香川大学図書館神原文庫
本と記録への情熱が成した一大コレクション【書庫拝見35】

香川大学図書館神原文庫
本と記録への情熱が成した一大コレクション【書庫拝見35】

南陀楼綾繁

 20代の頃、大学院に通いながら、小さな出版社で働いていた。週に何日か国会図書館に
通い、仕事の調べ物をする合間に、興味のあるテーマを調べていた。

 当時の国会図書館は、資料を請求してから出てくるまでにかなり時間がかかった。閲覧表をカウンターに出すと、その横にあった人文総合情報室(その頃は人文社会科学資料室)で時間を過ごした。事典や目録などのツールが揃っていて、それらを眺めているだけで飽きることはなかった。

 全国の図書館の文庫・コレクションが並ぶ棚で、ふと手に取った一冊が『神原文庫分類目録』(風間書房、1964)だった。香川大学の初代学長だった神原甚造の蔵書をもとにした文庫で、和洋の刊本、古典籍、古文書、古地図などがずらりと並ぶ。「創刊号雑誌」という項目もある。

 もう一冊、『神原文庫分類目録(続)』(香川大学附属図書館、1994)をめくると、こちらも同様の分類だが、後ろの方に「収集物・器物等」という項目があった。そこには「[外国乗車券・小切手集]」「[汽車・電車乗車券集]」「[マッチレッテル集]」などとあった。[]でくくっているのは、タイトルが表記されていない資料を示す。おそらくスクラップブックだろう。

 大学図書館のお堅いイメージをくつがえす資料が並ぶこの目録に、当時からこの種の資料に目がなかった私は大いに関心を持った。
 しかし、実際に香川まで足を運ぶことは思いもよらず、30年が経過した。

さまざまな形態の資料が並ぶ

 1月14日の朝、高松駅からタクシーで香川大学幸町キャンパスに向かう。構内に入ると、
左手に図書館がある。

1_kagawa university library
★香川大学図書館

 香川大学は1949年に発足。香川師範学校・香川青年師範学校を母体とした学芸学部及び
高松経済専門学校を母体とした経済学部の2学部だった。図書館もこれらの蔵書を受け継いだが、1945年(昭和20)7月4日の高松市の戦災により、香川師範学校・香川青年師範学校の
蔵書はほとんど燃えてしまったという。

 現在の図書館は2014年5月にリニューアルしたもので、4階建て。階段を上がって、2階の受付に向かうと、情報図書課長の吉田弘子さん(当時)、貴重書担当の河原佳子さんが出迎えてくれる。
 いつもだと図書館全体の書庫に案内していただくのだが、今回は神原文庫だけを取材することになっている。
「特殊文庫としては、神原文庫のほかに、椹木八郎氏がドイツ法学の原書を集めた『椹木文庫』、有馬忠三郎氏の法学に関する文献の『有馬文庫』があります」と、吉田さんが教えてくれる。

 いよいよ、神原文庫の書庫に入る。案内してくれるのは、教育学部教授の守田逸人さんだ。
「私の専攻は日本中世史です。明治時代、全国に散逸した東大寺文書の研究をしています。
神原文庫のことは知っていたので、2016年に本学に着任した際、調べてみたら3件の東大寺文書が見つかったんです。これは嬉しかったですね」と目を細める。

 守田さんはそれをきっかけに、神原文庫の研究を始めるようになった。
「書庫の資料は、目録に記載されている順に並べられています」と説明する。
 ざっと眺めただけでも、中性紙箱、古文書を入れた袋。和本、洋書と、棚ごとにさまざまな形態の資料がある。

2_shelf lined with neutral paper boxes
★中性紙箱が並ぶ棚

3_shelf of ancient documents
★古文書の棚

4_shelf lined with japanese books
★和本が並ぶ棚

 創刊号雑誌を収めた棚もある。その数は1000点以上あり、農業・園芸、化学、スポーツ、法律・政治、社会、文芸、児童と多岐にわたる。
 その中から、『左翼藝術』(1928年創刊)と『樂天パック』(1912年創刊)を見せてもらう。どの創刊号も状態がよく、丁寧に保管されてきたことが判る。

5_sayokugeijyutsu
★『左翼藝術』

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★『樂天パック』

文字と本への情熱

 書庫で一冊ずつ手に取ってじっくり見たいところだが、取材時間は限られている。別室で
話を伺う。
「神原甚造の旧蔵書・資料は約1万2000点、1万6560冊にのぼります」と、守田さんが説明する(以下、守田逸人「香川大学図書館神原文庫と所蔵史料について」、『古文書研究』第90号、2020年12月、を参照)

 神原甚造は1884年(明治17)、香川県多度津町生まれ。丸亀中学校、第三高等学校を
経て、京都帝国大学法学部に進学。卒業後は司法官となり、1925年(大正14)には大審院判事となった。

 1950年(昭和25)に香川大学の初代学長に就任。1954年(昭和29)に死去した後、その蔵書は香川大学に寄贈され、神原文庫となった。
『神原文庫分類目録』では、その特徴をこうまとめている。
「神原先生の御蔵書に、先生の専門とせられた法律学に関するものが多いのは当然であるが、しかしその中心となるものは、江戸時代後期から明治維新を経て、日清戦争頃にいたる約百年間における、わが国の西洋文化摂取の過程を跡づけるための根本資料となるべき諸文献である。

すなわち、その第一は、蘭学書にはじまる仏語、独語、英語などの語学書、第二には、それらの語学によって齎された、人文、社会、自然の各方面にわたる新しい文化内容に関する図書、第三には、これらの新文化を摂取した当時の社会状勢を物語っている、外交、政治、
経済、芸術、風俗などに関する書籍である」

 神原が小学校に上がる前、祖母から教科書の読本を教わった。「これこそが私が文字と云ふものを知つた始めであり、又本と云ふものに親しむに至つた抑の端緒である」(『おもひでの記』)。この『初學第一讀本』の現物も神原文庫に所蔵されている。

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★『初學第一讀本』

 第三高等学校在学中には、神原彩翅の名で与謝野鉄幹が主宰する『明星』に短歌を発表していた。

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★神原の短歌が掲載された『明星』

入手の記録と戦前の古書店事情

 若い頃から文学や本に関心を持っていた神原が、資料の収集をはじめたのはいつからだろうか。
 それを明らかにするのが、『古資料収集記録帖』だ。1922年(大正11)から1944年(昭和19)にわたる収集品と入手元を時系列に記録している。全部で17帖ある。薄い帳面を守田さんが開いて見せてくれる。

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★『古資料収集記録帖』

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★『古資料収集記録帖』1925年の項

 書き込まれている情報は、佐藤恒雄「神原甚造先生の集書と古資料収集記録帖(下)「古資料収集記録帖」と「書籍抜粋抄」」(『香川大学附属図書館報』第37号、2004年3月)によれば、「①書名(若干の書誌情報などを伴うこともある),②冊数,③買値の符丁を記し,
上部罫の欄外(または罫内の最上段)に,④購入した年月日と,⑤購入した書店または場所」である。
 「スコ、マイ」「サ、サ」などの符丁も使われている。

 収集をはじめたきっかけについて、「神原は1918年(大正7)に妻のすみを亡くしたことが、コレクションを始めたきっかけだったかもしれません」と、守田さんは推測を述べる。
 関西で暮らしてきた時期、神原は京都の古書店で多く購入している。1924年(大正13)に東京控訴院の判事として上京すると、東京の古本屋との付き合いが増える。

「神田では巌松堂、大屋書房、一誠堂、雄松堂、本郷では本吉書店、赤門俱楽部(木内誠商店)など、神田神保町・本郷の古書肆を中心に頻繁に取引するようになる」(守田逸人「香川大学図書館神原文庫と所蔵史料について」)

 現在も残る名店や木内書店のように業界史に残る店ばかりなのは、さすがだ。
 守田さんによれば、最も多く取り引きしたのが巌松堂で、『古資料収集記録帖』には195回登場する。「多いときには、一回で284点も入手しています」。

 実際、書庫で見つけた箱には「本書三割引買戻」というラベルが貼られていた。
「此新型サツク(本年三月弊古典部創案にかかる)使用の古書類御読了の節は一ヶ年以内ならば甚しき汚損なき限り三割引にて買戻しますから御用命下さい(略)昭和七年十月 巌松堂書店古典部 波多野重太郎」
 顧客サービスとして行なわれたものだろう。
 これらの記録を巌松堂の社史と照合すると、さまざまな発見がありそうだ。

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★巌松堂のラベル

 神原が上京した1924年は、前々年に発生した関東大震災の影響で、諸名家の売り立てが
相次いだ時期である。
また、古書即売展も盛んに行なわれた。神原は駿河台図書倶楽部即売展、青山会館展、丸ビル即売展、新宿三越即売展などこまめに足を運んでいる。

この年には吉野作造、石井研堂、尾佐竹猛らが「明治文化研究会」を結成。彼らもまた即売展に通って、資料を発掘した。同会には神原と同じく香川出身の宮武外骨も参加していたが、
神原は17歳年上のこの同郷人とどこかの即売展で会ったことがあるかもしれない。そう考えると楽しい。

「京都や東京の露店の古本屋で買ったという記録もあって、その当時の本の文化の広がりが
判ります」と、守田さんは云う。
 守田さんが神原の子孫から「書店に行けば『この竿からこっちの竿まで』という大胆な買い方をしていたようです。吉祥寺の家にもリアカーに本をたくさん積んだ人たちがよく売りに来ていたとか」という逸話も聞いている。

 『古資料収集記録帖』やその他の資料には、購入時の領収書や請求書、古本屋と交わした
書簡なども残されている。恐るべきマメさだ。

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★請求書や領収書

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★古書店との書簡

 神原はこれらの資料を保存するだけでなく、折に触れて見直して整理したり、書き込みをしたりしている。
 さらに、関心を持つテーマについては、「飲食」「古文書写」「書物関係奇談雅話」などと封筒に記し、資料を読んだメモを入れている。

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★「飲食」のメモ

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★「古文書写」のメモ

「『神原』という名前にも関心があったようで、それが出てくる資料のメモもありますね」と守田さんは教えてくれた。
 法曹界で忙しい日々を送っていた神原は、いつ、このような作業を送っていたのだろうか? 仕事を離れて、夜に資料のページをめくる時間が、彼にとっての生きがいだったのかもしれない。

天下の孤本と紙モノ

 このような膨大なコレクションを同大は時間をかけて整理し、2冊の目録を刊行した。
 そして、1995年からは神原文庫の資料展を開催した。第1回は「啓蒙の源流」と題して貴重な洋学関係資料を展示した。

 その後、1年に一回、「中世の武家文書」「幕末・明治初頭の新聞・雑誌」「絵本」「江戸知識人の見た世界」「知の体系」などを開催してきた。2回にわたって開催した「妖怪展」では、妖怪が描かれた和本や錦絵などを展示した。図録も発行している。
 個人のコレクションでこれだけ幅広いテーマの展示が成り立つことは、神原文庫の力を示している。

 2023年には守田さんの監修で「香川大学図書館『神原文庫』と初代学長神原甚造の人物像」という展示を開催。そこでは、神原の人生や法曹界での活動、資料収集、貴重書などが
展示された。

 守田さんに神原文庫の貴重品を選んでいただいたところ、次々にテーブルに並べられた。
 たとえば、藤原家隆『詠百首和歌』。藤原家隆は鎌倉前期の公家で、新古今和歌集の選者の
一人。この写本は1462年(寛正3)のもので、最も古い部類の写本だという。

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★『詠百首和歌』

 1492年(弘治5)の『伊路波』朝鮮版。ハングルが公布されて間もない時期に、朝鮮人のための日本語学習書として刊行された。朝鮮にも現存しない、「天下の孤本」だという。

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★『伊路波』朝鮮版

 もしくは秋山伊豆『讃岐物語』。著者は江戸時代の儒者で、古代、中世の讃岐の政治動向などをまとめた本だという。

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★『讃岐物語』

 ……貴重な資料ばかりで息がつまる。
 口直しに、というのも変だが、私が30年前に神原文庫の目録で見た紙モノも、見せていただく。
「[マッチレッテル集]」は明治期の輸出用マッチのラベルを貼り込んだスクラップブックだ。

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★「[マッチレッテル集]」

 ほかにも、蔵書印や印影を貼り込んだスクラップブックがあった。

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★蔵書印スクラップブック

 世の中に二つとない古文書や写本、地図の一方に、誰かが集めないと消えていってしまう紙モノがあるのが素晴らしい。神原の几帳面さと本への情熱があってこそ、これらは同じ場所に残されたのだ。

 それでは、これらのコレクションを成すことで、神原がめざしたことはなんだったのか。
 佐藤恒雄は、神原が1945年に退官したのち、資料を使って研究をまとめることに没頭したと指摘する(「神原甚造先生の集書と古資料収集記録帖(下)」)。

 3年後に弁護士を開業する際の挨拶状には、次のようにある。
「十数年前から道楽に続けて来ました或研究に没頭して居ましたが、もともと非実用的な而も相当大部な著述なので、時節柄出版不可能となって張合も抜け、一時研究を中止しました」
 その研究がどんなものだったかはっきりしないが、これだけ多くの資料を前にすると、どうまとめればいいかが見えず、かえって挫折するものなのかもしれない。

 むしろ各分野の研究者が、神原文庫の資料の一点一点と『古資料収集記録帖』を対照し、
共同研究することで、神原が夢見た研究が形になるかもしれない。
 私のような門外漢が駆け足で眺めただけでも、恐るべきポテンシャルを秘めた書庫だと感じた。
 
 
香川大学図書館神原文庫
〒760-8525 香川県高松市幸町1番1号 香川大学 幸町北キャンパス内

神原文庫の資料の一部は、以下のページから閲覧できます
https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/KMBR/index.html
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

X(旧Twitter)
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破棄する前に4 気になる池波正太郎装幀本

破棄する前に4 気になる池波正太郎装幀本

三昧堂(古本愛好家)

 私は探偵小説や時代小説のファンではない。この分野の本は殆ど読んでいないのだが、山本周五郎と池波正太郎だけは多少作品も読んでいるし、興味がある。読みだしたら、それだけにのめりこみそうなので避けてさえいるほどであるが、今回、その池波正太郎作品、特に池波
自装本について話をしたい。

 先日、『定本池波正太郎大成』の第四巻から七巻までの「鬼平犯科帳」四冊が驚くほど安く売られていたので思わず買ってしまった。A5判、2段組で合計3400頁に及ぶ大冊である。
書誌解説は詳細であるが、挿絵もなく、いわばテキストデータみたいな本で、確かに安くても敢えて買う人は稀だろうと思う。この『定本池波正太郎大成』は本巻30巻に別巻1冊がつく
大部の全集である。

かなり前になるが別巻「初期作品・対談座談・絵画・写真・書誌・年譜」(2001・講談社)のみ古書即売会で売られていたのを求めていた。書誌記述の詳細なのに惹かれたのである。
年譜も生活年譜ではなく著作年譜で、書誌は各書の書影が収められた見事な書誌である。年譜と書誌が相俟った完璧な書誌と言えると思う。いわゆる流行作家、大衆作家の全集・著作集としては異例の本である。私はどちらかと言えば「鬼平」よりも「藤枝梅安」が好きなのであるが、「別巻」の充実に惹かれて「鬼平」に手を出したわけである。

『定本』の各巻の書誌も詳細で、「鬼平」の初刊本は文藝春秋からの刊行だが、初出誌『オール読物』、それ以降収録の『別冊歴史読本』、文藝春秋版の単行本、文春文庫版、『池波正太郎集』(朝日新聞社)について触れ、各書の異同も記録している。いわゆる純文学系の文学者でもなかなかここまで徹底した書誌は稀だろう。昔、講談社の文芸局長や取締役を歴任された故・鷲尾賢也さんに、あの書誌は凄いですねと話したら「そうだろう」と満足そうな顔をされたのを思い出す。

 『オール読物』掲載時には佐多芳郎、「新鬼平犯科帳」になると中一弥が主に挿絵を描いているが、『週刊文春』連載の「番外編」では池波自身で挿絵を描いている。昭和59年に刊行された番外編『乳房』の装幀・挿画とも池波自身によるものである。池波の絵は定評があるが、この単行本『乳房』も素人技ではない。

  乳房 表紙 文藝春秋 昭和59年11月刊行
  〇乳房 表紙 文藝春秋 昭和59年11月刊

 著書に自分で挿絵を描いた例としては、北原白秋が真っ先に思い浮かぶが、滝沢馬琴も
「南総里見八犬伝」などの版下絵を描いている。時代小説は殊に時代考証が求められるので、前記した中一弥さんなども資料収集家としても有名であった。神保町古書店街でよくお見受けする逢坂剛さんの父上である。

 『完本池波正太郎大成別巻』の書誌によれば、装幀を担当しているのは、玉井ヒロテルによるものが圧倒的多い。他に真鍋博、三井永一、風間完、中一弥、村上豊、伊坂芳太郎などがあるが、池波による自装本を以下に列挙してみる。

 新・鬼平犯科帳 番外編 乳房 昭和59年11月 文藝春秋
 同  文春文庫 昭和62年12月 文藝春秋

 新・鬼平犯科帳 炎の色 昭和62年5月 文藝春秋
 
 剣客商売 浮沈 平成1年10月 新潮社

  浮沈 表紙 新潮社 平成元年10月(平成2年2月6刷)
  〇浮沈 表紙 新潮社 平成元年10月(平成2年2月6刷)

 闇は知っている 新潮文庫 昭和57年1月 新潮社
 (昭和53年刊行の立風書房版の装幀は辰巳四郎)

 ひとのふんどし 新書版  昭和58年8月 東京文藝社
 (昭和45年 東京文藝社・新書版の装幀は伊坂芳太郎)

 おとこの秘図 上中下 新潮文庫 昭和58年9月 新潮社
 (昭和52年 新潮社初版6冊の装幀は玉井ヒロテル)

  おとこの秘図 上中下 表紙 新潮文庫 昭和58年9月(平成14年40刷)  おとこの秘図1、4、6巻、中一弥装幀、新潮社、昭和52年から53年
  〇おとこの秘図 上中下 表紙       〇おとこの秘図1、4、6巻、中一弥装幀、
   新潮文庫 昭和58年9月(平成14年40刷)  新潮社、昭和52年から53年

 忍びの旗 新潮文庫 昭和58年9月 新潮社
 (昭和54年 新潮社初版の装幀は村上豊)

 真田騒動―恩田木工 新潮文庫 昭和59年9月 新潮社

 あほうがらす 新潮文庫 昭和60年3月 新潮社

 剣客商売番外編 黒白 上下 新潮文庫 昭和62年5月 新潮社
 (昭和58年 新潮社初版の装幀は村上豊)

 雲ながれゆく 文春文庫 昭和61年1月 文藝春秋
 (昭和58年 文藝春秋版初版の装幀は北澤知巳)

 秘密  昭和62年1月 文藝春秋
 同 文春文庫 平成2年1月 文藝春秋

  秘密 カバーと口絵 文藝春秋 昭和62年1月
  〇秘密 カバーと口絵 文藝春秋 昭和62年1月

 緑のオリンピア 講談社文庫 昭和62年4月 講談社
 (東京文藝社『ひとのふんどし』を改題)

 真田太平記1~12 新潮文庫 昭和62年9月~63年2月 新潮社
 (昭和49年~59年 朝日新聞社版初版の装幀は玉井ヒロテル)

 原っぱ  昭和63年4月 新潮社

 編笠十兵衛 上下 新潮文庫 昭和63年4月 新潮社
 (昭和45年 新潮社初版の装幀は中一弥)

 食卓の情景 新潮文庫 昭和55年4月 新潮社
 (昭和48年朝日新聞社版の装幀は玉井ヒロテル)

 日曜日の万年筆 昭和55年7月 新潮社
 同 新潮文庫 昭和59年3月 新潮社

 旅は青空 昭和56年7月 新潮社
 同 新潮文庫 昭和62年3月 新潮社

 散歩のとき何か食べたくなって 昭和52年12月 平凡社
 同 新潮文庫 昭和56年10月 新潮社

 味と映画の歳時記 昭和57年5月 新潮社
 同 新潮文庫 昭和61年4月 新潮社

 一年の風景 昭和57年9月 朝日新聞社

 青春の忘れもの 新書版 昭和58年10月 東京文藝社
(昭和44年刊行の毎日新聞社版の装幀は玉井ヒロテル)
 むかしの味 昭和59年1月 新潮社

 梅安料理ごよみ 昭和59年5月 講談社

 私の歳月 講談社文庫 昭和59年6月 講談社
(昭和54年 講談社初版の装幀は中林忠良)

 食卓のつぶやき 昭和59年10月 朝日新聞社

 男の作法 新潮文庫 昭和59年11月 新潮社
(昭和56年 ごま書房版の装幀は佐村憲一)

 肴 日本の名随筆26 昭和59年12月 作品社

 夜明けのブランデー 昭和60年11月 文藝春秋
 同 文春文庫 平成1年2月 文藝春秋

 映画を見ると得をする 新潮文庫 昭和62年7月 新潮社
(昭和55年 ごま書房版の装幀は上條喬久)

 フランス映画紀行 新潮文庫 昭和63年6月 新潮社

 池波正太郎の春夏秋冬 平成1年4月 文藝春秋
 同 文春文庫 平成7年1月 文藝春秋

 ル・パスタン 平成1年5月 文藝春秋
 同 文春文庫 平成6年12月 文藝春秋

 ドンレミイの雨 新潮文庫 平成1年6月 新潮社

 これらを見ると、昭和52年の『散歩のとき何か食べたくてなって』や、昭和55年の『日曜日の万年筆』などのエッセイ集の装幀から始まり、徐々に『乳房』(昭和59)や『秘密』
(昭和62)などの小説の装幀、あるいは文庫化にあたり自装に変更していったことが分かる。

ただ、エッセイ集の装幀はいずれもお洒落だが挿図の延長のような感じである。しかし小説『乳房』や『浮沈』の装幀は、プロの装幀家以上の斬新なデザインで魅力的で、『秘密』は
装幀以上に口絵が大胆である。また新潮文庫『おとこの秘図』の装画はガラッと変わった抽象画で、初版の玉井ヒロテル装幀、中一弥挿絵・装画とは全くイメージが違う。文庫版の解説を初出時に挿絵を描いた中一弥氏が書いているが、作品内で度々描かれる浮世絵春画にも由来して、「週刊新潮」の連載にあたり挿絵として「秘戯図」を描こうと決めたが、様々な意味で
難しい作業であったようだ。その苦労した挿絵が文庫には掲載されておらず、更に池波自身が描いた装幀画は抽象画であった。このドロドロとしたイメージは男女の得も言われぬ情念の
世界を描いたのだろうか。その中一弥氏の苦労した挿絵が見たくなって、全六冊の初版を注文してしまい、また本が増えてしまった。

 今回特別なファンでも愛読者でもない池波正太郎に関心を持ったのは、前回も触れたように、三冊欠けた『中野重治全集』を貰い書棚に収めるために、当座必要ではない吉川弘文館の『日本随筆大成』を物置に移そうとして取り出した一冊第二期22巻に森山孝盛の「蜑の焼藻の記」が収められており、読み始めたら内容が面白いのに加え、その森山が鬼平・長谷川平蔵組に居た幕臣とあり興味を持ったことに始まる。

解説によると「蜑の焼藻の記」は冷泉家門下の歌人でもあった孝盛が、新井白石の「折りたく柴の記」にならい、寛政の改革に当って、松平定信、矢部定謙、中川忠英などの逸事や、冷泉家、日野家など歌壇の消息や、本人の身辺を記録したもので、執筆の動機は、加役の火付盗賊改を免ぜられたことにあったとのことだ。孝盛は四百石取りの幕臣で寛政六年御目付ヨリ、
同七年定加役 長谷川平蔵組、同八年定加役御免、とあるから火付盗賊改としては一年ほどの期間であったということだろう。学識もあり循吏の聞もあり楽翁松平定信の信任もあつかったが、火付盗賊改の任期一年は短い。免職が執筆の動機とのことだが、長谷川平蔵とは折りが
合わなかったのか、あまりよく書いていない。以下の通りだ。

 「寛政七年五月、加役つとめ居たりし長谷川平蔵重病にかゝりて、危かりければ、翁(注・孝盛のこと)を召て捜捕の役を被命ぬ。彼長谷川小ざかしき生質にて、八年の間加役勤るうち、様々の計をめぐらしけり。たとへば加役は御手先諸組より増人をとることゆへに、其増人に来りたるもの共に、長谷川が紋付たる高提灯を渡し置たり。若最寄々々に出火ある時は、
其高提灯をともして、速に火事場に押立置せたり。されば愚かなるものゝ目には、はや長谷川の出馬せられたると、驚き思はするためなり。(略)長谷川申乞て、銭の売買なんどしたり。

八年が間様々の奇計をめぐらしたるにより、世上にては口々に長谷川がことを批判したりけり。元来御禁制の目あかし岡引といふものを専らつかひたるゆへに、差掛りたる大盗強盗なんどは、忽チ召捕て手柄を顕したれども、世上は却て穏かならず。大火も年々不絶けり。(略)翁思ひもよらず、捜捕の職を命ぜられければ、つくづくと考ふるに、世上の不正を改め、刑罰を行ひ、人の生死を決断する役目なれば、人を捕ふることは、第二にして我組の者どもの不正のふるまひなからんことをのみ、日夜厳しく禁めて、いさゝかも宜しからざる趣あれば、
忽其人を省みて、他組より別人を入替る様にはからひたり。扨岡引目明しをかたく禁じて、色々所存のあらましを執政達に申述たりき。さらば召捕ものは少なかるべきに、日々に罪に
つくもの多くして、彼奇計をめぐらしたる長谷川が手並に少しも替わることなかりけり」

 と言った具合で、役人として考え方の違いがはっきり出ている感じだ。小説やテレビで描かれた鬼平、あるいは瀧川政次郎の『長谷川平蔵 その生涯と人足寄場』(1975・朝日新聞社)などでは、高く評価される鬼平だが、同時代には違う見方があったことを知った。この『日本随筆大成』捨てずに良かった。

 
 
※シリーズ古書の世界「破棄する前に」は随時掲載いたします。
 
 

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2025年5月23日 第419号

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1.「近代出版史探索外伝Ⅱ」と小田光雄
                            小田啓子

2.近くて遠い、戦後新刊書店の経営史
 (『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』)
                            飯田一史

3.吉田健一の交遊錄展
                            西村義孝

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━━━━━━━━━━【自著を語る(339)】━━━━━━━━━━

「近代出版史探索外伝Ⅱ」と小田光雄

                            小田啓子

 故小田光雄の70冊目となる著書『近代出版史探索外伝Ⅱ』が5月に出版
されました。売れっ子でも流行作家でもない小田光雄が73年の生涯で
70冊もの著書を刊行できたことは感無量です。

 小田光雄は静岡県西部の地方都市の二十数軒ほどの農村集落に生まれ、
大学での在京期間を除き、七十年近くをそこで暮らしてきました。
そして高度成長期に伴い、流入してきた新住民との混住の郊外消費社会が
形成されていくなかに身を置いて、その変遷を見つめてきました。
そうした視点からすべての著書は書かれていて、実はそれらはミステリ
仕立てになっていると本人がよく申しておりました。

 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=21387
 
 
書名:近代出版史探索外伝Ⅱ
著者:小田光雄
発行元:論創社
判型/ページ数:四六/488頁
価格:5,500円(税込) 
ISBN:978-4-8460-2394-2
Cコード:0095

好評発売中!
https://ronso.co.jp/book/2394/
 
 

━━━━━━━━━━【自著を語る(340)】━━━━━━━━━━

近くて遠い、戦後新刊書店の経営史
(『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』)
                             飯田一史

 この本は「はじめに」で断っているとおり戦後の新刊書店の歴史であり、
古本屋のことはほとんど扱えていない。
 古本屋を含めなかった理由は、新刊書店史のあゆみとはかなり異なるため、
両方扱うと話が散漫になりそうだと思ったこと、うまくまとめられたとしても
本が新書に適さないほど分厚くなるであろうこと、古本は新本と比べて統計、
調査が少なく全体像が描きにくいと思ったこと、などが理由だ。

 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=21598
 
 
書名:町の本屋はいかにしてつぶれてきたか
著者:飯田一史
発行元:平凡社
判型/ページ数:新書/352頁
価格:1,320円(税込) 
ISBN:9784582860795
Cコード:0200

好評発売中!
https://www.heibonsha.co.jp/book/b659325.html
 

━━━━━━━━━━【自著を語る(番外編)】━━━━━━━━━━

吉田健一の交遊錄展
                            西村義孝

 6月7日(土)から14日(土)まで、神保町東京古書会館で『吉田健一の交遊錄展』
を開催します。吉田健一は、吉田茂元首相の長男で英文学者、文芸評論家、
小説家、随筆家、翻訳家として知られています。

 吉田健一の著作に『交遊錄』があり、その目次に並ぶ河上徹太郎、中村光夫、
横光利一、福原麟太郎、石川淳、ドナルド・キイン、若い人たち等への献呈署名本、
さらに家族に宛てた献呈署名本、相手の作家から贈られた旧蔵本を展示予定です。
また、『交遊錄』以外にも吉田健一からの献呈署名本、旧蔵本、著作本、翻訳本、
寄稿雑誌、冊子、内容見本、草稿、地図入り書簡、色紙、旧宅玄関ドアのハウス
ナンバー、雨戸のフック他も展示する予定です。

 
続きはこちら
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━━━━━━【「吉田健一の交遊錄展」開催のお知らせ】━━━━━━

『吉田健一の交遊錄展 献呈署名本、旧蔵書他から』を東京古書会館
2階情報コーナーで開催いたします。会期中にはトークイベントが2回
開催されます(どちらも予約が必要です)。皆さまのお誘いあわせの上、
ぜひご来場ください。お待ちしております。

【吉田健一の交遊錄展 献呈署名本、旧蔵書他から】
会期:2025年6月7日(土)~6月14日(土)※6/8休館日
時間:10時~18時(土曜日は17時終了)
会場:東京古書会館2階展示室(千代田区神田小川町3-22)
主催:吉田健一の交遊録展 実行委員会
料金:入場無料
https://www.kosho.ne.jp/?p=1554
 
 
━━━━【ドキュメンタリー映画『ポラン』上映のお知らせ】━━━━

古書店「ポラン書房」の閉店とその後を描く、中村洸太監督による
ドキュメンタリー『ポラン』が、6月に東京で行われる特集上映「山形
ドキュメンタリー道場 in 東京 2025 初夏篇」で上映されます。

■ 上映詳細
日時:2025/06/08 (日) 19:30
場所:ユーロスペース (渋谷区円山町1-5)
URL:https://ddcenter.org/dojotokyo/

■ 映画『ポラン』について
街の古本屋として人々に愛されてきた「ポラン書房」。コロナ禍中、
突如閉店が告知される。店に生きる人々の閉店までの日常とその後の
軌跡を静かに記録する。(2022年製作、77分)
 
 

━━━━━━━━━【書影から探せる書籍リスト】━━━━━━━━━

「日本の古本屋」で販売している書籍を、テーマを深掘りして書影から
探せるページをリリースしました。「日本の古本屋」には他のWebサイト
には無い書籍がたくさんあります。ぜひ気になるテーマから書籍を探して
みてください。
 
「日本の古本屋」書影から探せる書籍リスト
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=13964

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━━

書名:古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸
著者:小山力也
発行元:本の雑誌社
判型/ページ数:四六判変型並製/256頁
価格:1,980円(税込) 
ISBN:978-4-86011-601-9
Cコード:0395

好評発売中!
https://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860116019.html

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書名:高所綱渡り師たち 残酷のユートピアを生きる
著者:石井達朗
発行元:青弓社
判型/ページ数:A5/256頁
価格:3,740円(税込) 
ISBN:978-4-7872-7473-1
Cコード:0076

好評発売中!
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787274731/

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【展示会開催のご案内】
「没後80年記念 探偵作家・大阪圭吉展」開催にあたり
会期:2025年7月11日(金)~7月26日(土)
※7月13日(日)、20日(日)は休館
時間:10時~18時(最終日のみ17時終了)
会場:東京古書会館2階展示室(千代田区神田小川町3-22)

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━━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━━

2025年5月~2025年6月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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全古書連は全国古書籍商組合連合会(約2,000店加盟)の略称です

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日本の古本屋メールマガジン その419 5月23日

【発行】
東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋」事業部
東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
URL  https://www.kosho.or.jp/

【発行者】
広報部・編集長:藤原栄志郎

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〇近代出版史探索外伝Ⅱ

「近代出版史探索外伝Ⅱ」と小田光雄

「近代出版史探索外伝Ⅱ」と小田光雄

小田啓子

 故小田光雄の70冊目となる著書『近代出版史探索外伝Ⅱ』が5月に出版されました。売れっ子でも流行作家でもない小田光雄が73年の生涯で70冊もの著書を刊行できたことは感無量です。たくさんの方々のご支援があってのことと深く感謝いたします。

 小田光雄も『近代出版史探索Ⅶ』の刊行時に、メールマガジン2024年2月26日号の「自著を語る」で、長編連作シリーズ『近代出版史探索』の成立経緯と関係者に対する深い謝辞を述べています。
まず『日本古書通信』の連載を単行本化した『古本屋散策』が鹿島茂氏のご選考により、
「第29回Bunkamuraドゥマゴ文学賞」を受賞したことによって、ブログ連載の「古本夜話」が『近代出版史探索』として刊行することが決まったと記しています。

次に論創社をはじめ、身近な人たちの好意と支援によって出版が継続されていることを伝えています。本の内容紹介にはふれずに、まるで虫の知らせがあったかのような感謝の言葉を並べ、3カ月後に亡くなってしまいました。

 一冊目の『近代出版史探索外伝』は2021年9月に刊行されました。2009年から始めたブログ「出版・読書メモランダム」は「古本夜話」と、出版業界の定点観測である「出版状況クロニクル」を二本の柱として書き綴られましたが、その他に「ゾラからハードボイルドへ」「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」「ブルーコミックス論」などのジャンルもありました。「あとがき」で、その三本を映画の「雑多な三本立て上映」を模すようにして、『外伝』は編まれ、『近代出版史探索』シリーズの中にあって、「間奏曲のような趣」の「愛着のある論稿」で
あると本人は述べています。

 小田光雄は静岡県西部の地方都市の二十数軒ほどの農村集落に生まれ、大学での在京期間を除き、七十年近くをそこで暮らしてきました。そして高度成長期に伴い、流入してきた新住民との混住の郊外消費社会が形成されていくなかに身を置いて、その変遷を見つめてきました。
そうした視点からすべての著書は書かれていて、実はそれらはミステリ仕立てになっていると本人がよく申しておりました。

 今回の『近代出版史探索外伝Ⅱ』は論創社のホームページに連載されたコラム「本を読む」(2016年2月~2024年6月)の100編に、未発表原稿10編と「解説」3編などを加えて単行本化したものです。

 小田光雄の著書ではめずらしく「本を読む」のタイトルどおり、少年期の農村の駄菓子屋兼
貸本屋、町の商店街の貸本屋や書店、隣市の古本屋、そして中高生時代の学校図書室での読書体験などがふんだんに織り込まれた読書遍歴となっています。
長く閉じられたままになっていたこの駄菓子屋兼貸本屋(たばこ屋)が最近取り壊され、ついに記憶だけの地になってしまいました。これもひとつの時代の終焉でしょうか。

 「ドゥマゴ文学賞」受賞時の挨拶で、自分は「読み書きの職人である」と見なし、ひっそりと居職の生活を続けてきたと述べています。そこに至るまでに書店員、店長、書店経営を経て、出版社パピルス代表として数々の翻訳書を刊行してきました。中学生の頃は「売れない物書き」になりたいと考えていたと語っていて、その夢もかなえられました。また「ドゥマゴ文学賞」を受賞するに至り、長きにわたって書き続けてきたご褒美だと喜んでおりました。

 さて、小田光雄は3カ月に満たない闘病で亡くなってしまったので、直前まで元気で、これから出版したいリストを書いていました。まるで遺書のような「幻の企画書」です。

自治会長として古くなった公会堂の立て直しを計画しましたが、諸事情により無念の白紙撤回となりました。『自治会 宗教 地方史』は地方における宗教や歴史の大きな文脈の中でそのいきさつを綴っていて、原稿は完成に近づいていました。

『失われた新書を求めて』は『近代出版史探索外伝Ⅲ』として出したいと書かれていました。1950年代に創刊され、60年代に終わった新書の総合目録を作成し、戦後多数の新書が出現した背景と、消えてしまった経緯をたどる企画だったようです。

その他に「戦後の大手出版社のシリーズ物」『出版状況クロニクルⅧ』総集編、『近代出版史探索Ⅷ』『古本屋散策Ⅱ』「出版人に聞く」シリーズの再開など、貪欲に出版を夢見ておりました。これらを書き続けていたら、どんなものになっただろうかと思いを巡らせています。

 『近代出版史探索外伝Ⅱ』は小田光雄が50年前に購入し、愛してやまなかった絵画を表紙に
配しています。小田光雄が生きた証としてお読みいただければ幸いに存じます。
なお小田光雄の著書一覧と書影、パピルス刊行物一覧、年譜はブログ「出版・読書メモランダム」に掲載していますので、よろしかったらご覧ください。
 
 
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書名:『近代出版史探索外伝Ⅱ』
著者:小田光雄
発行元:論創社
判型/ページ数:四六/488頁
価格:5,500円(税込)
ISBN:978-4-8460-2394-2
Cコード:0095
 
好評発売中!
https://ronso.co.jp/book/2394/
 
 
【小田光雄さん寄稿特集】
本メルマガにご寄稿いただいた全記事を一覧にまとめ、特設ページとして公開いたします。
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=21672

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「近くて遠い、戦後新刊書店の経営史」
(『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』)

「近くて遠い、戦後新刊書店の経営史」
(『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』)

飯田一史

『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』執筆に際しては、書店新風会関連の資料などの購入で「日本の古本屋」にはとてもお世話になった。こうして執筆機会をいただけて非常に嬉しく思っている。

 この本は「はじめに」で断っているとおり戦後の新刊書店の歴史であり、古本屋のことは
ほとんど扱えていない。
 古本屋を含めなかった理由は、新刊書店史のあゆみとはかなり異なるため、両方扱うと話が散漫になりそうだと思ったこと、うまくまとめられたとしても本が新書に適さないほど分厚くなるであろうこと、古本は新本と比べて統計、調査が少なく全体像が描きにくいと思ったこと、などが理由だ。

 しかし、文中でも記したとおり、読書世論調査などを踏まえると日本人(16歳以上)の
平均的な書籍の読書冊数は2冊未満でずっと推移している。仮に月1・5冊として人口1.2億人とすると日本人は年間21・6億冊読んでいる。2023年には書籍の推定販売部数は4・6億冊、公立図書館では個人貸出と団体貸出を合わせて8・4億冊(出版科学研究所、
日本図書館協会調べ)である。新刊で買った本、図書館で借りた本をすべて読んだというムリな仮定を置いても残り4割、8・6億冊は新刊書店でも公共図書館でもないところから調達した書籍が読まれていることになる。すでに家にある本、そして古本屋抜きに読書も本の購買も語れないのである。

 拙著発売の少し前に鹿島茂氏の『古本屋の誕生』が刊行されたが、誰かに新刊と古本を合わせた総体的な本屋・読書の歴史を書いてもらいたいと思う。
 私は戦後の新刊書店史を描くだけでも調べ物が大変すぎて、もう二度と同じような作業はしたくないので遠慮したい。

 古本業界や古本好きの方々には自明のこととは思うが一応書かせていただくと、新刊書店と古本屋の兼業は、昭和初期まではめずらしくなかった。
 松本昇平『業務日誌余白』(1981年)によれば、大正時代に新刊の返品が自由になった(買切から委託に移行した)あともしばらくは「仕入れたら割り引いてでも売り切る」のが
書店の責務と考える向きがあり、書店の多くは古書店を兼ねていた。当時はひとつの店が、
新本の小売から古書の買い入れ・販売、せどりまでやっていた。

 ところが新本・古本兼業書店では、新品の雑誌を買った読者が読んですぐ同じ店に売り、
その古本を本屋が版元に返品する不正販売・不正返品が昭和初年代に横行し、1932年
(昭和7年)に日本雑誌協会が「古本兼業禁止」を全国書店商に通告。書店から大反対されるも、結局、組合規約でも禁止された。

 戦後になっても「新本と古書兼業者」「新本と貸本兼業者」は新刊書店の組合には原則加入できなかった。古書店が新刊雑誌を発売日前に値引き販売したことで書店組合がクレームを
付けてやめさせる事件(「全国書店新聞」日本書籍商業組合連合会、1972年1月15日)や、1977年には書店が古新聞や古雑誌をあつかう古紙業者から雑誌を買って取次に返品して換金する「杉田商店事件」があった(『日本雑誌協会二十年史』1981年)。

1980年代前半には神田の古書店街で新刊ベストセラーや辞書類が値引き販売されている
ことが問題にもなっていた(『出版年鑑』1983年版~1985年版)。
 新本のみをあつかう出版社、取次、書店からすると古本=不正換金手段、再販契約のアウトサイダーというイメージがつきまとってきた。
 ブックオフの台頭以降はやや風向きが変わり、新刊書店と古本兼業もまた少し増えたが、
兼業店のオーナーに訊くと「正直、今も出版社からはよく思われていない」と返ってくることもある。
 生活者としては新刊書店、出版社、取次いずれの人も古本屋も当たり前に使っていると思う。いわゆる本好きはなおさら「新刊だけ」「古本だけ」という人はまれだろう。それなのに、いつまで色眼鏡で見て垣根を設けるつもりなのかと思ってしまう。

 古本屋を近くて遠い存在にし、1940年代以来の出版流通システムに何年も浸かってきたことで、仕入れと値付け、資金繰りがいかに重要なのかという古本屋なら当たり前に認識している小売業の基本を、新刊書店はいささか忘却してしまい、あとになってそのツケを払わされているように見える。
 本の定価は出版社が付け、本の仕入のかなりの部分が取次による見計らい配本に左右され、入出金の支払いサイトも取次に握られている。系列店やフランチャイズでもないのに、である。この異様な業態が新刊書店だった。

 取次のパターン配本、チェーン書店での本部一括仕入れなどを背景とした「金太郎飴書店」という言葉は、新刊書店では揶揄の言葉として一般的だ。実際そう感じる本屋もある。だが
古本屋にこの言葉が用いられることは少ない。新古書店でさえ、一店ごとに個性がある(出てしまう)。

 見計らい配本だと、取次が勝手に送りつけてきた本に対して、その分の仕入金額が発生する。つまり書店は月々の仕入の金額が事前にわからないというおそろしい状態になる。しかも書店に本が着荷した翌月末には支払いが発生する。書籍の場合は返品自体も返品後の返金もそれより遅くなりがちだ。結果、キャッシュフローが悪化しやすいという取引条件なのである。にもかかわらず、この問題も、取次が買掛金の取り立てを厳しくしはじめる1990年代後半まで見過ごされてきた。

 古本業界や古本ファンの方が『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』を読むポイントとしては、このように近くて遠い新刊書店業のビジネスモデルや商慣習、その歴史が、どれだけ
古書業界と隔たっているのか、その違いが改めて垣間見える部分にあるのではないかと思う。
 
 
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書名:『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』
著者:飯田一史
発行元:平凡社
判型/ページ数:新書/352頁
価格:1,320円(税込)
ISBN:9784582860795
Cコード:0200
 
好評発売中!
https://www.heibonsha.co.jp/book/b659325.html

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吉田健一の交遊錄展

吉田健一の交遊錄展

西村 義孝

 6月7日(土)から14日(土)まで、神保町東京古書会館で『吉田健一の交遊錄展』を開催します。吉田健一は、吉田茂元首相の長男で英文学者、文芸評論家、小説家、随筆家、翻訳家として知られています。

 吉田健一の著作に『交遊錄』があり、その目次に並ぶ河上徹太郎、中村光夫、横光利一、
福原麟太郎、石川淳、ドナルド・キイン、若い人たち等への献呈署名本、さらに家族に宛てた献呈署名本、相手の作家から贈られた旧蔵本を展示予定です。また、『交遊錄』以外にも吉田健一からの献呈署名本、旧蔵本、著作本、翻訳本、寄稿雑誌、冊子、内容見本、草稿、地図入り書簡、色紙、旧宅玄関ドアのハウスナンバー、雨戸のフック他も展示する予定です。

 トーク・イベントも2回、開催を予定しています。1回目の6月7日(土)は、角地幸男氏(『ケンブリッジ帰りの文士 吉田健一』の著者)と西村との対談、2回目の6月14日(土)は西村の講演で、蒐集にまつわる裏話などを公開する予定です。申し込み詳細は、告知のフライヤ、SNSをご参照下さい。

 蒐集のきっかけは、小学館の雑誌サライの特集「吉田健一の食文学入門」(1991年4月18日発行)でした。辻調理師専門学校校長の辻静雄が「これだけの教養人」と書いている
吉田健一とはどんな人物なのか、ぜひ知りたいと思ったのが始まりで、辻さんの全文は次の通りです。
《日本人は本当の欧州を知らない。森鴎外、夏目漱石は肩肘張って欧州を紹介したが、肌で
彼我の差がわかり、“上機嫌”で欧州の正体を教えてくれた最初の人が吉田さんだった。私は
東京、大阪、ハワイ、スコットランドの家にそれぞれ全集(全32巻、絶版)を置いている。
というのもそこに本物の文明が書かれているから。これだけの教養人が書いたものを、私は
驚きたくて読む。料理だけではない何かを教えられたくて読むのである。》

 この文章がきっかけで、吉田健一の蒐集は、著作本、翻訳本、寄稿雑誌、書簡、草稿、色紙他へと、次第に深みにはまって行きました。

 著作本、翻訳本を蒐集する中で、帯付き、美本を求めていくことを古本の世界で知り、同じ本ですが、より状態のいいもの、刊行当時の状態として帯付きのものへと買い替えて行きました。さらに署名のないものから署名本へ、さらに献呈先が違うものが見つかると新たに買い求めました。満寿屋の原稿用紙に書かれた草稿を手に入れ、吉田健一の原稿の特徴である、最後の升目まできちっと埋まっていることを確認しました。書簡では結びの一句、「先は御禮旁々右まで」といった言い回しを真似るようになりました。

 『葡萄酒の色』の革装17部限定本が初めて現れた時、箪笥貯金でなく本棚貯金である草稿、書簡が購入資金となりました。欲しい本は予告なく突発的に現われ、待ったなし、資金は潤沢ではなく、蒐集した草稿、書簡、署名本等を古書店へ買取り依頼し、もしくは物々交換で手に入れておりました。欲しいものが現れるたびに手放すものが増え、何度も目の前を通り過ぎていきました。あとで買い戻した本も少なからずございます。ある時、古書店ご主人から「いい加減にしてくれ」的な注意を受けたことがございました。同じ本を何度も売り買いしていたからです。

欲しい本の金額に見合う買取り依頼本に、何度も同じ本が入ってしまうのは、買取り金額が、およそわかっていたからかもしれません。限定本は数十部同じ本があり、回りまわって再度
手に入る機会があります。50部『シェイクスピア』、17部『葡萄酒の色』は複数手に入っていたことから手放す機会があり、30部『でたらめろん』は見返しが切り取られたものを手放しました。その後、『シェイクスピア』、『葡萄酒の色』は縁があり、また手に入りました。
吉田健一の古書価は、手が全く届かない訳ではなく、なんとかなりそうだから、というのが
蒐集の永く続いた理由のひとつかもしれません。

 当方の蒐集対象には、吉田健一以外に佐野繁次郎がございます。時には、佐野繁次郎に出物があり、吉田健一の蒐集品が購入資金となって手放したものも多くございます。そうした中で、コレクションとして継続所蔵しているものを展示します。普段は本部屋の本棚に前後2列に収納しておりますものが、ガラスケースに入り展示されます。展示会開始の前日に、いろいろ展示の設営を考えるのも、また楽しみのひとつです。

 展示会の告知ポスター、フライヤ、DMと図録のデザインを、デザイナーの水戸部功氏に
依頼して作成しております。完成しましたら会場に置く予定でございますので、合わせて見て戴けますと幸いです。ご来場をお待ちしております。
 
 
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【吉田健一の交遊錄展 献呈署名本、旧蔵書他から】
 会期:2025年6月7日(土)~6月14日(土)※休館日:6月8日
 開館時間:月曜~金曜=10:00-18:00/土曜=10:00~17:00
 会場:東京古書会館 2階情報コーナー(千代田区神田小川町3-22)
 主催:吉田健一の交遊錄展 実行委員会
 料金:入場無料
 https://www.kosho.ne.jp/?p=1554
 

Copyright (c) 2025東京都古書籍商業協同組合

時代と出版を読む――小田光雄さん寄稿特集

時代と出版を読む――小田光雄さん寄稿特集

小田光雄さんの寄稿一覧に寄せて

長年にわたり、本メルマガに数多くの原稿をお寄せくださった小田光雄さんが、2024年に逝去されました。小田さんには、古書や出版の世界についての鋭い視点と深い知見をもって、定点観測のように継続的に情勢をまとめていただき、読者のみなさまにとっても貴重な指針となる文章を数多く残してくださいました。

そのご功績に感謝の意を込めて、これまで本メルマガにご寄稿いただいた全記事を一覧にまとめ、特設ページとして公開いたします。小田さんの筆致に触れたことがある方も、今回初めて読まれる方も、この記録があらためて小田さんの仕事に触れるきっかけとなり、その記録が今後、誰かの思考や実践の参考となることを願ってやみません。
 
 
【2008年】
・6月25日 第68号 ブックオフと出版業界

【2010年】
・5月25日 第91号 出版状況クロニクルⅡ

【2012年】
・3月23日 第113号 出版状況クロニクルⅢ

【2014年】
・1月24日 第150号 『奇譚クラグ』から『裏窓』へ
・10月24日 第168号 小泉孝一『鈴木書店の成長と衰退』について

【2016年】
・6月24日 第207号 出版状況クロニクルⅣ

【2017年】
・6月23日 第229号 郊外の果てへの旅/混住社会論

【2018年】
・4月25日 第249号 出版状況クロニクルⅤ

【2019年】
・7月25日 第279号 古本屋散策(第29回ドゥマゴ文学賞受賞)
・11月25日 第287号 近代出版史探索

【2020年】
・5月25日 第299号 近代出版史探索Ⅱ
・8月25日 第305号 近代出版史探索Ⅲ
・11月25日 第311号 近代出版史探索Ⅳ

【2021年】
・2月25日 第317号 近代出版史探索Ⅴ
・6月25日 第325号 出版状況クロニクルⅥ
・10月25日 第333号 『近代出版史探索外伝』について

【2022年】
・5月25日 第347号 近代出版史探索Ⅵ

【2024年】
・2月26日 第389号 近代出版史探索VII
 
 
出版状況クロニクル1 出版状況クロニクル2 出版状況クロニクル3
 
〇出版状況クロニクルⅣ 〇出版状況クロニクルⅤ 出版状況クロニクル6
 
出版状況クロニクル7 郊外の果てへの旅/混住社会論 古本屋散策
 
近代出版史探索1 近代出版史探索2 近代出版史探索3
 
近代出版史探索4 近代出版史探索Ⅴ 近代出版史探索外伝1
 
近代出版史外伝2
 
 
小田光雄さんの著書一覧と書影、パピルス刊行物一覧、年譜はブログ「出版・読書メモランダム」をご覧ください。
「出版・読書メモランダム」https://odamitsuo.hatenablog.com/

Copyright (c) 2025東京都古書籍商業協同組合

2025年5月9日 第418号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
          古書市&古本まつり 第148号
      。.☆.:* 通巻418・5月9日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━━━━【シリーズ古書の世界】━━━━━━━━━━

破棄する前に4 気になる池波正太郎装幀本
                        三昧堂(古本愛好家)

 私は探偵小説や時代小説のファンではない。この分野の本は殆ど読んで
いないのだが、山本周五郎と池波正太郎だけは多少作品も読んでいるし、
興味がある。読みだしたら、それだけにのめりこみそうなので避けてさえ
いるほどであるが、今回、その池波正太郎作品、特に池波自装本について
話をしたい。
 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=21138
 
 
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━━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見34】━━━━━━━━━━

徳島県立文学書道館
瀬戸内寂聴とユニークな徳島の文学者たち
                            南陀楼綾繁

 1月11日の朝、徳島空港に迎えに来てくれた知人の車で、徳島県立文学
書道館に着いた。
徳島駅からだと徒歩15分、徳島城跡がある徳島中央公園の近くに位置する。
徳島市に来たのは25年ぶりぐらいか。

 今回、ここを訪れたのは、ある編集者についての展覧会を観るためだ。
 昨年9月、東京の日本近代文学館で「編集者かく戦へり」展が開催された。
同館が所蔵する膨大な資料から、編集者にスポットを当てた初めての展示で、
編集者と作家がやりとりした書簡やゲラなどが並んだ。自分が編集者という
こともあって、非常に面白く、発見が多かった。
 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=21403
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。
 
 
X(旧Twitter)
https://twitter.com/kawasusu
 
 
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━━━━━━━【本とエハガキ お休みのお知らせ】━━━━━

「シリーズ 本とエハガキ」は都合によりお休みさせていただきます
楽しみにお待ちいただいた方には申し訳ございませんでしたが、
次回配信まで、楽しみにお待ちいただければ幸いです
 
 
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━━━━━━━━━【書影から探せる書籍リスト】━━━━━━━━━

「日本の古本屋」で販売している書籍を、テーマを深掘りして書影から
探せるページをリリースしました。「日本の古本屋」には他のWebサイト
には無い書籍がたくさんあります。ぜひ気になるテーマから書籍を探して
みてください。
 
「日本の古本屋」書影から探せる書籍リスト
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=13964
 
 
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━━━━━【5月9日~6月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init
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TSUTAYA首里店 古書フェア

期間:2025/04/12~2025/06/15
場所:首里りうぼう(1F) TSUTAYA首里店内にて

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丸善博多店古本まつり

期間:2025/04/19~2025/05/19
場所:丸善博多店(JR博多シティ8F)福岡市博多区博多駅中央街1-1

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第4回 戸田書店やまがた古本まつり

期間:2025/04/26~2025/06/29
場所:戸田書店山形店 特設会場 山形市嶋北4丁目2-17 

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第14回 小倉駅ナカ本の市

期間:2025/04/26~2025/05/11
場所:小倉駅ビル内・JAM広場 (JR小倉駅 3階 改札前)
URL:https://twitter.com/zCnICZeIhI67GSi

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港北古書フェア

期間:2025/05/01~2025/05/15
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売
   センター南駅 改札を出て直進、右前方。※駅構内
URL:https://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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ふつうの古本まつり

期間:2025/05/08~2025/05/19
場所:ジュンク堂書店福岡店 2階 MARUZENギャラリー
   福岡市中央区大名1丁目15-1 天神西通りスクエア
URL:https://honto.jp/store/news/detail_041000113744.html?shgcd=HB300

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第54回 古本浪漫洲 Part.1

期間:2025/05/08~2025/05/10
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場) 新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:https://furuhonromansu.kosho.co.jp/

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東京愛書会

期間:2025/05/09~2025/05/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/

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反町古書会館展

期間:2025/05/10~2025/05/11
場所:神奈川古書会館・1階特設会場 横浜市神奈川区反町2-16-10
最寄駅:東神奈川駅徒歩7分・東急東横線反町駅徒歩5分
URL:https://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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高円寺均一まつり

期間:2025/05/10~2025/05/11
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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第54回 古本浪漫洲 Part.2
期間:2025/05/11~2025/05/13
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場) 新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:https://furuhonromansu.kosho.co.jp/

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新橋古本まつり
期間:2025/05/12~2025/05/17
場所:新橋駅前SL広場
URL:https://twitter.com/slbookfair

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第54回 古本浪漫洲 Part.3

期間:2025/05/14~2025/05/16
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場) 新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:https://furuhonromansu.kosho.co.jp/

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2025/05/15~2025/05/18
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=644

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第154回 倉庫会 古書即売会

期間:2025/05/16~2025/05/18
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12
URL:https://hon-ya.net/

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五反田遊古会

期間:2025/05/16~2025/05/17
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=567

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第54回 古本浪漫洲 Part.4

期間:2025/05/17~2025/05/19
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場) 新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:https://furuhonromansu.kosho.co.jp/

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第12回 BOOK DAY とやま

期間:2025/05/17~2025/05/18
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)
URL:https://bookdaytoyama.net/

------------------------------
第54回 古本浪漫洲 Part.5(300円均一)

期間:2025/05/20~2025/05/22
場所:新宿サブナードジャングルスカイ広場(催事場) 新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:https://furuhonromansu.kosho.co.jp/

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イトーヨーカドー立場店古本市

期間:2025/05/20~2025/05/26
場所:イトーヨーカドー立場店 1階特設会場

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第114回 彩の国所沢古本まつり

期間:2025/05/21~2025/05/27
場所:くすのきホール(西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)  
URL:https://tokorozawahuruhon.com/

------------------------------
趣味の古書展

2025/05/23~2025/05/24
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.tokyo

------------------------------
中央線古書展

期間:2025/05/24~2025/05/25
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=574

------------------------------
浦和宿古本いち

期間:2025/05/29~2025/06/01
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)
URL:https://twitter.com/urawajuku

------------------------------
和洋会古書展

期間:2025/05/30~2025/05/31
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=562

------------------------------
杉並書友会

期間:2025/05/31~2025/06/01
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=619

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第35回紙屋町シャレオ古本まつり

期間:2025/05/31~2025/06/08
場所:広島市中区紙屋町シャレオ中央広場
URL:https://twitter.com/koshohiroshima

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フィールズ南柏 古本市

期間:2025/06/05~2025/06/27
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場  
   柏市南柏中央6-7(JR南柏駅東口すぐ)

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萬書百景市(ばんしょひゃっけいいち)

期間:2025/06/06~2025/06/07
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=959

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オールデイズクラブ古書即売会

期間:2025/06/06~2025/06/08
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12
URL:https://hon-ya.net/

------------------------------
高円寺均一まつり

期間:2025/06/07~2025/06/08
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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書窓展(マド展)

期間:2025/06/13~2025/06/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=571

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好書会

期間:2025/06/14~2025/06/15
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
URL:https://www.kosho.ne.jp/?p=620

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BOOK DAY とやま駅

期間:2025/06/14
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)
URL:https://bookdaytoyama.net/

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徳島県立文学書道館
瀬戸内寂聴とユニークな徳島の文学者たち【書庫拝見34】

徳島県立文学書道館
瀬戸内寂聴とユニークな徳島の文学者たち【書庫拝見34】

南陀楼綾繁

 1月11日の朝、徳島空港に迎えに来てくれた知人の車で、徳島県立文学書道館に着いた。
徳島駅からだと徒歩15分、徳島城跡がある徳島中央公園の近くに位置する。徳島市に来たのは25年ぶりぐらいか。

 今回、ここを訪れたのは、ある編集者についての展覧会を観るためだ。
 昨年9月、東京の日本近代文学館で「編集者かく戦へり」展が開催された。同館が所蔵する膨大な資料から、編集者にスポットを当てた初めての展示で、編集者と作家がやりとりした
書簡やゲラなどが並んだ。自分が編集者ということもあって、非常に面白く、発見が多かった。

 同時期に、三鷹市美術ギャラリー内の「太宰治展示室 三鷹の此の小さい家」で、「石井立(たつ)が遺したもの 編集者としての喜びは《できるかぎりよき本》をつくること」という企画展があった。石井は筑摩書房で晩年の太宰治を担当した。
 また、行けなかったが、前橋文学館でも「現在(いま)を編集する 月刊「新潮」創刊120周年記念展」が開催された。

 なぜかいま、「編集者」をテーマにした展示が続いているのだ。
 そこに、徳島県立文学書道館で「編集者・谷田昌平と第三の新人たち 徳島編」という展示が12月からはじまるというニュースが飛び込んできた。
 谷田は新潮社の編集者で、遠藤周作、吉行淳之介、安岡章太郎など「第三の新人」と呼ばれる若き作家を担当した。彼らとの交流について、『回想 戦後の文学』(筑摩書房)という
著書もある。

 01
 ★『回想 昭和の文学』

 新潮社の編集者に関心のある私としては、ぜひとも目にしておきたい展示だ。それで、徳島に行くことを決めたのだった。

文学と書道を軸に】

 徳島県立文学書道館に入ると、学芸員の成谷麻理子さんが出迎えてくれた。

 02
 ★徳島県立文学書道館外観

 地元の出身で、2017年から同館に勤務。その以前、日本近代文学館でアルバイトをしていたことがあるという。「だから、『書庫拝見』の日本近代文学館の回を懐かしく読みました」と笑う。
 取材には、事業課主事の和田輝(ひかる)さん、専門職員の岡田加代子さんも加わった。
 徳島県立文学書道館は2002年開館。文学と書道をともに扱う資料館は、全国でも珍しい。
 県内では以前から文学館の設置を希望する声があり、一方で、書道美術館への要望も
あった。

 先に書道について見ておくと、徳島では独自の書道文化が発達していた。1901年(明治34)、海部郡三那田町(現・由岐町)に生まれた小坂奇石は、多くの作品を残し、書道教育にも携わった。遺族から300点を超える作品と資料が徳島県に寄贈された。
 また、1959年には「明治の三筆」の一人と呼ばれた佐賀県の書家・中林梧竹の代表的な
作品が県に寄贈された。梧竹の収集家であった東京の海老塚的傳の熱意によるものだったと
いう。

 文学については、徳島県出身の作家・瀬戸内寂聴の存在が大きい。
 寂聴は1981年から徳島市で「寂聴塾」を開催。50名ほどの塾生を前に、文学について
語った。その後、「徳島塾」と名前を改め、寂聴とゆかりのある作家を招いて対談するかたちに変わり、1986年まで続いた。

 1996年、徳島を訪れた寂聴のもとを、県内の文学団体の代表らが訪問し、資料提供を
要請。このとき寂聴は「県がきちんとした文学館を造ってくれるなら、私が持っている物を
全部、喜んで寄贈したい」と協力を約束した(徳島新聞 1996年3月2日)。

 こういった動きを受け、翌年には文学館と書道美術館が一体化した施設を設立するという
基本構想が生まれ、資料の寄贈も相次いだ。
 そして、中前川町・北前川町の工業試験場跡地に3階建ての徳島県立文学書道館が新築された。文学も書道も言葉を扱うことから、「言の葉ミュージアム」という別称も付いた。

 3階に文学、書道のそれぞれの常設展示室と、瀬戸内寂聴記念室がある。
 1階には特別展示室があり、文学3回、書道3回で、年6回の特別展が開催される。別の学芸員が担当するとはいえ、かなり多い回数だ。
 図録は毎回発行し、バックナンバーは無料で配布する。じつは、私も以前、興味のある図録をいくつか郵送していただいたことがある。
 また、同館では2006年から「ことのは文庫」を刊行。『海野十三短編集』1、2、『瀬戸内寂聴随筆集 わが ふるさと 徳島』、『北條民雄選集 いのちの初夜』など、徳島ゆかりの
作家の文章をオリジナル編集で出している。

瀬戸内寂聴と徳島

 寂聴関係の資料を収める収蔵展示室は3階にあり、一般利用者もガラス越しに書庫内を見ることができる。

 03
 ★収蔵展示室の内部

 瀬戸内寂聴は、瀬戸内晴美として1955年に作家デビューしたのち、小説、評伝、エッセイなど多くの分野で活躍。1973年、中尊寺で出家得度した。晩年まで精力的に活動し、2021年に99歳で亡くなった。

 2004年には徳島県立文学書道館の館長になり、10年間つとめた。同館では、開館記念の「瀬戸内寂聴展」をはじめ。「寂聴の旅」「寂聴なつかしき人」「寂聴と徳島」など、
さまざまな視点での展示が企画されてきた。今年4月からは「戦後80年 寂聴と戦争」展が
開催中だ。
 収蔵展示室には、寂聴の自著と、執筆の参考にした資料が並んでいる。
 寂聴には『美は乱調にあり』『諧調は偽りなり』など、アナキストの生涯を描いた作品も
多い。『大杉栄全集』には、多くの書き込みがあった。

 04
 ★『大杉栄全集』

 
「こんな雑誌にも書いてますよ」と、和田さんが見せてくれたのは、『小学四年生』1954年
5月号だ。中を開くと、「にじのかなたに」という小説がある。筆名は「三谷晴美」。少女
小説や童話で原稿料を得ながら、丹羽文雄主宰の『文学者』同人として文学修業をしていた頃だった。

 05  06  
 ★『小学四年生』        ★寂聴の小説

 著作や雑誌以外にも、原稿や書簡なども収蔵されている。
 1955年5月に『文学者』に発表した『痛い靴』を読んだ三島由紀夫が、辛辣な感想を寄せ、「貴女ならきっと面白く書けると思ふのです 次作にうんと期待します」と激励した葉書も
ある。

 07
 ★三島由紀夫から寂聴への葉書

 
 寂聴は連作短編集『場所』に収録された『眉山』など、徳島を舞台にした小説、エッセイを多く書いた。また、作家の生田花世、「バロン薩摩」と呼ばれる富豪で文筆家の薩摩治郎八、日本舞踊家の武原はんら、徳島ゆかりの人物と交流している。
 そういう点からも、故郷の徳島にこれだけまとまった寂聴の資料がある意味は大きい。

徳島ゆかりの文学者の資料

 いよいよ、書庫に案内していただく。
 最初に入った書庫には、保存箱がずらりと並ぶ。人物名が書かれているが、中に何が入っているかは開けてみないと判らない。

 08
 ★保存箱が並ぶ棚

 たとえば、「伊上凡骨」という箱には、十数冊の本が入っている。

 09
 ★伊上凡骨の装丁版画本

 凡骨は現在の徳島市に生まれ、東京で木版画彫刻を学ぶ。『明星』に画家の挿絵などを木版彫刻し、「パンの会」常連として作家や画家と交流。多くの本の装丁版画を手がけた人物だ(盛厚三『木版彫刻師 伊上凡骨』ことのは文庫)。
 なかでも有名なのは、夏目漱石の『こゝろ』(岩波書店)だが、同館には木下杢太郎『和泉屋染物店』(東雲堂書店)、武者小路実篤『友情』(以文社)、与謝野鉄幹・晶子『毒草』(本郷書院)などが所蔵されている。いずれも美本ばかりで、手に取るとうっとりする。

 
 また、「海野十三」の箱には、『海野十三小説書譜』と題された自筆の折本が入っていた。表面は自著の目録だが、裏面には「遺書」が書かれている。これは終戦後、一家心中を図ろうとしたときに書いたものだと云われる。
 箱に入ったもの以外にも、さまざまな物品が保管されている。

 10  10-2
 ★海野十三小説書譜       ★同 遺書

 
 別のフロアには、書籍や雑誌がずらりと並ぶ。県内の同人誌も揃っている。
『徳島歌人』は1946年5月に創刊された。紙不足のなか、何とかかき集めて発行したという。

 11
 ★『徳島歌人』

 
 新居格(にいいたる)の著作も並ぶ。新居は板野郡大津村(現・鳴門市大津町)出身。
大正期に評論家、翻訳家として頭角をあらわし、エロ・グロ・ナンセンスの時代を的確に
とらえた。「モボ」(モダンボーイ)、「モガ」(モダンガール)や「左傾」などの流行語の生みの親でもある。戦後は杉並区長も務めた。『ジプシーの明暗』(萬里閣書房)は、表紙のイラストが印象的だ。

 12  13
 ★新居格の棚               ★新居格『ジプシーの明暗』

 
 プロレタリア文学者として知られる貴司山治(きしやまじ)の棚もある。代表作の『ゴー・ストップ』は何冊もあった。

 14
 ★貴司山治『ゴー・ストップ』

 
 ジュール・ヴェルヌの翻訳者として知られる井上勤も、徳島出身だ。井上は1850年(嘉永3)に名東郡前川村(現・徳島市)に生まれ、徳島に滞在していたオランダ人から英語を
学ぶ。トマス・モアやシェークスピアなどを読みやすい翻訳で刊行した。とくにヴェルヌの『月世界旅行』『八十日間世界一周』は多くの読者を得た。
『優勝劣敗 猿乃裁判』というタイトルが目に入り、なんだろうと思ったら、エイサ・グレイが小説のかたちでダーウィンに反論したものだった。

 15  16  
 ★井上勤訳のヴェルヌ           ★『優勝劣敗 猿乃裁判』

 
 ハンセン病にかかりながらも、文学の道を進んだ北條民雄は、ソウルに生まれ、徳島県
那賀郡(現・阿南市)で育つ。結婚後、ハンセン病と診断され、1934年(昭和9)に東京の
全生病院に入院した。その生活の中で小説を書き、川端康成に送った。
『最初の一夜』と題した小説を読んだ川端は、「凄い小説」と激賞する手紙を北條に送った。その手紙は同館に所蔵されている。この作品は川端によって『いのちの初夜』と改題され、『文学界』に掲載され、大きな反響を呼んだ。

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 ★北條民雄『いのちの初夜』

 
 徳島をこよなく愛したのが、ポルトガル生まれのヴェンセスラウ・デ・モラエスだ。神戸、大阪で総領事を務め、神戸時代に徳島出身の芸者おヨネと結婚した。ヨネが亡くなったあと、モラエスは退職して1913年(大正2)から徳島に住んだ。徳島ではおヨネの姪コハルを妻としたが、彼女にも先立たれる。
 モラエスは、『おヨネとコハル』『徳島の盆踊り』などの著作をあらわし、75歳で徳島で
亡くなった。

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 ★モラエス『徳島の盆踊り』

 
 他にも徳島の出身者には、社会運動家の賀川豊彦、作家の富士正晴、評論家の中野好夫や
荒正人らがおり、同館には彼らの著作・資料も収蔵されている。
 また、書庫内にあるファイルケースには、徳島に縁のある人物についての新聞記事の切り
抜きが分類整理されている。

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 ★記事ファイルケース

 書庫内をひとめぐりしだだけの印象では、徳島にゆかりのある人たちは、メジャーではないにしても、独特の活動を行なう、どこか一癖あるように感じた。

 

久米惣七というコレクター

 ある棚を見たときに、ほかの棚とは違う感じを受けた。背に手書きの題名が入っている本やファイルが多いのだ。「久米惣七・寄贈資料」とある。久米惣七って誰だろう?
「新聞記者で、いろんな資料を集めた人です」と、成谷さんが教えてくれる。

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 ★久米惣七の棚 

 久米惣七は徳島日日新聞社(現・徳島新聞社)の記者で、作家や著名人が同誌に寄稿した
原稿を収集していた。それらは久米本人によって、きちんと製本され、タイトルが記されて
いる。
 そのなかには著名人の原稿も多くあり、たとえば徳島出身で総理大臣も務めた三木武夫の「ケネディの横顔」という原稿もある。

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 ★三木武夫の原稿

 また、谷崎潤一郎『蓼喰ふ蟲』(改造社)には、谷崎の署名の紙片が貼り付けられている。久米は著名人のサインを収集しており、それらを貼り付けた額もある(原田聖子「久米惣七
旧蔵資料(久米仁氏寄託)について」、『水脈 徳島県立文学館・書道美術館(仮称)開設
準備研究紀要』第2号、2001年3月)。コレクター気質の久米にとって、記者という職業はうってつけのものだったようだ。

 
 これらの資料は2000年に京屋社会福祉事業団から寄贈されたもので、合計1184点にのぼる。成谷さんの説明によれば、京屋は徳島県で手広くスーパーマーケットチェーンを展開する企業の前身で、創業者は地域の文化保護、文化振興にも熱心だった。その面で、のちに述べるように阿波人形の研究家である久米との交流があったのではないかということだ。これとは
別に遺族から一部を購入した資料もある。
 久米は、宇野千代の小説『人形師天狗屋久吉』誕生の功労者でもある。

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 ★宇野千代『人形師天狗屋久吉』

 天狗師久吉は、本名・吉岡久吉。15歳で人形師若松屋富五郎に弟子入りし、独立後、
天狗久を名乗る。
 徳島県では浄瑠璃の語りが盛んに行なわれていた。
「天狗久は、人形の頭の材料をヒノキからキリに替えて人形の重さを軽減したり、目にガラス玉を使って薄暗い光の中でも目が輝くように工夫した。(略)初代天狗久の最大の功績は、
舞台道具の一部とみなされていた人形浄瑠璃芝居の人形頭を芸術の域にまで高めたことである」(大和武生「阿波の人形浄瑠璃と初代天狗久」、『宇野千代と人形師天狗久 久米コレクションより』徳島県立文学書道館)

 久米はこの天狗久の工房に通って彼の話を聞き、『中央公論』1940年(昭和15)7・8月号に「人形師芸談」として発表した。その縁で、天狗久は中央公論社社長の嶋中雄作に人形を贈った。

 宇野は嶋中家でこの人形を見て衝撃を受ける。そして、久米に連絡を取って、1942年(昭和17)4月に徳島を訪れ、天狗久に会った。2か月後、再び徳島を訪れて、一週間にわたって天狗久のもとに通って話を聞いた。
 宇野から久米に送った書簡も同館に所蔵されている。それを読むと、宇野がいかにこの
仕事に打ち込み、久米も宇野の要求にできるだけ答えた様子が判る。
 そして、同年11月号、12月号の『中央公論』に掲載されたのが、『人形師天狗屋久吉』だった。

 戦争が始まった時期に、世の中に背を向けて、一心に自分の仕事に打ち込む天狗久に、宇野は次のように思う。
「それにしても、私たちのような仕事をしているものの誰が、このいま、ここに書いたりしているこの文字が、もうじきに、この世では使われないものになるなどと聞かされるようなことがあったとしたら、それでもなお、その同じ文字で人に読まれようなどと思い、一心にものなぞを書いたりすることが出来るだろうか」

 ここには、作家としての決意がうかがわれる。聞き書きという手法を駆使した同作は、代表作ともいえる『おはん』を生み出したと云われている。
 当時、夫とともに北京にいた瀬戸内寂聴は単行本化された同作を読んだ。
「天狗久の小説は、一遍に私の小説への憧れと夢を眠りの中からゆさぶりおこしてきた」
(瀬戸内寂聴「宇野千代さんとの半世紀」、『宇野千代と人形師天狗久』)
 天狗久、久米惣七、宇野千代と渡ったバトンが、作家・瀬戸内寂聴誕生のきっかけになったとは奇縁だ。

 同館には、『人形師天狗屋久吉』の原稿が所蔵されている。

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 ★『人形師天狗屋久吉』原稿

 また、久米が自分で製本したと思われる単行本には、久米宛の宇野千代の署名、久米宛の
葉書や天狗久の写真が貼り込まれている。

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 ★宇野千代献呈              ★写真の貼り込み

 久米は退職後も郷土史家として活動。『人形師天狗屋久吉芸談』(創思社出版)など、阿波の人形芝居についての著書を残した。

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 ★久米惣七著書

 

編集者の足跡

 取材を終えた翌日、改めて来館した私は、最初の目的である「編集者・谷田昌平と第三の
新人たち 徳島編」を観た。

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 ★谷田昌平展

 徳島編と銘打ったのは、2017年に町田市民文学館で「没後10年 編集者・谷田昌平と第三の新人たち」という展示が開催されていたからだ。私は見逃していたが、のちに図録を入手していた。

 谷田昌平は1923年(大正12)に神戸で生まれ、徳島で小学生時代を過ごした。京都大学の卒論で「堀辰雄論」を書いたことがきっかけで、『堀辰雄全集』(新潮社)に校訂者として
加わった。そして、新潮社に入社する。

 多くの作家の単行本の編集を担当したのち、1961年に自ら発案した「純文学書下ろし特別作品」をスタート。安部公房『砂の女』、大江健三郎『個人的な体験』、有吉佐和子『恍惚の人』など、文学史に残る作品を生んだ。
 遠藤周作の『沈黙』を担当したときは、谷田の家から近い遠藤家にしばしば通った。同作は広告では『日向の匂い』として掲載されたが、谷田の助言で『沈黙』となったという。
 谷田は写真が好きで、会合やパーティーなどでの作家の写真を撮っている。信頼する編集者の前だからか。どの作家もくつろいだ表情で写っている。

 展示を見た後、谷田の後輩にあたる元新潮社の池田雅延さんの「谷田昌平さん、文芸出版の大恩人」という講演も聴いた。
 ホテルで『回想 戦後の文学』のあとがきを読み返す。そこには、こうあった。
「私の編集者時代は、多くの作家達との親密な付合いの思い出や、数多くの本を作らせて
もらった思い出で満たされている。年長の作家や同世代の作家によって編集者としての勉強も
させてもらった。作家によって鍛えられたのである」
 谷田昌平という編集者に惹かれて、徳島まで来てよかったと、改めて感じた。
 
 
徳島県立文学書道館
〒770-0807 徳島市中前川町2丁目22-1 (徳島中学校東隣)
ウェブサイト
http://www.bungakushodo.jp/
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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2025年4月25日 第417号

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1.古本屋探偵登場!
 その誕生秘話――紀田順一郎さん卒寿記念特集『近代出版研究2025』
                      近代出版研究所編集部

2.『立ち読みの歴史』は『書物から読書へ』の日本的な実践録
                            小林昌樹

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━━━━━━━━━━【自著を語る(番外編)】━━━━━━━━━━

古本屋探偵登場!
その誕生秘話――紀田順一郎さん卒寿記念特集『近代出版研究2025』

                      近代出版研究所編集部

■紀田順一郎先生、卒寿記念特集!
 昭和平成令和と、長年、作家、書物評論家として活躍してきた紀田順一郎先生。
その先生の特集が4月10日発売の年刊雑誌『近代出版研究2025』に載ります。
あたかもよし、紀田先生は今年4月、90歳の卒寿を迎えられます。特集で先生の
長寿をお祝いしたいと思います。
 先生はこれまで半世紀以上にわたり、無慮300冊を超える図書を執筆、企画、
復刻してこられた書物博士ですが、意外にも初めての特集です。先生の特集を
創刊4年目にして我々編集部で組めたことは望外の喜びです。
 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=20723
 
 
書名:近代出版研究第4号(特集「書物百般・紀田順一郎の世界」他
著者:近代出版研究所
発行元:皓星社
判型/ページ数:A5判並製/416頁
価格:3,520円(税込)
ISBN:978-4-7744-0858-3
Cコード:1000
 
好評発売中!
https://libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774408583/
 
 

━━━━━━━━━━【自著を語る(338)】━━━━━━━━━━

『立ち読みの歴史』は『書物から読書へ』の日本的な実践録
                             小林昌樹

■『近代出版研究』からのスピンオフ
 私が2021年に立ち上げた近代出版研究所で年報を出そうということになり、
大あわてで『近代出版研究』創刊号を編集した際、埋草記事として書いたのが
「「立ち読み」の歴史」という歴史エッセイでした。2週間ほどで書いた記憶が
あります。
 今回、その「「立ち読み」の歴史」をシングルカットし、晴れて『立ち読みの
歴史』としてハヤカワ新書から出すことになりました(4月23日発売)。

■海外になかった?!
 日本人なら誰でも知っている「立ち読み」。けれど、どうやら「立ち読み」と
いう風習は日本独自のものらしいとわかりました。昭和時代、洋行した日本人が、
海外では立ち読みがないのだ、とちらほら書き残しています。
 
続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=20774
 
 
書名:立ち読みの歴史
著者:小林昌樹
発行元:早川書房
判型/ページ数:新書/200頁
価格:1,320円(税込) 
ISBN:978-4-15-340043-6
Cコード:0221

好評発売中!
https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000240043/

 

━━━━━━━━━【書影から探せる書籍リスト】━━━━━━━━━

「日本の古本屋」で販売している書籍を、テーマを深掘りして書影から
探せるページをリリースしました。「日本の古本屋」には他のWebサイト
には無い書籍がたくさんあります。ぜひ気になるテーマから書籍を探して
みてください。
 
「日本の古本屋」書影から探せる書籍リスト
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=13964

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━━

書名:近代出版史探索外伝Ⅱ
著者:小田光雄
発行元:論創社
判型/ページ数:四六/488頁
価格:5,500円(税込) 
ISBN:978-4-8460-2394-2
Cコード:0095

2025年4月28日発行予定!
https://ronso.co.jp/book/2394/

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書名:町の本屋はいかにしてつぶれてきたか
著者:飯田一史
発行元:平凡社
判型/ページ数:新書/352頁
価格:1,320円(税込) 
ISBN:9784582860795
Cコード:0200

好評発売中!
https://www.heibonsha.co.jp/book/b659325.html

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