独立系書店や古書店さんが仕入れておられ
ます。例えば、兵庫県・朝来市にある『本は人生のおやつです!!』さんなどです。

 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14521

 
『近代出版研究 第3号』
近代出版研究所 刊
皓星社 発売
税込価格:2,530円
ISBN:978-4-7744-0820-0

好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774408200/
 

━━━━━━━━━━━【大学出版へのいざない18】━━━━━━━━━━━

『近年の新知見をふまえて三浦按針像を描きなおす』
                      森良和(元玉川大学教授)

 三浦按針をご存じでしょうか。
 
 関ヶ原の戦いの半年前、オランダ船リーフデ号が豊後の海岸に辿り着きました。
1年10ヶ月にも及ぶ過酷な航海で、生存者は出発時のほぼ5分の1、20数人にまで
激減しました。その船の航海士がイギリス人ウィリアム・アダムス(日本名三浦按針、
以下「按針」)です。

まもなく按針は大坂に移送され、時の最高権力者徳川家康の尋問を受けます。
家康は問いに誠実に答えるこの異人を大いに気に入り、自らの臣下に加えると
ともに、やがて相模国に領地まで与えました。日本の歴史を通じて外国人が
領主となった唯一の例です。
 
 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14037
 
 
『三浦按針の謎に迫る 家康を支えたイギリス人臣下の実像』
森 良和・フレデリック・クレインス・小川 秀樹 編著 著 
玉川大学出版部 刊
税込価格:2,860円
ISBNコード:978-4-472-30314-2
Cコード:3332
 
 
好評発売中!
https://www.tamagawa-up.jp/book/b607092.html
 
 

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━━━━━━━━━【展示会のお知らせ】━━━━━━━━━

東京古書会館で開催されたアンダーグラウンドブックカフェという
古書展のイベントで「佐野繁次郎の装幀モダニズム展」が
2008年6月に行われました。

同じ会場で今回は会期1週間、新しい蒐集品と継続所蔵している
コレクションを展示します。トークイベントも開催予定です。

 
 
「佐野繁次郎の仕事展 装幀本を中心にデザイン含めて」
 
6月8日(土)-6月15日(土)※6月9日(日)は休館日 
月曜~金曜:10時-18時 / 土曜:10-17時
会場:東京古書会館 2階情報コーナー
料金:無料
主催:佐野繁次郎装の仕事展実行委員会
共催:東京都古書籍商業協同組合

イベント最新情報はこちら
https://x.com/sanoshige1900

東京古書組合WEBサイト「東京の古本屋」
https://www.kosho.ne.jp/?p=1069
 
 
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━━━━━━━━━【書影から探せる書籍リスト】━━━━━━━━━

「日本の古本屋」で販売している書籍を、テーマを深掘りして書影から
探せるページをリリースしました。「日本の古本屋」には他のWebサイト
には無い書籍がたくさんあります。ぜひ気になるテーマから書籍を探して
みてください。
 
「日本の古本屋」書影から探せる書籍リスト
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━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━━

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書名:もっと調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス2
著者名:小林昌樹
出版社:皓星社
価格:2,200円
ページ数:216頁
判型:A5判並製 
装幀・造本:藤巻亮一
ISBN:978-4-7744-0832-3

2024年6月18日発行予定
https://libro-koseisha.co.jp/

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書名:佐野繁次郎装幀集成 増補版 ―西村コレクションを中心として
編著:西村義孝
構成・装幀:林哲夫
出版社:みずのわ出版
ページ数:B5判並製本 143頁
価格 6,930 円(税込)
ISBN:978-4-86426-053-4

2024年6月発行予定
https://mizunowa.com/pub/845/

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「大学出版へのいざない」シリーズ 第19回

書名:大相撲の方向性と行司番付再訪
著者名:根間弘海
出版社名:専修大学出版局
判型/製本形式/ページ数:A5判/上製本/308頁
税込価格:3,300円
ISBNコード:978-4-88125-393-9
Cコード:C3075

2024年6月27日発行予定
http://www.senshu-up.jp/author/a93212.html

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━━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━━
5月~6月の即売展情報

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日本の古本屋メールマガジン その395・5月24日

【発行】
東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋」事業部
東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
URL  https://www.kosho.or.jp/

【発行者】
広報部・編集長:藤原栄志郎

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kinaisyuppansyoei

近代出版研究が三号雑誌になりました! ――戦後「書物雑誌」のまとめ記事も掲載です

近代出版研究が三号雑誌になりました!――戦後「書物雑誌」のまとめ記事も掲載です

小林昌樹(近代出版研究所主宰)

「三号雑誌」になりました

 出版史上の「小さい問題の登録」(by柳田國男)を目指す本誌も、はや3号。少なくとも「三号雑誌」にまではなりました。
 本誌は全国配本されるような雑誌ではありません。東京なら神保町の東京堂でフェア展開をしてくださっていますので、そこでバックナンバーも含め購入できるでしょう。京都では古書店・善行堂さんが多く仕入れてくださっています。他にも意のある独立系書店や古書店さんが仕入れておられます。例えば、兵庫県・朝来市にある『本は人生のおやつです!!』さんなどです。

東京堂(神保町)さんで三位

 いつもなら瞬間1位になる東京堂(神保町)さんのベストセラーリストでは、残念! 本屋大賞1位の宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』などにはばまれ(笑)、3位に終わりました(それでもスゴイとは思います)。いつも通っている東京堂さんには頭があがりません。

年刊でも「雑誌」なのでレパートリーは豊か

 出版業界紙、火保図(戦前住宅地図代替)、「白ポスト」(絶滅危惧種!)、明治エロ絵葉書の流通、新聞の欄外や版次、まんじゅう本、出版社マーク、出版社史本、税関検閲、雑誌祭、カセットブック、版権などなど。どれもこれもそこそこ知られてはいるけれど、論じられることがほとんどなかったものばかりです。そのうえどれもこれもオモシロい。オモシロくってタメになる?!!!
 黒岩比佐子さん、横田順彌さんといった古本人脈について貴重な証言もあります。

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【図1】集められた書物雑誌

昭和30年、少雨荘・斎藤昌三が展望して以来69年ぶり――書物雑誌の歴史

 巻頭座談会「「書物雑誌」と雑誌の「書物特集」:『近代出版研究』の先祖調べ、あるいは偽系譜作りの試み」をちょっとご紹介。
 このメルマガの読者は、『ダ・ヴィンチ』や『本の雑誌』といった、本についての雑誌を
当然ご存知のことでしょう。でも、そんな雑誌はいつからあったのか? 実はこれを総覧した最初で最後が戦前の大書痴、斎藤昌三の『書物誌展望』(八木書店、1955)でした。
つまり、実に69年ぶりに本誌で書物の雑誌のアレコレが回顧されたのです。

 書物雑誌の大先輩『sumus』(1999-2010)に参加していた林哲夫さんからもこんなお言葉をいただきました。
 「座談会「書物雑誌」と雑誌の「書物特集」はいかにも楽しげで、その分少々脱線しながらも、書物雑誌のおおよその流れがつかめるような内容になっているのには興奮を禁じ得ない。『sumus』もそこで名前を挙げられているわけだし、松本八郎さんの『サンパン』についても森洋介氏が通覧したうえで分析的に紹介しているのが当を得ている。」

 林さんに褒められ、泉下の斎藤昌三にも顔向けできます。いちおう私は少雨荘の孫弟子を自称しているので。

書物雑誌にコンドラチェフの波動説!?

 個別の分析もさりながら、座談会ゆえに思ってもみなかった仮説が飛び出したのには皆びっくり。すなわち〈書物雑誌20〜25年周期説〉です。関東大震災(1923年)をきっかけに書物雑誌ブームが発生したのはつとに有名でしたが、実はそれから20ないし25年周期で書物雑誌がブームになっていたと判明したのです! 本当にびっくりしました。

とある国会図書館OBからも、「書物雑誌コンドラチェフの波動説、なかなか面白い「仮説」だと思います。ポアンカレを待つまでもなく、仮説こそ科学の母ですから」との言葉をいただきました。20年周期なので、クズネッツの循環説のほうが近い気もしますが、そこいらへんはご寛恕いただいて、おどろきのオモシロさをご堪能ください。

近代出版を調べるには

 3号の特集は近代出版を調べる技術です。これは当初予定の特集「新聞書誌学」――本当にこういったものが1980年代なかばに提唱されました――が空中分解したので、代わりに編成されたもの。編集途中で研究員が「これらって「調べる技術」要素が多いのでは」と言い出したのがきっかけでした。たまたま私が『調べる技術:国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』という本を出して当たっていたのです(8刷で3万部)。

 エロ本研究ためのレファレンス本解題、小売書店の調べ実践、出版人物調査の方法、出版統計論の4本が集まりました。「本屋誌」を採録するために全国を回っている松永弾正さんには頭が下がります。「古本屋ツアーインジャパン」の歴史版という感じでしょうか。古ツアさんは全国に出没するので本職が不思議がられていましたが、松永さんは如何?

 一方でなぜだか(笑)感想がネットに上がりづらいアダルトメディア研究家・安田理央さんの論文について紹介しておきます。

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【図2】安田さんのエロ本研究レファレンス書籍解題

エロ本を調べるのにも調べる本があるのです

 私も前職の国会図書館でで仕事がらエロ本の調べ方を案内したことがありました。前職場は収集率が2割以下ながらその手の本も法定納本で収集しているので、実際に篤実な研究者が
やって来ます。

 以前、ライターの平山亜佐子さんの手引きで安田理央さんのコレクションを見学したことがあり、その間口の広さに驚きました。文学や芸術と異なり、自分の好みで集めるとこのジャンルは極端に狭くなるというのです。それが調査研究用にまんべんなく広いコレクションと
なっていました。
 そこから研究に必要なレファレンス的書籍をご紹介いただきました。司書風に言えば風俗本の解題書誌です。この書誌を読んで、高かったけれど古書で買いましたという篤実な研究者の報告をすでに受けています。

 アダルトメディアは現在、ほとんどネットに移行してしまったので、紙メディアを中心に
記述するこの書誌は本誌にふさわしくやや歴史的です。現在の情勢について知りたい向きは
同じ安田さんらが編纂した『アダルトメディア年鑑』を入手してください。現在の全体像が
わかります。献本されたので目を通しましたが、いろいろ思いもよらない事態が展開していることがわかります(とくに音声メディア系で)。

「三号雑誌」の語誌も

 ページ数が増えたうえに物価高。やむを得ず定価を300円あげましたが、前号にまけずオモシロいのでぜひご採用ください。ようやく三号雑誌になれたので「三号雑誌」という複合語の語誌についてもコラムを用意しました。こういった「小さい問題の登録」をこれからも続けてまいります。
 
 
kinaisyuppansyoei

 
『近代出版研究 第3号』
近代出版研究所 刊
皓星社 発売
2,530円(税込)
ISBN:978-4-7744-0820-0
 
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774408200/
 

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『「印象派の道」を翻訳して』

 

『「印象派の道」を翻訳して』

永峯 朗(渡内書店)

 「印象派の道」(リオネッロ・ヴェントゥーリ)は元々、神奈川近代美術館の酒井忠康氏の勧めもあり翻訳したものです。三省堂書店の山口さんのお手を煩わせて、なかなか綺麗な本に仕上がりました。

 中身は印象派を網羅的に訳したもので、全体像が分かる貴重な本となりました。イタリアのネッロ・ボランテ氏は序文の一部でヴェントゥーリの特徴をこう書いています。

 「ヴェントゥーリの代表作は、「プリミティブ派の趣味」であり、その中で印象派を実証的に研究し、安易な図式化を拒み、詳しい内容を盛り込んだ。これは、ニューヨークのコロンビア大学での講義をまとめたもので、ジョルジョーネ、カラバッジョ、マネ、セザンヌの重要な作品を検証したものであった。

その源泉は、過去の芸術作品についての深い認識であり、リオネッロ・ヴェントゥーリの印象派及び印象派の芸術家たちや派生した印象派に関する論文集は、彼が芸術史研究を刷新するために行った貢献を理解する上で、基礎となるのは芸術作品それ自体ではなく、その内容、すなわち詩的性格そのものであった。
 
 そのすべての源泉となっているのは、文学的趣味でも、芸術事実についての発言でもなく、理念の運動についての深い認識であり、過去の世紀についての芸術史的探求の性格をもつ方法論であった。彼は、さまざまな時代に属する芸術作品を、安易な分類によって図式化するのは不可能であるとの確信をもっていた。もし図式化を図るならば有効性を保つために、それがきわめて厳密で抽象的なものになるのは必然で、模範的な完全さという普遍の範疇にあてはめるのは、多分不可能であろう。その当然の帰結として、開花期および衰退期について論ずることはなかった。
 
 これらの時期の設定は、それ依然の理論構造を根底から破壊するという重要な性格をもち、その多様な歴史的条件の必要性により決定されるものである。例としては、マネやセザンヌ、過去においてはレオナルド、ジョルジョーネ、カラバッジョがそうであった。

 別の図では、ヴェントゥーリは、偉大な歴史家である父親のアドルフォの流派から出発しながら、父親の狭い、単なる文献学を超越し、同様に単なる視覚的な批評をも超越し、作品を
見る独自の視覚を失わずに、観念や努力による抽象的な視覚に依拠して判断することは決してなかった。そうではなく、常に作品のもつ具体的な現実にその根拠を置いた。つまりは、作品を再びその歴史的時間の中に観察するのである。その一例として、モネの1875年の作品「アルジャントゥイユの帆船」について書かれた文章を引用してみよう。

 「よくみるとよい-とヴェントゥーリは、1866年の作品と比較して言うー論争的な性格は消滅していて、明暗法の対比は繊細な技法にとって代わられている。この絵では、個々の
色彩がくっきりとした色合いを保ち、それが光と陰を作り出し、以前にはなかった様式の統一をもたらし対象を燃焼させるものとなっている。レンブラントやティツィアーノが教えたように輪郭線は損なわれている。

1866年の平板な画面は、1875年には大気の塊状になり、以前の平面的なヴィジョンの不愉快なコントラストやアカデミックな遠近法的構図は、大気の充満した空間を構成する霧状の色彩と空間を発見することで乗り越えられている。趣味の変化ばかりではなく、芸術が枠組みから抜け出す様子を、二つの作品の画布の縁の部分を見るだけで知ることができよう。

モネは自然に浸りきることをテーマとして、光線をその導き手として新たな自然を創造しようとした。すべての事象を光線の中に参加させ、閉鎖的でなく、切り離されてもいず、体系的でもなく世界全体が光で揺らめき、生命と絶頂感の源泉そのものとなる新しいフォルムを創造する」「印象派(芸術)誌38巻1935年第二部」
 
 この模範的な文章は、様々な特徴と大気のような輪郭線と色彩と新たな空間の広がりを持つ、その作品の存在に気づかせてくれた。また、その重要性と必要性、つまりはそれらの条件によって見出された新たな人間性を示してくれた。
 
 そのためにこそ、繰り返して言うが、ヴェントゥーリにとって芸術作品は、プラトン的定義にしたがえば、具体的な対象物として、ある特殊な言語構造によって伝達可能な創造物として存在するのである。」
 
 印象派の研究の世界でも第一人者で、欠くことのできない、リオネッロ・ヴェントゥーリの本を翻訳し、日本の皆様にお読み頂けるのは、幸いであり、私の大きな喜びであります。これからも美術史に関心がある方、研究される方々にお読み頂きますように、心から願います。ありがとうございました。

 
insyohanomichi

『印象派の道』
三省堂書店/創英社 
リオネッロ・ヴェントゥーリ 
長峯 朗(渡内書店) 
5,500円(税込)
ISBN:978-4-87923-222-9
 
好評発売中!
https://www.books-sanseido.co.jp/soeisha_books/2414111

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近年の新知見をふまえて三浦按針像を描きなおす【大学出版へのいざない18】

『近年の新知見をふまえて三浦按針像を描きなおす』【大学出版へのいざない18】

森 良和(元玉川大学教授)

 三浦按針をご存じでしょうか。
 
 関ヶ原の戦いの半年前、オランダ船リーフデ号が豊後の海岸に辿り着きました。1年10ヶ月にも及ぶ過酷な航海で、生存者は出発時のほぼ5分の1、20数人にまで激減しました。その船の航海士がイギリス人ウィリアム・アダムス(日本名三浦按針、以下「按針」)です。まもなく按針は大坂に移送され、時の最高権力者徳川家康の尋問を受けます。家康は問いに誠実に答えるこの異人を大いに気に入り、自らの臣下に加えるとともに、やがて相模国に領地まで与えました。日本の歴史を通じて外国人が領主となった唯一の例です。
 
 按針は西洋に関する多くの新鮮な情報を家康にもたらしました。それまで日本で得られる西洋の情報は、もっぱらカトリックの宣教師を通じてのものでしたが、按針はヨーロッパが宗教的に二分され、対立国同士が戦争状態にあることを教えました。さらに西洋船を建造して優れた西洋の技術を具体的に示すとともに、オランダやイギリス関係の外交文書を作成したり、大坂の陣で用いられた大砲の輸入を斡旋したりしました。
 
 それでも按針の生涯や事績にはなお不明な点が多く残されています。1613年のイギリス船の来航以前に按針に言及した史料はかなり限られ、そのため根拠の乏しい創作話が流布する場合さえあります。歴史にロマンを求めることは楽しいですが、もちろん史実とフィクションには区別が必要です。本書ではそれを踏まえて、諸分野の専門家がそれぞれの立場から信頼のおける史料に基づいて作成した論考を集めています。
 
 各章では従来あまり取り上げられなかった按針論や、先行研究とは異なる視点から捉えた論考が展開されています。すなわち、按針がオランダ船でやってきた背景、カトリック勢力との関係、幕府や平戸藩との権力関係、帰国しなかった理由、船手奉行向井一族との関わり、アダムスが作成した日本地図の探求、オランダ商館との関わり、イギリス商館衰退の理由などが追究されています。
 
 さらに本書の構想段階で、平戸にある伝按針墓の発掘作業が終了し、そこから出土した遺骨の科学的鑑定結果も発表されました。本書でもかなりの紙幅を割いて、それについて論じています。詳細については内容にあるとおりですが、遺骨の年代測定やDNAの分析結果を援用して歴史学的検証と照合させると、遺骨が按針のものである確率はかなり高まったと言えそうです。
 
 江戸時代初期は日本の近世史上でも例外的なグローバル時代でした。カトリック国のポルトガルとスペイン、プロテスタント国のオランダとイギリスなどが、極東の地でそれぞれ、両グループの内部対立も抱えながら相争い、これに中国明朝の商人も絡んで勢力拡大を図りました。按針はそのいずれとも多かれ少なかれ関わっています。
 
 本書を一読した読者は按針の奥深い魅力にいっそう引き込まれるとともに、按針を通じて、近世初期の日本を舞台にした世界史的スケールでの歴史のダイナミズムを再認識できるでしょう。
 
 
 


 
『三浦按針の謎に迫る 
家康を支えたイギリス人臣下の実像』
玉川大学出版部刊
森 良和・フレデリック・クレインス・小川 秀樹 編著
2,860円(税込)
ISBN:978-4-472-30314-2

好評発売中!
https://www.tamagawa-up.jp/book/b607092.html

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2024年5月10日号 第394号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
       古書市&古本まつり 第136号
      。.☆.:* 通巻394・5月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見24】━━━━━━━━━━

松浦武四郎記念館 旅と蒐集に生きた奇人
                           南陀楼綾繁

 2月29日。朝、東京から新幹線に乗り、名古屋で在来線に乗り換えて、
松阪駅に着いた。

 大学3年生のとき、民俗学研究会の調査で三重県と和歌山県の県境にある
集落に何度か滞在した。その際、名松線の乗り換えで松阪は通っているが、
町なかを歩いた記憶はあまりない。一度だけ、ひとりで松阪の商人宿
みたいなところに泊まったことがあるが、10時過ぎると玄関を閉められて
外に出ることはできなかった。それから、もう35年が経つ。

 松阪駅では山﨑範子さんが出迎えてくれる。『地域雑誌 谷中・根津・
千駄木』を発行した谷根千工房のメンバーだが、昨年この地に移住した。
いまは松坂城の近くに並ぶ〈御城番屋敷〉という重要文化財の武家屋敷の
一区画にお住まいで、私も泊めてもらう。ここを拠点に、松阪の3つの
資料館の書庫を取材するのだ。


続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=14295



南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。


X(旧Twitter)
https://twitter.com/kawasusu


松浦武四郎記念館
三重県松阪市小野江町383
https://takeshiro.net/information


「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」
6月9日まで開催(休館日はサイトで確認してください)
静嘉堂@丸の内
東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
https://www.seikado.or.jp/


━━━━━━━━【懐かしき古書店主たちの談話】━━━━━━━━

懐かしき古書店主たちの談話 第6回
                     日本古書通信社 樽見博

 昭和60年10月に、東京都古書籍商業協同組合東部支部二十周年を記念した
『下町古本屋の生活と歴史』(発行者・鈴木明弘・荒川区鈴木書店)が刊行
された。編集は青木正美、小林静生、中山信行の三氏が担当した。

稲垣書店の中山さんが「編集後記」で「読めるものにするためには具体的な
生活ぶりとホンネの意見を、残るものとするためには歴史的資料の記録化を
目指した。」と書いている。
 
その中山さんが「東部支部に三十周年は来るか」を書いているが、東部古書
会館が平成22年に閉鎖された今となっては貴重な記念誌である。この記念誌と
時を合わせるように、昭和61年1月『古本屋―その生活・趣味・研究』という
表紙、本文用紙とも記念誌と同じ体裁の雑誌が創刊された。

編集・発行人は青木正美、小林静生、石尾光之祐で、青木文庫発行となっている。
当初から10号までと決め、平成2年9月で終刊した。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=13514

※当連載は隔月連載です

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「コショなひと」始めました

YouTubeチャンネル「東京古書組合」
https://www.youtube.com/@Nihon-no-Furuhon-ya

今回のお店は表参道から洗足に移転したばかりの「日月堂」です。
ポスター、チラシ、パンフレット、紙袋から直筆の手紙まで、
縦横無尽の「エフェメラ」とは何なのか、
店主の佐藤真砂さんにお伺いしました。


━━━━━【5月10日~6月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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第3回 戸田書店やまがた古本まつり(山形県)

期間:2024/04/25~2024/06/30
場所:戸田書店山形店 特設会場  山形市嶋北4丁目2-17
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港北古書フェア(神奈川県)

期間:2024/04/30~2024/05/14
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売※駅構内
URL:http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm
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第51回 古本浪漫洲 Part.1

期間:2024/05/09~2024/05/11
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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ふつうの古本まつり(福岡県)

期間:2024/05/09~2024/05/20
場所:ジュンク堂書店福岡店 2階 MARUZENギャラリー
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東京愛書会

期間:2024/05/10~2024/05/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/
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中央線古書展

期間:2024/05/11~2024/05/12
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=574
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第51回 古本浪漫洲 Part.2

期間:2024/05/12~2024/05/14
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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新橋古本まつり

期間:2024/05/13~2024/05/18
場所:新橋駅前SL広場
URL:https://twitter.com/slbookfair
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第51回 古本浪漫洲 Part.3

期間:2024/05/15~2024/05/17
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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五反田遊古会

期間:2024/05/17~2024/05/18
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=567 
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フリーダム展

期間:2024/05/17~2024/05/18
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=644
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第51回 古本浪漫洲 Part.4

期間:2024/05/18~2024/05/20
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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第51回 古本浪漫洲 Part.5(300円均一)

期間:2024/05/21~2024/05/23
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場)
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2024/05/23~2024/05/26
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)
URL:https://twitter.com/urawajuku
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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2024/05/23~2024/05/26
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9  
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=843
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趣味の古書展

期間:2024/05/24~2024/05/25
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 
URL:https://www.kosho.tokyo
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第11回 BOOK DAY とやま駅(富山県)

期間:2024/05/25~2024/05/26
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)
URL:https://bookdaytoyama.net/
------------------------------
第32回紙屋町シャレオ古本まつり(広島県)

期間:2024/05/25~2024/06/02
場所:広島市中区紙屋町シャレオ中央広場
URL:https://twitter.com/koshohiroshima
------------------------------
第110回 彩の国所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2024/05/29~2024/06/04
場所:くすのきホール 
   (西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)
URL:https://tokorozawahuruhon.com/
------------------------------
オールデイズクラブ古書即売会(愛知県)

期間:2024/05/31~2024/06/02
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12 
URL:https://hon-ya.net/
------------------------------
和洋会古書展

期間:2024/05/31~2024/06/01
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=562
------------------------------
杉並書友会

期間:2024/06/01~2024/06/02
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=619
------------------------------
反町古書会館展 (神奈川県)

期間:2024/06/01~2024/06/02
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10
URL:http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm
------------------------------
ミエル川口 古本市(埼玉県)

期間:2024/06/04~2024/06/09
場所:ミエル川口 川口市本町2-7-25
------------------------------
萬書百景市(ばんしょひゃっけいいち)

期間:2024/06/07~2024/06/08
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=959
------------------------------
好書会

期間:2024/06/08~2024/06/09
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=620
------------------------------
第10回南大沢古本まつり

期間:2024/06/11~2024/06/17
場所:京王相模原線南大沢駅前
   ~ペデストリアンデッキ~三井アウトレット前特設テント
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フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2024/06/14~2024/07/01
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場  柏市南柏中央6-7
------------------------------
書窓展(マド展)

期間:2024/06/14~2024/06/15
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=571
------------------------------
BOOK DAY とやま駅(富山県)

期間:2024/06/15~2024/06/15
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)
URL:https://bookdaytoyama.net/
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日本の古本屋メールマガジンその394 2024.5.10

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松浦武四郎記念館 旅と蒐集に生きた奇人【書庫拝見25】

松浦武四郎記念館 旅と蒐集に生きた奇人【書庫拝見25】

南陀楼綾繁

 2月29日。朝、東京から新幹線に乗り、名古屋で在来線に乗り換えて、松阪駅に着いた。

 大学3年生のとき、民俗学研究会の調査で三重県と和歌山県の県境にある集落に何度か滞在した。その際、名松線の乗り換えで松阪は通っているが、町なかを歩いた記憶はあまりない。一度だけ、ひとりで松阪の商人宿みたいなところに泊まったことがあるが、10時過ぎると玄関を閉められて外に出ることはできなかった。それから、もう35年が経つ。

 松阪駅では山﨑範子さんが出迎えてくれる。『地域雑誌 谷中・根津・千駄木』を発行した谷根千工房のメンバーだが、昨年この地に移住した。いまは松坂城の近くに並ぶ〈御城番屋敷〉という重要文化財の武家屋敷の一区画にお住まいで、私も泊めてもらう。ここを拠点に、松阪の3つの資料館の書庫を取材するのだ。

 荷物を置かせてもらって、松阪駅から近鉄で伊勢中川駅へ。ロータリーで待っていると、
車が迎えに来てくれる。これから行く松浦武四郎記念館の山本命館長だ。1976年生まれで
私より歳下だが、風格がある。

 電車の中で、山本さんの『幕末の探検家 松浦武四郎入門』(月兎舎)を読みながら来たと話すと、「この記念館で働くまで、武四郎のことはほとんど知らなかったんです」という、
意外な答えが返ってきた。
 大阪府に生まれた山本さんは、奈良大学を経て三重大学の大学院で、歴史学を研究。
2001年に院を中退して記念館の学芸員となった。
「来館者に武四郎のことを説明できるように、自分なりに調べるうちに、日本の歴史の中でも稀有な人物だということが判ってきました。そのすごさを伝えたいと思うようになりました」と語る。
 
 後で詳しく触れるが、それ以降、山本さんは松浦武四郎のスポークスマン的な存在になる。そして、2022年には館長となった。
 そんな話を聞くうちに、「松浦武四郎記念館」の看板が見えてきた。

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〇松浦武四郎記念館外観
 

【蝦夷地探検とコレクター】

 館の入り口には、武四郎の歌碑が建つ。「陸奥(みちのく)の蝦夷の千島を開けとて 神もや我を作り出しけむ」という和歌で、蝦夷地探検は自分の使命だという気持ちが込められている。その後ろには、白い玉石で北海道の形が描かれている。

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〇武四郎の歌碑


 館内に入ったところにはロビーがある。奥の壁にも北海道の形が浮き彫りになっている。
 この日は愛知県から15名ほどの団体見学者があり、山本さんが展示の解説をするという
ので、一緒に回ることにした(以下、『幕末の探検家 松浦武四郎入門』を参照)。
 
 松浦武四郎は1818年(文化15)、松阪の須川村に生まれた。松浦家は紀州和歌山藩の地士(土着のまま武士の身分として取り立てられること)を務めた。
 松浦家は伊勢街道に面していた。武四郎が13歳のとき、「文政のおかげ参り」が起こった。1年間に約400万人が伊勢神宮を訪れるという現象だ。このとき、多くの旅人と接したことで、武四郎は旅への思いを募らせたという。


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〇松浦武四郎誕生地

 16歳で家出して、江戸へ旅立つ。親戚に諭されて、一度は実家に帰るものの、翌年再び
旅に出る。大阪、播磨、備前、讃岐、阿波、紀伊と回る。江戸で覚えた篆刻の技術で、地方の素封家のために印を彫ることで、旅の資金を捻出した。その後も各地を巡り、26歳で故郷に帰るが、両親はすでに世を去っていた。
 
 長崎に滞在した際、ロシアが蝦夷地を狙っていることを知った武四郎は、蝦夷地探検を
志す。1845年(弘化2)に初めて蝦夷地に上陸。知床まで達している。このときの調査を
まとめて、『初航蝦夷日誌』を執筆している。その後、1858年(安政5)までの13年間で、
6回の蝦夷地探検を行なった。

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〇記念館の展示室

 「武四郎は148センチと小柄でしたが、非常に健脚でした。一日に64~68キロも歩いたと云われています。晩年には三重県と奈良県の県境にある大台ヶ原を探査しています」と、山本さんが解説する。

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〇松浦武四郎像

 3回目の大台ヶ原探査は70歳のときで、この年には富士山へも麓から頂上まで一日で登ったというからすごい。歩きに歩き回った生涯だったのだ。
 武四郎が蝦夷地で見たのは、役人や商人らによるアイヌ民族に対する圧政だった。松前藩はアイヌの自由な移動を禁じ、交易を制限し、運上金の名目で税を収めさせた。その実態に心を痛めた武四郎は、アイヌがどんな人々なのかで、どのような文化を持っているかを伝えるべく、さまざまな書物や地図を刊行した。
 
 展示室には、『東西蝦夷山川地理取調図』という、武四郎が出版した蝦夷地の地図が写真で展示されている。そこには各地の地名がアイヌ語で記されている。
「聞いた音そのままをカタカナで記しています。その数は9800もあります。これらの地名からはアイヌの人々が暮らしてきた歴史や文化が反映されていて、決して未開の地ではないことが判ります」
 
 1859年(安政6)に出版した『蝦夷漫画』のパネルもある。同郷の伊勢出身で武四郎より先に蝦夷地を探検した村上島之丞の絵をもとに、武四郎自身が絵を描いたもので、アイヌの生活や祭祀、交易、建物、踊りなどを絵と文章で伝える。

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〇『蝦夷漫画』のパネル


 武四郎の蝦夷地探検は、第4回以降、幕府の「蝦夷地御用御雇」の立場で行なわれた。明治維新を迎えると、新政府は開拓使を設置し、蝦夷地開拓に乗り出す。武四郎は開拓判官に任ぜられた。このとき、武四郎は蝦夷地に替わる新名称を提案し、そのひとつである「北加伊道」が「北海道」という表記で採用された。なお、武四郎は以前から、北の海の世捨て人という意味で「北海道人」という雅号を使っていたという。
 
 しかし、アイヌに思いを寄せる武四郎は、これまでの権益を守りたい旧松前藩や商人にとってはうるさい存在であり、翌年には開拓判官を辞職した。この後、武四郎が「馬角斎(ばかくさい)」という雅号を使ったのは、政府への批判と皮肉を込めてのことだった。
「大きな政治の流れの中で、自分ひとりの力ではどうすることもできなかったことが無念であり、開拓判官を辞職した後、一度も北海道を訪れることがなかったのは、アイヌの人びとに対する申し訳ない気持ちでいっぱいだったからだろう」と、山本さんは書いている。
 
 松浦武四郎について一般的に知られているのは、ここまで見てきたような北海道との関わりだろう。だが、この後の人生もめっぽう面白いのだ。
 武四郎は蝦夷探検の頃から、江戸で出版を行なってきた。官職から離れた後も、蝦夷地の紀行本などを出版している。生涯で200点以上の書物をまとめ、100冊以上を刊行したという。
 その一方で、若い頃から古物に関心を持ち、石器や土器、装飾品などを蒐集した。それらのコレクションをまとめて、『撥雲余興』という図録を刊行している。
 また、神田五軒町(現在の千代田区外神田六丁目)にあった自宅では毎月、「尚古会」という古物研究会を開いて、多くのコレクターと交流した。
 
 1887年(明治20)、武四郎は自宅に「一畳敷」と名付けた書斎をつくった。畳一畳のその書斎には、これまで訪れた土地の社寺から贈られた古材が使われている。この一畳敷は南葵文庫などを経て、現在、ICU(国際基督教大学)に移築されている。松浦武四郎記念館にも再現した原寸模型が展示されている。

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〇再現された「一畳敷」
         
 翌年、脳溢血で倒れた武四郎は71歳で死去する。

【武四郎の魅力を伝える】

 ここで、記念館と収蔵資料について見ておこう(『松浦武四郎記念館(小野江コミュニティセンター)20年のあゆみ』を参照)。
 1994年、武四郎の生誕地の近くに、三雲町が松浦武四郎記念館と小野江コミュニティセンター(公民館)との複合施設として開館。開館の翌月には、アイヌ文化の継承に尽力した萱野茂さんが北海道から来館している。
 
 開館以来、年4回(現在は年6回)の展示替えを行う。出版者、考古学、和歌、風俗画、
蝦夷地調査、好古趣味、尊王攘夷思想など多彩で、武四郎という人物の大きさが感じられる。
 1996年からは記念館を会場に「武四郎まつり」を開催。地元の大きなイベントとして現在も続いている。
 
 2005年、三雲町が合併して松阪市となる。
「合併後、記念館がどうなるのかという不安がありましたが、予算規模が増えましたし、
『武四郎講座』を開いて、松阪市民に知ってもらうよう努めたところ、今では『松阪の偉人』として誇れるようになりました」と、山本さんは振り返る。
 
 2008年には松浦武四郎記念館友の会が発足。館の広報や、生誕190年、生誕200年の記念事業に協力してきた。
 その後も展示、講座、講演会などによって、次第に来館者が増えてきた。
 そして、2022年4月、これまで同居していた公民館が、別の場所に新設され、記念館の
リニューアルが行われた。それにともない、収蔵庫を改修し、書庫を設けた。
 展示についても、武四郎がもつ「旅の達人」「交流の達人」「描写の達人」「伝える達人」「蒐集の達人」という観点から、展示を構成し直した。それにより、武四郎の魅力が伝わりやすくなっている。

 同館に収蔵される資料は、重要文化財1505点、三重県指定有形文化財223点にのぼる。
 1888年(明治21)に松浦武四郎が亡くなったあと、資料が直系である東京松浦家と、実家である三重松浦家で保管される。
 三重松浦家が保管する資料は、1993年に三雲町に寄贈。これらの資料をもとに、翌年、
記念館が開館した。

 一方、東京松浦家にも、資料保存をめぐるドラマがある。
 1923年(大正12)の関東大震災では、東京松浦家が全焼。幸い、武四郎の自筆資料は紀州徳川家の南葵文庫に貸し出されていて無事だった。
 東京松浦家は1945年(昭和20)の大空襲でも全焼するが、関東大震災の教訓から、直前に栃木県佐野市に資料を疎開させており、無事だった。

 終戦後、東京松浦家の一部の資料は文部省史料館(現・国文学研究資料館)に寄託され、
一部は自宅で保管される。それらは、松浦武四郎記念館の開館後、三雲町に寄託されたが、
のちに松阪市に寄贈された。
 武四郎から数えて5代目にあたる故松浦一雄さんから山本さんが聞いたところでは、「武四郎は遺族に資料をみだりに見せてはいけないと、門外不出を言い残した」という。その言葉を
守った遺族によって、貴重な資料が後世に残ったのだ。

【収蔵庫の中で】

 山本さんの案内で、いよいよ収蔵庫へと向かう。
 2022年のリニューアルで、収蔵庫には止水扉が設置された。近くを流れる雲出川が氾濫
した場合でも、水害から資料を守れるようにという配慮だという。内部は2層構造になって
おり、やはり水害対策として、貴重資料は上層に集めている。
『松浦武四郎関係資料目録』は、書籍類、書簡類、地図類、その他(屏風、掛軸、矢立、
箱など)と分類されているが、実際の配列は資料の来歴ごとに保管されている。

 棚には地震対策用のネットが掛かっているので、外からはどんな資料があるか判らない。
そこで、山本さんに選んでもらい、見せていただく。

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〇資料を取り出す山本命館長

 まず、武四郎が持ち歩いた野帳(フィールドノート)。20歳の頃に、厳島神社などを
回った際の覚書で、横長の帳面に絵や文字がぎっしり書かれている。

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〇松浦武四郎の野帳


 次に、蝦夷地探検の報告書を見せてもらう。『十勝日誌』『天塩日誌』『夕張日誌』
『久摺日誌』などは、表紙も同じ紙で揃えている。

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〇『十勝日誌』


『知床日誌』は1858年(安政5)、根室を出て知床半島を回った際の紀行をまとめたもの。
この地に生息するアザラシなどの生き物が色鮮やかに描かれている。

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〇『知床日誌』


 1860年(万延元)の『北蝦夷余誌』は、樺太(現在のサハリン)を調査した紀行本。
アイヌの案内で歩く武四郎の姿や、オロッコ(ウィルタ)などの北方民族も描かれている。

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〇『北蝦夷余誌』


 北海道から離れた武四郎は、蒐集家として活動する。
 1877年(明治10)に刊行した『撥雲余興』は、自身が集めた古物の図録。古鏡や古銭などは拓本に採り、立体物は河鍋暁斎らのプロの画家に精密な模写を依頼した。1882年(明治15)には『撥雲余興二集』も刊行した。同書の奥付には「著述出版人 東京士族 松浦弘」とある。

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〇『撥雲余興』

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〇『撥雲余興』より古銅老猿仮面

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〇『撥雲余興二集』の奥付


 武四郎のコレクター魂を強く感じさせるのが、「渋団扇帖」だ。柿渋を塗った茶色い団扇に、小シーボルトや漆工家の柴田是真ら、交流のあった人物にサインしてもらったもの。
武四郎はこのために渋団扇を自作し、いつも持ち歩いていたという。

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〇「渋団扇帖」

「この中に、砂定という人物が描いた砂絵もあります。砂絵が残っているのは非常に珍しいです」と、山本さんは話す。

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〇「渋団扇帖」砂定の砂絵


 他にもいろいろ見たかったが、もう時間がない。後ろ髪をひかれるように、収蔵庫から
出る。
「武四郎が集め、遺族が守り抜いてきた資料を受け継ぐのが、記念館の役割だと思います。
今後は多くの人に見てもらえるように展示に力を入れていくとともに、武四郎の資料や情報が集まるセンターになることをめざします」と、山本さんは力強く云った。

【「武四郎涅槃図」の奥深さ】

 2か月後の4月21日。今度は東京で松浦武四郎に出会った。
 静嘉堂文庫の展示施設である〈静嘉堂@丸の内〉(静嘉堂文庫美術館)で、「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」という展覧会を観たのだ(6月9日まで開催)。
 
 静嘉堂文庫は、三菱の第2代社長・岩﨑彌之助が設立した、和漢の古典籍および東洋の古美術の資料館だ。その中に「松浦武四郎コレクション」がある。なぜ、松浦家とは別に、静嘉堂に資料があるのか、その経緯は明らかにされていないという(『静嘉堂蔵 松浦武四郎コレクション』静嘉堂)。
 
 武四郎と暁斎は、明治の初期から交流があり、『撥雲余興』でも暁斎に絵を依頼している。武四郎が13歳年上だが、住まいが近く、ともに天神を信仰するという共通点もあったようだ。
 今回の展示のメインになっているのが、二人の共作である「武四郎涅槃図」だ。
 この絵は武四郎記念館が所蔵するもので、こちらに展示するため、私が取材したときには
複製が飾られていた。

 涅槃図は釈迦入寂時の情景を描いた絵だが、武四郎はそれになぞらえて、自分が死ぬときの絵を暁斎に描かせたのだ。
「武四郎は薄茶色系の格子柄の生地をつぎはぎした丹前を着て、右腕を枕にして横になる。
自慢の大首飾りを着け、左手で愛用の『火用心』煙草入を提げ、目をつむって静かに微笑む。
周囲には神仏や動物が集まり、玩具や石像まで、みな悲しみにくれた面持ちである」(『徹底分析「武四郎涅槃図」』静嘉堂文庫美術館)

 これだけでも十分ユニークだが、もっとすごいのは、ここに描かれているモノはすべて、
武四郎の蒐集品であり、しかも、静嘉堂のコレクションにはその現物が所蔵されていることだ。
 会場には、涅槃図の横に、首飾り、煙草入、聖徳太子像、田村将軍像、大国像、石仏、武者像、真鍮仏、老子像、図像瓦、観音図などが展示されている。これらが画面のどこに描かれているかを探していると、いつの間にか時間が経ってしまう。

 この日は、松阪から来た山本命さんと、武四郎を主人公にした小説『がいなもん!』
(小学館文庫)の著者・河治和香さん、静嘉堂館長の安村敏信さんの鼎談が行なわれた。
 そこでは、「武四郎涅槃図」は武四郎の依頼から5年後に完成しており、その過程で
武四郎が「これも描け」「あれも描け」と暁斎に注文したことから、暁斎は日記に「松浦老人いやみ」と書いていることなど、興味深いエピソードが続出。ますます、この奇人が好きに
なった。

 武四郎は常人離れしたバイタリティにより、北海道の名付け親としてだけでなく、さまざまな活動を行ない、膨大な資料を残した。それを守った遺族と、さらに受け継いだ記念館、静嘉堂文庫によって、私たちはその一端に触れることができる。

 いつか、武四郎の資料から、歴史の常識を覆す発見があるかもしれない。そうなれば、奇人の面目躍如だろう。
 
 
松浦武四郎記念館
三重県松阪市小野江町383
https://takeshiro.net/information


「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」
6月9日まで開催(休館日はサイトで確認してください)
静嘉堂@丸の内
東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
https://www.seikado.or.jp/



南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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